学術書『コミュニケーション権力』マニュエル・カステル(2013)

ウィキリークス、ジュリアン・アサンジグローバリゼーション・反グローバリズムメディア、ジャーナリズムメディア・コングロマリット情報操作・社会工学

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Communication Power

英語タイトル:『COMMUNICATION POWER』 Manuel Castells 2013
日本語タイトル:『コミュニケーション権力』 マニュエル・カステル 2013

目次

  • 序章:デジタル・ネットワークと自律の文化 / Digital Networks and the Culture of Autonomy
  • 第1章 ネットワーク社会における権力 / Power in the Network Society
  • 第2章 デジタル時代のコミュニケーション / Communication in the Digital Age
  • 第3章 精神と権力のネットワーク / Networks of Mind and Power
  • 第4章 コミュニケーション・ネットワークのプログラミング:メディア政治、スキャンダル政治、民主主義の危機 / Programming Communication Networks: Media Politics, Scandal Politics, and the Crisis of Democracy
  • 第5章 コミュニケーション・ネットワークの再プログラミング:社会運動、反体制政治、新しい公共空間 / Reprogramming Communication Networks: Social Movements, Insurgent Politics, and the New Public Space
  • 結論:権力のコミュニケーション理論に向けて / Conclusion: Toward a Communication Theory of Power

本書の概要:

短い解説:

本書は、グローバルなネットワーク社会において、コミュニケーションがどのように権力の行使と抵抗の核心となっているかを分析する。情報技術の革命が社会構造、政治、文化に及ぼす変容を理解したい読者に向けて書かれた。

著者について:

著者マニュエル・カステルは、南カリフォルニア大学教授であり、ケンブリッジ大学社会学部研究部長も務める、ネットワーク社会理論の第一人者である。『情報時代』三部作をはじめとする著作は多数の言語に翻訳され、ホルベア賞などを受賞している。長年にわたる社会構造と情報技術の関係に関する研究に基づき、現代社会の権力構造を通信技術の観点から解き明かす。

テーマ解説

  • 主要テーマ:ネットワーク社会における権力の変容 [コミュニケーション・ネットワークを支配することが、社会における権力の核心となった過程を分析する]
  • 新規性:マス・セルフ・コミュニケーション [従来のマスコミに代わり、個人が発信しネットワークを形成する新しい通信形態が政治と社会を変えつつある]
  • 興味深い知見:精神のフレーミング [権力は物理的強制ではなく、人々の認知と感情に働きかけ、現実認識の「枠組み」を形成することで行使される]

キーワード解説

  • ネットワーク社会:情報技術と通信ネットワークが社会組織の主要な形態となった社会構造
  • コミュニケーション権力:コミュニケーション・ネットワークをプログラミングし、公共的意識を形成する能力
  • マス・セルフ・コミュニケーション:インターネットや携帯電話を通じて、個人が大規模な聴衆に向けて情報を発信する新しい通信形態

3分要約

本書『コミュニケーション権力』は、情報技術と通信の革命がもたらした新しい社会構造、すなわち「ネットワーク社会」において、権力がどのように行使され、争奪されるのかを分析する。カステルは、権力の最も基本的な形態は、人々の心に影響を及ぼす能力、すなわちコミュニケーションを通じて現実認識の「枠組み」を形成する能力であると論じる。そして今日、この権力の行使は、デジタル技術を基盤としたグローバルなコミュニケーション・ネットワークにおいて核心的に行われる。

ネットワーク社会では、国家や大企業といった伝統的な主体は、依然として強力である。しかし、彼らの権力はもはや官僚制的な階層から生じるのではなく、むしろ、複雑なグローバル・ネットワーク(金融ネットワーク、生産ネットワーク、メディアネットワークなど)を管理し、プログラムする能力に依存している。カステルはこれを「ネットワーク国家」や「グローバルマルチメディア・ビジネスネットワーク」として描き出す。これらの主体は、メディア政治やスキャンダル政治といった手法を用いてコミュニケーション空間をプログラムし、世論を形成し、政治的正当性を維持しようとする。

しかし、この権力構造は絶対的なものではない。ネットワーク社会の特質は、その開放性と柔軟性にある。権力(power)が存在する場所には、常に対抗権力(counterpower)が生じる可能性がある。本書の後半でカステルが力点を置くのは、この対抗権力の側面である。環境運動や反グローバリゼーション運動、さらにはバラク・オバマの大統領選キャンペーンなどの事例を分析し、社会運動や市民社会が、同じくコミュニケーション・ネットワークを活用して、支配的な物語に挑戦し、公共空間を「再プログラミング」する方法を明らかにする。特に、インターネットと携帯電話に代表される「マス・セルフ・コミュニケーション」は、個人が広範な聴衆に直接アクセスし、自律的なネットワークを構築することを可能にした点で革命的である。

最終的に、現代の政治的闘争は、物理的空間よりも、コミュニケーション空間、すなわち人々の精神を形成する場で繰り広げられている。民主主義の危機は、既存の政治制度に対する公共の信頼の喪失に現れているが、同時に、新しい形の市民参加と insurgent politics(反体制政治)が、これらの同じネットワークから湧き上がっている。カステルは、コミュニケーション過程が社会的権力の構築の核心にあるという「権力のコミュニケーション理論」を提唱することで、現代社会を理解するための強力な枠組みを提供するのである。

各章の要約

序章:デジタル・ネットワークと自律の文化

本書の2013年版への序文として、著者は当初の分析をアップデートする。2009年の初版以降、ソーシャルメディアとモバイルインターネットの爆発的普及は、コミュニケーション権力のダイナミクスをさらに加速させた。アラブの春や占拠運動(Occupy)などの社会運動は、ネットワーク化されたコミュニケーションが自律的な集合行為を可能にすることを実証した。著者は、技術それ自体が社会変革をもたらすのではなく、人々が技術を利用して自律性と尊厳を追求するプロセスにおいて、変革が起こると論じる。この自律の文化と、制度化的な権力との間の緊張関係が、現代の核心的な矛盾なのである。

第1章 ネットワーク社会における権力

この章は、ネットワーク社会における権力の理論的基礎を提供する。カステルは、権力を「社会的行為者が他の行為者の行動を決定する能力」として定義し、その最高の形態は「精神的フレームを構築する能力」であると主張する。国家はグローバル化の時代においても重要な主体であり続けるが、その形態は変化している。主権国家は、国家間の同盟、国際機関、超国家的組織からなる「ネットワーク国家」へと移行している。権力は、これらの重層的なネットワークの中で行使され、ネットワークをプログラムし、接続し、切り離す能力が権力の源泉となる。そして、あらゆる権力関係には、それに対する抵抗としての対抗権力が内在している。

第2章 デジタル時代のコミュニケーション

この章では、コミュニケーションの技術的・組織的変容が詳細に分析される。デジタル化と技術の収斂により、従来のマスコミュニケーションに加えて、「マス・セルフ・コミュニケーション」という新しい様式が登場した。これは、インターネット、ソーシャルメディア、モバイル通信などを通じて、個人が地球規模の聴衆に向けてメッセージを発信できる能力を指す。この変容は、グローバルに統合されたマルチメディア企業によって組織されているが、その内容の消費と創造において、オーディエンスの創造性と自律性を高めるという逆説を生んでいる。コミュニケーション空間は、企業戦略と規制政策、そして文化的実践が交差する、争奪の場なのである。

第3章 精神と権力のネットワーク

権力が精神の領域で行使されるという命題を深める。カステルは、感情と認知が不可分に結びつき、政治的判断の基盤を形成することを強調する。政治的キャンペーンやプロパガンダは、事実情報ではなく、感情に訴えかけ、特定の認知的「フレーム」を活性化させることで効果を発揮する。このフレームは、人々が現実を理解し解釈するための心理的構造物である。著者は、イラク戦争への傾斜といった政治的過程を例に、権力がどのようにして情報操作や神秘化を通じて、人々の心の中に有利な現実のフレームを構築するかを示す。したがって、権力の闘争は、コミュニケーションを通じた「フレーム」の闘争なのである。

第4章 コミュニケーション・ネットワークのプログラミング:メディア政治、スキャンダル政治、民主主義の危機

この章では、制度的権力がコミュニケーション・ネットワークを「プログラミング」し、自らの支配を維持する方法を検証する。政治家とマスメディアの複合体は、イメージ操作、世論調査の管理、そして特に「スキャンダル政治」を通じて、政治的議題を形成する。スキャンダルは、対抗する政治家や批判的な声を信用失墜させる効果的な武器となる。国家もまた、プロパガンダや情報管理によってこの過程に関与する。しかし、このような操作された政治スペクタクルは、市民の間に幻滅と不信感を生み出し、政治的代表制システムそのものの正当性を蝕んでいる。これが現代の民主主義の危機の核心的な要因なのである。

第5章 コミュニケーション・ネットワークの再プログラミング:社会運動、反体制政治、新しい公共空間

権力に対する抵抗と変革の可能性に焦点を移す。カステルは、環境運動、反企業グローバリゼーション運動、そしてオバマの2008年大統領選挙キャンペーンなどの事例を分析する。これらの運動は、既存のメディアネットワークを迂回し、インターネットやモバイル通信といった横断的で柔軟なネットワークを利用して、自分たち自身の物語を広め、支持を動員した。彼らはコミュニケーション・ネットワークを「再プログラミング」し、新しい公共空間を創出したのである。特にオバマ陣営の「Yes, We Can!」というキャンペーンは、草根のエネルギーとボトムアップの参加を、デジタル・ネットワーク戦略で見事に結びつけた例であった。このように、ネットワーク社会における闘争は、ネットワークをプログラミングする権力と、それを再プログラミングする対抗権力との間の継続的な相互作用なのである。

結論:権力のコミュニケーション理論に向けて

本書の議論を集約し、権力のコミュニケーション理論の骨子を提示する。ネットワーク社会において、権力は依然として国家や資本といった制度に埋め込まれているが、それはコミュニケーション・ネットワークを通じて行使され、正当化される。したがって、権力の関係を理解するためには、コミュニケーション過程を理解することが不可欠である。この理論は、権力がネットワークをプログラムする能力であり、対抗権力が同じネットワークを再プログラミングする能力であると定義する。現代社会の変革の可能性は、コミュニケーション技術それ自体にあるのではなく、人々が自律性、連帯、尊厳の価値観に基づいて、これらのネットワークを再プログラミングする集合的プロセスの中にあるのである。

 


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