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英語タイトル:『The Culture Transplant: How Migrants Make the Economies They Move to a Lot Like the Ones They Left』Garett Jones, 2023
日本語タイトル:『文化移植:移民はいかにして移住先の経済を出身地と似たものにするか』ギャレット・ジョーンズ、2023年
目次
- 序文:最善の移民政策 / Preface: The Best Immigration Policy
- 序論:経済学者が文化の力を学んだ経緯 / Introduction: How Economists Learned the Power of Culture
- 第1章 同化の神話 / The Assimilation Myth
- 第2章 繁栄は移動する / Prosperity Migrates
- 第3章 場所か人々か? / Places or Peoples?
- 第4章 良き統治の移動 / The Migration of Good Government
- 第5章 我々の多様性は我々の_____ / Our Diversity Is Our _____
- 第6章 I-7(イノベーション7か国) / The I-7
- 第7章 華僑:資本主義への道の構築 / The Chinese Diaspora: Building the Capitalist Road
- 第8章 アメリカ50州に根ざす深いルーツ / The Deep Roots across the Fifty United States
- Je ne sais quoi(何とも言えないもの)
- 結論:ガチョウと黄金の卵 / Conclusion: The Goose and the Golden Eggs
本書の概要
短い解説
本書は、移民が移住先の経済・政治制度・文化を、出身国と類似したものに変容させるという「文化移植理論」を、経済学と歴史学の実証データを用いて論証する。対象読者は移民政策、経済発展、文化の持続性に関心を持つ一般読者および研究者である。
著者について
著者ギャレット・ジョーンズはジョージ・メイソン大学の経済学教授で、集団知能と経済発展の関係を研究してきた。本書では1990年代以降の経済学における「Deep Roots(深いルーツ)」研究の蓄積を総合し、移民が持ち込む文化的特性が世代を超えて持続し、受け入れ国の経済パフォーマンスと制度の質を形成するという視点を提示する。
主要キーワードと解説
- 主要テーマ:文化移植理論 – 移民は出身国の文化的特性を移住先に持ち込み、それが数世代にわたって持続し、受け入れ国の経済・政治制度を変容させるという理論。
- 新規性:移住調整済み指標の優位性 – 国の歴史的指標(国家史、農業史、技術史)を移民の出身国に基づいて調整すると、現代の経済パフォーマンスの予測力が大幅に向上する発見。
- 興味深い知見:同化は不完全 – 移民の子孫は4世代を経ても出身国の文化的態度(信頼、倹約、政府観)の約40%を保持し続け、完全な同化は神話であることを示す。
- SAT スコア – 国家史(State History)、農業史(Agricultural History)、技術史(Technological History)を統合した指標で、国の繁栄を予測する強力なツール。
- I-7(イノベーション7か国) – 世界の技術革新の大部分を生み出す7か国(米国、日本、ドイツ、フランス、英国、韓国、中国)の制度の質が全人類の福祉に影響を与える。
3分要約
本書の中心的主張は、移民が持ち込む文化的特性が世代を超えて持続し、移住先の経済・政治制度を出身国と類似したものに変容させるというものである。この「文化移植理論」は、1990年代以降の経済学における膨大な実証研究によって裏付けられている。
著者は、1997年のサラ・イ・マルティンによる400万回の統計回帰分析から始まる。この研究は、国の繁栄を予測する要因として、物的資本や貿易開放性といった伝統的経済要因に加え、儒教文化圏の人口比率という文化的要因が上位に位置することを示した。この発見は経済学者に文化研究の重要性を認識させた。
文化の持続性は移民研究で明確に示される。アルガンとカウクによる研究では、移民2世以降のアメリカ人の信頼度は、祖先の出身国の信頼度と強い相関を示し、その相関は4世代後も46%維持される。同様に、倹約態度、家族観、政府の役割に対する見解も世代を超えて持続する。イタリア系アメリカ人はイタリア人と、スウェーデン系アメリカ人はスウェーデン人と類似した態度を保持し続ける。完全な同化は神話である。
この文化の持続性は「移住調整済み指標」の予測力に表れる。パターマンとウェイルは、1500年以降の移民の流れを考慮して各国の歴史的指標を調整した。その結果、移住調整済みの国家史(S)、農業史(A)、技術史(T)は、調整前の指標よりも現代の国民所得を2倍正確に予測することが判明した。つまり、ある土地の歴史ではなく、そこに住む人々の祖先の歴史こそが、現代の繁栄を説明する。
技術史(T)は特に強力な予測因子である。コミン、イースタリー、ゴングによる1500年の技術水準指標は、現代の国民所得の差異の75%を説明する。移住調整を行うと、この予測力はさらに高まる。アメリカ、カナダ、オーストラリアといった「新ヨーロッパ」諸国の繁栄は、1500年時点のその土地の技術水準(ほぼゼロ)ではなく、移民の出身地であるヨーロッパの高い技術水準によって予測される。
文化移植は政府の質にも影響する。アンの研究は、移住調整済みSATスコアが、腐敗の管理、法の支配、政府の有効性、規制の質といった世界銀行の統治指標を強く予測することを示す。特に技術史(T)は現代の制度の質の59%を説明する。良き統治は場所ではなく人々とともに移動する。
多様性の影響は複雑である。職場研究では、民族的多様性は生産性を低下させることが多い。ヨートのケニアの花卉工場研究では、異なる民族グループの労働者が同じチームになると生産性が5-9%低下した。企業経営研究の総説は「多様性は諸刃の剣」と結論づける。技能の多様性は有益だが、民族的・文化的多様性は社会的摩擦を生み出す。パトナムの研究では、民族的に多様な地域では信頼度が低下する。
世界のイノベーションは少数の国に集中する。著者が「I-7」と呼ぶ7か国(米国、日本、ドイツ、フランス、英国、韓国、中国)が、世界の特許、研究開発支出、科学論文の大部分を生み出す。テバルディとエルムズリーの研究は、制度の質がイノベーションの強力な予測因子であることを示す。良き統治から高いイノベーションへ、そして世界的な技術拡散へという経路が存在する。全人類の福祉はI-7諸国の制度の質に依存する。
華僑は文化移植の顕著な事例である。東南アジアでは、中国系人口の比率が高い国ほど豊かである。マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンの所得順位は、中国系人口比率の順位と完全に一致する。プリーベとルドルフの研究では、中国系人口が10%増加すると、年間成長率が0.7%上昇する。中国系移民は市場支配的少数派として、受け入れ国の民間部門を形成し、親市場的な政府政策を間接的に促進する。
アメリカの郡レベルのデータも文化移植理論を支持する。フルフォードらの研究では、郡の住民の祖先の出身国の現代所得が、その郡の現代所得を予測する。祖先の国家史も重要な予測因子である。ジャヴァッツィの研究では、4世代後のアメリカ人でも、祖先の出身国との文化的態度の差の60%未満しか埋まらない。政府の役割についての態度では、4世代後でも38%しか収束しない。
著者は、文化がなぜ持続するかという「なぜ」は、アスピリンの作用機序が200年間不明だったように、まだ解明されていないと認める。しかし「何が起こるか」は明確である。大規模な低SAT国からの移民は、受け入れ国の統治の質、信頼、イノベーションを低下させる可能性が高い。特にI-7諸国への影響は全人類に波及する。
著者の処方箋は明確である。貧困国は中国からの移民を積極的に受け入れるべきである。中国系移民は歴史的に市場創造的少数派として機能し、受け入れ国全体の繁栄を促進してきた。民族的対立のリスクはあるが、経済発展による平均寿命の延伸や乳児死亡率の低下という便益は、そのリスクを上回る。
本書は、移民政策が単なる短期的な人道的問題ではなく、受け入れ国の長期的な経済的・制度的運命を形成する重要な選択であることを示す。文化は移植され、持続し、そして国家の未来を作り出す。過去は序章である―ただし、移住調整を行った場合に限る。
各章の要約
序文:最善の移民政策
Preface: The Best Immigration Policy
著者は思考実験を提示する。エジプト、パラグアイ、インドネシアという経済的に中程度の3か国に、毎年人口の2%に相当する中国人を12年間受け入れさせたらどうなるか。中国系移民は歴史的に教育重視、起業家精神、高い貯蓄率を示してきた。シンガポールや台湾といった中国系多数派の国は、優れた統治、低い腐敗、高い所得を実現している。十分な時間をかけて中国系移民が文化を伝え、2世3世が政治や経済の中枢に入れば、これら3か国の文化、政府、産業は変容し、繁栄に近づくだろう。移民は、良くも悪くも、文化移植を生み出し、国家の将来の繁栄を形成する。
序論:経済学者が文化の力を学んだ経緯
Introduction: How Economists Learned the Power of Culture
1990年代、デスクトップコンピュータの普及により、経済学者は国家間の繁栄の差を大規模に分析できるようになった。サラ・イ・マルティンは1997年、62の要因を用いて400万回の統計回帰を実行し、国家の繁栄を予測する要因を探った。結果、上位3つは(1)設備投資率、(2)貿易開放期間、(3)儒教文化圏人口比率だった。62要因のうち18が統計的に頑健で、そのうち5つは文化的要因(儒教、イスラム教、仏教、プロテスタント、カトリック)だった。この発見は経済学者に文化研究の重要性を認識させた。それまで経済学者は通常の経済要因に80%、政治システムに15%の努力を費やし、文化にはほとんど注意を払っていなかった。文化、地理、過去の政治が予測因子の半分を占めたが、当時の研究努力配分とは不釣り合いだった。
第1章 同化の神話
Chapter 1: The Assimilation Myth
アルゼンチンは1913年、フランスより15%、ドイツより10%低い所得水準で裕福だった。しかし2016年にはフランスの半分、ドイツの4割の所得となった。標準的な説明は「制度が悪化した」というものだが、なぜ悪化したのか。歴史研究は、1880-1914年の大量移民(人口の30%が外国生まれ)がスペインとイタリアからアナーキズムと労働組合運動を持ち込んだことを指摘する。これらの思想は寡頭制を弱体化させ、ポピュリズムと国営産業への道を開いた。
移民の文化的態度は持続する。アルガンとカウクは、アメリカの2世以降の移民の信頼度が、祖先の出身国の信頼度と相関することを発見した。相関は46%で、4世代後も同じ水準を維持する。カナダでは25%、オーストラリアでは17-71%の相関が見られた。ユンゲの29か国研究では、母親の出身国の信頼度が100%伝達される一方、父親は33%のみだった。
倹約態度も持続する。ジュリアーノらは英国の移民研究で、親の出身国の貯蓄率が高いと、2世3世も多く貯蓄することを発見した。ドイツの研究も同様の結果を示した。家族価値観の研究では、家族の絆が強い国出身の2世は賃金が5%低く、失業率が高く、転職が少なかった。また、家族価値観が強い出身国の2世は、雇用保障や政府の賃金規制を支持する傾向が強かった。文化的態度は、良くも悪くも、世代を超えて大幅に持続する。完全な同化は神話である。
第2章 繁栄は移動する
Chapter 2: Prosperity Migrates
パターマンとウェイルは、1500年以降の移民の流れを追跡し、各国の歴史的指標を「移住調整」した。彼らは国家史(0 AD-1500年の組織的国家の下での生活年数)と農業史(定住農業の歴史年数)を測定した。例えば、エチオピアの国家史スコアは1.0(最高)、中国は0.906、エジプトは0.76、メキシコは0.533、米国とカナダは0だった。農業史では、イスラエル、ヨルダン、レバノン、シリアが最高の10,500年、中国が9,000年、インドが8,500年だった。
移住調整により、カナダの国家史は0から0.82に、シンガポールは0から0.79に上昇した。統計的競争の結果、移住調整済み指標は未調整指標の2倍の予測力を持つことが判明した。移住調整済み国家史スコアが0と1の国の所得差は7.5倍と予測される。農業史1,000年ごとに31%の所得増加が予測される(未調整では14%)。これらの指標は国家間所得差の約半分を説明する。
地理的要因(緯度、内陸国、農業適性)を考慮しても、移住調整済み国家史は依然として強力な予測因子である。国家史スコアが0と1の国では、地理が同じでも150%の所得差が予測される。この結果は2つの解釈が可能だ。(1)地理が繁栄を生み出し、高国家史文化がその地理を獲得した。(2)国家史が生産性を高め、それが良い地理を獲得する力を与えた。場所ではなく人々が重要であることは明白だが、因果関係の方向はまだ完全には解明されていない。
第3章 場所か人々か?
Chapter 3: Places or Peoples?
コミン、イースタリー、ゴングは、1000 BC、0 AD、1500 ADの技術水準指標を作成した。5つの分野(農業、輸送、軍事、工業、通信)を各時代で評価した。1500年の平均技術スコアは、ヨーロッパ0.86、アジア0.66、アフリカ0.32、アメリカ0.14だった。技術スコアは都市化率と強く相関する(1000 BCと0 ADでは3分の2以上の差異を説明)。
移住調整を行うと、1500年の技術史は現代所得の差異の半分以上を説明する。移住調整済み指標は未調整指標よりも常に2倍以上強力だった。著者らは「場所の歴史より人々の歴史が重要」というパターマンとウェイルの洞察を強く確認した。
ニューヨークタイムズは「今日の貧困は紀元前1000年に決定されたのか?」と報じた。実際、1500年の移住調整済み技術が、現代の富の「極めて信頼できる予測因子」であることが示された。サハラ以南アフリカと西ヨーロッパの現代所得差(13.3倍)のうち78%は、1500年の技術差に関連している。ケリーは統計的近接性により偽陽性が生じる可能性を指摘したが、移住調整済み指標の優位性はその批判を乗り越える。なぜなら移住調整理論は、物理的近接性ではなく祖先の出身国との関係を予測するからである。
第4章 良き統治の移動
Chapter 4: The Migration of Good Government
パターマンとウェイルは、国家史が政府の質を予測するか検証した。彼らは執行権の制約、収用リスク、政府の有効性という3つの指標を用いた。移住調整により、国家史と収用リスクの関連は2倍、政府の有効性は3倍、執行権の制約は4倍に強化された。移住調整が重要であることが再び示された。
アンはより包括的な検証を行った。世界銀行の統治指標6要素(規制の質、法の支配、腐敗の管理、発言と説明責任、政治的安定、政府の有効性)を用いた。7つの深いルーツ指標(国家史、農業史、技術史、米国からの遺伝的距離、1500年の人口密度、地域経済リーダーからの距離、これらの主成分SAT+)を比較した結果、技術史が最も強力で、現代の統治の質の差異の59%を説明した。SAT+は53%だった。国家史と農業史は3分の1未満しか説明できなかった。
技術史とSAT+は、新ヨーロッパ諸国(米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)やサハラ以南アフリカを除外しても頑健だった。地理、宗教、教育水準を考慮しても、技術史の予測力は40%低下するだけで依然として強力だった。アンは、深いルーツ指標が所得に与える影響は、すべて政府の質を通じて媒介されると結論づけた。エンジンの力は、統治という変速機を通じてのみ車輪に伝わる。
アセモグル、ジョンソン、ロビンソンの「運命の逆転」理論(1500年前に豊かだった地域が現在は貧しく、その逆も真)は、移住調整を行うと消失する。チャンダ、クック、パターマンは、「運命の持続」を示した。人口密度の低い地域には高SATスコアの移民が大量に流入し、人口密度の高い地域では既存住民が残った。新世界の繁栄と貧困のパターンは、場所ではなく人々の歴史によって説明される。
第5章 我々の多様性は我々の_____
Chapter 5: Our Diversity Is Our _____
ヨートはケニアの花卉工場で、同じ民族グループの労働者チームと、異なる民族グループ(キクユとルオ)の混合チームの生産性を比較した。平時、混合チームは同質チームより5%生産性が低く、2007-2008年の選挙暴力時には9%低下した。労働者は出来高払いだったため、民族的対立は自分の賃金を犠牲にしてでも他民族の賃金を下げようとする意思を示した。これは、民族的多様性自体が生産性を低下させる完璧な実験的証拠である。
ウィリアムズとオライリーの1998年の総説は、40年間の職場多様性研究を検討し、「経験的証拠の大部分は、多様性が集団機能を阻害する可能性が高いことを示唆している」と結論づけた。2000年代の複数の総説も「多様性が業績を向上させるという主張を支持する証拠は限定的」と述べた。2010年代の研究は「多様性は諸刃の剣」という表現を頻繁に使用した。技能の多様性(ファイアフライ多様性)は有益だが、民族的多様性は小さな負の効果またはゼロ効果しかない。
パトナムの2007年の研究は、民族的に多様な地域では隣人への信頼が低下することを発見した。2020年のメタ分析(87研究、1,001の統計推定値)は、「民族的多様性と社会的信頼の間に負の関係が存在し、それは隣人への信頼と地域レベルで特に強い」と報告した。デスメットらは、民族的多様性と文化的多様性が結合すると暴力的紛争のリスクが高まり、公共財供給が減少することを発見した。民族的多様性は、文化的対立を増幅する乗数効果を持つ。エステバンとレイが指摘するように、「今日観察される紛争の多く(全てではないにせよ)は民族的性質を持つ」。
第6章 I-7(イノベーション7か国)
Chapter 6: The I-7
世界の技術革新は少数の国に集中している。2010年の三極特許(欧州、日本、米国の特許庁すべてに登録された特許)では、日本31%、米国28%、ドイツ12%、フランス5%、韓国4%が上位を占めた。研究開発支出では、米国3,700億ドル、日本1,400億ドル、中国1,100億ドル、ドイツ700億ドル、韓国400億ドルが上位5か国だった。科学論文では、米国、中国、ドイツ、英国、日本が上位だった。これら7か国(I-7)が世界のイノベーションの大部分を生み出す。
テバルディとエルムズリーは、世界銀行の制度の質指標が特許数を強く予測することを発見した。制度の質の5段階尺度で1段階改善すると、特許数は5倍以上増加する。ワンは固定効果パネル回帰を用いて、同じ国の経年変化を分析し、制度の質の改善がR&D支出と特許を増加させることを確認した。良き統治は高いイノベーションの原因である。
イートンとコルトゥムは、外国の研究は国内研究の3分の2の効力を持ち、米国と日本だけでサンプル国の成長の3分の2以上を牽引すると推定した。マンスフィールドとロメオの調査では、米国の多国籍企業が新技術を外国支店に移転するのに平均6年かかった。技術の拡散は遅いが確実である。ホールの総説は、R&Dの便益の約4分の1が貿易相手国に波及すると結論づけた。I-7諸国のイノベーションは全世界に利益をもたらす。したがって、全人類はI-7諸国の制度の質に利害関係を持つ。
第7章 華僑:資本主義への道の構築
Chapter 7: The Chinese Diaspora: Building the Capitalist Road
中国は長い繁栄の歴史を持つが、清朝末期から毛沢東時代まで約1世紀の苦難を経験した。毛沢東は「資本主義の道を歩む者」を迫害したが、彼の死後、「第二の資本主義の道を歩む者」鄧小平が市場改革を主導した。中国系多数派の国々(台湾、シンガポール、マカオ、香港)はすべて強力な市場志向と繁栄を示し、いずれも世界の上位10%の所得を持つ。地理的利点(海へのアクセス)はあるが、赤道に近いという不利もある。文化移植理論がこれらの成功を説明する。
東南アジア全体で、中国系人口比率が高い国ほど豊かである。マレーシア(30%中国系、2019年所得11,415ドル)、タイ(11%、7,817ドル)、インドネシア(3%、4,136ドル)、フィリピン(1%、3,485ドル)という完璧な順位関係が存在する。ボルトによれば、1995年時点で中国系は東南アジアの小売業の3分の2を支配していた。リン・パンは、中国系移民の「極端な倹約」と「遅延満足の重視」を指摘する。
プリーベとルドルフは、147か国のデータ(1970-2010年)を分析し、中国系人口が10%増加すると年間成長率が0.7%上昇することを発見した。中国、台湾、香港、マカオを除外しても結果は頑健だった。中国系移民は貿易参加、設備投資、生産性を向上させる。マレーシアの相対的な市場志向性は、中国系市場支配的少数派の存在により、政府が市場改革から得られ
る税収増加を期待できるため、市場改革のインセンティブを持つという理論で説明できるかもしれない。
他の東南アジア諸国も同様のパターンを示す。ベトナム(約10%中国系)は共産主義から急速に回復中で、フィリピンより貧しいが成長は遥かに速い。ミャンマー(3%中国系)は2011年まで軍事独裁だった。ラオス(2%中国系)とカンボジア(0.1-3%中国系、クメール・ルージュが資本家である中国系を標的に虐殺)は依然として貧困である。ブルネイは石油収入により例外的に豊かである。
東南アジアの華僑は文化移植理論の極端な例である。多くの国で中国系は数世紀にわたり言語と文化的伝統を保持してきた(タイは例外的に同化が進んでいる)。完全な同化は神話である。しかし、民族的多様性のコストも明白だ。マレーシアの1969年5月13日事件やインドネシアの1990年代の反中暴動は、致命的な民族衝突の例である。著者は、これらのコストを認めつつも、インドネシアの3億人が今後50年で2倍豊かになれば、平均寿命が延び、乳児死亡率が劇的に改善されるため、10年ごとに2,000人が死亡する暴動のリスクを上回ると判断する。著者の処方箋は明確だ。華僑をさらに拡大せよ。
第8章 アメリカ50州に根ざす深いルーツ
Chapter 8: The Deep Roots across the Fifty United States
フルフォード、ペトコフ、シアンタレリは、アメリカの約1,000郡の祖先構成と所得を分析した。祖先の出身国の現代所得が、郡の現代所得を予測することを発見した。出身国の所得水準の56%が郡の生産性に伝達されると推定される。祖先の影響は、人種、教育水準、人口密度、地理を考慮しても残る。各郡を独自の地理として扱う「郡固定効果」を用いても、結果は頑健だった。
フルフォードは文化的態度、国家史、執行権の制約という3つの深いルーツ指標を比較し、国家史が最も強力な予測因子であることを発見した。また、祖先の多様性が高い郡は所得が高いが、文化的価値観の多様性が高い郡は所得が低いことを示した。技能の多様性は有益だが、文化的価値観の多様性は社会的摩擦を生み出す。
ジャヴァッツィ、ペトコフ、シアンタレリは、7つの主要移民グループ(英国、ドイツ、アイルランド、イタリア、ポーランド、スカンジナビア、メキシコ)の2世と4世の文化的態度を分析した。8つの態度領域(協力、政府の役割、宗教性、家族、ジェンダー役割、中絶、性的行動、移動性)を調査した。2世では6つの領域で収束が50%未満だった。協力は33%、政府の役割は43%の収束だった。4世でも、協力の収束が最高で81%、政府の役割は38%しか収束せず、2世より低下した。全体として、4世でも態度の差の60%未満しか埋まらない。
ノウラステーとマーフィー(ケイトー研究所)は、50州の国家史(S)と農業史(A)を用いて、批判的検証を試みた。技術史(T)は含めなかった。単純な競争では、SとAは州所得の予測因子として「B-」の成績だったが、非ヒスパニック系白人比率を加えると、高いSとAスコアが確実に高所得を予測した。また、高いSとAは政治腐敗の低下、社会関係資本の増加、所得平等の向上を予測した。深いルーツ理論の批判者さえも、祖先の経験が現代の成果を予測することを確認した。
Je ne sais quoi(何とも言えないもの)
Je ne sais quoi
エドワード・ストーン牧師は1763年、柳の樹皮がマラリア様の熱を治すことを偶然発見した。彼は50人に5年間実験し、英国王立協会に報告した。これがアスピリンの歴史の始まりである。しかし、アスピリンの作用機序が解明されたのは1971年のジョン・ベインによる発見まで200年かかった。ベインはノーベル賞を受賞した。実験は治療が「効く」ことを示せるが、「なぜ効くか」は示せない。
文化移植も同様である。我々は文化が持続し、移住を生き延びることを知っている。しかし、なぜ持続するかは分かっていない。遺伝的か?学習可能か?あるいは、スウェーデンの1967年H Day(全員が同時に道路の左側通行から右側通行に切り替えた日)のような社会的焦点の切り替えか?それとも、これらのチャネルの複合か?すべて推測に過ぎない。経済学者は、XがYを引き起こすことを示すことと、なぜXがYを引き起こすかを示すことの区別に慣れている。デイヴィッド・ヒュームは1700年代、貨幣供給の増加が経済成長を促進することを示したが、その理由については200年以上議論が続いている(ロバート・ルーカスとエドマンド・フェルプスはそれぞれ異なる説明でノーベル賞を受賞)。
「何が起こるか」を知ることは重要である。良い経済政策、良い移民政策は、「何が起こるか」の基盤の上に構築できる。我々は今でもアセトアミノフェン(タイレノール)がなぜ頭痛や熱を和らげるかを知らないが、それでも医師は極めて安全な薬として日常的に処方する。移民が移住先の経済を出身地と似たものにする過程は何か?フランス語で言えば、「je ne sais quoi(何とも言えないもの)」である。
結論:ガチョウと黄金の卵
Conclusion: The Goose and the Golden Eggs
イソップ寓話「ガチョウと黄金の卵」は、富が神秘的な過程で生み出されることを教える。愚かな農夫はガチョウを殺して一度にすべての黄金の卵を得ようとしたが、卵は見つからず、ガチョウは死んだ。国家の富も同様に神秘的な過程で生み出される。5億人以上が1日2ドル未満で暮らし、20億人が基本的なトイレを持たず、50か国以上で平均寿命が70歳未満である現実を前に、最貧国から最富裕国への大規模移民を推進する誘惑は強い。短期的(数十年)には、I-7諸国への年間1,000万人の移民は、移民個人の生活を確実に改善する。
しかし長期的には、過去100年または500年のパターンが続くなら、最貧国からI-7諸国への大規模移民は次の結果をもたらすだろう。政府の質の低下と腐敗の増加、社会的対立の増加と内戦リスクの上昇、見知らぬ人への信頼と信頼性の低下、最低賃金引き上げと解雇制限法への支持の増加、イノベーションの減少と世界的な成長の鈍化。移民の子孫は祖先が移住しなかった場合より確実に豊かだが、1世紀以内に、I-7の低下した統治の質、低下した信頼、増加した社会的対立が、既存住民とその子孫の生産性と所得を傷つけるだろう。そして決定的に、I-7の革新性低下により、全世界の人類が損失を被る。
SATスコア(特に技術史T)の低下、民族的・文化的多様性の増加(しばしば既存住民からの人種差別的反発を招く)、信頼・倹約・家族の絆に関する文化的態度の輸入が合わさり、世界的なイノベーションと繁栄の黄金の卵を産むガチョウを傷つける可能性が高い。この予測は想像上のシナリオだが、すべての政策思考は想像行為である。なぜこの想像を信じるべきか?なぜなら、文化が持続し、移住過程を生き延びるという中心的主張は、1500年以降の世界的な移民パターンという準実験的証拠に裏付けられているからである。
文化移植理論は、焦点を絞った親移民政策の一部となりうる。もし国が今後1世紀にわたる繁栄と平和を望むなら、技術史スコアを上げ、有能な統治・市場・個人主義に友好的な文化的態度を輸入し、文化的・民族的多様性のリスクに(圧倒的ではないが)一定の注意を払う移民政策を選択することが賢明である。オバマ前大統領が述べたように、「アメリカは、大規模で多民族的・多文化的な民主主義を構築する最初の真の実験である。そして、それが維持できるかはまだ分からない。」しかし、確実性はないが、既存の証拠に基づくことはできる。
すべての国、特にI-7諸国は、ノーベル賞受賞者、偉大な作家、革新的な科学者を無条件に歓迎し、即座に市民権を与えるべきである。千人に一人の才能は稀有な宝であり、すべての国の指導者と市民に評価されるべきである。マーベル映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』の終わりに、イドリス・エルバ演じるヘイムダルは、故郷アスガルドの破壊後、ソーに慰めの言葉を告げる。「アスガルドは場所ではない。人々なのだ。」この言葉は文化移植の力を簡潔に捉えている。
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