徐波睡眠(SWS)欠乏と記憶障害 眠りを深くする12の方法

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概日リズム・時間薬理学睡眠

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徐波睡眠(Slow Wave Sleep)とアルツハイマー病

決定をあせってはならない。ひと晩眠ればよい知恵が出るものだ

アレクサンドル・プーシキン

徐波睡眠(SWS)とは

睡眠は大きく(急速眼球運動のある)レム睡眠と(深い眠りの)ノンレム睡眠に分けられる。

深い眠りであるノンレム睡眠では、脳波の周波数(2~4Hz)が低い成分(徐波成分)が見られる。この徐波成分を中心とする睡眠を徐波睡眠と呼ぶ。

定義としては異なるが、睡眠の時期としてはノンレム睡眠と徐波睡眠は同じタイミング。

深い睡眠である徐波睡眠

徐波睡眠は、ヒトの総睡眠時間の10~25%を占める。[R]

このステージはヒトでは深い睡眠に該当し、健常者ではぐっすり眠れた感覚と関連すると考えられている。

体温は少し低くなり、呼吸や脈拍は穏やかになり血圧も下がる。脳の覚醒度がより下がるため、夢を見ていたかどうか確認が難しく、この状態で起こされても人はすぐに活動を始めることができない。[R]

脳の右半球と左半球で異なる保護メカニズム
半球徐波睡眠

イルカや鳥など一部の動物は、脳半球の片方だけ眠り、もう片方の脳半球を覚醒させ捕食などのリスクを避けるために警戒し続けることができる。これを半球徐波睡眠と呼ぶ。

慣れない環境での非対称性(半球徐波睡眠)の活性

ヒトでも部分的にこの機能が観察されており、慣れない環境では右脳と左脳で徐波睡眠の非対称的な睡眠深度がデフォルト・モード・ネットワーク部位で示されている。[R]

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とアルツハイマー病 DMNを変調させる20の方法

男性で少ない徐波睡眠・徐波活動

徐波睡眠には性差があり、女性は男性よりも徐波睡眠と徐波活動が多い。[R][R]

遺伝子

概日時計遺伝子PERIOD3(PER3)多形は、睡眠構造の変化と徐波睡眠の減少を予測する。[R][R]

徐波睡眠の役割

徐波睡眠の主な役割は、日常的な活動の心身を回復させる段階と考えられている。

心身の回復

徐波睡眠中は成長ホルモンが最も多く分泌され、筋肉や組織の損傷を修復する。[R]

脳内のグルコース代謝が増加し、脳内のグリア細胞は、脳にエネルギーを提供して回復する。[R]

神経伝達物質

 

記憶統合

徐波睡眠は、シナプスの調節と関連しており、覚醒中に起こったプロセスの長期増強を強化する。この時覚醒中に強く刺激されたシナプスは維持され、弱い刺激を受けたシナプスは減少するか除去される。[R][R]

徐波睡眠の減少と疾患

徐波睡眠の欠乏は、睡眠不足、うつ病、強迫性障害(OCD)、不安、ナルコレプシー、注意欠陥多動性障害(ADHD)、糖尿病、統合失調症、線維筋痛症、若年性慢性関節炎、 パーキンソン病 、自閉症 と関与する。[R]

徐波睡眠の破壊による糖尿病リスク[R][R]

アルツハイマー病

これまでの動物研究、ヒトでの研究から、睡眠不足が可溶性アミロイドβの増加を引き起こすことが観察されている。[R][R]

近年では、睡眠のどの時期や側面が、アミロイドβの異常に関与しているか研究されている。

加齢・認知症により減少する徐波睡眠

加齢によって低下する徐波睡眠

健常若年成人における徐波睡眠の出現は睡眠の初期の3分の1に頻繁に見られるるが、その量は加齢と共に減少していくことが知られている。

認知症はさらに徐波睡眠を低下

認知症の初期においても、徐波睡眠が同年代の健康成人よりも減少しており、徐波睡眠時に生じる記憶統合を妨げることによって、記憶障害に寄与することが示唆されている。[R]

徐波睡眠中では脳の代謝率が43.8%低下する。[R]

発症前に生じる徐波睡眠の変化

アルツハイマー病の前臨床段階で、睡眠構造は徐波睡眠の変化が生じる。[R]

レム睡眠はアルツハイマー病の後期で影響を受ける。[R]

徐波睡眠がアミロイドβを排出する

徐波睡眠不足によって増加するアミロイドβ

徐波睡眠はシナプスからのアミロイドβ放出を低下させることで、間質液中のアミロイドβ濃度へ強く影響を与える。睡眠不足などにより徐波睡眠が得られない場合、より高いアミロイドβレベルの放出をもたらす。[R]

徐波睡眠障害は健常者のアミロイドβを増加させる。この効果は徐波睡眠に得的であり、量や質とは関係しなかった。[R]

徐波睡眠不足によって増加するタウ

徐波睡眠障害による健常者の睡眠の質の低下は脊髄液中のタウを増加と関連していた。[R]

グリンパティック系

グリンパティック系は、脳内の血管周囲に張り巡らされたネットワークであり、間質液と脊髄液を交換する役割をもつ。アミロイドβを排出する機構のひとつとして、グリンパティック系が候補として考えられている。[R]

グリンパティックは主に睡眠中に活性化され、徐波睡眠がこのグリンパティック系を促進することが示されている。[R]

グリンパティック系

アミロイドβもまた睡眠を妨害する

アミロイドβも睡眠リズム、概日リズムを混乱させるため、睡眠を妨害し徐波睡眠を減少させる可能性がある。[R]

徐波睡眠障害はアミロイドβを増加させる[R]

徐波睡眠中の低下したコリン作動性による記憶統合

AChE阻害薬であるフィゾスチグミン投与は、ラットの徐波睡眠による記憶の統合を妨げた。これは、海馬の記憶統合と再生そして新皮質における長期記憶には徐波睡眠の低いコリン作動性レベルが必要であることを予測する。[R]

ドネペジルが徐波睡眠を増強?

徐波睡眠中はアセチルコリンは低いレベルであることが実証されている。

健常高齢者へのドネペジル投与(5mg)はステージ2ノンレム睡眠中のシグマ活性の増加と徐波睡眠中のデルタ活性の増強をもたらした。これらは睡眠中の神経可塑性を促進することを示唆する。

これは、一定レベルのアセチルコリンが、ノンレム睡眠中の記憶統合に不可欠であることを示唆する。[R]

慢性的なドネペジル使用は徐波睡眠を減少させる?

ドネペジルによる慢性的な治療は、アルツハイマー病患者のレム睡眠を増加させデルタ活動を減少させることを示唆する。[R]

ドネペジル投与によるレビー小体型患者のSWSの減少と紡錘体活動の増加[R]

ガランタミンを1日1回徐放カプセルとして投与すると、AChE阻害薬による治療を生理的なコリン作動性リズムに同期させることが可能となる。即時放出錠は、夜間のコリン作動性低下を妨げてしまうようである。[R][R][R]

徐波睡眠を増やす

ライフスタイル

炎症を鎮める

炎症性サイトカインIL-6、IL-4、IL-10、IL-13、TGF-βは徐波睡眠を減少させる。[R][R]

ストレスを緩和する

ストレスによって分泌されるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)のヒトへの静脈投与は、徐波睡眠を減少させる。GHRHの阻害。[R]

運動

激しい運動はラット脳の睡眠促進物質であるアデノシンを増加させ、徐波睡眠を増やすことができる。[R][R]

ケトンダイエット・糖質制限

ケトンダイエットなどの炭水化物の少ない食事は、健康な人のデルタ活動量と徐波睡眠を増加させることが示されている。[R][R]

ハーブ・栄養素

マグネシウム

マグネシウムの経口投与は、徐波睡眠の有意な増加をもたらす。[R]

バレリアン

バレリアン投与は不眠症患者の徐波睡眠を増加させる。[R]

テアニン

テアニンはカフェインによる徐波睡眠の減少を部分的に回復させる。しかし用量依存効果は見られなかった。[R]

プレグネノロン

プレグネノロンはGABA A受容体へアロステリックに調節することを介して、徐波睡眠を増加させるかもしれない。[R]

プロゲステロン

ランダム化比較試験 閉経後女性へプロゲステロンを300mgを、11時に投与すると徐波睡眠時間は50%増加した。この効果は睡眠が妨げられた時にのみ回復を示した。このことは、プロゲステロンが催眠薬ではなく「生理学的」調節因子として作用することを示す。[R]

CBD

CBDの投与はラットの睡眠潜時を有意ではないが増加させ、総睡眠時間を有意に増加させた。[R]

医療大麻・マリファナの神経保護作用(CBD・THC)

医学的治療

昼寝中の聴覚刺激

37人の健康な若年成人の仮眠中の音響刺激は、宣言的記憶の強化に役立ち、徐波睡眠の増強と海馬の活性化には正の相関があった。[R]

16人の健康な若年成人への音響刺激は、徐波睡眠を刺激し睡眠中の宣言的記憶を増加させた。[R]

SWS増強のための音響刺激の最適化[R]

www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0896627313002304

経頭蓋直流刺激(tDCS)

軽度認知障害(MCI)9人の男性患者と7人の女性患者への経頭蓋刺激は、徐波睡眠を刺激し記憶を強化する。[R]

統合失調症患者の記憶能力に対する睡眠中の経頭蓋直流刺激の効果[R]

THC

マリファナの喫煙ととTHCの経口投与はレム睡眠を減少させる。大麻の急性投与は入眠を促進し、ステージ4の睡眠を増加させる。[R]

薬剤
  • ティアガビン GAT-1阻害剤
  • ガボクサドール 選択的シナプス外GABAAアゴニスト
  • ガバペンチン 電位依存性カルシウムイオンチャネルのα2-δサイト
  • プレガバリン 電位依存性カルシウムイオンチャネルのα2-δサイト
  • GHB GABA B / GHBアゴニスト
  • リタンセリン 部分選択的5HT 2A受容体拮抗薬
  • エプリヴァンセリン セロトニンツーA受容体の拮抗薬(ASTAR)
  • ミルタザピン 5HT 2アンタゴニストを含む複数の受容体
  • オランザピン 5HT 2アンタゴニストを含む複数の受容体
  • トラゾドン

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2824211/

徐波睡眠を減少させる

ベンゾジアゼピン(BZD)

不眠症患者にベンゾジアゼピン(BZD)催眠薬を投与すると、徐波睡眠とレム睡眠がさらに減少することが知られている。非ベンゾジアゼピン誘導体(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン)の使用によっても減少が維持される傾向にある[R]

遅い昼寝

日中の昼寝、特に午後遅くまたは夕方の昼寝は、恒常性の調節作用により、その後の夜間睡眠の最初のステージで徐波睡眠または徐波活動のレベルを低下させる。[R]

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