- 英語タイトル『The Chris Hedges Report:Can Israel & the U.S. Survive Iran’s Military Power? (w/ Alastair Crooke)』
- 日本語タイトル『クリス・ヘッジズ・レポート:イスラエルと米国はイランの軍事力に耐えうるだろうか?(アラステア・クルーク氏と共に)』
対談の基本内容
短い解説:
本書は、イランへの軍事攻撃を開始した米国とイスラエルが直面する戦略的失敗と、イランの予想外の軍事力を、中東情勢に精通した元英外交官の分析を通して深掘りすることを目的としている。
著者について:
司会のクリス・ヘッジズ(Chris Hedges)は、ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストであり、元『ニューヨーク・タイムズ』の中東支局長である。長年の戦争報道の経験を持ち、現在は番組『The Chris Hedges Report』をホストしている。
ゲストのアラステア・クルーク(Alastair Crooke)は、元英国外交官であり、MI6での勤務経験もあるとされる中東情勢の重鎮である。彼はEUの中東特使の安全保障アドバイザーを務め、ハマスとイスラエルの間の2002年の停戦確立に尽力するなど、イスラム主義勢力との対話に深く関わってきた。
重要キーワード解説
- ネトニヤフの「コーシャ認証」:
ネタニヤフ首相がトランプ前大統領に対し、イランとのいかなる核合意にも「コーシャ認証」(自身の承認)を与えないと脅し、合意の道を断った上で、イラン攻撃を事実上強要したとされる圧力の構図を指す。
- イランの「目潰し」戦略:
イランが旧式のミサイルやドローンを使用して、米国や湾岸諸国の高額なレーダー網を破壊し、敵の「目」を潰す戦略。これにより、米国の高度な戦闘管理能力を無力化し、後により強力な新型ミサイルを使用するための準備を進めている。
- ホルムズ海峡の封鎖:
世界の石油の約5分の1が通過する戦略的要衝。イランは機雷、沿岸砲、高速艇、対艦ミサイルなどを用いてこの海峡を封鎖する能力を持ち、実行すれば世界経済に壊滅的な打撃を与えうる。
- イスラエルの終末論的右派:
世俗的な合理主義では理解できない、イスラエル国内の強力な政治勢力。彼らは「大イスラエル」の実現や「救済」のために大規模な戦争や混乱を歓迎する終末論的、あるいはメシアニズム的な思想を持ち、現状の戦争拡大を推進している。
本書の要約:
この対談でアラステア・クルークは、現在進行中のイラン戦争が、表面的な目的を絶えず変える「間抜けなギャング」の如き無能さによって引き起こされたものであり、その真の原因は昨年12月のマー・ア・ラゴでのネタニヤフ首相によるトランプ氏への事実上の戦争強要にあったと指摘する。ヘブライ語メディアの報道として、ネタニヤフ氏が核問題よりもイランのミサイル体系の破壊を優先事項として主張し、もしトランプ氏が攻撃しなければイスラエルが先制攻撃を行い、米国も巻き込むと脅した経緯を明かした。
戦場では、イランは旧式のミサイルやドローンを大量に使用することで、米国とイスラエルの高額な迎撃ミサイルを枯渇させる戦略を取っている。既に湾岸諸国の迎撃能力はほぼゼロになり、イランはドローンでバーレーンなどにある米国の高額なレーダー網(ISR=情報・監視・偵察能力)を破壊し、米国を「盲目」にすることに成功した。これにより、米国が誇る高度な戦闘管理能力は著しく低下している。一方、米国やイスラエルのイラン国内ミサイル基地への攻撃は、イランが57の地域に分散した地下サイロを構築し、中央指令が破壊されても自律的に戦闘を継続できる体制(デッドハンド能力)を整えているため、成功していない。
最高指導者の殺害はシーア派世界に怒りの連鎖を引き起こし、イラクやバーレーンで反米・反イスラエルの機運が高まり、ジハードのファトワが出される事態に発展している。米国の狙った「マドゥロ・モデル」のような政権崩壊は全く起こらず、逆にテヘランでは数百万人規模の政府支持デモが発生している。
この戦争は地域全体に波及し、湾岸諸国の経済的安全神話は崩壊した。アジアの投資家はドバイなどから資金を引き揚げ始めており、カタールのLNG輸出停止などエネルギー市場への打撃は欧州経済を直撃する。さらに、米国はドル支配の基盤を揺るがす事態も招きかねない。
クルークは、この戦争の根本には、イスラエル国内の終末論的右派の思想があると分析する。彼らは「ユダヤ王国」の建設のために大混乱を歓迎しており、この動きは米軍内の一部キリスト教原理主義者の思想とも共振している。結局、イランは長期戦を計画しており、米国が戦争に負けるのであって、イランが勝利するのではない。イランにとっての勝利とは、無敵と思われた軍隊に打ち勝つという象徴的な地位を得ることである。最終的にこの戦争はイスラエルにとって存続に関わる過剰な拡大となり、国内の深刻な分裂をさらに深め、国家の在り方を根本から変えてしまうだろう。
特に印象的な発言や重要な引用
- 「トランプには選択肢がなかったと言える:彼はイランを攻撃せよという選択肢以外を与えられていなかったのだ。」
- 「彼ら(イラン)の目的は、米国の『目』を潰すことだった。彼らはこの非常に高価なレーダー能力を組織的に破壊したのだ。」
- 「これを理解するには、イスラエルを世俗的で合理主義的なレンズを通して見てはならない。それを理解するには、終末論的、あるいはメシアニズム的な感性のレンズを通さなければならない。」
- 「この戦争で負けるのは米国であって、イランが勝つのではない。イランは生き残ることによって勝利するのだ。」
サブトピック
00:10 混迷する戦争目的と無能なリーダーシップ
クリス・ヘッジズは、トランプ政権によるイラン戦争の目的が時間単位で変転する無能ぶりを、「間抜けなギャング」になぞらえて批判する。核開発計画の破壊、イランの政権交代、あるいはイスラエルとの連帯など、目的は錯綜している。指導部の「暗殺」に成功したと宣言しながら、交渉相手はすでに死んでいると認めるなど、その迷走ぶりは明らかだ。トランプ氏がイラン軍に「降伏か絶対確実な死か」を迫り、米海軍にホルムズ海峡の護衛を命じるのは、米艦艇を「イランの格好の標的」にさらす蛮行であるとヘッジズは指摘する。盟友のクウェートが米戦闘機を誤射するなどの混乱も起きており、専門家のアラステア・クルーク氏を招き、この破綻した戦争の実態を解き明かそうとする導入部である。
03:27 ネタニヤフの「コーシャ認証」と戦争強要の真相
クルーク氏は、昨年12月末のマー・ア・ラゴでのネタニヤフ首相とトランプ氏の会談が戦争の真の起点だと語る。ヘブライ語メディアの報道によれば、ネタニヤフ氏は核問題を二の次とし、優先すべきはイランの新たな多層的な防衛パラダイムを構成するミサイル体系の破壊であると主張した。もしトランプ氏が攻撃しなければ、イスラエルが先制攻撃を行い、米国を戦争に巻き込むと脅したのである。さらに、ネタニヤフ氏はいかなる核合意にも「コーシャ認証」(自身の承認)を与えず、米国の右派も追随させると迫り、トランプ氏に事実上、イラン攻撃以外の選択肢を残しなかった。その後の戦争の大義名分の変遷は、この真の原因を隠すための方便に過ぎないとクルーク氏は分析する。
08:06 旧式兵器による「目潰し」とイランの段階的戦略
クルーク氏は、イランの巧妙な軍事戦略を詳細に説明する。現在、イランが使用しているのは2012年から2013年頃の旧式ミサイルと単純なドローンである。その目的は、イスラエルや湾岸諸国の高価な迎撃ミサイルを枯渇させることである。既に湾岸諸国の迎撃能力はほぼゼロに等しく、イランのドローンはドバイやドーハ上空を自由に飛行し、バーレーンにある米国の重要な拠点を攻撃している。最も重要な成果は、一基が10億ドル以上もする米国の長距離レーダー網を破壊し、米国の「目」を潰したことである。これにより、米国の誇るデジタル戦闘管理能力(ISR)は著しく低下し、イスラエルを除く地域の米軍は「盲目」状態に陥っている。イランは新型のハイパーソニックミサイル(Khorramshahr-4など)を温存しており、時機を見て投入する構えである。
29:15 拡大するシーア派の反乱と米国の誤算
最高指導者殺害は、シーア派世界に予想外の連鎖反応を引き起こした。イラクやバーレーンでは大規模な反米・反イスラエル抗議活動が発生し、複数のシーア派指導者からジハードのファトワが出される事態に発展している。クルーク氏は、この戦争がシーア派全体への攻撃として認識されつつあると指摘する。米国が期待した「マドゥロ・モデル」のような政権崩壊は全く起こらず、テヘランでは数百万人が政府支持のデモを行うなど、イラン国内の結束は逆に強まっている。米軍内の一部に「神の戦争」と位置づける向きもあることが、宗教的对立の構図をさらに複雑にし、双方の終末論的思考を相互に増幅させていると分析する。
52:38 イスラエルを蝕む「終末論」と長期戦の行方
クルーク氏は、この戦争がイスラエルにとって存続に関わる過剰な拡大であると断じる。その背景には、合理主義では理解できないイスラエル国内の終末論的右派の存在がある。彼らは「ユダヤ王国」の樹立とメシアの到来のために大混乱やアルマゲドンを歓迎しており、この狂信が現在の戦争拡大の原動力となっている。米国の想定とは裏腹に、イランは長期戦を計画しており、交渉の意思は全くない。戦争の帰結は、米国が「負ける」ことであり、イランは生き残ることによって象徴的勝利を得る。湾岸諸国の安全神話は崩壊し、アジア資本は流出、エネルギー危機は欧州を直撃し、米ドル体制にも影響が及び始めている。イスラエルは二度と元の姿には戻れず、国内の深刻な分裂は国家を内側から蝕んでいくと結論づける。
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