
『Who Owns the World:The Hidden Facts Behind Landownership』Kevin Cahill (2010)
『世界の土地は誰が所有しているのか:土地所有の知られざる真実』ケヴィン・ケイヒル (2010)
目次
- 序章 / Introduction
- 第1部 概要と分析 / Part 1:Overview and Analysis
- 第1章 富と貧困、王と女王、権力と土地、惑星と人類 / Of Wealth and Poverty, of Kings and Queens, of Power and Land, of the Planet and the Race
- 第2章 地球上で最大の土地所有者—圧倒的に / The Largest Landowner on Earth—By Far
- 第3章 世界で次に大きな土地所有者たち / The World’s Next Largest Landowners
- 第4章 世界の四大土地所有宗教 / The Four Major Landholding Religions of the World
- 第2部 全世界の土地所有の詳細 / Part 2:Details of the Ownership of All the World’s Land
- 第1章 アメリカの土地 / The Land of America (USA)
- 第2章 エリザベス2世女王の土地 / The Lands of Queen Elizabeth II
- 第3章 アフリカの土地 / The Land of Africa
- 第4章 アメリカ大陸の土地(米国以外)/ The Land of the Americas (Non-USA)
- 第5章 南極大陸の土地 / The Land of Antarctica
- 第6章 アジアの土地 / The Land of Asia
- 第7章 ヨーロッパの土地 / The Land of Europe
- 第8章 オセアニアの土地 / The Land of Oceania
本書の概要
短い解説:
本書は、世界の土地が誰の手にあり、どのように分配されているかを体系的に明らかにする初の試みである。土地所有の極端な集中が貧困の根本原因であると論じ、土地の分散所有が貧困解決の鍵となることを主張する。
著者について:
ケヴィン・ケイヒルはアイルランド出身のジャーナリスト兼研究者で、英国貴族院の上級アドバイザーを務める。『Sunday Times』の「リッチリスト」の研究者として長年活動し、土地所有問題に関する複数の著作を持つ。王立地理学会、王立歴史学会のフェローでもある。
テーマ解説
土地所有の極端な集中が、世界の貧困と経済的不平等の根本原因であるという主張を、膨大なデータで実証する。
キーワード解説
- 土地所有:地球上の土地は約369億エーカー。その大部分はわずか数%の人口によって所有されている。
- エリザベス2世:地球上で最大の個人土地所有者。約66億エーカー(地球の1/6)を法的に所有。
- 君主制:現存する35の君主制国家のうち26の君主が、地球の表面積の約20%を個人的に所有。
- 封建的優越権:英国をはじめ多くの国で、国王または国家が全ての土地の最終的所有者とする中世以来の法原理。
- 土地の移動性:資本主義経済において土地も労働や資本と同様に市場で自由に取引されるべきという著者の主張。
3分要約
本書は、世界の土地所有の実態を初めて体系的に明らかにした画期的な著作である。地球上には約369億エーカーの土地(南極大陸を除く)が存在し、人口66億人に対して1人当たり5.2エーカーが存在する計算になる。それにもかかわらず、世界人口の85%以上が土地を一切所有しておらず、貧困の根本原因はこの「排除」にあると著者は論じる。
最も驚くべき発見は、エリザベス2世女王が単独で約66億エーカー、地球の表面積の約6分の1を法的に所有しているという事実である。これは米国の総面積の約3倍に相当する。女王を含む26人の君主が、地球の表面積の約20%を個人的に所有しており、これらの君主は事実上の「 trillionaires」(兆長者)である。
土地所有の歴史を遡れば、常に人口の0.2~3%の支配階級が全土地を所有し、残りの97~99%は何も所有していなかった。アメリカ革命以降、この構造は徐々に変化し、現在では世界人口の約16%が住宅という形で土地への足がかりを得ている。著者は、これは人類史上最も根本的な経済変革であると評価する。
カトリック教会は約1億7700万エーカーの土地を所有し、世界中に外交使節団を持つ国家としても機能している。イスラム教のワクフ(宗教財産信託)も広大な土地を保有し、ヒンドゥー教と仏教も寺院や修道院を通じて巨大な土地資産を持つ。
アメリカ合衆国では、連邦政府が約7億6053万エーカー(国土の31.4%)を所有する最大の土地所有者である。民間ではテッド・ターナーが180万エーカー、プラムクリーク社が約730万エーカーを所有する。しかし注目すべきは、アメリカの住宅所有率が約60%で、人口の約24%が法的な土地所有者である点である。
著者は最終的に、「土地の私的所有権は基本的人権である」と断言する。そして、地球上の全人口に対して、都市部では10分の1エーカー、農村部では1~2エーカーの小規模な土地を付与することが、貧困を終焉させる最も効果的な方法だと主張する。土地の移動性が確立された真の資本主義経済のみが、この課題を達成できるというのが本書の核心的メッセージである。
各章の要約
第一部 概要と分析
第1章 富と貧困、王と女王、権力と土地、惑星と人類
土地は世界中で富の最も共通した特徴であり、貧困の特徴は土地を持たないことである。地球上には人口一人当たり5.2エーカーの土地があるにもかかわらず、85%以上の人類は土地所有から排除されている。貧困の根本原因は、土地所有者が歴史的に土地の大部分を自分たちに帰属させ、法を利用して他者を排除してきた能力にある。著者は「土地を所有する権利は基本的人権である」と再主張する。
第2章 地球上で最大の土地所有者—圧倒的に
エリザベス2世女王は、法的所有権が彼女の単独名義となっている約66億エーカーの土地を持つ、地球最大の土地所有者である。これは地球の表面積の6分の1(南極大陸を除けば7分の1)に相当し、アメリカ合衆国の総面積の約3倍、ロシアの1.5倍に及ぶ。女王はカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど32の冠を戴き、英国連邦の長として約99億エーカーに君臨する。
第3章 世界で次に大きな土地所有者たち
現存する51の君主制国家のうち26人の君主が、地球表面積の約20%(約78億エーカー)を個人的に所有している。サウジアラビアのアブドラ国王(5億8000万エーカー)、モロッコのムハンマド6世国王(1億1000万エーカー)、タイのプミポン国王(1億2600万エーカー)などが続く。これらの君主たちの資産は、フォーブス誌の富豪リストをはるかに凌駕する。
第4章 世界の四大土地所有宗教
キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教は合計45億人以上の信者を持つ。カトリック教会は教皇を頂点とする国家(バチカン市国)として機能し、約1億7700万エーカーの土地を所有する。イスラム教のワクフ(宗教信託)はエジプトなどで土地の20%を保有し、ヒンドゥー教の寺院はインドで1500万エーカー以上を所有する。仏教もタイやミャンマーなどで広大な土地を保有する。
第二部 全世界の土地所有の詳細
第1章 アメリカの土地
連邦政府が約7億6053万エーカー(国土の31.4%)を所有する最大の土地所有者である。最大の民間個人所有者はCNN創設者テッド・ターナーで180万エーカー。住宅所有率は約60%で、人口の約24%が法的土地所有者と推定される。農地は9億3800万エーカー(38.7%)を占め、約2.1百万の農場が存在するが、農業人口は全人口のわずか3%である。
第2章 エリザベス2世女王の土地
女王の所有地には英国本国(約5993万エーカー)に加え、カナダ(約24億6700万エーカー)、オーストラリア(約19億エーカー)、ニュージーランド(約6691万エーカー)、および南極大陸の広大な領有権が含まれる。これらの土地では、すべての市民は法的に女王の「借地人」に過ぎず、「自由保有権」ですら封建的な借地権の一種である。
第3章 アフリカの土地
多くのアフリカ諸国では、植民地時代の英国王冠の地位を国家が継承し、すべての土地の最終所有者となっている。実際の土地所有は伝統的な部族共有制が支配的で、正式な土地登記のカバー率は多くの国で10%未満である。ジンバブエでは、白人有権者が最良の土地の約半分を所有していたが、2000年以降の強制収用で経済は崩壊した。
第4章 アメリカ大陸の土地(米国以外)
ブラジルでは国土の5%未満しか登記されておらず、銃が土地紛争の最終的な裁定者となる。メキシコでは国土の38.4%にあたる約1億8654万エーカーの土地所有が全く把握されていない。多くの国で、先住民の土地権利は法的に認められず、大規模農園(ラティフンディア)が国土の大半を所有する状況が続いている。
第5章 南極大陸の土地
南極大陸の約33億7549万エーカーは、7カ国(英国、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ノルウェー、チリ、アルゼンチン)が領有権を主張している。しかし南極条約(1961年)により、これらの主張は「凍結」され、私的土地所有は存在しない。エリザベス2世女王は英国、オーストラリア、ニュージーランドの3つの主張を通じて最大の権益を持つ。
第6章 アジアの土地
中国では全ての土地が国家所有で、農民は30年間の「使用権契約」のみを持つ。この制度改革により、1978年以降の農業生産性は飛躍的に向上した。インドでは約1億663万の農場が存在するが、農業従事世帯の約6000万世帯が土地を持たない。サウジアラビアなど湾岸諸国では、君主が神から託された土地の管理者として、事実上の全土の所有者である。
第7章 ヨーロッパの土地
ヨーロッパの農地の約59%は、人口の0.3~0.6%に過ぎない約36~72万人のエリート層が所有し、彼らはEU農業補助金の少なくとも59%(年間約280億ドル)を受け取っている。英国では人口の0.27%が国土の69%を法的に「保有」する。一方、ドイツやスイスでは直接所有権が確立されているが、登記費用の高さが住宅所有率の低さの原因となっている。
第8章 オセアニアの土地
フィジーでは伝統的部族土地と植民地時代の王冠土地の二重システムが存在する。トンガは絶対君主制で、全ての土地は国王に帰属するが、男性トンガ人全員に住宅用地の権利が認められている。ナウルでは首長の裁量による「必要に応じた」土地配分の慣習が続く。パプアニューギニアでは、土地の88%が慣習的部族所有であり、登記されているのはわずか12%である。
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