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アルツハイマー病と体重低下 研究と原因
概要
アルツハイマー病の発症の数年前に、一部の患者でしばしば、意図しない体重減少を見せることがある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19940557
体重減少がアルツハイマー病およびMCI(軽度認知障害)の危険因子である可能性を示唆する証拠がいくつか存在する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19130879
アルツハイマー病モデルの動物実験では、エネルギーの摂取不足または摂取されるエネルギーよりもエネルギー消費量の高い身体活動と関連してアルツハイマー病を発症することが確認されている。
これらは、アミロイドの産生によるサイトカインの循環、ミトコンドリアのプロトン漏出の増加という発症機序を含む可能性がある。
アルツハイマー病に伴う神経変性は食欲の調節に関与する脳領域にも影響する。
アルツハイマー病発症前の体重減少
疫学研究では、体重減少がアルツハイマー病に先行して起こっている。
多くのケースでは、認知症の臨床的な診断の閾値に達する2~4年前に平均体重の約10%の体重減少が起こる。
ApoE4キャリアのアルツハイマー病患者で早期の体重減少との強い関連性が見られる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8855991
jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/787521
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25147111/
BMIの減少はアルツハイマー病の発症リスク上昇と関連する。
認知症診断の6~9年前の間に体重減少が見られる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16186530
体重減少の要因
栄養素の不足
ビタミンや必須脂肪酸などいくつかの微量栄養素の欠乏と、それに伴う組織の酸化損傷により認知症の発症リスク因子となる可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15380154
コルチゾール、フリーラジカル
体重減少は、血清コルチゾールおよびフリーラジカルレベルを上昇させることによって、認知能力を低下させる可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15824718
レプチンの低下・レプチン感受性の低下
体重減少による認知症発症機序
食事制限によるアルツハイマ病リスク増加の説明機序
アルツハイマー病による体重減少の作用機序
一般高齢者の意図しない体重減少
・意図しない体重減少は高齢者には一般的であり、高い罹患率及び死亡率に関連する。
・もともと虚弱である高齢者では重減少がわずかであっても重要な意義をもつ可能性がある。
・体重の5%以上が6~12ヶ月にわたって減少した場合、体重減少は臨床的に関連性がある。
・薬物の副作用がしばしば体重減少に寄与する。
www.bmj.com/content/342/bmj.d1732.long
体重減少の原因割合
非悪性 60%
精神障害 11%
胃腸疾患 30%
悪性 24%
悪性疾患のうち53%が消化器関連
不明 16%
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11168783
高齢者の意図的ではない体重減少は、一般的な減少 年間発生率は13%
TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインは、悪液質と体重減少に関与。
特にTNF-αはIL-1βと相乗的に作用して悪液質を悪化させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3050948/
心臓
ジゴキシン、アスピリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムチャネルブロッカー、ヒドララジン、ループ利尿薬、ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、スタチン、ニトログリセリン
神経学および精神医学
選択的セロトニン再取り込み阻害剤、三環系、神経弛緩薬、ベンゾジアゼピン類、抗けいれん薬、リチウム、レボドパ、ドーパミンアゴニスト、ドネペジル、メマンチン
骨や関節(鎮痛薬を含む)
ビスホスホネート、非ステロイド性抗炎症薬(COX-2阻害剤を含む)、Opiates、アロプリノール、コルヒチン、ゴールド、ヒドロキシクロロキン
内分泌腺
レボチロキシン、メトホルミン
その他
抗コリン作用薬、抗生物質、うっ血除去薬、抗ヒスタミン剤、鉄、カリウム、アルコール、ニコチン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3050948/
体重減少を防ぐ
認知症患者向け
不足栄養素の補充
リコード法検査を行い欠乏栄養素を補充する。
体内の炎症を下げる
炎症活性を誘発する要因の除去(ウイルス感染、細菌感染、重金属等、睡眠不足、心理ストレス、大量の糖質、飽和脂肪酸など)
レプチンとグレリン分泌の適正化
・中鎖脂肪酸レベルを下げる
・オートファジー活性
・レクチンの摂取制限
・フルクトースの摂取制限
・概日リズムの適正化
神経原線維変化の除去
食欲を増強する食品・サプリメント
ラベンダーオイル
ランダーオイルの含有成分であるリナロールはラットの交感神経を刺激し、ヒスタミン作用による脂肪分解を抑制し、食欲および体重を増強する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15878236/
コリアンダー
コリアンダーの投与は、ラットの食欲にポジティブな効果を与える。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25050262/
しょうが
しょうがは機能性消化不良患者の胃排出および胃収縮を刺激したが、胃腸症状、モチリン、グレリンの血清濃度には影響を与えなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21218090/
体重減少防止プログラム
アルツハイマー病患者の体重減少を防ぐための健康増進プログラム
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10641522