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スチレンとフェニルグリオキシル酸(PGO)
Styrene / Phenylglyoxilic Acid (PGO)
概要
スチレン
スチレンは芳香族炭化水素であり、世界で最も重要なプラスチックモノマー(プラスチックはポリマーとモノマーの重合構造となっている)の一つ。
スチレン/エチルベンゼンスチレンは、プラスチックの製造、建材、、自動車の排気ガスに使用されている。
アイスクリームやキャンディーの香料として使用されることがあり、容易に蒸発し甘い香りがするが、高濃度では不快な臭いを放つ。
ポリスチレン
ポリスチレンは、スチレンをモノマーとするポリマーであり、食品包装材料として広く使用されている。スチロール樹脂とも呼ばれる。(略号はPS)
暴露源
スチレンは、工業排出、自動車の排出ガス、ポリスチレンを用いた製品、塗布材からの放出により環境中に存在する。添加物としてスチレンを含有する食品の摂取、大気汚染、タバコの煙の吸入によってスチレンに暴露する可能性がある。
ポリスチレン包装から食品に浸出するスチレンモノマーの特質が報告されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29898417
カーペットの接着剤、建造用接着剤、ポリエステル含有床材、から屋内空気中にスチレンが放出される。
職業暴露
ただし、それらのスチレン暴露レベルは、職業での吸気による暴露が圧倒的に(数桁)高い。
検査
フェニルグリオキシル酸(PGO)
フェニルグリオキシル酸(PGO)は、スチレンの代謝物であり、フェニルグリオキシル酸は、スチレン暴露のバイオマーカーとして用いられる。
フェニルグリオキシル酸自体も神経毒性作用に関与すると考えられている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8336484
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3089729/
マンデル酸
有機酸検査でのマンデル酸レベル高値は、スチレン暴露の可能性を示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1273564
selfhacked.com/blog/organic-acids-test/
補体C3・C4
スチレン暴露の労働者集団では、補体C4成分のレベルが上昇し、補体C3と暴露期間に正の相関が観察された。単球の上昇、リンパ球の大幅な減少が見られた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11025499
健康リスク・疾患リスク
粘膜刺激
大量のスチレン吸入による職業被ばくは中枢神経系に悪影響を及ぼし、集中力の低下、筋肉の衰弱、疲労、吐き気を引き起こし、目、鼻、喉の粘膜を刺激する。
DNA損傷
スチレン暴露労働者の酸化的DNA損傷
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10859650
インスリン抵抗性の増加
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3430911/
パーキンソン病様症状
スチレンへの暴露は、ラットの運動機能障害、認知機能障害、ヒトパーキンソン様症状を誘発する。抗精神病薬であるハロペリドールは、人間と動物の線条体毒性を引き起こすことがよく知られており、スチレンは、p-fluoraフェニルグリオキシル酸と代謝経路を共有する。
スチレンとハロペリドールの両方がin vivoでPGAに変換されるため、PGAは両者の線条体毒性に関連する可能性がある。しかし、PGA単独での高用量投与は、ハロペリドールとは異なり線条体毒性による運動障害を一時的にしか悪化させないことからPGAが何らかの適応の産物であることを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3089729/
スチレン代謝酵素・生活習慣との相互作用
スチレン代謝酵素CYP2E1、GSTM1、GSTT1がスチレン代謝プロセスの特定のステップに直接関与する。喫煙、飲酒、運動などの生活習慣がスチレン代謝酵素の発現と誘導に影響し、ホメオスタシスの調節、そして最終的にスチレンの代謝に仲介的な役割を果たすと考えられる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4751445/
聴覚機能
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18762967
繊維強化ポリマー複合材料(FRP)労働者での高いスチレンリスク
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31284836
推奨レベルである20ppm未満でのスチレン暴露による健康リスク
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21030303
治療
暴露源を遠ざける
スチレン暴露リスクのある職場環境から離れる。
スチレン製品、香料を避ける。
プラスチック包装された食品や缶詰食品の摂取を避ける。
プラスチック容器を保存用として使用しない。(特に脂肪の多い食品)
良い脂質の選択。オーガニックを選択
電子レンジでプラスチック容器を使うことを避ける。
熱い食べ物の食器、食器は、ガラス、磁気、ステンレス製を使う。
グルタチオン補充療法
経口、静脈投与、経皮
N-アセチル-システイン
クリアランス(排出)能を高める
遠赤外線サウナ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3504417/
ナイアシン補充療法
ポリスチレン素材の容器を使った調理、再加熱、またはホットドリンクを避け、ガラス、髪、スレンレスなどの容器に変える。
参考文献
www.greatplainslaboratory.com/
www.nihs.go.jp/hse/chem-info/ntp/ntpj/Styrene-j.pdf