書籍要約『医学の哲学:科学哲学ハンドブック第16巻』フレッド・ギフォード(編) 2011年

医学哲学

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『Philosophy of Medicine:Handbook of the Philosophy of Science Volume 16』Fred Gifford (ed.) 2011

『医学の哲学:科学哲学ハンドブック第16巻』フレッド・ギフォード(編) 2011

目次

  • 一般序文 / General Preface
  • 貢献者一覧:/ Contributors
  • 序論:医学の哲学とは何か? / Introduction:What is Philosophy of Medicine?
  • 第一部 医学の中心的諸概念 / Foundational Concepts of Medicine
  • 第1章 健康、病気、そして病気であること:概念的問題 / Health, Disease, and Illness:Conceptual Issues
  • 第2章 臨床判断の構造 / The Structure of Clinical Judgment
  • 第二部 医学的知識と科学的推論 / Medical Knowledge and Scientific Reasoning
  • 第3章 医学における因果推論 / Causal Inference in Medicine
  • 第4章 医学における統計的推論 / Statistical Inference in Medicine
  • 第5章 医学における証拠と確証 / Evidence and Confirmation in Medicine
  • 第三部 医学の実践と方法論 / Medical Practice and Methodology
  • 第6章 ランダム化比較試験と医学的知識 / Randomized Controlled Trials and Medical Knowledge
  • 第7章 臨床疫学とEBM:方法論的基礎 / Clinical Epidemiology and EBM:Methodological Foundations
  • 第8章 診断とスクリーニングの論理 / The Logic of Diagnosis and Screening
  • 第9章 医学における分類と疾患分類 / Classification and Taxonomy in Medicine
  • 第四部 医学の周辺領域と拡張 / Borders and Extensions of Medicine
  • 第10章 遺伝学と医学 / Genetics and Medicine
  • 第11章 精神医学の哲学 / Philosophy of Psychiatry
  • 第12章 看護学の哲学 / Philosophy of Nursing
  • 第13章 医学と社会科学 / Medicine and the Social Sciences

本書の概要:

短い解説:

本書は、医学の理論的基盤、方法論、そして実践を科学哲学の観点から体系的に考察する学術的ハンドブックである。医学哲学の主要な論点を網羅し、研究者や大学院生を主な対象としている。

著者について:

編者のフレッド・ギフォードはミシガン州立大学の哲学教授であり、生物学・医学の哲学を専門とする。本書には、医学哲学、科学哲学、疫学、精神医学など、多様な分野の第一線で活躍する研究者らが寄稿しており、学際的な視点から医学を多角的に分析している。

テーマ解説

  • 主要テーマ:医学知識の哲学的基礎づけ [医学における概念(健康/疾病)、方法論(因果推論/統計)、実践(診断/EBM)の哲学的基盤を体系的に探究する。]
  • 新規性:科学哲学と医学実践の統合 [従来の医学哲学が扱ってきた倫理的問題だけでなく、科学哲学の中心的問題(説明、理論、証拠など)を医学の文脈で本格的に論じている点に新規性がある。]
  • 興味深い知見:EBMの方法論的限界 [ランダム化比較試験(RCT)を頂点とする「証拠のヒエラルキー」に対し、その哲学的・方法論的前提を批判的に検証し、医学知識の複雑性を浮き彫りにする。]

キーワード解説

  • 疾病の概念:[健康と疾病をどのように定義するかという問題。自然主義(生物学的機能障害)と規範主義(価値判断が関与)の対立を軸に議論される。]
  • 因果推論:[医学において「原因」をどのように特定するかという方法論的問題。観察研究と実験研究(RCT)の役割、交絡因子の制御などが含まれる。]
  • 根拠に基づく医療(EBM):[「現在の最良のエビデンスを意識的、明示的、かつ思慮深く用いること」と定義される医療実践のパラダイム。その哲学的基礎と方法論的課題を検討する。]
  • 疾患分類学(ノソロジー):[病気をどのように分類し、定義するかという理論的枠組み。精神医学における診断分類(DSM)の改訂などを具体例として議論される。]
  • 臨床判断:[医師の診断や治療方針の決定といった実践的推論の構造。形式論理的な診断推論モデルと、実際の臨床現場におけるヒューリスティックな判断の関係を考察する。]

3分要約

本書『医学の哲学』は、科学哲学の方法論を医学という具体的な領域に適用し、その理論的基盤と実践的含意を包括的に解明することを目的としている。編者フレッド・ギフォードによる序論では、医学哲学が従来の生命倫理学的な規範的問題だけでなく、科学哲学の中心的課題である「知識とは何か」「説明とは何か」といった認識論的問題と深く関わることが指摘される。医学は単なる生物学の応用分野ではなく、複雑な推論と価値判断を伴う実践であるという認識のもと、本書は構成されている。

第一部では、医学の最も基礎的な概念である「健康」と「疾病」の定義問題が検討される。クリストファー・ボースらの自然主義的アプローチと、価値概念を重視する規範主義的アプローチの対立を軸に、これらの概念が単なる記述的事実ではなく、社会的・文化的価値と不可分であることが明らかにされる。第二部では、医学的知識を生み出す方法論の核心に迫る。因果推論(ダニエル・スティール)と統計的推論(サンダー・グリーンランド)の章では、観察研究の限界とランダム化比較試験(RCT)の方法論的優位性、そしてそれでも残る推論上の困難が詳細に分析される。ミリアム・ソロモンによる証拠と確証の章では、EBMが前提とする「証拠のヒエラルキー」モデルに対して、多元的な証拠の統合の必要性が主張される。

第三部では、これらの方法論が実際の医療現場でどのように具現化されるかが論じられる。ベンジャミン・ジュルベゴビッチらによるRCTの章では、ランダム化の意義とその限界、一般化可能性の問題が検討され、ロビン・ブルムによるEBMの章では、その方法論的基盤が批判的に吟味される。また、カゼム・サデグザデによる診断の論理、ジェレミー・サイモンによる疾患分類学の章では、形式論理的なモデルと臨床実践の複雑な関係が浮き彫りにされる。最終部では、医学の境界領域が探求される。ケネス・シャフナーによる遺伝学、ドミニク・マーフィーによる精神医学、マーク・リスヨードによる看護学、ポール・トンプソンによる社会科学と医学の関係を扱う章は、それぞれの領域が固有の哲学的課題を提起していることを示す。本書全体を通じて、医学知識の探求は単なるデータ収集ではなく、複雑な概念的枠組みと方法論的選択を伴う、深く哲学的な営みであることが結論づけられる。

各章の要約

一般序文

科学が最先端で機能するとき、それは常に知識と実在の性質に関する哲学的問題に遭遇する。本ハンドブックシリーズは、個別科学において生じる哲学的諸問題を扱うことを企図しており、本書『医学の哲学』もその一環として位置づけられる。科学哲学は、哲学と科学探究を結ぶ貴重な架け橋として機能する。

序論:医学の哲学とは何か?

編者ギフォードは、医学哲学が単なる生命倫理(医学における倫理的問題)に限定されないことを強調する。医学の中心的活動である診断、説明、予後予測、治療選択には、因果関係の推論、証拠の評価、概念の明確化といった認識論的・方法論的問題が満ちている。本書は、こうした問題を科学哲学のツールを用いて体系的に分析することを目的とする。

第1章 健康、病気、そして病気であること:概念的問題

クリストファー・ボースは、健康と疾病をめぐる長年にわたる哲学的論争を整理する。ボース自身が提唱する「生物統計理論」は、疾病を種に典型的な生物学的機能の障害として捉える自然主義的立場である。これに対し、価値や社会的文脈を本質的に含むとする規範主義的立場を対比させながら、概念分析の重要性と困難を論じる。

第2章 臨床判断の構造

医師の臨床推論はいかにして可能か。本章では、診断における仮説演繹的推論、パターン認識、そしてヒューリスティックスの役割を分析する。形式論理的な診断モデル(例えば、差次的診断の論理)と、認知心理学が明らかにする実際の判断プロセス(利用可能性ヒューリスティックなど)との間の緊張関係が考察される。

第3章 医学における因果推論

ダニエル・スティールは、医学において「原因」を特定するための方法論を詳細に検討する。観察研究では避けられない交絡因子の問題に対処するための統計的手法(操作変数法など)を解説する一方、ランダム化比較試験(RCT)がどのようにして交絡を制御し、より信頼性の高い因果推論を可能にするかを論じる。しかし、RCTにも一般化可能性などの限界があることを指摘する。

第4章 医学における統計的推論

サンダー・グリーンランドは、医学研究で用いられる統計的手法の哲学的基盤を掘り下げる。P値、信頼区間、ベイズ推論などの概念を、その解釈と誤用の歴史を踏まえて解説する。統計的有意性の盲目的な信奉を批判し、効果量や精度の推定、そして何よりも研究デザインの質の重要性を強調する。

第5章 医学における証拠と確証

ミリアム・ソロモンは、医学的知識がどのように確証されるのかという問題を扱う。EBMが推進する「証拠のヒエラルキー」モデル(RCTを頂点とし、専門家の意見を底辺に置く)を批判的に検討する。ソロモンは、異なるタイプの証拠(メカニズムに基づく証拠、臨床的知見など)を統合する多元的なアプローチを提案する。

第6章 ランダム化比較試験と医学的知識

ベンジャミン・ジュルベゴビッチらは、現代医学の黄金基準とされるRCTの方法論的基盤を徹底的に解剖する。ランダム化、盲検化、比較対照の各要素の意義を解明する一方で、ランダム化が保証するのは内的妥当性のみであり、結果を一般集団に適用する際の外的妥当性の問題は別途検討を要することを論じる。

第7章 臨床疫学とEBM:方法論的基礎

ロビン・ブルムは、EBMの方法論的前提を臨床疫学との関連で分析する。EBMが依拠する集団レベルのデータ(疫学研究)を、どのようにして個々の患者に適用するかという「適用のギャップ」問題を中心に考察する。また、EBMが軽視しがちな患者の価値観や臨医師の臨床経験の役割を再評価する。

第8章 診断とスクリーニングの論理

カゼム・サデグザデは、診断という行為を一種の推論システムとして捉え、その論理構造を形式化する試みを紹介する。感度、特異度、的中率といった概念を整理し、スクリーニング・プログラムが持つ倫理的・実践的含意(偽陽性・偽陰性の問題、過剰診断など)を論じる。

第9章 医学における分類と疾患分類学

ジェレミー・サイモンは、病気をどのように分類するかという問題を扱う。精神医学の診断マニュアル(DSM)の改訂史を具体例として、疾患分類(ノソロジー)がいかにして科学的知見と社会的・実用的要請(保険請求、治療選択など)の間で交渉され、形成されるかを明らかにする。

第10章 遺伝学と医学

ケネス・シャフナーは、分子遺伝学の発展が医学にもたらした概念的・方法論的変革を考察する。遺伝子と疾患の関係をめぐる還元論的な見方(遺伝子決定論)を批判し、遺伝子、環境、発生過程の複雑な相互作用を重視するシステム生物学的アプローチの必要性を論じる。

第11章 精神医学の哲学

ドミニク・マーフィーは、精神医学が直面する独自の哲学的課題を整理する。精神疾患を脳の障害として理解する還元的アプローチと、個人の意味世界や社会関係を重視する解釈学的アプローチの対立を軸に、精神疾患の概念、説明モデル、診断の妥当性などを多角的に検討する。

第12章 看護学の哲学

マーク・リスヨードは、看護実践に固有の哲学的基盤を探求する。看護は医学の単なる補助的役割ではなく、「ケアリング」という独自の視点と知識体系を持つとされる。本章では、看護理論における認識論的問題(看護知識とは何か)と存在論的問題(ケアの対象としての人間とは何か)が考察される。

第13章 医学と社会科学

ポール・トンプソンは、健康と疾病が社会的要因(社会経済的地位、文化、環境など)によって強く規定されるという社会疫学の知見を出発点に、医学と社会科学の関係を問い直す。個人の生物学的要因に還元できない集団レベルの因果メカニズムを解明するための方法論的課題を論じる。著者は、「健康格差」の研究は、医学的介入と社会的変革の双方を必要とする複雑な問題であると示唆する。


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