Contents
- 1.タウリン酸化の阻害 キナーゼの阻害
- 2. タウリン酸化の抑制 タウホスファターゼの活性
- 3. タウリン酸化の軽減 その他
- 4. 異常修飾タウタンパクの阻害
- 5. タウ凝集の阻害
- 6. 微小管を安定化させる
- 7. タウの細胞間移動を阻害する
- 8. マクロオートファジーによるタウ分解
- 9. ユビキチン-プロテアソーム系(UPS)によるタウ分解
- 10. シャペロン系/HSP活性によるタウ分解
- 11. AQP4の活性
- 12. 中枢神経系リンパ管経路
- 13. タウのプリオン様伝播を防ぐ
- 14. タウの液-液相分離を防ぐ
- 15. ミトコンドリア標的
- 13. タウと相互作用するタンパク質の除去
- 16. 銅キレート
- 17. 酸化ストレスを軽減する
- 18. HSP90の阻害?
- その他
- 個人で利用可能な抗タウ治療 トップ22
タウオパチーへの神経保護アプローチ
1.タウリン酸化の阻害 キナーゼの阻害
アルツハイマー病患者の脳にあるタウは、同年齢の健常者と比べて4~5倍高い。この増加分はすべてリン酸化されたタウ。
キナーゼとホスファターゼとのバランスが崩れていることが、タウタンパク質の過剰なリン酸化の原因。タウキナーゼの過剰なアップレギュレーション、タウホスファターゼの過剰なダウンレギュレーションがリン酸化に寄与し得る
タウのリン酸化 キナーゼ
- GSK-3β グリコーゲン合成酵素キナーゼ3
- CDK5 サイクリン依存性キナーゼ5
- PKA cAMP依存性プロテインキナーゼ
- CaMKII カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼII
プロテインキナーゼ阻害剤(チデグルシブ、バルプロ酸、リチウム、L-NBP)
GSK-3β
リチウム
GSK-3β、JNKはタウ蛋白をリン酸化する酵素。リチウムがGSK-3βを抑制する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23596350
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3460520/
CDK5阻害剤
www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/07391102.2019.1696709
ケンペロール、ケルセチン
pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/np034011s
漢方薬Danggui Longhui Wan
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11013232/
Fynキナーゼ阻害剤
ロスマリン酸
pubs.acs.org/doi/10.1021/jm0607202
ペラルゴニジン
pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf0108765
- ミリセチン
- フィセチン
- アカセチン
- バイカレイン
- ゴシピン
- モリン
- アピゲニン
pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf0108765
2. タウリン酸化の抑制 タウホスファターゼの活性
タウの脱リン酸化 フォスファターゼ・酵素
- PP2Aの活性
- Pin1活性の適正化
en.wikipedia.org/wiki/PIN1#Activation
PP2A
タウの主なホスファターゼはPP2Aであり、このPP2Aはタウに関わるホスファターゼ全体の70%以上に関与しているため、最も決定的なホスファターゼとみなすことができる。
PP2Aはタウの脱リン酸化を媒介しており、PP2Aとその活性化因子のレベルは、年齢をマッチさせた対照群と比較してアルツハイマー病脳ではダウンレギュレーションされていることがわかっている。
GSK-3βとPP2Aは相互に調節し、タウリン酸化に影響を与える。
朝鮮人参
PP2A活性によるマウスのタウ過剰リン酸化の減少
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21945003/
葉酸
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28422052
Pin1の調整
link.springer.com/article/10.1007/s12035-020-02179-8
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16945100/
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17317113/
www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2020.00355/full
3. タウリン酸化の軽減 その他
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を増やす
Ca2+過負荷に起因するカルパインIの過剰活性化は、ニューロン特異的グルコーストランスポーター3(GLUT3)をタンパク質分解し、結果としてアルツハイマー病脳におけるタウO-GlcNAシリル化の低下につながる
インスリン分泌を促進するホルモンにはGIPとGLP-1の2つがある。GLP-1は、糖化最終生成物によって誘発されたタウタンパクの過剰リン酸化から海馬ニューロンを保護する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24183963
GLP-1増加ハーブ・化合物
- レジスタントスターチ
- 酪酸
- ペクチン
- オリーブリーフ
- オリーブオイル
- シナモン
- ベルベリン
- レスベラトロール
- ベリー
- 柑橘類
- 地中海ダイエット
Sirt1の活性、SIRT2の阻害
タウの脱アセチル化はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)6またはサーチュイン1(SIRT1)によって触媒される。
AβおよびタウのクリアランスにおけるSIRT1の活性の関与についての良好な証拠はまばらである。タウの場合、SIRT1の脱アセチル化をブロックすると、アセチル化されたタウおよびリン酸化タウの持続性が増強されることが知られている(Min et al 2010)。しかし、別の報告では、広範なサーチュイン阻害剤ニコチンアミドがSIRT2を阻害することにより、アセチル化α-チューブリンと微小管の安定性を増加させ、その結果、プロテアソーム分解による可能性が高いリン酸化タウの減少も効果的にもたらしたことが示されている(Green et al 2008)。Aβに関しては、シロスタゾールによるSIRT1活性化がオートファジーのアップレギュレーションを介してAβを減少させることが最近の報告で示唆されている(Lee er al)。
SIRT1活性
- カロリー制限
- 身体運動
- レスベラトロール
- シロスタゾール
SIRT2阻害剤
- ニコチンアミド
- レスベラトロール(弱い阻害活性)
- クロモン由来の天然物、クロモン(フラボン、イソフラボン)、クマリン
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29724067/
リン酸化タウ阻害剤
リファンピシン
セレノメチオニン
セレノメチオニンをADマウスへ投与、タウの総量とタウの過剰リン酸化が減少、
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28137967
ブドウ種子由来ポリフェノール
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20569300/
セージ
セージに含まれるロスマリン酸
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16495207/
タンノシン
サフラワーイエロー
サフラワーイエロー(ベニバナから取れるベニバナ黄色素類)はマウスの損なわれた認識能力を改善し、タウタンパクのリン酸化を減少させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27311611
カプサイシン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28225806
デカフェのグリーンコーヒー
グリーンコーヒーがタウ病変を有する2型糖尿病マウスの認知機能、運動能力を改善
www.degruyter.com/view/j/tnsci.2014.5.issue-2/s13380-014-0213-y/s13380-014-0213-y.xml
熟成にんにく
熟成にんにく抽出物の硫黄含有成分(S-アリル-システイン)、ジアリルジスルフィドの高アミロイド、抗タウもつれ、抗炎症効果
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16842945/
若いココナッツのジュース(エストロゲン)
若いココナッツのジュース(4週間)には、エストロゲン様成分が含まれており、抗タウ作用を含めた、閉経後女性のアルツハイマー病の病状を有意に低下させる作用を有する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21114897/
4. 異常修飾タウタンパクの阻害
クルクミン
ポリフェノール
フェノチアジン、ポリエンマクロライド、ポルフィリン
ミリセチン
ヤマモモの根の樹皮(Myrica cerifera)に含まれるフラボノイド、ミリセチンおよびミリシトリン、ジアリールヘプタノイド、ミリカノールの強力な抗タウ作用。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21141876
タウアセチル化の阻害
サルサレート
非ステロイド系抗炎症薬であるサルサレートによるアセチル化の阻止はマウスの認知機能を保持し、病理学的な改善につながった。治療中の2〜3ヶ月は海馬の体積を保持し、神経原線維変化(NFT)の数を3分の2まで減らした。
サルサレート 9mg/kg マウスの最小有効量
臨床試験 150~250mg/day
HDAC6阻害剤
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4075151/
タウグリコシル化の阻害
- グリコシドヒドロラーゼ(O-GlcNAcase)阻害剤 チアメットG
- タウリン酸化の抑制
- 糖質制限
www.pnas.org/content/111/13/4940
AGE糖化反応の抑制
- ケンフェロール
- ゲニステイン
- ケルシトリン
- ケルセチン
- ビタミンC
- EGCG
- 身体活動
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5643203/
- 加工食品、ファーストフードを避ける
- 低温調理
- 低pH、酸性pH調理
- グリオキサラーゼ系の活性(Nrf2、グルタチオン)
- アスピリン
- ピリドキサミン
- バーム
- ミント
- 紅茶
- 緑茶
- セージ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4648888/
AGE 食事・台所での対策
- 高温での調理を避け、低温度で調理する。
- フライパン、グリル、焙煎よりも蒸し、煮込み、煮込み、ゆでる調理法を用いる。
- 食材が褐色にならないように。
- 調理中の食材の温度が高かったり、水分が少ないとdAGEレベルは増加する。
- フェノール系酸化防止剤(豆など)は、AGEの形成を抑制することがある。
- 酢、レモン汁などの酸性化させる食材を加えると、AGEレベルは下がる。
- 緑茶はAGEの形成を阻害する。
- できるだけ新鮮な食品を料理する。
- 外食ではなく家で食事をする。
5. タウ凝集の阻害
PHF・NFT形成の阻害
EGCG(緑茶カテキン)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10746177/
タウフィラメントの形成阻害
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15611092/
オーロファジーアダプターたんぱく質NDP52およびp62のmRNA発現を増加させることによってリン酸化タウクリアランスを増強する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26207957/
フルボ酸/Fulvic acid(シラジット)
インド、アーユルベーダ医学で用いられる主成分のひとつ
フルボ酸はタウの凝集を阻害し、PHFタウの分解を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21785188
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22482077
シナモン
セイロンシナモン抽出物は、タウの凝集およびフィラメント形成を阻害する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19433898/
フェノチアジン、ポリフェノール、ベンゾチアゾール、ポルフィリン誘導体
www.jbc.org/content/280/9/7614
ローダミン(タラコ、明太子の着色に使われる成分)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20149808
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19189357
ハイスループットスクリーニング
aminothienopyrydazines(AZPZs)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19580328
塩化メチルチオニニウム(メチレンブルー)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17967916/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21316815/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8855335/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25550228/
リファンピシン
オレウロペインアグリコン
(オリーブオイル、オリーブリーフなどに含まれる)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21333710
クルクミン
タウとアミロイド凝集の二重阻害剤としてのクルクミン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27624076
クルクミン投与によるヒトタウモデルマウスのサルコシル不溶性凝集タウの有意な減少
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25659102
6. 微小管を安定化させる
病的なタウタンパク質は微小管から剥離し、アルツハイマー病患者の微小管破裂につながる。したがって、微小管の安定化は、タウによる神経毒性を補うものと考えられている。
ルテイン
キサントフィル、ルテイン、ゼアキサンチン、
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11504633/
低体温を避ける(麻酔を避ける)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27227069
MAP2の増加トリアゾロピリミジン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30404654
ダブネチド、エポチロンD、TPI287
7. タウの細胞間移動を阻害する
タウ凝集体は、病理学的に誤ったタンパク質と同様に、細胞から細胞へと移動し、プリオンのような形で細胞外コンパートメントに放出され、タウ病理が脳の様々な領域に転移する可能性がある。
タウタンパク質の細胞間トランスフェクションを阻害することによりタウタンパク質を標的とすることで、アルツハイマー病患者のタウ病変を遅らせることができることが数多くの研究で示されている。
タウの神経細胞間移動を阻害または減少させる3つの経路
- タウの放出を阻害する
- タウの取り込みを阻害する
- タウのオリゴマー化と細胞外タウ濃度を低下させる
8. マクロオートファジーによるタウ分解
オートファジー促進因子TFEB(転写因子EB)10の活性方法
ライフスタイル
有酸素運動、間欠断食、ケトンダイエット
食事
コーヒー、緑茶、ココナッツオイル、ジンジャー、MCTオイル、ブロッコリー(スルフォラファン)、グレープフルーツ(ナリンジン)
トレハロース(タウのリン酸化、凝集タウのクリアランスを促進)
サプリメント・医薬
クルクミン、レスベラトロール、霊芝、高麗人参、ウルソル酸
リチウム、メラトニン、DHA、EPA、ビタミンD、ニコチンアミド、
ラパマイシン(マクロファージ誘導剤として研究されている。)
メトホルミン
9. ユビキチン-プロテアソーム系(UPS)によるタウ分解
可溶性タウモノマーはプロテアソームの理想的な基質
低アセチル化タウはUPS(ユビキチンプロテアソームシステム)の基質にむいている。
オリゴマー化したタウ、凝集タウは、プロテアソームの好ましい標的ではないかもしれない。
UPS阻害
凝集タウがUPSを阻害する
プロテアソーム活性とタウの高分子量形態との間には逆相関がある。これは、異常なタンパク質自体が、プロテアソームの分解プロセスを妨害しえることを示唆する。
異常タウがプロテアソームと結合すると、プロテアソーム自体の機能が阻害され異常タウを含め他のタンパク質も処理できなくなる。
A152変異体タウ
A152T変異体タウがプロテアソーム活性を損ない、タウだけでなくプロテアソームの基質の蓄積も引き起こす。プロテアソーム基質の蓄積はαシヌクレイン、TDP-43にも影響を及ぼす。
オートファジーを高めることによるタウオパチー治療の可能性。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5382950/
プロテアソームの機能不全
プロテアソームの機能不全がパーキンソン病、レビー小体型認知症発症の根底にある可能性。プロテアソーム機能障害の原因は遺伝子変異、酸化的損傷、ATPの枯渇、環境からの毒素に関連している可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16717251
UPS活性
メチレンブルー
メチレンブルーは、プロテアソームの活性を増強することによって、アミロイドβを減少させADマウスの認知機能を改善する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20731659
ガストロジン
ガストロジンのプロテアソーム活性 ハンチントン病モデルマウス
journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0020934
レスベラトロール
レスベラトロールは、プロテアソームを含むメカニズムを介してアミロイドβの細胞内分解を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16162502
ベツリン酸(CHAGA)
ベツリン酸はプロテアソームのキモトリプシン様活性により、強力にプロテアソームを活性化させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16973439
亜ヒ酸
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16162502
外傷性ストレス
酸素・放射線・酸化的ストレス
プロテアソームの活性は過剰酸素、放射線、酸化的損傷などの外傷性ストレス因子によって誘導される
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16690988/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10775409/
エクササイズ
有酸素運動
有酸素運動トレーニングは、マウスのユビキチン-プロテアソーム系をアップレギュレートする。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22461440
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22461440
有酸素運動が、ユビキチン・プロテアソーム系の過剰活性を防ぐ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22870245
自発的な運動
自発的な運動は、外傷を受けた脳のプロテアソームを活性し、シナプス可塑性に寄与する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19368831
筋力トレーニング
高齢者によるレジスタンストレーニング後のロイシン摂取(3.5g)は、オートファジーを減少させるようだが、ユビキチンプロテアソーム系の増加、または骨格筋のタンパク質分解は妨げない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27586837
タンパク質+運動
タンパク質摂取は運動によるHSP70の発現NF-κBの増加を妨げたが、プロテアソーム活性を維持した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28831951
エネルギー欠乏での運動はUPSを活性しない
エネルギーが不足した状態での低強度の運動は、オートファジーの誘導をもたらすが、ユビキチンプロテアソーム系の活性は増加しない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29208687
cAMP活性
PDE阻害剤、フォルスコリン、レスベラトロール、カフェイン
cAMPの活性を介してPKAを刺激すると、異常タウが存在していても、プロテアソームの機能が保たれる。
10. シャペロン系/HSP活性によるタウ分解
熱ショックタンパク質(HSP)の発現は、微小管とタウとの結合を増加させ、タウの分解、ユビキチン化、リン酸化を調節する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12358741
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14962978
HSP70の活性
HSP70は、タウオリゴマーに優先的に結合し、順行性軸索輸送を回復させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22039833
https://alzhacker.com/hsp/
ミスフォールドタンパク質に結合するHSP90をターゲットにする。
温熱療法(HSP入浴法)
テプレノン、ブロッコリー、オリーブオイル、亜鉛、クルクミン、レスベラトロール、ヤマブシタケ
HSP90阻害剤
分子シャペロンHsp90の阻害はリン酸化タウおよびミスフォールドタウの減少にポジティブな効果を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17304350/
11. AQP4の活性
外傷性脳損傷患者では、アミロイドβクリアランスに関与するAQP4が局所的に破壊されており、これは過剰リン酸化タウのクリアランスを減少させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28533515
12. 中枢神経系リンパ管経路
Meningeal lymphatics
中枢神経系には、古典的にはリンパ管はないと考えられていたが、近年の研究で髄膜にも存在し、これらは脳脊髄液から髄液と免疫細胞の両方を輸送できることが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4506234/
アルツハイマー病マウスの髄膜リンパ管の破壊は、髄膜へのアミロイドβ蓄積を悪化させる。
www.nature.com/articles/s41586-018-0368-8
硬膜リンパ管を機能的に欠損させたマウスでは、タウクリアランスが損なわれる。
molecularneurodegeneration.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13024-019-0312-x
外傷性脳損傷後マウスは脳のリンパ管経路の機能障害を悪化させ、神経原線維変化病理および神経変性を発症した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25471560
加齢による髄膜リンパ管の機能不全 AQP4の広範囲の損失とCSF-ISF交換の減少の関連
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25204284
VEGF-C
髄膜のリンパ管機能障害は、老齢マウスの認知機能障害を誘発する。血管内皮細胞増殖因子C(VEGF-C)で治療すると、脳脊髄液からの巨大分子の髄膜リンパ排液が増強され、脳灌流と学習および記憶能力が改善される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30046111
インターフェロンⅠ型とⅡ型のバランス
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26877243
免疫・T細胞・インターフェロンガンマ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28446786
適切な睡眠
自然な睡眠は間質腔の60%の増加と関連しており、リンパ管を介してCSFとISF液の著しい交換を増加させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24136970
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27126038
睡眠とサイトカイン・血流
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19075717
概日リズムの適正化(睡眠と覚醒のサイクル)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29662121
13. タウのプリオン様伝播を防ぐ
https://alzhacker.com/prion/
NMDA受容体拮抗薬
NMDA受容体の刺激は前小胞のカルシウムおよびエキソサイトーシスに依存するメカニズムによってタウ放出を増加させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3615658/
ミクログリア活性抑制
14. タウの液-液相分離を防ぐ
液液相分離を防止し、混合相を増加させる。
Liquid-‐liquid phase separation
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25288112
ATPは低濃度ではALS・前頭側頭葉変性症に寄与する異常タンパク質FUSのLLPSを増強するが、高濃度では溶解する。
加齢によってATP濃度は細胞内で減少し続けており、老化細胞ではタンパク質のLLPSを高める可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30205960
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6050040/
ATPを増加させる
- ニコチンアミドリボシド
- ナイアシンアミド
- クレアチン
- アセチル-L-カルニチン
15. ミトコンドリア標的
タウのターゲットはミトコンドリアであるため、ミトコンドリア機能を増大させる方法は、タウ疾患治療の合理的な戦略である。
脳のミトコンドリア機能を改善するサプリメント
- ビタミンC、E
- グルタチオン
- コエンザイムQ10
- ユビキノン
- MitoQ
マイトファジー
損傷したミトコンドリアを除去するマイトファジーの刺激が重要
p62、NBR1がマイトファジーに必須、誘導経路はPINK1、Parkin
アルツハイマー病では頭頂皮質のSIRT1発現が45%減少しており、NFTとタウの蓄積に密接に関連している。
SIRT1活性によりPGC-1aをアップレギュレートすることでマイトファジー誘導に重要な役割を果たす。
SIRT3は興奮毒性による障害からミトコンドリアと神経細胞を保護することができる。
13. タウと相互作用するタンパク質の除去
アミロイドβ
αシヌクレイン
αシヌクレインは、タウに結合しタウと微小管との相互作用を妨害する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10464279
αシヌクレインとタウの細胞内で相互作用、ニューロン機能不全
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29738880
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27629562
link.springer.com/article/10.1007/s12031-016-0829-1
molecularneurodegeneration.biomedcentral.com/articles/10.1186/1750-1326-9-43
TDP-43
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28960544
前頭側頭葉変性症におけるタウ病理はTDP-43と相互作用しない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24861427
16. 銅キレート
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7533614/
- ケルセチン
- EGCG
- クルクミン
17. 酸化ストレスを軽減する
タウのオリゴマー化の根底には、タウを凝集しやすくする構造変化がある。
酸化ストレスのような他のメカニズムがリン酸化と相乗的に作用し、PHFの組み立てに必要な構造変化を誘導するという仮説が建てられている。
性酸化ストレスは、タウのリン酸化に異なる影響を与え得るが、酸化ストレスへの慢性曝露は、タウの高リン酸化を促進し、タウをオリゴマー化およびNFTの形成をより容易にする
酸化ストレスがタウの高リン酸化と凝集に先行していることが示唆された
タウ凝集におけるタウの高リン酸化と酸化の役割 酸化ストレス(OS)はアルツハイマー病関連キナーゼ(GSK-3β、cdk5,p38)を活性化し、PP2Aによるタウの脱リン酸化を阻害し、タウの高リン酸化を引き起こす。酸化ストレスが介在する脂質過酸化は、タウキナーゼをさらに活性化し、高リン酸化されたタウの構造変化を引き起こし、凝集を促進する毒性のあるアルデヒドをもたらす。
脂質過酸化反応
アクロレインは、アルツハイマー病脳で増加しているアラキドン酸からの過酸化産物であり、GSK-3βとp38を活性化することによってもタウの過リン酸化を促進し、タウのリン酸化におけるOSと脂質過酸化の重要な役割を再び強調している(Gómez-Ramos et al 2003)。脂質過酸化の最終産物である4-ヒドロキシ-2-ノネナール(HNE)は、リン酸化された4R-タウの組み立て能力を増加させた。
脂肪酸の酸化は、酸化ストレスとタウフィラメント形成の間のリンクとして、タウの高リン酸化を促進するための必須条件である可能性がある(Gamblin et al 2000)。興味深いことに、ステアリン酸およびパルミチン脂肪酸への神経細胞の曝露は、タウのリン酸化を増加させない。代わりに、飽和脂肪酸で処理されたアストロサイトからの条件付き培地は、アルツハイマー病特異的な部位でのタウリン酸化を増加させた。
18. HSP90の阻害?
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19363271/
タウのリン酸化と凝集は、タンパク質の構造変化と関連している。このような構造変化は、熱ショックタンパク質などのシャペロンによって制御されている可能性がある。Hsp90とタウタンパク質との相互作用を確認し、Hsp90がタウタンパク質に結合することで、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3によるHsp90のリン酸化や糸状構造への凝集などの構造変化が促進されることが示された。
proteolysis.jp/forum/thread/pid_92.html
その他
有酸素運動
軽度の糖尿病を有する軽度認知障害の高齢者(55~89歳)の45~60分間、週4回(6ヶ月間)の有酸素運動(HRR70-80%)は、脊髄液中の総タウおよびリン酸化タウレベルを有意に低下させた。
プロトコルの遵守率は92%であり、特に70歳以上の高齢者でより大幅なタウレベルの低下を示した。
www.alzheimersanddementia.com/article/S1552-5260(15)02617-5/abstract
タウパチーマウスモデルのトレッドミル運動は、脊髄中の総リン酸化タウ、可溶性リン酸化タウを有意に減少させる。しかし、海馬および皮質の可溶性タウ、不溶性タウは12週間の運動では軽減できなかった。
molecularneurodegeneration.biomedcentral.com/articles/10.1186/1750-1326-9-54
体温の低下を防ぐ
低体温はリン酸化タウを増加させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4843920/
腹膜透析
腹膜透析は、過剰リン酸化タウを軽減させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28477083
深部脳刺激(DBS)
嗅内皮質への持続的な脳深部刺激は、ADマウス皮質総タウおよびリン酸化タウを有意に減少させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29246746
タウ免疫療法
最も有望なタウ標的化方法は、タウ免疫療法である可能性がある。P-タウペプチドまたはリン酸化タウに対する抗体を介した受動的または能動的な免疫化は、タウ病理および行動異常を減少させ、認知パフォーマンスを効果的に改善する。
- AADvac-1
- Acl-35
- BMS986168
アンチセンス療法
タウの抗アセチル化
LRP1
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7786302/
LRP1はタウの取り込みと拡散のマスターレギュレーター
Rauchらは最近の研究で、神経細胞表面の低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質-1(LRP1)が生理的タウと病原性タウの両方のオリゴマーの内部化を仲介し、それに続く神経細胞への広がりを示すことを明らかにした(3)。研究者らは、LRP1の欠損が細胞培養においてタウの内部化を減少させることを実証した。
LRP1をダウンレギュレーションして変異タウを発現させると、LRP1野生型マウスと比較してタウの広がりが制限されることを示した。
個人で利用可能な抗タウ治療 トップ22
- メチレンブルー → タウ、タウオリゴマー阻害剤・ミトコンドリア・UPS
- オロチン酸リチウム → UPS活性・GSK-3β抑制
- 適切な睡眠 → リンパ管クリアランス・グリンパティック系活性
- サウナ&HSP温浴 → HSP70・グリンパティック系・金属キレート
- 有酸素運動 → オートファジー・UPS・リン酸化タウ・グリンパティック系
- トレハロース(リポソーム) → オートファジー
- リファンピシン(リポソーム・鼻腔投与) → タウの直接阻害
- クルクミン(キレート化)→ タウモノマー阻害・タウ凝集阻害・Aβ阻害・抗酸化剤、鉄キレート、銅キレート
- ミリセチン 異常タウ阻害・Fynキナーゼ阻害
- オリーブリーフ → PHF、NFT形成阻害・GLP1増強
- グルタチオン → タウによるミトコンドリア機能障害の回復
- ニコチンアミドリボシドまたはナイアシンアミド → ミトコンドリア
- CoQ10(ユビキノール)→ ミトコンドリア
- ガストロジン → UPS活性
- フルボ酸 → PHF形成の阻害
- セージ(ロスマリン酸) → リン酸化タウの阻害・Fynキナーゼ阻害剤
- ルテイン → 微小管安定
- 遠志(テヌイゲニン) → UPS活性
- EGCG → タウモノマー阻害・タウ凝集阻害・鉄キレート、銅キレート
- アスタキサンチン → AQP4、抗酸化活性
- メマンチン(低用量) → NMDAR阻害によるプリオン伝播の抑制
- ケルセチン → cdk5活性の阻害、タウの安定化、銅が多い場合は使用を控える?
個人の見解として、重要度の順位で利用可能なものを並べてみたが、それぞれ単独で強い効果を発揮するわけではなく、またタウを除去するメカニズムが異なるため、順位に関わらず可能な限り含めるのが望ましい。特にタウによる機能障害が亢進しているケースにおいては、これらのほとんどをカバーしていく必要があるように思う。