ウォーキングブッククラブとは
一つで4度おいしい
いわゆる読書会にも似ているが、散歩をしながら読書会を行おうというもの。
この散歩読書会は極めてシンプルな発想だが、
- 「脳トレ」
- 「身体運動」
- 「社会交流」
- 「モチベーション」
という3つの強力な認知機能改善要素と、運動で最も難しいパートであるモチベーションを維持させる効果が含まれている。
読んだ本の内容を語り合ったり批評し合うことで、脳のトレーニングとなり、当然、散歩をするので運動にもなる。
社会交流はそれ自体が複数の研究で脳の神経栄養因子であるBDNFを増加させ、社会脳と呼ばれる扁桃体や側頭葉、眼窩前頭野を刺激し、認知予備力に貢献することが示されている。
それに加えて、運動は同レベルの参加者とともに行うことで運動の遵守と継続(コンプライアンス)が有意に上昇することも、コンプライアンス研究によって示されている。
まさに一石四鳥の認知機能改善プロトコル
yourbrainhealth.com.au/walking-book-club/
本の選択が鍵
ガンサバイバーの社会的孤立と心理的苦痛を防ぐことを目的としたウォーキングブッククラブ研究では、運動を行えていないが、元々本を読んだりすることが好きな知的好奇心の旺盛なタイプの参加者で期待高かったようだ。
本の選定が重要で、ネガティブな登場人物が多数登場する作品など、文学作品によっては参加者にネガティブな心理を抱かせることがある。また、できる限り本人が選ぶことで、義務感を回避できる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28094664
認知症患者さんには回想法
このメソッドは一般の方向け(記憶力がある)となっているため、記憶障害のある認知症患者さんでは、本以外での共通の話題を見つけて置き換えよう。
一般的な話題の代わりに、楽しかった頃の思い出を聞く「回想法」を取り入れてもいいかもしれない。
一日一問(Thought Questions) 30日分の質問
- あなたのお母さんはどんな人?
- あなたのおばあちゃんはどんな人?
- 好きな食べ物と、嫌いな食べ物は?それはなぜ?
- 好きな動物とその理由
- 子どものとき夢中になった本は
- 小さいころ何をしている子供だった?
- 子供の頃なりたかった職業は?
- 今すぐできる気分転換の方法
- 人生で最も感動した経験は何ですか。
- 今までに言われていちばん嬉しかったひと言は?
- 学生時代に本当に楽しかったことは
- 生まれ変わったら誰になりたい?
- 今までに飼った動物は?
- いつか言ってみたい国、地域はある?その理由は?
- 5万円を好きに使っていいとしたら何に使う?
- 今までした悪いことは何?
- ボコボコに殴りたいほどムカついた人は誰?
- 自分がいちばんつらい時期に学んだことはなに?
- 趣味でも最も長く続いたものは?
- 今ここにタイムマシーンがあったらどうする?
- 子どものころ本気で信じていたものは?
- 朝目覚めて14歳に戻っていたらどうする?
- もし人生やり直せたらどんな職業をやる?
- 人生やり直せたらいつに戻りたい?
- 一生に一度はやっておきたいこと
- 今までの人生を振り替えって謝りたい相手は?
- 墓石に何か言葉を残すとすれば
- 家族の中で一番死んでほしくない人は?その理由は?
- 神様がひとつ願いを叶えてくれるとしたら、どうする?
- 今日が人生最後の日だとしたら、今日スケジュールしたことをやる?
質問が多くなると、ひとつの質問の深さが薄れてしまい、記憶にも残りにくくなるため、一日多くても3問程度にとどめておくことをおすすめする。
仲間が見つからない場合は
歩く仲間が見つからない場合も含め、オーディオブックを聞きながら散歩するという方法もある。特定の人にとってオーディオブックの内容選択には注意が必要かもしれない。
次世代のオンライン散歩
周囲に散歩する仲間が見つからなければ、スマホを利用して、例えばZOOMでつながりあって散歩するというのはどうだろうか。
散歩読書会を行うためのガイドライン
1.脳の健康について熱心で意欲的な2~3人の友達を選ぶ。同レベルの体力・知力が望ましい。
2.読書散歩クラブのグループを大きくしすぎない。3人から4人ぐらいで本について話し合うのが理想。
3.約1時間で歩けるルートを設定しておく。歩行スピードは時速4kmぐらいで。
4.議論を始めるタイミングを決めるルート上の地点を決めておく。
例
・遠くにある木を設定し、その木を通り過ぎるまでは最初の質問について議論する。
・スマホなどの歩いた距離を測定するアプリを使用し、一定距離を歩いたら通知してくれるように設定する。
・500メートルごとに1つの質問について話し合う。(それか距離の設定は自由に決め、友人とブレインストーミングをして、自分の解決策を考えてみる)
参考文献
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22820351
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20349397