2014年のウクライナ革命でヴィクトル・ヤヌコビッチが政権から離脱した後、オレクサンドル・トゥルチノフ国会議長が大統領代行に任命された。ウクライナの人々は、本当の意味での変化はないと信じていたため、非常に動揺していた。人々がしたことと、その後の西側諸国がしたことは、区別しなければならない。すべてをCIAの陰謀のせいにする人たちは、個人的な知識がなく、自分の意見をあたかも事実のように言いふらしている。ビクトリア・ヌーランドがジェフリー・パイアットと電話で話していた「Fuck the EU！」というコメントの一部始終は2014年2月7日に報道されたが、これはウクライナの状況をコントロールするための努力があったことを示すだけで、CIAが最初から革命を組織していたことを示すものではない。ヤヌコビッチがウクライナを逃亡したのは2014年2月22日で、抗議活動の開始からわずか3ヶ月ほどであった。

ヤヌコビッチはオリガルヒであり、彼の警察は企業を揺さぶり、2人の息子への支払いを強要していた。彼は、オリガルヒがロシアを運営するのと同じように、ウクライナを運営していた。彼らの命令に従わなければ死ぬのである。本当にうまくいっている事業があれば、ヤヌコビッチとその息子たちはそれを没収してしまう。それが民衆の蜂起の原因であり、CIAがどうにかしたわけではない。私にはバリケードの上に個人的な友人がった。彼らの安全を心配して、定期的に連絡を取り、アドバイスをしていた。

私が言えるのは、その後、欧米が指導者を設置し、人々は、もし彼らに反旗を翻すようなことがあれば、EUとアメリカの両方からの支援を失うことになるだろうと言われていたということである。傀儡大統領であるオレクサンドル・トゥルチノフは 2014年2月23日から6月7日まで大統領代行を務めたが、この役割を務めたのはウクライナ史上唯一の人物である。在任中、トゥルチノフは他のウクライナ人政治家やメディアから「大統領代行」と呼ばれていた。

ポロシェンコ・ペトロ・オレクシヨビッチ

その後、5月25日に行われた2014年の選挙では、実業家のペトロ・ポロシェンコが54%強の得票率を獲得したと主張するなど、疑惑の多い選挙となった。ユリア・ティモシェンコが13%前後の得票率で次点となった。2014年6月7日、ポロシェンコは大統領に就任した。ポロシェンコは、「チョコレート王」として知られるウクライナの億万長者の実業家であった。しかし、東部の当時の直接の情報源は、投票所が親ロシア派のテロリスト／観光客に破壊されていたため、投票できなかったと明言している。東部で投票したであろう人々は、内戦を防ぐためには決選投票を行わずに多数決で決まる大統領が必要だという一般的な感覚から、ポロシェンコに投票したのかもしれない。

とはいえ、ポロシェンコは経験豊富な政治家でもあった。2009年から 2010年までは外務大臣 2012年には貿易・経済開発大臣を歴任している。2007年から 2012年までは、ウクライナ国立銀行の評議会の議長を務めた。彼は経済的自由を求める親西派である。ヤヌコビッチのように事業を継承したり、私腹を肥やしたりするのではなく、事業を創造してきた億万長者であることは、国庫を荒らしたり、潜在的な賄賂を超えた行為をしたりしない人物と見なされたために良かった。ヤヌコビッチは貧乏ではなかったが、現実にはビジネスマンではなかったのである。しかし、ウクライナの東部は暴力ストームにさらされており、現在のような内戦に発展しつつあった。これは、ロシアと西洋の間を取り持つことを約束したポロシェンコを試す大きな課題であった。しかし、ドネツ盆地での分離独立派の反乱で戦闘は続いていた。ポロシェンコは当時、こう語っていた。

「大統領就任当初の我々全体の最初のステップは、戦争を終わらせ、混沌を終わらせ、無秩序を終わらせ、ウクライナの地に、統一された単一のウクライナに平和をもたらすことに集中する 」と日曜日の勝利の集会で述べた。「我々の断固たる行動は、かなり早くこの結果をもたらすだろう。」

ポロシェンコ氏は、ウクライナをEUとの関係強化に導きたいとも語っている。ポロシェンコは演説の中で、何度も東ウクライナでの戦争を「愛国戦争」と呼びながらも、戒厳令の発動には踏み切らなかった。それにもかかわらず、東ウクライナの多くの市民の投票を妨げた暴力は、そこでの古い反民主的な態度を示している。彼らのやり方に従うか、そうでないか、まさに独裁である。この地域の分離独立派は、投票を妨害することを誓っていたが、自分たちが負けることを承知の上で、それを阻止することにほぼ成功した。もし、当時の投票がウクライナからの離脱を支持するものであったならば、彼らは国民の投票を確認していただろう。しかし、そうではなかった。

プーチンは、ウクライナが投票する前日に、ロシアは「選挙の結果、権力を握ることになる当局に協力する」と述べたが、ヤヌコーヴィチを引き続き正当な大統領と考えていると付け加えた。結局 2015年6月18日、ヤヌコビッチは遡って正式にウクライナ大統領の称号を剥奪された。

ポロシェンコは、自分の会社を売却した際の税金を逃れるために、イギリス領ヴァージン諸島にオフショア企業を設立した。2016年に発行された「パナマ文書」から流出した文書により、ポロシェンコは2014年8月21日に「Prime Asset Partners Ltd」という会社を登録したことが明らかになった。同氏は不正行為を否定しており、ポロシェンコ氏の製菓会社「Roshen」の売却を監督している同氏の法律事務所「Avellum」は、「脱税の疑惑は一切根拠がない」と述べている。反汚職団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」は、「大統領を務めながら事業を起こすことは、憲法に直接違反している」と考えている。パラダイスペーパー」の疑惑に名を連ねる政治家のリストに、彼の名前が挙げられてた。

この脱税疑惑は、3月31日に行われ、4月21日に決選投票が行われた2019年の選挙で生じたものである。この選挙の結果、現職のペトロ・ポロシェンコ氏との決選投票で、政治経験のない元俳優でコメディアンのヴォロディミル・ゼレンスキー氏が73%の人気投票を獲得し、第6代ウクライナ大統領に就任した。

選挙から数カ月以内の2019年12月20日、ウクライナの法執行機関は、冷酷で疑わしい国家元首であることが判明したゼレンスキー大統領の命令で、ポロシェンコの党本部とジムの両方を家宅捜索した。この家宅捜索は、今後ポロシェンコが影響力を持つ可能性を排除するためのものだった。機密情報の入ったサーバーを盗んだ疑いや、脱税（現在はマネーロンダリングと呼ばれている）に焦点を当てた犯罪捜査を開始するために使われたのだ。ゼレンスキーは、親露派の政治家ビクトル・メドベチュクとともにウクライナの分離独立派支配地域から石炭の購入を組織したとされるポロシェンコを、国家反逆罪、テロ組織支援、テロ資金供与の罪で真っ向から非難した。ポロシェンコ大統領はこの疑惑を否定し、「（ゼレンスキーの）政敵に向けられた、捏造された、政治的動機のある、黒いPR」と称した。

ゼレンスキーは、ECMのターニングポイントとなった2022年1月6日に、ウクライナの裁判所がポロシェンコの財産を差し押さえたことを整理し、その数日後の15日、ポロシェンコはフェイスブックのビデオメッセージで発表した。「私は1月17日午前9時10分のワルシャワ発の飛行機でウクライナに戻ります…ロシアの侵略からウクライナを守るために」と、自分に対する訴訟があるにもかかわらず、発表した。帰国後、検察庁は裁判所に公判前の収監を求めた。最終的に、裁判所は彼に電子ブレスレットの装着、キエフに留まること、パスポートの引き渡しを命じた。

ウクライナのゼレンスキー政権は、冷酷な専制君主になりつつある。また 2019年8月29日からウクライナの人民副首相を務めていた野党のリーダー、ビクトル・V・メドベチュクを投獄している。メドベチュク氏は、親ロシア派の政治団体「ウクライナの選択」の会長であり、ウクライナのEU加盟に反対している。経済的な観点から、ウクライナがEUに加盟することは、ある権威主義的な政府を別の政府に置き換えることになる。EUでさえ、ゼレンスキーにメドベチュクの釈放を求めている。

明らかに、ゼレンスキーには国家の指導者としての資格がない。ゼレンスキーは、ロシアへの侵攻の前に、西側諸国にロシアへの制裁を要求している。「砲撃を受けたり、銃撃を受けたり、国境がなくなったり、経済が成り立たなくなったり、国の一部が占領されたりした後ならば、あなた方の制裁は必要ない。その時に、なぜそのような制裁が必要なのか」。彼は完全にコントロールを失っており、ウクライナの領有権を主張する一方で、彼の言語法によってロシア語を話す人は事実上の非国民になってしまう。野党のリーダーを投獄し、一党独裁体制を強固にするために前大統領を追い詰めることは 2014年にウクライナ国民が立ち上がったことではない。

現在、バイデン大統領は、プーチンがウクライナ東部にあるロシア民族の分離独立派の2つの地域に軍隊を配備した後、ロシアを対象とした新たな経済制裁を行う予定である。クレムリンは、迫り来るウクライナ危機に関する米露の首脳会談の具体的な計画はないと発表した。欧米の報道機関では、自分たちの国のロシア人が、ゼレンスキーによって権利を剥奪されていることを指摘する人はどこにもいない。ゼレンスキーは、自分たちの人生なのだから選択できるようにすべきだと主張する反対派を投獄したこともある。しかし、彼らは今では、西側諸国の指導者が関係者であるふりをするためにロシアを悪者にしなければならないという、この不条理な政治ゲームの駒になってしまったのだ。

一方、この危機全体の愚かさは、これまでで最も無能な人々が政府にいることだ。ドイツは、グリーンピースの元代表であるジェニファー・モーガンを国務長官に任命する予定である。この気候変動活動家が、いったいどうやって軍事問題の資格を得たのだろうか？そして、中国の王毅外相と米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、電話会談でウクライナの緊張状態について話し合った。「ウクライナの状況は悪化している」というのが、通話後の中国外交部の回答である。中国は、この危機全体が、この2つの州が独立するはずだったのに、ウクライナが帝国主義を要求した新ミンスク合意の実施が遅れていることと密接に関係していると正しく指摘した。もしこれがエスカレートすれば、中国はロシアの側に立ち、西洋は負けることになるだろう

最初のミンスク議定書は 2014年9月にウクライナ、ロシア、欧州安全保障協力機構（OSCE)そして親ロシア派の分離主義者の指導者によって署名された。ウクライナと分離主義者は、重火器の撤退や囚人の交換など12項目の停戦協定に直ちに合意した。しかし、この合意は戦闘を止めることができず、親ロシア派の分離主義者だけでなく、双方が頻繁に違反行為を行ってた。その5ヵ月後、ウクライナは親ロシア派の分離主義者に領土を奪われた。その後、フランスとドイツが仲介したロシアとウクライナの間でミンスクⅡが締結された。それが2015年2月に締結された13項目の合意であった。それがすぐに決裂したのは、単にロシア人に対する民族的な嫌悪感があるため、ウクライナが主張を放棄することを拒む意味がないからである。

さらにミンスクⅡでは、武器の撤収や停戦のモニタリングなどを行うことになってた。自称ドネツク人民共和国とルハンスク人民共和国では、ウクライナにおける将来の地位について地方選挙が行われることになっていた。ゼレンスキー政権の頑なな姿勢は、今や全世界を脅かしている。彼は、モスクワがウクライナとドネツク人民共和国およびルハンスク人民共和国が合意に達するのを助けるために自らを調停者と呼んでいることを認めようとしない。ゼレンスキーは、ミンスク合意のポイント10にある「すべての外国の武装勢力」の撤退がロシアを指していると主張しているが、ロシアは領土内での軍事的プレゼンスを否定している。

ロシアは、軍備撤退の前に分離独立共和国の選挙を行うべきだと主張しているが、ゼレンスキーはその逆を主張し、国民に選択をさせたくないと考えている。ドネツクとルハンスクには、72万人以上の人々が住んでいる。彼らは、ロシアが2019年に採用した簡略化されたパスポート体制のもとで、ロシアの市民権を認められ、与えられた。 ゼレンスキーはこれを、彼らがロシア国籍を申請することすら認めるのはミンスク合意に違反すると主張している。ゼレンスキーは、この領土に対するいかなる主張も放棄することを拒否し、これらの領土に特別な地位を与えることは不可能だと言っている。

結果的に、元コメディアンのゼレンスキーは、プライドの問題でウクライナを戦争に巻き込もうとしているだけでなく、スターリン時代のロシア人に対する個人的な憎しみのために、アメリカとヨーロッパを意図的に第三次世界大戦に巻き込もうとしているのである。第一次世界大戦を引き起こした東欧の危機が、再び第三次世界大戦を引き起こす立場にあるのである。簡単な解決策は、ドネツクとルハンスクの人々に選挙で決めてもらうことだ。これらの州に住む人々には自分の運命を決める権利がある。