書籍要約『ハッカーの目的論:縮小する惑星の富を分かち合う』チャールズ・ヒュー・スミス 2020

カウンターエコノミクス(地下経済)、アゴリズム、並行社会コミュニティレジリエンス、反脆弱性暗号通貨・仮想通貨・ビットコイン・地域通貨・CBDC生態経済学・脱成長経済・代替経済

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『A Hacker’s Teleology:Sharing the Wealth of Our Shrinking Planet』Charles Hugh Smith 2020

『ハッカーの目的論:縮小する惑星の富を分かち合う』チャールズ・ヒュー・スミス 2020

目次

  • 序文 / Introduction
  • 第一部 点と点をつなぐ / Section One:Connecting the Dots
  • 第二部 所属 / Section Two:Belonging
    • 第1章 所属は過小評価されている富の形態である / Belonging Is an Unappreciated Form of Wealth
    • 第2章 所属すること、根を下ろすこと、自分自身であること / Belonging, Being Rooted, Being Yourself
  • 第三部 成功を収める / Section Three:Getting Ahead
    • 第3章 メンターと熟達 / Mentors and Mastery
    • 第4章 経済的エコシステム / Economic Ecosystems
    • 第5章 失敗したスタートアップ / A Failed Startup
    • 第6章 成功事例 / A Success Story
    • 第7章 経済的エコシステムの機能 / How Economic Ecosystems Function
    • 第8章 別の事例 / Another Example
    • 第9章 政治への幻滅 / Political Disillusionment
    • 第10章 運営と実践的熟達 / Operational and Hands-On Mastery
    • 第11章 専門技能と一般技能 / Specialized vs. General Skills
    • 第12章 手に負えない危険性 / The Danger of Over-reach
    • 第13章 回避策と自己革新 / Workarounds and Reinventing Ourselves
    • 第14章 過渡期において、適応性と柔軟性は富である / In Times of Transition, Adaptability and Flexibility are Wealth
    • 第15章 「成功を収める」とは何を意味するか? / What Does It Mean to ‘Get Ahead’?
    • 第16章 主体性の獲得 / Gaining Agency
  • 第四部 システムを理解する / Section Four:Understanding Systems
    • 第17章 システムへの私の魅了 / My Fascination with Systems
    • 第18章 外部システムと内部システム / External and Internal Systems
    • 第19章 システム的理解の初期の探求:マルクス主義、仏教、道教 / Early Searches for Systemic Understanding:Marxism, Buddhism and Taoism
    • 第20章 システムにおけるレバレッジポイント / Leverage Points in Systems
    • 第21章 階層的システムと自己組織化システム / Hierarchical and Self-Organizing Systems
    • 第22章 中央集権的階層システムの弱点 / The Weakness of Centralized Hierarchical Systems
    • 第23章 反脆弱なシステム / Anti-Fragile Systems
    • 第24章 システムを変えるには、価値観とプロセスを変えなければならない / To Change a System, You Must Change the Values and Processes
    • 第25章 私たちはどのようなシステムに住みたいのか? / What Kind of System Do We Want to Live In?
    • 第26章 成功または失敗の測定:中国の事例 / Measuring Success or Failure:The Chinese Example
  • 第五部 お金がどのように創造され分配されるか / Section Five:How Money Is Created and Distributed
    • 第27章 銀行がどのようにお金を創造するか / How Banks Create Money
    • 第28章 あなたが支払う金利が富裕層か貧困層かを決定する / The Rate of Interest You Pay Determines If You’re Rich or Poor
    • 第29章 富裕層が他の全員を出し抜く / The Rich Outbid Everyone Else
    • 第30章 新たなお金の行き先:富裕層のポケットへ / Where the New Money Goes:Into the Pockets of the Rich
    • 第31章 リスク、強欲、社会的に無益な活動 / Risk, Greed and Socially Useless Activity
    • 第32章 私たちのお金のシステムは経済と政治システムを堕落させる / Our Money System Corrupts the Economy and our Political System
    • 第33章 幻想:「私たちは必要なだけお金を印刷できる」 / The Fantasy:’We Can Print All the Money We Need’
    • 第34章 抗しがたい誘惑 / An Irresistible Lure
    • 第35章 もし私たち自身でお金を創造できたら?(実際、できる!) / What if We Could Create our Own Money? (Actually, We Can!)
    • 第36章 負債がないことの利点 / The Advantages of No Debt
  • 第六部 有限の惑星における価格と利益 / Section Six:Price and Profit on a Finite Planet
    • 第37章 価格に含まれるもの / What Goes Into the Price?
    • 第38章 有限の惑星における価格 / Price on a Finite Planet
    • 第39章 何が最適化されているのか? / What’s Being Optimized?
    • 第40章 利益と労働 / Profit and Work
    • 第41章 私たちの惑星の資源を保存し分かち合う / Conserving and Sharing the Resources of our Planet
    • 第42章 私たちの持続不可能なシステム:富裕層はより多く所有し、より多く浪費し、より多く見せびらかす / Our Unsustainable System:The Affluent Own More, Waste More, Flaunt More
    • 第43章 「グリーン」エネルギーはより多くの消費を可能にする化石燃料に取って代わることができない / “Green” Energy Cannot Replace the Fossil Fuels that Enable More Consumption
    • 第44章 持続可能性への唯一の道は消費を削減し権力を分配することである / The Only Path to Sustainability Is to Cut Consumption and Distribute Power
  • 第七部 公平性 / Section Seven:Fairness
  • 第八部 持続可能な代替案 / Section Eight:A Sustainable Alternative
    • 第46章 バーンアウト:現状が失敗していると見なせないなら、個人だけが失敗しうる / Burnout:If the Status Quo Can’t be Seen as Failing, then Only Individuals Can Fail
    • 第47章 コミュニティ経済のテンプレートとしてのCLIME / CLIME as a Template for the Community Economy
    • 第48章 CLIMEの5つの自動化モジュール / CLIME’s Five Automated Modules
    • 第49章 縮小する惑星の富を分かち合うシステム / A System for Sharing the Wealth of Our Shrinking Planet
    • 第50章 古いシステムをシャットダウンする / Shutting Down the Old System
    • 第51章 CLIMEの10項目の概要 / Ten-Point Outline of CLIME
  • 第九部 新しい仕組みの経験的ルーツ / The Experiential Roots of the New Arrangement
    • 第52章 CLIME:コミュニティが所有し運営する会社 / CLIME:Community Owned and Run Corporations
    • 第53章 なぜ政府はこれをしないのか? / Why Doesn’t the Government Do This?
    • 第54章 ロボットとAIがすべての仕事をするのではないのか? / Won’t Robots and AI Do All the Work?
    • 第55章 企業AIの現実世界:搾取的、寄生的、社会的に破壊的 / The Real World of Corporate AI:Exploitive, Parasitic, Socially Destructive
    • 第56章 CLIMEのAI:競争の場を平らにし、すべてのCLIMEグループに力を与える / CLIME’s AI:Level the Playing Field, Empower Every CLIME Group
    • 第57章 なぜこれらすべてを企業に利益追求させないのか? / Why Not Let Corporations Make a Profit Doing All These Things?
    • 第58章 CLIMEへの架空の旅 / An Imaginary Journey into CLIME

本書の概要:

短い解説:

本書は、現在の社会経済システムが持続不可能であり、人々の帰属意識や成功の機会を保障できていないと問題提起する。著者は自身の経験に基づき、資源が縮小する惑星において富を分かち合い、すべての人に機会を提供する新しいシステム「CLIME」を提案することを目的としている。既存システムに疑問を抱くすべての読者に向けて書かれている。

著者について:

著者チャールズ・ヒュー・スミスは、大工、請負業者、ジャーナリスト、作家として多様な経験を積んできた。ハワイでの建設会社経営、雑誌編集、政治活動などを通じて、現在の社会経済システムの限界と矛盾を実体験してきた。これらの経験が、持続可能な代替システムの構想につながっている。

テーマ解説

  • 主要テーマ:持続可能で公平な社会経済システムの構築 [現在のシステムの限界を超え、資源の共有と人間の尊厳を中心に置いた新たな仕組みの提案]
  • 新規性:労働に裏打ちされた暗号通貨によるコミュニティ経済 [従来の中央銀行システムに依存しない、地域コミュニティ主体の経済モデル]
  • 興味深い知見:帰属意識は過小評価された富の形態 [お金では買えない、人間の幸福と生産性に不可欠な要素]

キーワード解説(1~3つ)

  • ハッカーの目的論:既存の壊れたシステムを迂回し、新たな解決策に到達するための目標、ツール、価値観の集合
  • CLIME:労働に基づく暗号通貨を用いた、自己組織化的なコミュニティ経済システム
  • 脱成長:資源消費を削減し、人間の幸福と生態系の回復を優先する経済パラダイム

3分要約

本書は、現在の社会経済システムが持続不可能な消費と債務の拡大、富の偏在、人間の帰属意識や成功の機会の欠如によって破綻していると指摘する。著者は、自身の人生経験——ハワイでの疎外感やバスケットボールチームへの所属願望、大工や請負業者としての苦闘、政治活動や非営利団体での活動——を通じて、人間にとって「所属すること」と「成功を収めること」がお金では買えない本質的な富であることを学んだ。

現在のシステムの問題点は、中央銀行と民間銀行が無からお金を創造し、それを富裕層や金融機関が低金利で利用できるように設計されている点にある。この「キャンティヨン効果」により、富は上部に集中し、大多数の市民は高い金利を支払い、機会を奪われる。さらに、このシステムは利益の最大化のみを追求するため、環境破壊や社会的不公正などの外部コストを無視し、持続不可能な消費を促進する。

著者は、この行き詰ったシステムを改革するには、価値観、プロセス、システムそのものを変える必要があると主張する。そこで提案されるのが、「コミュニティ労働統合通貨経済(CLIME)」である。CLIMEは、自己組織化的で反脆弱なネットワーク構造を持ち、5つの自動化されたソフトウェアモジュールによって運営される。その核心は、労働に基づいてのみ創造される独自の暗号通貨(ラージェント)である。この通貨は、コミュニティの必要性や不足を満たす社会的に有用な活動に対して成員に支払われ、利益の有無にかかわらず価値ある仕事を持続可能にする。

CLIMEでは、誰もが自発的にグループを形成したり参加したりでき、民主的な運営のもとで、自分の情熱や技能を活かす機会を得る。これは、孤独に籠もって消費するだけのベーシックインカムとは対照的に、所属意識、尊厳、主体性を提供する。技術(AI)は、平等な機会の提供とシステムの公平な運営のために利用され、大企業による監視や操作ではなく、成員のエンパワーメントに役立つ。

最終的に著者は、成長神話から脱却し、縮小する惑星の限られた資源を賢く利用し分かち合う「脱成長」の道へと移行する必要性を説く。CLIMEは、そのための実践的な青図として、持続可能で公平、かつ人間的な未来を可能にするシステムなのである。

各章の要約

序文

現在の社会経済システムは、持続不可能な消費と債務、不公平と不平等の極端化によって破綻している。無限の成長を前提とした従来の仕組みは幻想であり、その終焉は不可避である。解決策は、中央計画や壮大な「主義」ではなく、人間規模の、漸進的で多様な改善の積み重ねにある。著者は、壊れたシステムを迂回する「ハッカーの目的論」——新たな目標、ツール、価値観の集合——を提案し、すべての人にとって持続可能で健全、公平かつ生産的な代替案の青図を提示することを本書の目的とする。

第一部 点と点をつなぐ

スティーブ・ジョブズの言葉を借りて、人生の一見無関係な経験(成功、失敗、行き詰まり)が、後から振り返るとつながり、独自の進歩をもたらす土台となることを説明する。型にはまらない経験は型にはまらない解決策を生み、それは個人の内なるコンパス、すなわち情熱に忠実であることから導かれる。現在のシステムは大多数にとって機能しておらず、その基盤は崩壊しつつある。著者の経験は、縮小する惑星の富を分かち合うより良い方法についての大きな問いへとつながっている。

第二部 所属

第1章 所属は過小評価されている富の形態である

著者の高校時代のバスケットボールチームやパイナップル収穫作業での経験を通じて、所属意識がお金では買えない本質的な富であることを論じる。所属は権利ではなく特権であり、個人のアイデンティティを超えた役割と価値を与える。お金を払って孤独に練習するよりも、チームに所属し貢献することこそが、成長、尊厳、競争を通じて最高の自分を引き出す機会をもたらす。現在のシステムはこのような機会を保証しておらず、多くの人間の才能を浪費している。

第2章 所属すること、根を下ろすこと、自分自身であること

本当の意味で所属し、根を下ろしていると感じるとき、人は自分自身であることを評価され、その貢献が価値あるものと認められる。この感覚は、単なる金銭的報酬や行き詰まった仕事では得られない幸福と充足感をもたらし、個人と組織の両方の生産性を高める。なぜ、所属と根ざしを生み出す機会がほとんどないシステムに甘んじなければならないのか、と著者は問いかける。

第三部 成功を収める

第3章 メンターと熟達

高校の教師、請負業者の上司、クエーカー団体のリーダーという3人のメンターからの教訓を紹介する。彼らから著者は、励まし、職業的技能、責任の重要性を学んだ。メンターは、生産的な技能と経済的エコシステム(ツール、仲間、ネットワーク)を習得するための重要な鍵であり、成功を収めるために不可欠である。

第4章 経済的エコシステム

新しいことを始めるには、スターダストのような野心以上のもの、すなわち人的資本、社会関係資本、金融資本からなる「経済的エコシステム」が必要である。高校の新聞発行や非営利プロジェクトの成功は、このエコシステムの存在によって可能になった。この基盤なくして夢は夢のままであり、前進はほとんど不可能である。

第5章 失敗したスタートアップ

メンターやネットワーク不在の中で雑誌「VoltAge」を立ち上げたが、資金とエネルギーが尽き1号で終わった経験を語る。経済的エコシステムとメンターの重要性を痛感した失敗であった。

第6章 成功事例

アメリカ友奉委員会での「ピープルズ・イエローページ」プロジェクトの成功例を示す。ボランティアと寄付で運営され、組織のネットワークと構造、献身的なボランティアの存在がプロジェクト成功の要因であった。

第7章 経済的エコシステムの機能

非営利団体AFSCの事例を分析し、経済的エコシステムが機能するための要素——広範なネットワーク、説明責任のある階層構造、メンバーシップは特権であること、信仰に基づく共同作業、自己資金、柔軟なプロジェクト実行構造——を明らかにする。

第8章 別の事例

ハワイ人民党での政治活動の経験を振り返る。友人らと共に既成政党への対抗軸を目指したが、資金、人的資源、ネットワークの欠如により苦闘した。既存の政治構造と競うことの難しさを実感する。

第9章 政治への幻滅

従来の民主党員集会やマクガバン選挙運動での失望体験から、政治活動の真の目的は政策論議の枠組み(オーバートンウィンドウ)を広げ、真に競争力のある理念と候補者を導入することだと考えるに至った。

第10章 運営と実践的熟達

レストランや住宅建設の例を挙げ、実践的な技能(厨房での調理、現場での大工仕事)と運営管理的技能(経理、スタッフ管理、資材調達)は全く異なる技能セットであることを説明する。双方の熟達には長い時間と実地での失敗からの学習が必要である。

第11章 専門技能と一般技能

分業化が進む経済において専門技能は高く評価されるが、時には運営と実践の両方の知識を持つゼネラリストが最も価値を生む場合がある。カリフォルニア料理で有名なレストラン「シーズ・パニス」での体験を通じて、真の富は共有された熟達であると気付く。

第12章 手に負えない危険性

非営利団体「オーナー・ビルダー・センター」で目撃した、急速な拡張による経営難の事例を紹介する。意欲と才能があっても、適切な組織構造と運営技能がなければ、最良の組織も失敗しうることを学んだ。

第13章 回避策と自己革新

住宅購入や作家としてのキャリア構築など、著者自身が従来の道にとらわれず、独自の方法(ワークアラウンド)で目標を達成してきた経験を語る。エマーソンの「事を為せば、力は自ずから備わる」という言葉に従い、実地で学び、自分自身に資格を与える(アクレディット・ユアセルフ)ことの重要性を説く。自己革新は、人生の経験の点と点をつなぎ、既存の人的・社会的資本を基盤とするプロセスである。

第14章 過渡期において、適応性と柔軟性は富である

激動の変化の時代において、従来の硬直的で時間とコストがかかる道は有効性を失いつつある。現代で真に価値あるのは、新しいことを学び、新しい方法で働くことに快適であること、すなわち適応性と柔軟性である。ワークアラウンドと自己革新を可能にするこれらの性質は、脆弱で中央集権的なシステムが崩壊する時代における富そのものである。

第15章 「成功を収めること」とは何を意味するか?

成功を収めるとは、有意義なものに所属する機会、增益的な雇用、運営的・実践的技能の熟達、社会的・金融的資本の構築の機会を持つことを意味する。具体的には、仕事と個人の適性の一致、管理可能な業務量、仕事に対する裁量権と発言権、努力と技能に見合った報酬と承認、貢献への評価と信頼、公平な扱い、価値観との一致、自己実現とスキル向上の道筋といった8つの特性が位置に備わっていることである。

第16章 主体性の獲得

請負業者に仕事を請け負い、支払いを踏み倒された経験から、著者は自身の仕事と環境をコントロールする「主体性」の重要性を痛感する。請負業者免許の取得と会社の立ち上げというリスクの高い賭けに出た。成功を収めるには、この主体性の獲得が不可欠であるが、そのリスクが大きすぎるべきではないと論じる。

第四部 システムを理解する

第17章 システムへの私の魅了

幼少期から体系的理解への興味が自然に備わっていた著者は、科学的外部世界と経験的内部世界の両方のシステムに魅了されてきた。自身の広範かつ雑多な興味を職業に活かせる市場はほとんどなく、結果としてブログという形で点と点がつながった。創造性の余剰を許容し、直接的市場価値がなくとも個人の興味を追求する側面プロジェクトを支援するシステムの必要性を訴える。

第18章 外部システムと内部システム

経済学は消費のみを測定するが、人間には所属、成功、才能の発揮、尊厳の獲得など、複雑な社会的・個人的欲求がある。システム設計には、消費財の生産だけでなく、これらの無形かつ本質的な価値の生産も組み込む必要がある。

第19章 システム的理解の初期の探求:マルクス主義、仏教、道教

大学時代に学んだ三つの思想的体系を概観する。マルクス主義は歴史と社会経済的不平等の体系的叙述、仏教は内的な道徳的・精神的修養の体系、道教は政治社会と内的洞察の両方に適用される逆説と比喩の哲学である。システムは外部構造と、その中で生きる内的経験の両面から理解されるべきである。

第20章 システムにおけるレバレッジポイント

ドネラ・メドウズの「レバレッジポイント」を引用し、システムの結果を小さな変更で変える機会について論じる。腐敗した税徴収システムの例で示されるように、従来の解決策(さらなる管理層の追加)は問題を悪化させがちである。真の変化をもたらすのは、システムの核心的プロセスを変える新しいフィードバックループ(例:モバイル決済アプリ)の追加である。

第21章 階層的システムと自己組織化システム

階層的システム(命令が上から下へ流れる)と自己組織化システム(参加者が動的平衡を生み出す)を比較する。『蠅の王』の実話版であるトンガの少年たちの実例を挙げ、人間の自然な協力行動と自己組織化の力を示す。自己組織化システムは規模を拡大しても同じ規則とパターンを繰り返す(スケール不変性)という利点を持つ。

第22章 中央集権的階層システムの弱点

中央集権的階層は、富と権力の巨大な集中を生み、それが頂点掌握への誘惑となり、絶え間ない権力闘争(「新しいボスは古いボスと同じだ」)を招く。一方、自己組織化システムには掌握すべき頂点が存在しない。

第23章 反脆弱なシステム

ナシーム・タレブの「反脆弱性」の概念を紹介する。反脆弱なシステムは、ショックによって強固になる。緊密に結合されたシステム(例:単一供給源のサプライチェーン)は脆弱であるのに対し、緩く結合されたシステム(例:複数供給源のサプライチェーン、インターネット)は回復力があり、適応的で、反脆弱的である。

第24章 システムを変えるには、価値観とプロセスを変えなければならない

システムが実際に生産するものを見なければ、そのシステムが実際に価値とするものを理解することはできない。システムを変えるには、まずその価値観を率直に見極め、次に求める価値観を選択し、その価値観を具現化するプロセスを設計しなければならない。これが、価値観、プロセス、システムの点をつなぐハッカーの目的論である。

第25章 私たちはどのようなシステムに住みたいのか?

システムの成功や失敗は、何を測定し、何に価値を置くかによって異なる。GDP成長を成功の尺度とする現在のシステムは、上位5%、特に上位0.1%に富が集中し、大多数の実質賃金が停滞している点で失敗している。平均的な個人が成功を収めることがいかに容易か困難か、システムが公平性をどのように反映しているか、という観点からシステムを評価する必要がある。

第26章 成功または失敗の測定:中国の事例

中国を例に、システムの評価が価値観に依存することを示す。1977年の均一性と自給自足を重視したシステムは、その価値観から見れば成功であったかもしれない。2000年の消費主義と個人の野心の開放は、別の価値観から見れば進歩であった。システムがもたらす日常的経験の質——移動、教育、起業の容易さ、公平性、誠実さのコスト——が、そのシステムが住みたいものかどうかを決める。

第五部 お金がどのように創造され分配されるか

第27章 銀行がどのようにお金を創造するか

連邦準備制度(FRB)が国債などを買い入れることでデジタル上で無からお金を創造する方法と、民間銀行が「部分準備銀行」制度を通じて、預金の数倍の貸出を行い、実質的に無からお金を創造する方法を説明する。銀行は、貸出を行うことでお金を創造し、その利子を利益とする。

第28章 あなたが支払う金利が富裕層か貧困層かを決定する

信用力の高い富裕層は低金利で借り入れできるのに対し、信用力の低い貧困層は高金利を課される。住宅ローンなどの例を用いて、この金利差が長期的に富裕層の富を増大させ、貧困層の富を目減りさせるメカニズムを解説する。

第29章 富裕層が他の全員を出し抜く

低金利の融資を受けられる富裕層は、投資用資産(�貸物件など)を貧困層より高値で競り落とし、かつより高い利益率を確保できる。このように、現在のお金のシステムは、富裕層がより富裕化するように設計されている。

第30章 新たなお金の行き先:富裕層のポケットへ

中央銀行が無から創造した新たなお金は、国債の売り手である富裕層、金融機関、大企業に流れる。一般市民がこの新たなお金にアクセスする唯一の方法は、高い金利を支払って借り入れることである。このシステムの必然的な結果は「富める者はより富み、貧しい者はより貧しくなる」ことである。

第31章 リスク、強欲、社会的に無益な活動

高頻度取引などの「社会的に無益な活動」が、リスクが低く、巨額の利益を生む実例を示す。現在のシステムでは、強欲が社会的に有用な活動を自動的に生み出すという想定は誤りであり、リスクを回避することが報われ、社会的価値の創造よりも金融技術が富を生む。

第32章 私たちのお金のシステムは経済と政治システムを堕落させる

低金利の融資により富裕層が賃貸物件を買い占め、家賃を吊り上げ、政治献金を通じてさらなる競争制限を図る例を通じて、現在のお金のシステムが市場独占と政治の腐敗を促進することを論じる。利潤最大化のテレオロジー(目的論)は、富と権力の集中をもたらし、社会と経済を崩壊寸前にまで追い込んでいる。

第33章 幻想:「私たちは必要なだけお金を印刷できる」

現代貨幣理論(MMT)やユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の幻想を批判する。お金の供給が財・サービスの供給を大幅に上回ると、お金の購買力は低下し(インフレ)、実質的な豊かさは増さない。中央銀行のデジタル印刷は、エネルギーや食料を創造できない。

第34章 抗しがたい誘惑

FRBがマネー印刷を止められない政治的・金融的理由を説明する。ウォールストリートへの資金供給に加え、家計への直接給付(UBI)への圧力も高まっており、通貨の購買力低下と大多数の貧困化は不可避である。

第35章 もし私たち自身でお金を創造できたら?(実際、できる!)

価値(財・サービス)を創造する個人やグループに直接、新たなお金が創造され分配されるシステムを提案する。これは利子付きの借金として創造される現在の銀行マネーとは異なり、負債のないお金として創造される。これにより、価値、お金、インセンティブが再調整される。

第36章 負債がないことの利点

著者が住宅ローンではなく短期の個人ローンで家を完成させ、結果的に多額の利息を支払わずに済んだ経験を紹介する。多額の借金と利息の支払いが容易な道であるのに対し、少ない借金での完済は犠牲とワークアラウンドを要するが、長期的には富の構築に寄与する。

第六部 有限の惑星における価格と利益

第37章 価格に含まれるもの

タイでのエビ養殖による環境破壊の実例を示し、現在の価格には生産コストのみが反映され、環境修復や健康被害などの外部コストが含まれていないことを指摘する。これらのコストは、将来世代や社会的弱者に転嫁されている。測定されないコストは存在しないものと扱われるという危険性を論じる。

第38章 有限の惑星における価格

1970年代のオイルショックの体験を回想し、エネルギー、特に石油が安価で豊富であることの重要性と、それに代わるもののないことを強調する。経済理論が想定する代替エネルギーへの容易な移行は現実的ではなく、太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」は実際には「交換可能エネルギー」であり、その製造と維持には莫大なエネルギーとコストがかかる。

第39章 何が最適化されているのか?

工業化されたトマトの例を挙げ、外観と耐久性が最適化される代わりに味が犠牲にされていることを示す。同様に、現在の金融システムは、不平等、利益、債務を最適化し、社会的に有用な活動と賃金の購買力を犠牲にしている。社会的に有用な活動を最適化するには、その活動に直接投資する必要がある。

第40章 利益と労働

請負業者として従業員への給与支払いに窮した経験から、雇用主と従業員の間の決定的な違いは「利益」の重責であると論じる。利益が上がらなければ、社会的に有用な仕事も持続不可能である。現在のシステムでは、金融技術による低リスク・高利益の活動が奨励され、社会的有用な活動は敬遠される。

第41章 私たちの惑星の資源を保存し分かち合う

熱帯雨林の伐採と荒廃化の寓話を用いて、現在のグローバル経済が資源の迅速かつ利益最大化のための搾取を促進し、保全にはインセンティブが働かないことを批判する。資源を賢く利用し分かち合うためには、利益の有無にかかわらず、人々に直接対価を支払うシステムが必要である。

第42章 私たちの持続不可能なシステム:富裕層はより多く所有し、より多く浪費し、より多く見せびらかす

科学誌『ネイチャー』の論文を引用し、富裕層の過剰消費、浪費、環境負荷がシステムの持続不可能性の核心であると指摘する。彼らは資産を所有しシステムから利益を得るため、現状維持の動機が強く、その消費生活は他者への憧れを生み、さらに消費を促進する。

第43章 「グリーン」エネルギーはより多くの消費を可能にする化石燃料に取って代わることができない

「グリーン」エネルギーが現在の化石燃料ベースの消費レベルを代替できるという楽観論を批判する。代替エネルギーは全球エネルギー消費のごく一部を占めるに過ぎず、その製造と維持自体が膨大なエネルギーを消費する。石油は工業経済の基盤であり、代替は不可能である。

第44章 持続可能性への唯一の道は消費を削減し権力を分配することである

「脱成長」の概念を紹介する。持続可能性への道は、消費と浪費を削減し、金融及び政治的权力の分配を通じて、大多数がシステムにおける発言力と利害関係を持つことである。これは単なる消費削減ではなく、所有と影響力の民主化を伴う。

第七部 公平性

大工時代のアフリカ系アメリカ人のメンターたちとの経験、およびデトロイトでのアフリカ系アメリカ人コミュニティでの生活体験を振り返る。偏見の本質は、個人をユニークな存在としてではなく、プロファイルされた集団の一員として扱うことにある。人間の制度は偏見を持ちがちであるため、CLIMEシステムでは、すべてのプロセスと相互作用を自動化し、オープンソースソフトウェアを用いることで、人間の偏見が入り込む余地を可能な限り排除することを提案する。

第八部 持続可能な代替案

第45章 新しい仕組みの経験的ルーツ

著者の人生経験——所属への渇望、成功を収めることの探求、意味ある仕事への関与、熟達の達成、野心の実現、公平性と持続可能性の価値観の表現——がCLIMEシステム構想の基盤となっている。現状は生産的な所属、生計、成功への道を保証しておらず、それらは「当たるか外れるか」任せである。UBIは孤独な消費にすぎず、所属、有用性、尊厳を何も提供しない。

第46章 バーンアウト:現状が失敗していると見なせないなら、個人だけが失敗しうる

著者の重度のバーンアウト体験を詳述する。バーンアウトは単なる疲労や鬱以上の、意志力の喪失と感情的枯渇を伴う全人的崩壊である。これは現在の社会経済システムの4つの体系的要因——リスクの不公平な配分、成功への従来の道と現実の乖離、誰もが成功できる余地があるという前提の虚偽、本来的自己の放棄を強いられるシステムの要求——に起因する。システムが個人を失敗させているのであり、その逆ではない。

第47章 コミュニティ経済のテンプレートとしてのCLIME

CLIME(Community Labor Integrated Money Economy)は、コミュニティ経済の自動化されたテンプレートである。誰もがソフトウェアテンプレートに従って民主的に運営されるコミュニティグループを始められ、承認されたプロジェクトで完了した仕事に対して毎週、システム独自の暗号通貨で支払いを受ける。これにより、組織運営の難しさと資金調達の問題の両方が解決される。グループは小規模・専門的でも、大規模・複数プロジェクトでもよく、個人は複数のグループに所属できる。

第48章 CLIMEの5つの自動化モジュール

CLIMEは5つの連携する自動化ソフトウェアモジュールによって日々運営される。(1) グループ、メンバーシップ、特権、規則を管理するコミュニティ組織モジュール。(2) 信頼性/正確性/評価を管理するピア・トゥ・ピア認証モジュール。(3) 暗号通貨の発行、分配、管理を行うモジュール。(4) CLIMEグループとメンバーが生産する財・サービスの市場モジュール。(5) CLIME暗号通貨の取引を決済するクリアリングハウスモジュール。これらの自動化により、人間の偏りが排除され、運営コストが低下する。

第49章 縮小する惑星の富を分かち合うシステム

現在のシステムを、森林を破壊するブルドーザーに例え、その盲目の破壊性を止める方法を論じる。CLIMEは、システムの価値観——成長と利益のみが重要——を、保全、持続可能性、より少ない資源でより多くを成し遂げることを重視する価値観に置き換える。適正技術の流通ネットワークとなり、地域住民が生態系保全と生活向上のための資金とツールを入手できるようにする。これが、過剰消費を促進する埋立地経済とは対照的な「脱成長」の本質である。

第50章 古いシステムをシャットダウンする

現在のシステムは、消費と債務の拡大なしには存続できないと主張するが、それは初めから持続不可能であった。CLIMEは、お金の創造と分配の方法を置き換えることで、このブルドーザーを止める。価値ある仕事に対して成員に支払われ、地域コミュニティのニーズを満たすCLIMEは、利益の有無にかかわらず、資源の賢明な利用と分かち合いを可能にする。

第51章 CLIMEの10項目の概要

CLIMEの基本原則を10点でまとめる。(1) 社会的に有用な活動を行うグループに所属し、対価を得る機会はすべての人に開かれている。(2) メンバーシップは自発的で特権であり、権利ではない。(3) グループは自己組織化的である。(4) 各グループは民主的に運営され、リーダーシップは交替する。(5) 貢献者は労働に基づいてのみ創造される暗号通貨で支払われる。(6) システムは独自の公平で生産的な通貨を持たなければならない。(7) 運営はすべての個人とグループを平等に扱うソフトウェアによって行われる。(8) 社会的に有用な活動はコミュニティの不足とニーズに対処する。(9) グループは協力的、協調的、かつ友好的な競争関係にあり、グローバルネットワークを形成する。(10) メンバーシップはオプトインで柔軟である。

第52章 CLIME:コミュニティが所有し運営する会社

CLIMEグループは、基本的に「コミュニティが所有し運営する会社」であると説明する。株式会社と同様に、自発的参加、説明責任と監督の構造化された組織、目的(利益最大化ではなくコミュニティのニーズ対応)を持つ。しかし、CLIME市場は独占による搾取から保護され、エリートや企業が通貨、市場、グループを支配する方法は存在しない。

第53章 なぜ政府はこれをしないのか?

政府がCLIMEの役割を果たせない理由を説明する。現在のシステムから利益を得る者たちが、プロセスの変更を決して許さないであろうからである。政府は中央集権的階層であり、自己組織化的または反脆弱的になることはできず、本質的に政治的(駆け引きと偏りが生じる)である。さらに、政府は現在のお金のシステムに依存し、成長への病的執着から脱却できない。

第54章 ロボットとAIがすべての仕事をするのではないのか?

ロボットとAIがすべての労働を行うという技術的空想を論駁する。ロボットとAIは無料ではなく、収益性のある仕事しか行えず、エネルギーと材料(無料にはなりえない)を必要とする。代替エネルギーは全球エネルギー消費の約3%にすぎず、ロボットの製造と維持は高価である。この空想は、化石燃料と持続不可能な金融システムという土台を無視している。

第55章 企業AIの現実世界:搾取的、寄生的、社会的に破壊的

ビッグテックにおけるAIの現実を描く。そのアルゴリズムは、利益最大化のために、ユーザーデータの収集、監視、行動操作、検索結果やニュースフィードの管理を通じて、社会的害悪(依存症の促進、政治的二極化、民主主義の弱体化)を引き起こしている。AIは、企業独占による社会的破壊的・寄生的活動に利用されている。

第56章 CLIMEのAI:競争の場を平らにし、すべてのCLIMEグループに力を与える

CLIMEにおけるAIのより大きな目的は、プレイフィールドを平らにし、特権を排除し、すべての個人を平等に扱い、すべてのCLIMEメンバーに技術ツールへの平等なアクセスを提供することである。そのAIツールはオープンソースでメンバーシップによって所有され、メンバーシップとより広い世界の利益のために役立つ。

第57章 なぜこれらすべてを企業に利益追求させないのか?

市場がすべての問題を解決するという新自由主義的イデオロギーを批判する。市場は外部コストを適切に価格設定できず、グローバル企業は地域経済を搾取し、貧しい人々は市場で稀少なスキルや製品を持たない。CLIMEは、成員を世界的市場への依存から保護しつつ、自由市場の利点をすべて提供する自己維持的な市場を創造する。

第58章 CLIMEへの架空の旅

CLIMEが稼働している世界への架空の旅を描写する。著者自身が新成員として、様々なCLIMEグループ——廃墟整理、児童保育、大規模建築改修——を訪れ、その活気、 camaraderie(仲間意識)、多様性、自律性、そして規則遵守の文化を体験する。メンバーは、単純な草むしりからソフトウェア開発まで、自分の情熱とスキルに合った仕事を見つける機会に満ちている。


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