Contents
甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモン関連記事
T4(サイロキシン)/T3(トリヨードチロニン)/rT3(リバースT3)
概要
甲状腺ホルモンとは、甲状腺から分泌され、ほぼすべての細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きを持つホルモン。
より具体的には
・タンパク質合成、炭水化物、脂質代謝の調節
・成長ホルモンとの相互作用
・神経の成熟を調節
・アドレナリンなどのカテコールアミンの感受性を高める
・ビタミンの代謝を刺激する。
などといったもの。
甲状腺ホルモンにはホルモン1分子中の
ヨウ素数が4つのサイロキシン(T4)
ヨウ素数が3つのトリヨードチロニン(T3)
の二種類がある。
血中を循環する甲状腺ホルモンのほとんどはT4だが、
生理活性が強いのはT3(3~4倍)
このヨウ素を取り除いたり付加することによって、身体は生理活性レベルの調節を行う仕組みとなっている。
T4/サイロキシン
T4 概要
サイロキシンまたはチロキシン (Thyroxine) と呼ばれる。
甲状腺の濾胞から分泌される甲状腺ホルモンの一種
トリヨードサイロニンの前駆体であり、T4と略記される。
T4は、ほとんど(99.97%)がサイロキシン結合タンパク質やアルブミンなどのタンパク質と結合した不活性の状態で血液中を運ばれる。
結合していない遊離型のT4はフリーT4(fT4)と呼ばれ、ホルモン活性を有する。
血中での寿命はおよそ1週間。
認知症関連
fT4高値による認知障害の悪化
血漿中の高いfT4は、認知障害の悪化およびアルツハイマー病の抑うつへ影響を与えうる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17136019
交絡因子調整後のTSHレベル高値は認知症発症リスク低下と関連するが、T4高値は認知症発症リスクの高さと有意に関連する。
高齢者の海馬容積減少はfT4レベルの上昇と関連していた。
(T4、1pmolあたり海馬容積-2.1ml)
www.medscape.com/viewarticle/853079
fT4・rT3 高値のADリスク
5.5年の追跡調査 TSH値とADリスクの間に関連はないが、高いfT4およびrT3レベルがMRI上の海馬および扁桃体の萎縮と関連していることが見出された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16636121
T4の認知障害予防効果
アミロイドβ凝集体を海馬内に注射したADマウスへT4を投与したところ、マウスの認知障害を予防し、記憶機能を改善することが示された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20045708
T3/トリヨードチロニン
Triiodothyronine
T3 概要
トリヨードサイロニン(Triiodothyronine, TIT)、T3とも言われる。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)はT4とT3の産生を促す。
T4は視床下部でT3に変換される。
産生されたT3(T4も)はTSHの産生を阻害する。
このネガティブフィードバックにより甲状腺ホルモンが調節される。
甲状腺ホルモンはT3よりもT4が多く産生されており、血漿中のT4の濃度はT3の40倍高い。
T3は活性が強く少量しか生産されない。
T3は最も強力な甲状腺ホルモンで、体温、成長、心拍数などを含めた体内のほぼ全ての過程に関与している。
体内を循環するT3の大部分はT4が脱ヨード化されたもの。
すでに上記で説明したが、T3の構造はT4と類似しているが、1分子あたりヨウ素原子が1つだけ少ない。
T3の一般的役割
全身の組織に甲状腺ホルモン受容体が存在し、T3と結合することで多彩な生理的作用を示す。
・心拍出量を増加させる。
・心拍数を増加させる。
・肺胞換気率を上げる。
・基礎代謝率を増加させる。
・カテコールアミンの効果を増強する(交感神経活動の増加)
・脳の発達を促進する。
・女性の子宮内膜の厚くする。
・タンパク質と炭水化物の異化作用を増加させる。
認知症におけるT3の影響
T3低値
T3およびfT 3のレベルが低いほど、HPT軸(視床下部 – 脳下垂体 – 甲状腺軸)の異常と認知症との間の関連性が示唆される。
bmcneurosci.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12868-018-0436-x
APP切断の調節
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9607774/
APP発現の低下
甲状腺ホルモンT3は、アミロイド前駆体タンパク質遺伝子の発現を負に調節することを示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9804800/
アセチルコリンの増強
T3、NGFへの暴露は用量依存的にアセチルコリントランスフェラーゼを活性させた。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/0165380687900691
rT3/リバースT3
cure-guide.com/losing-weight-metabolism/
rT3の役割
en.wikipedia.org/wiki/Reverse_triiodothyronine
リバースT3とは、T3と同様T4の代謝産物だがT3の活性作用はない。(核受容体に結合しない)
一般的にはT4の約40%がT3に変換され、20%がrT3に変換される。
体が体内のエネルギーを節約しようとするとき、T4からT3ではなくT3の非活性型であるリバースT3に変換する。新陳代謝を低下させて脂肪を蓄えようとする。
そのため断食を行うとrT3の刺激が高まり体重を回復させようとする。
リコード法
リバースT3は、絶食などだけではなくストレスなどによっても上昇しT3の活性を低下させる。
リバースT3は甲状腺の活性化を阻害するためリバースT3の測定は、甲状腺機能を診断する上でもっとも重要な測定値のひとつとなる。rT3の上昇は間接的なストレス指標ともなるうる。
認知症におけるrT3
rT3高値の海馬・扁桃体萎縮
60〜90歳の高齢の1077人のコホート研究
TSHおよび甲状腺ホルモンは、認知症、アルツハイマー病のリスクと関連していなかった。
認知障害を有しない被験者において、TSHおよびT3は脳萎縮と関連がなく、fT4レベル、rT3レベルの高値は海馬と扁桃体萎縮をより多く有していた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16636121
T3/rT3比率とインスリン抵抗性
インスリン抵抗性のある被験者ではそうではない被験者と比べT3 / rT3比が有意に増加していた。比率は両者において女性と比較して男性においてより低かった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21104580