書籍『移民の日本:エスノ・ナショナリズム社会における移動と帰属意識』2020年

移民問題

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日本語タイトル:『移民日本:エスノ・ナショナリスト社会における移動性と帰属』グラシア・リウ=ファーラー 2020

英語タイトル:『Immigrant Japan: Mobility and Belonging in an Ethno-nationalist Society』Gracia Liu-Farrer 2020

https://note.com/alzhacker/n/n9b09bb5a7620

目次

  • 序論 エスノ・ナショナリストな移民社会としての日本 / Introduction: Japan as an Ethno-nationalist Immigrant Society
  • 第1章 日本への移民 / Immigrating to Japan
  • 第2章 移住チャンネルと移民エスノスケープの形成 / Migration Channels and the Shaping of Immigrant Ethno-scapes
  • 第3章 日本で働く / Working in Japan
  • 第4章 日本での生活の網を織る / Weaving the Web of a Life in Japan
  • 第5章 去ること、戻ること / To Leave, to Return
  • 第6章 エスノ・ナショナリスト社会におけるホームと帰属 / Home and Belonging in an Ethno-nationalist Society
  • 第7章 移民の子どもたち:教育移動 / Children of Immigrants: Educational Mobilities
  • 第8章 日本で育つ:アイデンティティの旅 / Growing Up in Japan: Identity Journeys
  • 結論 移民日本の現実、課題、そして可能性 / Conclusion: Realities, Challenges, and Promises of Immigrant Japan

全体の要約:

本書は、移民が急増する現代日本の実態を、長期間にわたる詳細なフィールドワークに基づいて描き出した社会学的研究である。著者は約20年間、200名を超える移民とその子どもたちへのインタビューを通じて、日本が事実上「移民国家」となっている現実を明らかにしている。

日本は従来から「エスノ・ナショナリスト社会」として、単一民族・単一文化の国家アイデンティティを維持してきた。政府は公式に「移民政策は取らない」と宣言し続けているが、実際には1980年代以降、労働力不足と国際化の要請により、さまざまなチャンネルを通じて外国人を受け入れてきた。2018年時点で約260万人の外国人住民が日本に在住し、さらに約40万人が日本国籍を取得している。

移民の背景は多様で、経済的動機から日本文化への憧憬まで幅広い。中国、韓国、ベトナム、フィリピンなどアジア系が8割を占める一方、ブラジル系日系人や欧米系移民も存在する。彼らは「語学学校留学生」「研修生」「日系人」「国際結婚」「高度人材」などの制度を通じて入国し、第一次労働市場から第二次労働市場まで幅広く就労している。

日本への定住は偶然的かつ実用的なプロセスである。多くの移民は当初一時的滞在を想定していたが、仕事、恋愛、家族形成などを通じて徐々に生活基盤を日本に移す。しかし、永続的定住を前提とする従来の移民研究とは異なり、日本の移民たちは常に移動の可能性を念頭に置き、永住権を取得しても国籍取得には慎重である。

帰属意識は複雑で多層的である。日本を「ホーム」と感じる移民もいれば、母国への愛着を保持する者、あるいは特定の場所に縛られない世界市民的アイデンティティを持つ者もいる。親密な人間関係、文化適応の程度、社会的地位、人種・民族的背景などが帰属感に影響を与える。

移民の子どもたちは特に複雑なアイデンティティ形成過程を経験する。日本の単一文化的教育システムは多様性への対応が不十分で、多くの子どもたちがいじめや差別を経験する。しかし成長とともに多文化的背景を肯定的に捉え直し、グローバル人材としてのアイデンティティを構築する者も多い。

著者は、日本がエスノ・ナショナリストなアイデンティティを維持しながらも、事実上の移民社会として機能していることを示している。この矛盾は制度的不備や社会統合の困難を生んでいるが、同時に日本独自の移民統合モデルの可能性も示唆している。少子高齢化が進む日本にとって、多文化共生社会への転換は避けられない課題であり、本書はその道筋を考える上で重要な基礎資料を提供している。

各章の要約

序論 エスノ・ナショナリストな移民社会としての日本

Introduction: Japan as an Ethno-nationalist Immigrant Society

著者自身の日本国籍取得体験から始まり、日本が事実上の移民国家となっている現実を提示する。日本は1980年代以降、労働力不足により外国人受け入れを拡大してきたが、「移民政策は取らない」との公式見解を維持している。エスノ・ナショナリズムに基づく単一民族神話と移民受け入れ現実の矛盾を指摘し、従来の移民研究の枠組みを超えた新しい移民社会類型として日本を位置付ける。

第1章 日本への移民

Immigrating to Japan

移民が日本を選ぶ動機を多角的に分析する。経済的機会、キャリア選択肢、政治的・社会的逃避、文化的魅力、親密な関係の追求など多様な要因が絡み合っている。特に日本のポップカルチャーへの憧れや、ゲーム・アニメ産業での就職を目指す若者の存在が注目される。地域的差異もあり、アジア系は経済動機が強く、欧米系は文化的興味を重視する傾向がある。

第2章 移住チャンネルと移民エスノスケープの形成

Migration Channels and the Shaping of Immigrant Ethno-scapes

日本の移民人口構成(中国、韓国、ベトナム、フィリピンが上位)とその形成過程を解明する。正面玄関は高技能者に限定し、単純労働者には「裏口」を用意した選別的移民政策の結果、エンターテイナー、日系人、留学生という三つの主要チャンネルが形成された。JETプログラム、国際結婚、グローバル人材確保制度なども重要な移住経路となっている。移住インフラの発達により特定国からの移住が集中する現象も見られる。

第3章 日本で働く

Working in Japan

移民の労働市場参入パターンを第一次・第二次労働市場の区分と、国内・グローバル・エスニック志向の軸で分析する。ニッチ戦略と構造的空隙の橋渡し機能が移民の経済戦略の特徴である。中国・韓国系は企業の正規雇用に進む一方、日系ブラジル人は製造業の非正規労働に集中し社会移動が限定的である。留学生は段階的に技能を習得し上昇移動を実現するケースが多い。

第4章 日本での生活の網を織る

Weaving the Web of a Life in Japan

移民が日本に定住する過程を描く。当初は一時滞在を想定していた移民も、経済的機会、感情的絆、生活基盤の確立により徐々に日本に根を下ろす。日本社会の安全性、秩序、利便性は多くの移民にとって魅力的である。家族形成、職場での人間関係、地域コミュニティとの結びつきが定住を促進する。しかし永住権取得者が多い一方、国籍取得には慎重で、将来の移動可能性を残している。

第5章 去ること、戻ること

To Leave, to Return

日本を離れる移民の動機と経験を検証する。法的地位の喪失による強制的離脱、キャリア不満による自主的離脱、恋愛・結婚による移住、母国の経済発展への魅力などが離脱要因である。日本企業の硬直的人事制度や職場文化が高技能移民の離脱を促している。しかし離脱後に再び日本に戻る循環移民も多く、移住は一方向的プロセスではない。

第6章 エスノ・ナショナリスト社会におけるホームと帰属

Home and Belonging in an Ethno-nationalist Society

移民の帰属意識の多様性を詳細に分析する。日本を「ホーム」と感じる移民、母国への帰属を保持する移民、場所に縛られない宇宙的帰属意識を持つ移民が混在する。親密な関係、文化適応、社会的地位、人種的背景、文化的言説が帰属感形成に影響を与える。日本のエスノ・ナショナリズムは移民の国民帰属を困難にするが、地域社会レベルでの帰属は可能である。

第7章 移民の子どもたち:教育移動

Children of Immigrants: Educational Mobilities

移民の子どもたちの多様な教育経験を検証する。日本の公立学校は単一文化的で外国籍児童への支援が不十分であり、いじめや学習困難に直面する子どもが多い。外国人学校、トランスナショナル教育、継承語教育など多様な教育選択肢が存在するが、家庭の社会経済的背景により教育成果に格差が生じる。中国・韓国系は高い教育達成を示す一方、ブラジル系は困難に直面している。

第8章 日本で育つ:アイデンティティの旅

Growing Up in Japan: Identity Journeys

移民の子どもたちのアイデンティティ形成過程を追跡する。日本の学校では「パッシング」(日本人として通用すること)圧力が強く、多くの子どもが出自を隠そうとする。しかし成長とともに多文化的背景を肯定的に捉え直し、グローバルな自己像を構築する者が増える。大学進学や就職により多様性が評価される環境に入ると、多文化的アイデンティティが資産として認識される。最終的に多くが世界市民的アイデンティティを選択する。

結論 移民日本の現実、課題、そして可能性

Conclusion: Realities, Challenges, and Promises of Immigrant Japan

日本の移民社会化は不可逆的プロセスであるが、エスノ・ナショナリストなアイデンティティとの矛盾が多くの問題を生んでいる。教育制度の多文化対応、企業の組織改革、国民アイデンティティの再定義が求められる。グローバル移動の流動化により従来型統合政策の限界も露呈している。しかし日本の社会文化的魅力と移民の文化適応意欲は、独自の移民統合モデル構築の可能性を示唆している。


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