
英語タイトル:『Phenomena:The Secret History of the U.S. Government’s Investigations into Extrasensory Perception and Psychokinesis』Annie Jacobsen 2017
日本語タイトル:『フェノメナ:米国政府が超感覚的知覚と念力を秘密裏に調査した歴史』アニー・ジェイコブセン 2017年
目次
- 第一部 草創期 / THE EARLY DAYS
- 第1章 超常現象 / The Supernatural
- 第2章 プハリッチ理論 / The Puharich Theory
- 第3章 懐疑論者、ペテン師、そして米陸軍 / Skeptics, Charlatans, and the U.S. Army
- 第4章 疑似科学 / Quasi Science
- 第5章 ソビエトの脅威 / The Soviet Threat
- 第二部 CIAの時代 / THE CIA YEARS
- 第6章 ユリ・ゲラーの謎 / The Enigma of Uri Geller
- 第7章 月の男 / The Man on the Moon
- 第8章 物理学者と超能力者 / The Physicist and the Psychic
- 第9章 懐疑論者対CIA / Skeptics versus CIA
- 第10章 リモート・ビューイング / Remote Viewing
- 第11章 無意識 / The Unconscious
- 第12章 潜水艦 / Submarines
- 第三部 国防総省の時代 / THE DEFENSE DEPARTMENT YEARS
- 第13章 超物理学 / Paraphysics
- 第14章 超能力兵士 / Psychic Soldiers
- 第15章 気功と銭学森の謎 / Qigong and the Mystery of H. S. Tsien
- 第16章 殺人者と誘拐犯 / Killers and Kidnappers
- 第17章 意識 / Consciousness
- 第18章 超能力訓練 / Psychic Training
- 第19章 第三の眼を持つ女 / The Woman with the Third Eye
- 第20章 一時代の終わり / The End of an Era
- 第21章 人質と薬物 / Hostages and Drugs
- 第22章 失脚 / Downfall
- 第四部 現代 / THE MODERN ERA
- 第23章 直感、予感、合成テレパシー / Intuition, Premonition, and Synthetic Telepathy
- 第24章 科学者と懐疑論者 / The Scientists and the Skeptics
- 第25章 超能力者と宇宙飛行士 / The Psychic and the Astronaut
本書の概要:
短い解説:
本書は、冷戦期から現代に至るまで、アメリカ政府と軍が極秘裏に推進した、超能力(ESP)や念力(PK)などの「超常現象」研究の全史を、大量の一次資料と関係者へのインタビューに基づいて初めて明らかにしたノンフィクションである。主に国家安全保障上の理由から行われた、この驚くべき研究プロジェクトの実態とその成果を検証する。
著者について:
著者アニー・ジェイコブセンは、『エリア51』など、政府の機密プロジェクトを扱う調査報道ノンフィクションで知られるジャーナリストである。国家安全保障に関する研究を専門とし、機密解除文書の徹底的な分析と関係者への直接取材を重ねる手法を特徴とする。本書では、超常現象研究という科学とスパイ活動、信念と欺瞞が交錯する複雑な領域を、冷徹な視点で記録する。
テーマ解説
- 主要テーマ:国家の安全保障という名のもとに行われた、科学の最前線ともオカルトとも区別のつかない研究の実態とその影響。
- 新規性:従来断片的に語られてきた政府の超能力研究を、CIA、国防総省、各軍種、研究所にまたがる包括的な歴史として初めて体系的に再構築した点。
- 興味深い知見:超能力研究は単なる「おとぎ話」ではなく、冷戦というパラノイアと、量子力学などの科学的前進が交差する中で、真剣に国家資源が投入された「科学技術」の一部だった。
キーワード解説(2~7)
- リモート・ビューイング:遠隔地の人物、物体、場所の情報を、通常の五感以外の手段で知覚・記述する超心理学的技法。
- 超心理学:超常現象(ESP、PKなど)を科学的に研究しようとする学問分野。
- スターゲート計画:米国政府・軍が実施したリモート・ビューイングを中心とする超能力研究・運用プロジェクトの総称(非公式名称)。
- 冷戦パラノイア:冷戦期、特にソ連が超能力兵器を開発しているという懸念が、米国の研究推進の主な動機となった心理状態。
- 科学と疑似科学の境界:研究対象の特異性ゆえに、正統な科学的手法と、証拠の軽視や詐欺的行為との区別が常に問題となった。
- 意識の謎:研究の進展に伴い、超能力の問題は「意識」そのものの性質を問う根源的な問いへと収束していった。
3分要約
本書は、冷戦という極度の緊張とパラノイアの中、ソ連に遅れを取るまいと、米国政府と軍が超能力研究に莫大な資金と人的資源を投入した約25年間の隠された歴史を描く。
その発端は、民間の研究者や稀代の超能力者と称される人物たちの活動に、国家機関が目を向けたことにあった。初期の研究は陸軍などで散発的に行われたが、その科学的厳密さには大きな疑問符が付いた。しかし1970年代、イスラエルの超能力者ユリ・ゲラーが世界的なセンセーションを巻き起こし、さらにソ連が本格的な超能力研究を行っているという情報がもたらされると、状況は一変する。CIAが主導権を握り、厳格な科学者を動員して超能力、特に「リモート・ビューイング」の実在性と軍事転用の可能性を調査し始めたのである。
研究は二つの大きな流れを生んだ。一つは、スタンフォード研究所(SRI)を中心とした科学的アプローチであった。物理学者やエンジニアが、厳密な二重盲検法による実験でESPの統計的有意性を証明しようと試み、一部では有望な結果も得られた。もう一つは、実際の諜報活動への応用、すなわち「超能力スパイ」の育成と運用であった。選抜された兵士や一般人が訓練を受け、遠隔地の秘密施設や人物の情報を「透視」しては報告するという、現実の作戦に投入されるようになった。
この流れは、CIAから国防総省(具体的には国防情報局DIA)に主導権が移るとさらに加速する。「スターゲート計画」と通称されるこのプロジェクトは、部隊として編成され、世界各地の危機的状況(人質事件、テロリストの隠れ家の特定、行方不明兵器の探索など)において、通常の情報収集手段を補うものとして利用された。しかし、その内部では科学を標榜する者と、超能力を盲信する者、そして懐疑的な者が常にせめぎ合っていた。
1980年代後半から1990年代にかけて、外部からの批判(特に科学的懐疑派からの激しい攻撃)と、内部評価による「実用的価値」の限定的な結論、さらには冷戦終結による脅威認識の変化が重なり、政府主導の超能力研究プロジェクトは次第に縮小・終了へと向かう。1995年、CIAは公式にプロジェクトを終了し、その有用性を否定する評価報告書を発表した。これが「政府の超能力研究は全てニセ科学だった」という一般的な認識を決定づけた。
しかし、本書の叙述はそこで終わらない。研究は完全に消滅したわけではなく、その焦点は「意識」そのものの研究や、脳科学、直感の強化、さらには「合成テレパシー」(脳波で機械を直接操作する技術)といった、新たな科学技術の分野へと形を変えて継承されていることを示唆する。最終的に本書が提起するのは、超能力の「真偽」という単純な問題ではなく、国家が「知らないこと」に対する恐怖から、科学の境界を越えた未知の領域にどれだけの資源を注ぎ込み、いかにそれを統制・利用しようとしたか、という人間の知性と信念の複雑な物語である。
各章の要約
第一部 草創期
第1章 超常現象
超常現象への関心は古くから存在したが、第二次世界大戦後のアメリカでは、特定の個人が注目を集め始める。その一人が、オランダ人超能力者ピーター・フルコスであった。彼は、遠隔地の人物の思考を読み、物理的に触れずに物体を動かす能力を有すると主張した。彼のデモンストレーションに軍関係者も出席し、関心を示した。この章では、科学と超常現象が交錯する前史として、フルコスらの活動と、彼らを取り巻く研究者やスポンサーのネットワークが描かれる。超能力が単なる見世物ではなく、潜在的な「兵器」として認識される萌芽が見て取れる。
第2章 プハリッチ理論
医師であり発明家でもあるアンドリヤ・プハリッチは、超常現象に深く傾倒し、独自の理論を構築した人物である。彼は、地球外知性からのメッセージを受け取っていると自称する超能力者を通じて「ナイン」という存在とコンタクトを取ったと主張し、その「教え」を記録した。プハリッチは、超能力は訓練によって強化できると信じ、そのための装置を開発しようとした。彼の活動は科学的コミュニティからは異端視されたが、一部の富豪や関心を持つ者たちから資金援助を受け、後の政府研究に間接的な影響を与える人的ネットワークの一端を形成した。
第3章 懐疑論者、ペテン師、そして米陸軍
1950年代から60年代にかけて、超能力の可能性に軍が本格的に目を向け始める。陸軍は「グリーン・バン」プロジェクトを立ち上げ、ESPによる遠隔情報伝達の実験を行った。しかし、この分野は詐欺師や誇大宣伝する人物が跋扈する危険な領域だった。実験の被験者の中には、不正を行う者もいた。一方で、マジシャンや懐疑的科学者(後のCSICOP=超常現象の科学調査委員会のメンバーとなる者たち)は、超能力主張の多くが単なるトリックや自己欺瞞であると厳しく批判し始める。軍の研究は、期待される成果と、詐欺のリスクという板挟みの中で進められた。
第4章 疑似科学
超能力研究を「科学」として成立させようとする動きが、学術界の辺縁で始まる。J・B・ラインがデューク大学で行った ESPカードを使った実験は、統計的手法を用いて超能力の存在を「証明」しようとした先駆的な試みであった。しかし、再現性の問題や実験手法への批判は絶えず、主流科学からは「疑似科学」とみなされた。この章では、超心理学が学問として確立しようともがく過程と、科学的方法論の適用が如何に困難であったかが描かれる。その中で、後に政府プロジェクトの中心的科学者となる者たちの思想的素地が形成されていった。
第5章 ソビエトの脅威
米国の超能力研究を決定づけた最大の要因は、ソ連の脅威認識であった。諜報報告により、ソ連が大規模な超能力研究プログラム「サイコトロニクス」を推進しており、兵士のESP能力を強化する訓練や、遠隔地から人間の心や身体に影響を与える「エネルギー兵器」の開発を行っている可能性が伝えられた。これは、核兵器に次ぐ「新しい次元の兵器」として米国政府に深刻な危機感を抱かせた。「彼らがやっているなら、我々もやらねばならない」という冷戦論理が、巨額の予算と国家的支援をこの異端的な研究領域に注ぎ込む正当性を与えたのである。
第二部 CIAの時代
第6章 ユリ・ゲラーの謎
1970年代前半、イスラエル人のユリ・ゲラーが「スプーン曲げ」などで世界的な有名人となる。彼の能力はテレビ番組などで大々的に紹介され、世論の超能力ブームを巻き起こした。CIAはゲラーの能力が本物かどうか、また彼がソ連のエージェントではないかと疑い、調査を開始する。スタンフォード研究所(SRI)の科学者による初期のテストでは、ゲラーは通常の手段では説明できない知覚能力を示したと報告された。ゲラーは、政府の超能力研究が公の注目を浴び、本格化するきっかけとなる象徴的人物であった。
第7章 月の男
CIAの依頼を受け、SRIの物理学者ハル・プートフと技術者ラッセル・ターグは、超能力の科学的検証プロジェクトを本格化させる。彼らはまず、芸術家であり超能力者と自称するインゴ・スワンを被験者として、リモート・ビューイング実験を行った。実験内容は、別の研究者がランダムに訪問した遠隔地の場所を、スワンが研究所から「透視」して描写するというものだった。驚くべき精度の描写が得られたと報告され、この成功は、CIAがSRIへの資金提供を継続する根拠となった。スワンは「プロジェクト・スキャンネート」の礎を築いた人物として知られる。
第8章 物理学者と超能力者
SRIでの研究は、ESPの存在を「証明」することから、そのメカニズムの解明と、実用的な情報収集ツールとしての開発へと重点を移していく。プートフとターグは、被験者の主観的印象をいかに客観的データとして抽出するか、実験プロトコルの厳密化に努めた。一方、彼らは軍や情報機関から送り込まれる「被験者候補」のテストも行った。その中には、後にリモート・ビューイングのスターとなるジョー・マクモニーグルも含まれていた。科学者と超能力者(またはその潜在能力を持つ者)の協働関係が確立され始めた。
第9章 懐疑論者対CIA
SRIの研究が進む中、科学界の懐疑派からの攻撃は激化した。特に、マジシャンのジェームズ・ランディは、ユリ・ゲラーをはじめとする超能力者のトリックを暴くことに情熱を注ぎ、超能力全般を否定した。CIA内部でも、研究の価値について議論が分かれた。一部の分析官は、得られた情報が曖昧で検証不可能であり、実用的価値がないと主張した。しかし、ソ連の脅威という文脈と、一部の有望な実験結果が、プロジェクトの存続を支え続けた。科学的确実性と、諜報活動が求める「使える」情報との間の根本的な緊張関係が浮き彫りになる。
第10章 リモート・ビューイング
「リモート・ビューイング」という用語が定着し、その技法が体系化され始める。初期の「座標リモート・ビューイング」では、地図上の緯度経度など、ターゲットに関連する「座標」を被験者に与え、その場所の描写を求めた。後に、座標すら必要とせず、ターゲットに関する任意のキーワードや手がかりから始める「拡張リモート・ビューイング」技法が開発される。これは、被験者が意識的に分析するのを防ぎ、無意識からの「インプレッション」を抽出することを目的としていた。技法の進化は、実戦投入への期待を高めた。
第11章 無意識
リモート・ビューイングの理論的バックボーンとして、「無意識」の概念が重要性を増した。被験者は、ターゲット情報を直接知覚しているのではなく、人類共通の無意識(あるいは宇宙的な情報場)にアクセスし、そこから情報を「ダウンロード」しているという仮説が支持された。この考えは、カール・ユングの「集合的無意識」や、物理学者のデヴィッド・ボームが提唱した「内在秩序」などの概念と結びつけられた。超能力の問題は、心理学と物理学の交点にある「意識の本質」という深遠な問題へと発展していった。
第12章 潜水艦
リモート・ビューイングの能力が、実際の軍事作戦においてテストされるようになる。代表的な例が、ソ連の秘密潜水艦基地の探索である。被験者は、地図上の座標のみを手がかりに、特定の湾にあるソ連潜水艦の基地の詳細(ドックの構造、建物の配置、さらには潜水艦の特徴など)を描写した。その情報は、後に偵察衛星の画像と部分的に一致したと報告された。このような「成功例」は、国防総省や海軍の関係者を説得し、プロジェクトの拡大と予算獲得に大きく貢献した。リモート・ビューイングは、理論から実践の段階へと移行した。
第三部 国防総省の時代
第13章 超物理学
1970年代後半、プロジェクトの主導権がCIAから国防総省、特に国防情報局(DIA)に移る。DIAは「グリル・フレーム」というコードネームの下で研究を継続し、後に「スターゲート」として知られるようになる。この時期、研究の焦点はESPから、物体に影響を与える「念力(PK)」へと広がり、「超物理学(パラフィジックス)」と呼ばれる分野に拡張された。物理学者は、PKが既知の物理法則にどのように収まるか(あるいは収まらないか)を説明しようともがき、研究はより野心的かつ怪しげな様相を帯びていった。
第14章 超能力兵士
リモート・ビューイングは、特定の個人に依存する「芸術」から、訓練可能な「技術」へと変容を遂げようとした。DIAは、軍のエリート兵士などから被験者候補を選抜し、体系的なトレーニング・プログラムを実施した。その目的は、信頼性の高い「超能力兵士」を創出し、必要に応じて戦場や諜報活動に投入することにあった。フォート・ミードに設けられた部隊は、一種の「超能力特殊部隊」として機能し始める。しかし、訓練の標準化と、個人の資質への依存という根本的な問題は解決されなかった。
第15章 気功と銭学森の謎
米国の関心はソ連のみならず中国にも向けられた。中国で盛んに行われていた「気功」は、生体エネルギーを制御する技術として、超能力(特にPK)と同種のものと解釈された。さらに、米国のロケット科学者から中国に渡り、同国のミサイル・核開発の父となった銭学森(Hsue-Shen Tsien)が、中国の超能力・気功研究を後押ししているという情報がもたらされた。東西両陣営の科学の天才が超能力に傾倒しているという事実は、米国関係者にこの分野の潜在的重要性を強く印象づけた。
第16章 殺人者と誘拐犯
リモート・ビューイング部隊は、現実の事件解決への応用を求められるようになる。その対象は、国際テロリスト(カルロス・ザ・ジャッカル)の隠れ家の探索から、イタリアの政治家アルド・モーロ誘拐事件、さらには連続殺人犯のプロファイリングまで多岐にわたった。時には、事件関係者の「思考」を読み取ろうとする試みもなされた。これらの作戦は、伝統的な諜報手法ではアクセス不能な領域への挑戦であった。しかし、その結果が実際の作戦に決定的な影響を与えたかどうかは、多くの場合、不明確であった。
第17章 意識
研究が深まるにつれ、中心的な課題は「意識」そのものの理解へと収束していった。量子力学の解釈問題(観測問題)と意識の関係が盛んに議論され、一部の科学者は、意識が物理的世界に直接影響を与える可能性を真剣に考察し始めた。この章では、ユングの元で学んだ物理学者や、トランスパーソナル心理学の研究者など、正統派から外れた様々な思想家がプロジェクトに関与し、その理論的基盤に影響を与えていった経緯が描かれる。プロジェクトは科学的研究であると同時に、一種の哲学的探求の場ともなっていた。
第18章 超能力訓練
能力を強化するための訓練法の開発が進められた。その中には、感覚遮断タンク(フロート・タンク)の使用、瞑想法、バイオフィードバック、特定の周波数の音や光(ガンマ波)への曝露など、多様なアプローチが含まれた。目的は、被験者の脳を「受信状態」にし、雑念(分析)を減らして無意識からの情報をクリーンに受け取れるようにすることであった。しかし、これらの訓練法の有効性を科学的に検証することは難しく、個人の経験や信念が大きく作用する領域であった。
第19章 第三の眼を持つ女
中国人超能力者である張宝勝のような人物が注目を集めた。彼は、瓶から薬を出さずに取り出すなど、強力な念力の持ち主とされ、中国の軍部もその能力を研究していたと伝えられた。また、特定の訓練により「第三の眼」が開かれ、超能力が発現するという東洋的な概念が、西洋の研究にも影響を与えた。この章では、東洋と西洋の超能力観の違いと交流、そして国家がそのような「人間兵器」の可能性にどのような期待と警戒を抱いたかが描かれる。
第20章 一時代の終わり
1980年代後半、プロジェクトは転換点を迎える。長年にわたる研究にもかかわらず、誰もが認める決定的な証拠(「スモーキング・ガン」)は得られなかった。プロジェクト内部でも、科学的厳密性を重んじる者と、能力を盲信してコントロールを失う者との対立が深刻化した。さらに、冷戦の終結が近づき、ソ連の超能力兵器という最大の脅威認識が薄れ始めた。これらにより、プロジェクトの存在意義が根本から問い直されるようになる。
第21章 人質と薬物
現実の危機においてもリモート・ビューイングは試みられた。イランアメリカ大使館人質事件では、人質の居場所を特定しようとする試みがなされた。また、麻薬取引の撲滅作戦では、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの隠れ家や、麻薬密輸ルートを探るために利用された。しかし、これらの作戦で得られた情報は、往々にして曖昧で、既知の情報の確認に留まるか、誤った方向に導くリスクもあった。実用性に対する疑念が、内部からも強まっていった。
第22章 失脚
1990年代前半、プロジェクトは最終段階を迎える。国防総省は外部の調査委員会(AIR)にプロジェクトの評価を依頼する。AIR委員会は、過去の実験データを精査した結果、リモート・ビューイングの現象が一貫して再現可能であるという証拠はなく、諜報活動に有用だったとも結論づけられない、とする報告書をまとめた。この報告は、プロジェクト終了への決定打となった。1995年、CIAは公式にプロジェクトを終了し、公表された報告書ではその価値を否定した。主要な科学者や実践者は現場を去り、「スターゲート計画」は幕を閉じた。
第四部 現代
第23章 直感、予感、合成テレパシー
政府の公式プロジェクトは終了したが、その遺産は様々な形で生き続けた。研究の焦点は、「超能力」という超自然的な概念から、「直感」や「予感」といったより普遍的な人間の能力の解明、そして脳と機械のインターフェース(BMI)を利用した「合成テレパシー」の開発へとシフトしていった。国防高等研究計画局(DARPA)などは、兵士の直感を強化する研究や、脳波でドローンを操作する技術に投資している。過去の超能力研究が、現代の先端科学技術に道を開いた側面があることを示唆する。
第24章 科学者と懐疑論者
プロジェクト終了後も、超能力の真偽をめぐる論争は続いている。かつての関係者の一部は、プロジェクトの成果が不当に貶められたと主張し、民間で研究を続けている。一方、懐疑派は、政府が最終的にプロジェクトを否定した事実を以て、超能力研究全体の無効性の証拠と見なしている。この章では、両陣営の現在の主張と、和解しない見解の隔たりが描かれる。科学的方法では決着のつかない、信念と経験をめぐる深い対立が残された。
第25章 超能力者と宇宙飛行士
最終章は、一人の人物に焦点を当てる。エドガー・ミッチェルは、アポロ14号で月を歩いた宇宙飛行士である。彼は宇宙での神秘的な体験をきっかけに、人間の意識と宇宙のつながりについて深い関心を抱き、退職後は意識研究の財団を設立した。ミッチェルは政府の超能力研究を強く支持し、SRIとの橋渡し役も果たした。彼の存在は、宇宙という未知の領域を探求する科学者・探検家の精神と、人間の内なる未知を探求する超能力研究の精神が、根底で通じ合っていたことを象徴している。本書は、人間が「知ろうとする意志」の果てしない営みを描き終える。
著者はこう述べる。「国家の安全保障をめぐるパラノイアと、最先端科学、そして人間の精神の謎が交差する場所に、この物語は存在する。」
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