書籍『反ファシズム:十字軍の軌跡』ポール・ゴットフリード 2021年

LGBTQ、ジェンダー、リベラル、ウォークネスグローバリゼーション・反グローバリズム文化的マルクス主義、ポリティカル・コレクトネス、フェビアン社会主義

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英語タイトル:『Antifascism: The Course of a Crusade』Paul Gottfried 2021

日本語タイトル:『反ファシズム:十字軍の軌跡』ポール・ゴットフリード 2021

目次

  • 序論 / Introduction
  • 第1章 アンティファと反ファシズムの主流化 / Antifa and the Mainstreaming of Antifascism
  • 第2章 反ファシズムの起源 / Origins of Antifascism
  • 第3章 第二次世界大戦後の反ファシズム / Post–World War II Antifascism
  • 第4章 ファシズムの定義と再定義 / Defining and Redefining Fascism
  • 第5章 反ファシズム対ポピュリズム / Antifascism versus Populism
  • 第6章 「保守的」反ファシズムの利用と濫用 / The Uses and Abuses of “Conservative” Antifascism
  • 第7章 反ファシズム国家 / The Antifascist State
  • 補論:反ファシズムとホッブズ的権威の本質 / Excursus: Antifascism and the Nature of Hobbesian Authority
  • 終章 / Afterthoughts

本書の概要

短い解説

本書は、戦間期から現代に至る反ファシズムの変遷を分析し、現代の反ファシズムが政治的レッテル貼りの道具と化している実態を明らかにすることを目的としている。

著者について

著者ポール・ゴットフリードは、アメリカの政治学者・歴史学者として、保守主義思想史やファシズム研究の分野で長年活動してきた。本書では、イデオロギー的中立性を保ちながら、反ファシズムの歴史的変遷と現代的意味を批判的に検証する立場を取る。

主要キーワードと解説

  • 主要テーマ:反ファシズムの歴史的変遷、ポスト・マルクス主義左翼の台頭、政治的レッテル貼りの濫用
  • 新規性:治療的民主主義、懺悔的歴史叙述、反ファシズム国家論
  • 興味深い知見:ドイツ再教育モデル、フランクフルト学派の影響、現代ポピュリズムへの過剰反応

本書の要約

本書は、反ファシズムが戦間期の具体的な政治運動への批判から、現代の包括的なイデオロギー装置へと変貌した過程を詳細に分析している。

ゴットフリードは、1920年代から1940年代の反ファシズムが、マルクス主義者、自由主義者、保守主義者によって展開された理性的で分析的な批判であったことを示す。当時の反ファシズム論者は、ファシズムを特定の時代と場所に属する政治現象として捉え、その支持者を合理的行為者として理解していた。イタリアのムッソリーニ政権やドイツのナチス政権を、具体的な社会経済的文脈の中で分析していたのである。

しかし第二次世界大戦後、反ファシズムは根本的な変化を遂げた。ドイツの強制的再教育、フランクフルト学派による心理学的アプローチ、懺悔的歴史叙述の三つの戦略が組み合わされ、反ファシズムは治療的プロジェクトとなった。特にフランクフルト学派の影響で、ファシズムは精神病理学的問題として再定義され、「権威主義的人格」の概念が広まった。ドイツでは占領軍による徹底的な再教育が行われ、これが後の西欧諸国における反ファシズム教育のモデルとなった。

現代の反ファシズムは、もはや歴史的ファシズムとは無関係な現象となっている。トランプ政権、ヨーロッパのポピュリスト政党、移民制限を支持する政治家など、幅広い対象が「ファシスト」のレッテルを貼られている。この現象は特にドイツで顕著であり、「ドイツのための選択肢(AfD)」のような中道右派政党さえも、ナチスとの関連で論じられている。

著者は、現代の反ファシズムがポスト・マルクス主義左翼の中核的イデオロギーとなっていることを指摘する。この左翼は、従来の階級闘争よりも文化的変革を重視し、西欧の伝統的アイデンティティを「ファシズムの温床」として攻撃する。企業資本主義との親和性も高く、グローバル化と多文化主義を推進している。

興味深いことに、保守派も独自の反ファシズム論を展開している。ジョナ・ゴールドバーグやディネシュ・ドゥスーザのような保守系論客は、民主党こそがファシスト的であると主張し、左翼の反ファシズム論をそのまま反転させている。しかし著者は、こうした保守的反ファシズムも同様に歴史的な正確性を欠いていると批判する。

本書の最も重要な貢献は、現代の「反ファシズム国家」の概念化である。この国家は、永続的な反ファシズム闘争を正当化根拠とし、教育、メディア、行政を通じて社会を変革しようとする。ファシズムの脅威は常に存在するものとして描かれ、それに対抗するためには自由の制限も正当化される。これは、トーマス・ホッブズの主権理論を思わせる状況である。言葉の意味は権威によって決定され、「ファシスト」というレッテルは政治的敵対者を排除する道具となっている。

著者は、真のファシズムが歴史的に特定の条件下で生まれた現象であり、現代西欧には存在しないと結論づける。むしろ問題は、反ファシズムの名の下に行われる自由の抑圧と社会の画一化である。本書は、政治的言説における概念の乱用と、それが民主主義に与える危険性について重要な警告を発している。

各章の要約

序論

ゴットフリードは反ファシズムが特定の歴史現象への批判から、現代における包括的な政治的武器へと変貌したことを指摘する。現代の反ファシズムは、実際のファシズムとは無関係に、政治的反対者を悪魔化し孤立させる道具として機能している。この現象は特にトランプ選出後に激化し、暴力的な抗議活動を正当化する根拠ともなっている。著者は、政治的・教育的・文化的エリートが推進するこの反ファシズム十字軍が、既存の権力構造を維持する手段となっていると分析する。

第1章 アンティファと反ファシズムの主流化

アンティファ(Antifa)は2016年のトランプ選出後に注目を集めたが、実際には長期間活動してきた組織的運動である。著者は、アンティファが単発的な抗議集団ではなく、豊富な資金源と広範な支持ネットワークを持つ全国的組織であることを明らかにする。注目すべきは、民主党政治家、主流メディア、大企業がアンティファに同情的であることだ。彼らはトランプを「ファシスト」と位置づけることで、アンティファの暴力を正当化している。皮肉なことに、アンティファの組織構造と戦術は、彼らが批判するナチス運動初期の特徴と酷似している。

第2章 反ファシズムの起源

1920年代から1940年代の反ファシズムは、現代とは根本的に異なる性格を持っていた。マルクス主義者のフランツ・ノイマンやルドルフ・ヒルファーディング、自由主義経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼス、イタリアの自由主義者ベネデット・クローチェなど、様々な立場からファシズムが分析された。重要なのは、彼らがファシズムを特定の時代と場所の産物として捉え、その支持者を合理的行為者として理解していたことである。精神病理学的説明や道徳的非難ではなく、社会経済的構造や政治的力学に基づく分析が主流だった。

第3章 第二次世界大戦後の反ファシズム

戦後の反ファシズムは三つの戦略によって特徴づけられる。第一は、占領下ドイツで実施された強制的再教育である。これは単なる非ナチ化ではなく、ドイツ人の精神構造を根本的に変革する試みだった。第二は、フランクフルト学派による心理学的アプローチで、ファシズムを「権威主義的人格」の病理として定義した。第三は、フリッツ・フィッシャーらによる懺悔的歴史叙述で、ドイツの過去を一貫して罪深いものとして描いた。これらの戦略は相互に結びつき、反ファシズムを国家的イデオロギーへと昇格させた。ドイツ再教育モデルは後に他の西欧諸国にも適用された。

第4章 ファシズムの定義と再定義

現代の反ファシズムにおいて、「ファシズム」という用語は歴史的根拠を失い、政治的不快感を表現する万能語となっている。ドイツでは、AfDの政治家が移民問題について発言するだけで「ナチス的言語」として非難される。アメリカでは、ティモシー・スナイダーやジェイソン・スタンレーのような学者が、トランプをヒトラーやムッソリーニと同一視している。この現象は、具体的な歴史分析よりも感情的反応と自由連想に基づいている。「ファシスト」というレッテルは、もはや歴史的正確性とは無関係に、政治的敵対者を排除する道具として機能している。

第5章 反ファシズム対ポピュリズム

現代の反ファシズムは、実際にはポピュリスト運動に対する既存エリートの防衛反応である。フランスのマクロン、ドイツのメルケルなど、グローバリストエリートがポピュリストを「ファシスト」として攻撃している。しかし著者は、西欧におけるポピュリストの実際の政治的影響力は限定的であることを示す。フランスの国民連合は30%を超える支持を得たことがなく、ドイツのAfDは10%前後にとどまっている。さらに、第三世界からの大量移民により、反移民政党の将来的成長は困難になっている。反ファシズムエリートは、実際には優勢な立場にありながら、自らを被害者として描いている。

第6章 「保守的」反ファシズムの利用と濫用

アメリカの保守派も独自の反ファシズム論を展開しているが、これは左翼の論理をそのまま反転させたものに過ぎない。ジョナ・ゴールドバーグの『リベラル・ファシズム』は民主党をファシストとして描き、ディネシュ・ドゥスーザは民主党の「ナチス的ルーツ」を主張している。しかしこれらの議論は歴史的正確性を欠いており、ファシズムの概念をさらに希薄化させている。興味深いことに、戦間期のアメリカ右派はファシズムにそれほど関心を示さず、むしろヨーロッパの政治混乱から距離を置こうとしていた。現代の保守的反ファシズムは、メディア政治の産物であり、歴史的洞察を欠いている。

第7章 反ファシズム国家

著者は現代西欧における「反ファシズム国家」の出現を分析する。この国家は、永続的な反ファシズム闘争を存在理由とし、教育、メディア、行政を通じて社会を継続的に変革しようとする。ファシズムの脅威は常に存在するものとして描かれ、それに対抗するためには伝統的自由の制限も正当化される。このシステムは、トーマス・ホッブズの主権理論を想起させる。政治的概念の意味は権威によって決定され、「ファシスト」というレッテルは政治的敵対者を排除する効果的な道具となっている。反ファシズム国家は、表面的には民主的手続きを維持しながら、実質的には思想統制を行っている。

補論:反ファシズムとホッブズ的権威の本質

著者はトーマス・ホッブズの言語理論を援用し、現代政治における概念支配の問題を論じる。ホッブズによれば、言葉の意味は主権者によって確定される必要がある。現代では、メディアと学術界が事実上の「主権者」として機能し、政治的概念の意味を決定している。「ファシスト」という言葉の意味は、歴史的事実ではなく、現在の権力関係によって規定される。この状況は、客観的真実よりも権威が法を作るというホッブズの格言「権威が真理を作るのではなく、権威が法を作る」の現代版といえる。

終章

著者は反ファシズムが西欧世界において支配的イデオロギーとして確立されたことを確認する。大企業、政府、教育機関、メディアが一体となってこのイデオロギーを推進している。第三世界からの大量移民と出生率の変化により、この体制への挑戦はさらに困難になっている。反ファシズムは、表面的には寛容と多様性を標榜しながら、実際には西欧の伝統的アイデンティティを破壊する「超越」のプロジェクトを推進している。著者は、この運動が真の多元主義ではなく、新たな形の全体主義であると警告する。真のファシズムは過去の現象だが、反ファシズムの名による自由の抑圧は現在進行形の脅威である。

 


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