書籍『お金を再考する:新しい通貨がいかにして不足を繁栄に変えるか』ベルナルド・リエター、ジャッキー・ダン 2013年

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日本語タイトル:『お金を再考する:新しい通貨がいかにして不足を繁栄に変えるか』ベルナルド・リエター、ジャッキー・ダン 2013年

英語タイトル:『Rethinking Money: How New Currencies Turn Scarcity into Prosperity』Bernard Lietaer and Jacqui Dunne 2013年

目次

  • 序論:一世代で希少性から豊かさへ / Introduction: From Scarcity to Prosperity within a Generation

第一部 希少性 / Scarcity

  • 第1章 お金の失敗:競争社会 / The Failure of Money: The Competitive Society
  • 第2章 お金の神話:それが本当は何であるか / The Myth of Money: What It Really Is
  • 第3章 債務より悪い運命:利子の隠された結果 / A Fate Worse Than Debt: Interest’s Hidden Consequences

第二部 豊かさ / Prosperity

  • 第4章 飛び魚:お金への新しい視点 / The Flying Fish: A New Perspective on Money
  • 第5章 未来は到来したが、まだ均等に分散されていない / The Future Has Arrived But Isn’t Distributed Evenly … Yet!
  • 第6章 銀行業の戦略 / Strategies for Banking
  • 第7章 ビジネスと起業家の戦略 / Strategies for Business and Entrepreneurs
  • 第8章 政府の戦略 / Strategies for Governments
  • 第9章 NGOの戦略 / Strategies for NGOs

第三部 お金を再考する / Rethinking Money

  • 第10章 真実と結果:学んだ教訓 / Truth and Consequences: Lessons Learned
  • 第11章 ガバナンスと我々市民:古代の未来? / Governance and We, the Citizens: An Ancient Future?
  • 第12章 我々の利用可能な未来:協力社会 / Our Available Future: The Cooperative Society
  • 第13章 お金を再考する:希少性から持続可能な豊かさへ / Rethinking Money: From Scarcity to Sustainable Abundance

全体の要約

本書は現在の貨幣制度の根本的な問題を分析し、協力的通貨システムによる解決策を提示している。著者らは、現代の金融危機の原因を単なる政策の失敗ではなく、300年前に設計された競争的な貨幣制度そのものに求めている。

第一部では、現在の貨幣制度が生み出す様々な問題を詳述している。銀行債務として創造される現在のお金は構造的に希少性を生み出し、人々を競争に駆り立てる。利子という仕組みは強制的な成長圧力、短期主義、社会資本の侵食、富の集中、景気循環の増幅といった隠れた負の影響をもたらしている。これらの問題は、お金の量ではなく、お金の種類に起因するものである。

第二部では、世界各地で実際に機能している協力的通貨の事例を豊富に紹介している。LETS(地域交換取引システム)、タイムダラー、地域通貨など、様々な形態の協力的通貨が、未使用の資源と満たされていないニーズを結びつけることで、コミュニティに繁栄をもたらしている。これらの通貨は競争ではなく協力を促進し、地域経済を活性化させ、社会の絆を強化している。

銀行業界では、スイスのWIRシステムやブラジルのコミュニティ銀行のような革新的な取り組みが紹介されている。ビジネス分野では、C3(商業信用サークル)のような企業間決済システムが中小企業の資金繰りを改善している。政府レベルでは、ブラジルのクリチバ市のゴミ回収プログラムのように、協力的通貨を使った公共政策が成功を収めている。

第三部では、過去の失敗から学んだ教訓と、理想的なガバナンス構造について論じている。1930年代のヴェルグルやドイツのヴァラ通貨の成功とその後の弾圧、アルゼンチンのクレディト通貨の興亡などから、透明性、民主的統制、適切な設計の重要性が浮き彫りになる。

著者らは最終的に、競争的通貨と協力的通貨が共存する「貨幣生態系」の構築を提案している。これにより、効率性と回復力のバランスが取れたより持続可能で公正な経済システムが実現できるとしている。現在の貨幣制度の独占を破ることで、希少性から持続可能な豊かさへの転換が可能になると結論づけている。

各章の要約

序論:一世代で希少性から豊かさへ

Introduction: From Scarcity to Prosperity within a Generation

現在の金融問題の根本原因は、お金の不足ではなく使用されているお金の種類にある。300年前に設計された現在の競争的貨幣制度は、構造的に希少性と競争を生み出している。しかし世界各地で4000以上の協力的通貨が機能しており、これらは未使用の資源と満たされていないニーズを結びつけることで、競争ではなく協力を促進している。本書は、一世代のうちに希少性から持続可能な豊かさへの転換が可能であることを、実例とともに示していく。

第1章 お金の失敗:競争社会

The Failure of Money: The Competitive Society

現在の貨幣制度は社会のあらゆる階層に深刻な影響を与えている。アメリカでは80%の人々が給料日から給料日まで生活しており、富裕層でさえも孤立、家族の不和、アイデンティティの危機に苦しんでいる。お金の問題は貧富を問わず等しく人々を苦しめている。州や市の財政破綻、公共資産の民営化が進む中、従来の解決策では根本的な問題は解決できない。真の問題はお金の種類そのものにあり、これを変えることで持続可能な解決策が見つかる。

第2章 お金の神話:それが本当は何であるか

The Myth of Money: What It Really Is

お金とは、共同体内で標準化されたものを交換媒体として使用するという合意である。現在の国家通貨はすべて法定通貨で、銀行債務として創造され、利子を伴う。これらは単なる人間の構築物であり、物理的なものではない。経済学者たちは長年にわたってお金そのものを検証することを避けてきた。18世紀に設計された現在の貨幣制度は、当時のニュートン物理学の影響を受けているが、現代の複雑系理論からすると根本的に欠陥がある。経済は自然生態系のような複雑適応システムであり、効率性と回復力のバランスが必要である。

第3章 債務より悪い運命:利子の隠された結果

A Fate Worse Than Debt: Interest’s Hidden Consequences

銀行の部分準備制度により、お金は借金として創造されるが利子分は創造されない。これにより構造的な希少性と競争が生まれる。利子制度は強制的成長圧力、短期主義、社会資本の侵食、富の集中、景気循環の増幅という5つの隠れた負の影響をもたらす。例えば、利子により長期投資が不利になり、環境破壊が促進される。ドイツの研究では、利子により下位80%から上位10%への富の移転が起きている。これらの問題は利子システムそのものに内在しており、従来の経済政策では解決できない。

第4章 飛び魚:お金への新しい視点

The Flying Fish: A New Perspective on Money

協力的通貨は未使用の資源と満たされていないニーズを結びつける。これらの通貨は通常、地域コミュニティやNGO、企業ネットワークによって管理され、国家通貨と並行して機能する。自然界の複雑なフローネットワークと同様、経済システムにも効率性と回復力のバランスが必要である。現在の単一通貨システムは効率的だが脆弱で、IMFデータによれば1970-2010年の間に425回もの金融危機が発生している。協力的通貨は高い流通速度を持ち、貯蓄機能を持たないため経済活動を活性化させる。デマレージ(保有税)により長期思考を促進し、富の集中を防ぐ。

第5章 未来は到来したが、まだ均等に分散されていない

The Future Has Arrived But Isn’t Distributed Evenly … Yet!

協力的通貨は1984年の2システムから現在の4000以上に急激に成長している。LETS(地域交換取引システム)は相互信用システムで、カナダのコモックス・バレーで失業問題解決のために始まった。タイムダラーは時間を基準とした通貨で、すべての人の時間を等しく評価する。ドイツのレギオ・ネットワークでは34のシステムが運営され、キームガウアーは年間600万ユーロの取引を行っている。マサチューセッツ州のバークシェアは地域企業を支援し、330万枚が発行されている。これらの通貨は協力的通貨特有の速い流通により、インフレを引き起こすことなく地域経済を活性化させている。

第6章 銀行業の戦略

Strategies for Banking

銀行への不満が高まる中、革新的な解決策が生まれている。アイルランドでは1966-1976年の銀行ストライキ時に、パブを中心とした自発的な相互信用システムが機能した。スイスのWIR銀行は1931年の大恐慌時に設立され、現在6万社が参加する企業間通貨システムを運営している。WIRは景気後退時に活用が増える逆循環的特性を持ち、スイスの経済安定に大きく貢献している。ブラジルでは78のコミュニティ銀行が地域通貨と並行して運営され、200万人以上の生活に影響を与えている。スウェーデンのJAK銀行は無利子の協同組合銀行として36,300人の会員にサービスを提供している。

第7章 ビジネスと起業家の戦略

Strategies for Business and Entrepreneurs

雇用の性質が変化する中、協力的通貨が新しい解決策を提供している。C3(商業信用サークル)は保険付き請求書を担保として流動的な決済手段を提供し、中小企業の資金繰り問題を解決する。エルサルバドルやウルグアイで実装され、企業間の取引を円滑化している。デンバーのマイル・ハイ・ビジネス・アライアンスは回転融資基金と地域ギフト券を組み合わせたシステムを開発した。グローバル規模では、Terra Trade Reference Currencyが提案されており、これは商品バスケットに基づく超国家的通貨で、国際貿易の安定化と長期的持続可能性の促進を目指している。

第8章 政府の戦略

Strategies for Governments

ブラジルのクリチバ市は協力的通貨を使った革新的な公共政策の先駆例である。ゴミと交通トークンや食料を交換するシステムにより、環境問題と貧困問題を同時に解決した。この手法により1975-1995年の間にGDPが州平均より75%、国平均より48%高い成長を達成した。シビック通貨の概念では、市民が公共活動に参加することで通貨を獲得し、税金の一部をその通貨で支払う。これにより政府債務を増やすことなくケインズ的な経済刺激策を実現できる。ベルギーのゲントではトレケス通貨を使い、同じ予算で3倍の活動を実現している。

第9章 NGOの戦略

Strategies for NGOs

ウェールズのブラエンガウ村は、タイムバンキングを通じて荒廃した元炭鉱村から活気ある共同体に変貌した。貧困指標で1800地域中128位から735位まで改善し、600位以上順位を上げた。アメリカではイサカ・アワーズが地域経済の活性化に貢献し、500以上の企業が参加している。日本のふれあい切符は高齢者ケアの問題に対応し、387システムが運営されている。緊急時には BONUS(緊急救援通貨)のような仕組みが、災害復旧の効率を高める「復興乗数効果」を生み出す。これらの事例は、NGOが協力的通貨を活用することで限られた資源を最大限に活用できることを示している。

第10章 真実と結果:学んだ教訓

Truth and Consequences: Lessons Learned

1930年代のオーストリアのヴェルグルとドイツのヴァラ通貨は大恐慌下で驚異的な成功を収めたが、中央銀行により禁止された。この弾圧により失業率が急上昇し、ナチ党の支持率上昇につながった可能性がある。アルゼンチンのクレディト通貨は2001年の金融危機時に700万人が利用したが、偽造と不透明な運営により崩壊した。オランダのロッテルダムのNU-カード実験は政治情勢の変化により中止された。これらの経験から、協力的通貨の成功には民主的ガバナンス、透明性、説明責任、適切な技術設計、そして政治的支援の持続性が不可欠であることが分かる。

第11章 ガバナンスと我々市民:古代の未来?

Governance and We, the Citizens: An Ancient Future?

バリ島の1000年以上続く協力的通貨システムは、民主的ガバナンスの重要性を示している。バンジャール、プマクサン、スバックという3つのネットワークが社会、宗教、農業を統括し、高度に参加型の民主制を実現している。現代では、ドイツのレギオ運動が8つの条件(Win-Win、公共善、専門的管理、透明性、民主的統制、持続可能な財政、通貨の循環保証、協力)を設定している。オランダのヘールト・ヨンカーが開発した「支出者署名通貨」は、通貨の履歴を追跡可能にし、評判システムと組み合わせることで協力と公正性を促進する革新的なシステムである。

第12章 我々の利用可能な未来:協力社会

Our Available Future: The Cooperative Society

5つのシナリオを通じて、協力的通貨が実現する未来社会を描いている。タイ北部では地域通貨により完全雇用と自給自足を達成し、ベクテル社では100年の再森林化プロジェクトが収益性を持つ。ケニアのビクトリア湖周辺では複数の通貨システムが地域経済を活性化させ、アイルランドでは通貨の来歴を追跡する評判システムが価値観に基づく取引を可能にする。ブラジルでは元犯罪者と実業家が協力的社会の中で友情を育む。これらのシナリオは、協力的通貨が競争ではなく協力を基盤とした社会を実現し、個人の尊厳と創造性を重視する新しい文明の可能性を示している。

第13章 お金を再考する:希少性から持続可能な豊かさへ

Rethinking Money: From Scarcity to Sustainable Abundance

現在の貨幣制度は2インチの網目の漁網のように、認識できる価値を制限している。技術進歩により雇用の性質が根本的に変化する中、仕事(work)と職(job)の区別が重要になる。3Dプリンティングなどの技術により生産が分散化され、地域化が進む。教育においても右脳思考の重要性が増している。新しい神話として「交換の神話」が生まれつつあり、女性の完全なパートナーシップ、プロセス重視、相互関係性が特徴となる。協力的通貨はこの新しい神話の実現を支援し、個人の才能と情熱を重視する多通貨環境での生計手段を可能にする。物質的成長には限界があるが、創造性と work の領域には無限の成長の余地がある。


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