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食事の概要
アルサプはサプリメントを中心に組み立てられたプログラムではあるものの、食事をないがしろにしていいというわけではなく、認知機能に有益な必要最小限の食事法と組み合わせることで効果を最大させることを前提としている。リコード法に正しく従った食事方法(ケトフレックス12/3)を以下の記事で解説しているので、それを参照してほしい。
この記事はリコード法食と完全にイコールではなく、ケトフレックス12/3の実践においてのいくつかの重要なポイントをある程度簡潔にまとめた形になっている。またよくあるつまずきやすい点など、管理人の解釈のもと代替策、妥協案を提案している。
食事は引き算から
食事は得てして何を食べるべきか、摂るべきかについてといった議論が強調されがちだが、何を食べないか、いつ食べないのかといったことへの努力は相対的におろそかになりがちだ。
有害食品の制限
まずは有害リスクの高い食品を避けるという基本原則を守る。サプリメントにできることは、栄養素の足し算であって、認知機能に害を与えるものを取り除くという引き算はできない。(多少和らげたり、修復することはできても)
特に問題を引き起こしやすいものとして、
- 揚げ物、飽和脂肪酸、酸化した油、植物油、種子油
- お菓子やコーラなどの単純炭水化物(糖質制限は難しいので、まず単純炭水化物を避ける)
- 加工度の高い食品(加工肉、コンビニ弁当)、ブドウ糖果糖液糖
- 大型魚(水銀)
- 大量の未発酵大豆および未発酵大豆製品、大豆油
- パン、小麦粉に含まれるグルテン(グルテン除去食により脳のもや(ブレインフォグ)が改善したという事例報告が多い。)
アルサプで代替が難しく積極的に加えてもらいたい食品
- 大量の葉野菜、特に濃い緑の野菜
- アブラナ科野菜(調理法に注意)
- ブルーベリー(冷凍>ドライ)
- きのこ(しいたけ、舞茸、えのきなど)
- アボガド(スーパーのアボガドでOK)
- エキストラバージン・オリーブオイル(安いオリーブオイルは避ける)。
- 発酵食品全般
- ココナッツウォーター(仮)
- 特に魚卵(いくら、明太子、子持ちししゃも)
卵や小魚タンパク質の補充を意識する。(難しければグラスフェッドプロテイン)
※厳格な糖質制限時では、タンパク質摂取量は正確に計算する必要がある。
絶食
次に重要になってくるのが、食事をどのように食べないのかということについてだが、これには大きく3つのポイントがある。
- 絶食の時間帯(寝る前、起床後)
- 食事の回数、食事の間の間食
- 食事の時間帯によって避けたほうがよい食品成分や栄養素
ただし、肥満の人を除いて総摂取カロリーが減るわけではない。詳しくは後述するが、カロリーが不足しないよう注意してほしい。
1. 炭水化物
フェーズ1 単純炭水化物を避ける
糖質制限には大きく二つの区別があり、まず普段から糖質を大量に摂取していることに気がついていない人が結構多く、一般的な栄養学の基準に照らし合わせても問題ありの糖質を減らしていくこと。ご飯を二膳食べていた人が一膳にするといった具合だ。
次の段階では血液中のケトン値を高め神経保護効果、治療効果を得るための糖質制限。これは、白米を一切食べないというレベルにまで減らしていかないとむずかしい。ケトンの測定器も必要なため、ハードルが高い。アルサプでは、フェーズ1をまず目指す。そしてその次にゆるい糖質制限とケトンソルトを組み合わせて、ケトン増加を目指す。
まずは悪い炭水化物を、認知機能に良い炭水化物に置き換えることから始めていく。そして糖質制限ケトンダイエットについて学習しつつ段階的に減らしていく。
フェーズ2 良い炭水化物の利用
- さつまいも、タピオカ、里芋、ヤムイモ
- 高アミロース米(ササニシキ、北瑞穂、越のかおり、夢十色、ホシニシキなど)
- 低カドミウム米(コシヒカリ環1号、火山地域の土壌対策されていない米に注意)
- オーツ麦
- 生はちみつ(少量)
- ポップコーン(ココナッツオイルによる自作限定)
- 小麦を使用していないそば
- グリーンパパイヤ、柿、栗、青バナナ
- レクチン除去後の豆、レンズ豆
- トレハロース
フェーズ3 外部からのケトンを利用
- ケトンソルト 3~15g(またはケトンエステル)
- MCTオイル 3~15g
ケトンソルトとMCTオイルを組み合わせて摂取 6gから徐々に増やしていく。
ケトンソルトの味がなじまなければMCTオイルに置き換える
下痢をする場合は適宜、下痢が生じないレベルまで暫時減らしていく。
ゆるやかな糖質制限と組合わると、ケトンレベルは高くなりやすい。
フィトステロール(ステロール、スタノール)と組み合わせることで、飽和脂肪酸のリスクによるコレステロールの増加リスク、そしてsd-LDLを減少させることができる。ココナッツオイルによってLDLが増加するかどうかは相反する研究結果が存在する。フィトステロールの摂取や遺伝的変動、運動などの環境要因が影響するものと思われる。
LDL-pを基準に考える
外因的にケトンを投与してケトンレベルを上昇させる方法は、LDL-p(LDL-粒子数)の検査値を基準にする。ApoE4患者さんでMCTオイルやココナッツオイルを多様したとしても、LDL-pが正常値であれば中鎖脂肪酸を用いたダイエットは継続しても構わない。
フェーズ4 内因性のケトン生成
ケトンソルト、MCTオイルの利用により認知機能を改善が見られ1~2ヶ月が経過したら、ケトン測定器を用意して計算に基づくケトンダイエットに徐々に切り替えていく。
その理由については以下の記事を参照してほしい。
ケトンダイエット(糖質制限)によってを行うには栄養計算に基づいて、計画的に糖質を制限していく必要がある。栄養等の計算などが苦手など、まったくわからない状態から始める場合、慣れるまでヘルスコーチのような支援してくれる人がいることが望ましい。
認知機能の低下が見られなければ、良い炭水化物の比重を高めた食事を週に1~2回取り入れる。
重要な2つのポイント
糖質制限であってカロリー制限ではない!
これまでリコード法を実行して認知機能が悪化したと管理人に報告してきた人の半数以上が、単純に糖質だけを減らし、その結果脳のエネルギー欠乏を招き悪化させてしまっている! 当たり前のことながら減らした糖質のカロリーと同等のカロリーを良質の脂質で補う必要があるのだが、ちょっとアボガドを増やしてみたか、オリーブオイルを小さじ一杯加えたといった感じで、増やしたつもりになってまったく足りていないケースを何度も目にしてきた…、一方でオイルの過剰摂取もまた有害な影響をおよぼす。少量で多くのカロリーを含むからこそ、正確に計測して適正量を理解する必要がある。必ず栄養計算を行って一日のカロリー収支が満たされるようにすること。(特にBMIが20を切っている場合は危険)
高いケトンは強力かつ即効性がある
アルサプのスケジュールでは、ゆるい糖質制限(特に晩)と外因的なケトンを組み合わせるアプローチを採用しており、ケトンの最大効果を得るための追求をしていない。認知症患者さんではケトンレベルの高さが、1.0~1.5を超えた時に、大きな治療効果を発揮しており、特に進行した患者さんや糖代謝に問題のある患者さんでは大きな症状の改善を示す可能性が高いため、真剣に取り組む価値がある。
また、一般的にアルサプにせよリコード法にせよ、数ヶ月半年単位で辛抱強くその成果を見ていく必要があるのだが、ケトンダイエットにおいては正しく行えば、(つまりケトン値が高くなれば、)体感しやすい取り組みのひとつであるため、例えば患者本人や他の家族が納得していない場合、強い説得材料として提案することができるというメリットは人によっては計り知れない。
脳の糖代謝障害は、初期の段階でほとんどのアルツハイマー病患者さんに存在する。必ずしも血中測定にそのまま反映されているわけではないため、測定されたインスリン抵抗性や血糖値だけで判断はできない。
2. 良質の脂質を摂る
まず最初に
- チップス、ラード、揚げ物などの飽和脂肪酸、酸化脂質、加工食品は厳禁
- 市販のアマニ油などオメガ3脂肪酸を含む液体オイルは、開封後1~2週間で酸化してしまう可能性が高く、現実的に一般の家庭でそれまでに消費することは難しいと思われる。結果、健康に良かれと思っていることが逆効果になる可能性もあり現実的には勧められない。良い脂質は新鮮な食材から得るようにしたい。それが困難な家庭ではセカンドベストとして信頼できるサプリメントに頼ったほうが賢明かもしれない。
- 動物性脂肪特に高等生物の脂肪はPBCや抗生物質などの様々なディメントゲンが高濃度で濃縮されている可能性高く、相対的には農薬野菜よりもリスクが高い。
フェーズ2
- エキストラ・バージンオリーブオイル(スーパーの安物は避ける)大さじ2~/日
加熱料理には原則使わない。調理では最後に用いる。 - アボガド 半個~1個/日
- ローストしていない生ナッツ 30~50g(保管は必ず遮光&冷蔵か冷凍)
※レクチン感受性、リーキーガットがある場合は一晩水につけてから。
極力、炭水化物と脂質は分けて摂取したほうが良い。時間栄養学的には昼に炭水化物を多めにし、夜は良い資質をメインにした食事にしたい。
フェーズ3
- 魚の卵(いくら、筋子、明太子、ししゃも)
ApoE4キャリアのアルツハイマー病患者さんでは、サプリメントによるDHA摂取は有益な効果が示されておらす、最近の研究では魚などに含まれるレゾホスファチジルコリン形態のDHAによる脳への送達可能性が示唆されている。しかし魚の卵に一桁多いレゾPC-DHAが含まれていることから魚の卵に含まれるDHAを積極的に摂取することが、特にApoE4患者さんにとっては有益である可能性がある。
レゾPC-DHAはクリルオイルサプリメントにも含まれており、DHAの長期的な高用量摂取でも達成できる可能性があるが、ApoE4キャリアの脂質代謝の重要性から併用しておくことが望ましいだろう。
3. 野菜をたくさん食べる
フェーズ1
- 葉野菜をたくさん食べる
野菜の量は多くの人がしっかり摂っているつもりで、実はリコード法の基準には足りていない。リコード法は根野菜ではなく葉野菜がメインのため、特にサラダのような形で摂取しようとすると、想像するよりもかなりのボリュームが必要となる。
大量の野菜を食べることが難しい人にとって、食事の一部にスムージーを取り入れることは効率的な解決方法のひとつだろう。
生野菜を大量に摂取する場合はゴイトロゲンの問題に注意したい。
フェーズ2
- アブラナ科野菜を中心に。ブロッコリーはほぼ必須の食材
- ブロッコリーは蒸す、または60~70度の温度で茹でる(重要)
ブロッコリーが苦手な人は、ブロッコリースプラウトを利用
生のブロッコリーも大量でなければOK、わかめ類を摂取してヨウ素欠乏を防ぐ。
オーガニックが望ましいが、市販野菜を避けて栄養バランスを崩すよりは市販野菜をバランスよく食べたほうが良い。(ただし輸入野菜・果物は基本避けておく)
- しょうが、にんにく(低温または生)、ニガウリは偉大。
- 週に一回は食べたいものを食べても良い(認知機能に影響が無い限り)
甘いものへの渇望がある場合、ステビアを利用、タンパク質量を増やすと甘いもの欲求は抑えやすくなる。アイディアとして甘いものを週1~2回まで筋トレした日にOKにするなど。
野菜中心の食事 オプション
野菜中心であるべきだが、肉や魚の摂取量が少ない場合はクレアチンの摂取を検討する。
- クレアルカリン 錠剤(中サイズ) 1~2錠(0.75~1.5g)/日
- クレアチン 錠剤(大サイズ) 2~3錠(2.5~3.25g)/日
- クレアチン パウダー 3g/日
- クレアチン パウダー(代替) 3g/日
- タウリン 毎食後 2~3g
腎臓に問題がない → クレアチンモノハイドレート 3~5g/日 クレアルカリン 1~1.5g/日
腎機能に障害がある → クレアチンモノハイドレート 0~3g/日 クレアルカリン 0~1g/日
4. 認知機能改善効果の特に高い食品
認知機能に良いとされる食品は様々にあるが、その中でも特に単独での食品としては強い証拠があり、サプリメントで得ることが難しく(ゆえにアルサプには含めていない)食事での摂取が好ましいと考えられるもの。
- ブロッコリー 50g~(品種、栽培方法にも依存)
- ブルーベリー(ドライよりも冷凍を推奨)100g
- シークワーサー、新姫、くがにー、ぽんかん、新姫の皮のいずれか、一切れ~
- じゃばらの皮 一切れ~
- 河内晩柑の皮 一切れ~
- きのこ(椎茸、舞茸、エリンギなど)(エルゴチオネイン50mg相当) 週二回~
- 海藻類(ひじきを除く、毎日の大量の昆布は避ける)
- ココナッツウォーター(仮)100cc~
ベリー類は糖質に対する割合として有益なポリフェノール含有量がその他の果物と比較して非常に高い。MCI患者ではブルーベリー(125g)摂取により記憶と関連する脳酸素消費量が有意に増加する研究が示されている。。[R]。ドライブルーベリーは処理によっては大きくアントシアニン、ポリフェノールなどの有益な成分が失われる。生の果実が理想的だが、より入手の容易な冷凍ブルーベリーではそれらが比較的長期間維持されている。
柑橘類は皮に抗認知症成分が高濃度で含まれている。ある程度の治療効果を得るレベルに達するには果実だけでは厳しく、果皮ごと摂取することが望ましい。乾燥させて煎じるか、スムージーが現実的だろう。一般に皮には果実と比べ高濃度の農薬が含まれていることから、皮を利用するのであれば無農薬であることが望ましい。ただし、果物に含まれる果糖(加工食品にも多く含まれる)は認知機能への悪影響を及ぼす可能性があるため、大量には摂取しない。その働きからダラダラと食べる食べ方は控えたい。夜食においても最小限にしたいところ。
キノコには様々な抗認知症効果をもつ成分が含まれているが、その中でもエルゴチオネインがアミロイドの神経毒に対する保護作用、ミトコンドリア機能障害の予防、参加損傷からの保護、金属キレート作用など広範囲の改善効果をもっている。価格も手頃で入手も簡単であり必要な量を満たせるため、サプリメントで摂取する必要性はあまりない。キノコにより含有量が異なるが、エリンギ、ぶなしめじ、ヤマブシタケ、ヒラタケ、椎茸あたりは同レベル(0.03~0.1%)のエルゴチオネインが含まれる。
ほとんど知られていない栄養素Queuine (ケウイン)、認知機能改善としての証拠は不足しているものの、いくつかの重要性を示唆するデータから欠乏を防ぐ目的として保険的に含めている。ヨーグルト、トマト、小麦胚芽、牛乳、ヤギミルク、ココナッツウォーターなどに含まれる。乳製品のβカソモルフィンと乳糖、トマトのレクチン、小麦胚芽のグルテンとそれぞれにリスク成分が含まれるため、現在知られているケウイン含有食品の中で消去法でココナッツウォーターが選択肢として残る。
5. 小麦粉・乳製品・加工食品を避ける
グルテンとレクチン
・グルテン不耐症ではなくリーキーガットが無い場合は小麦粉を少しなら食べても問題ないが、認知症患者の多くは隠れリーキーガット。(典型的なリーキーガットの症状がほとんど現れない。)
・小麦粉を食生活から完全に避けるのがむずかしいと思うが、グルテン感受性が未検査である場合、試しに3ヶ月だけ厳格な小麦制限(グルテン・レクチンフリーダイエット)を行なってみてほしい。多くの認知症患者さんが主観的にも認知機能の改善を示していることがブレデセン博士のグループから報告されている。(一ヶ月のグルテン制限では完全な回復にいたらず、小麦グルテンを少量なら良いだろうと摂取し悪化が長引くケースが多い。)
市販野菜の農薬も可能なかぎり避けるべきだが、リスクの高さとしてはグルテンがより高い。
どうしてもパンなどの小麦粉製品を食べてしまう
tTG抗体を調べて陰性かつ、リーキーガットがなく、摂取して症状の発現がなければ少量ならOK。
どうしても摂取する場合は、朝~昼限定にし、小麦粉の連続摂取を避け、数日おきに摂取して腸の修復期間をもうけるだけでもダメージが違ってくる。
・小麦粉製品を食べる前に摂取
乳製品
一般のミルクに含まれる「乳糖」と「βカソモルフィン」のこの二つが腸の炎症因子として避けておきたい。最近の研究では乳糖よりも市販のミルクに含まれるA2カゼインの影響が大きいのではないかという報告がある。
日本の乳製品の99%は炎症性因子であるβカソモルフィンを含むA1ミルク、でありごく一部の牧場でA2ミルクが作られている。ヤギミルクもβカソモルフィンが含まれていないため、乳糖分解酵素との併用で利用可能。
ヤギミルク、A2ミルクの入手が難しい場合は、ヨーグルトを少量利用、手作りが望ましい。
一般の牛乳は避けるべきだが、市販牛乳に限ると成分無調整よりも低脂肪牛乳がまだまし。ヨーグルトはよりベター。
安全な乳製品の入手
A2ミルク販売
牛乳の代わりにヤギ乳ミルク+乳糖分解酵素
国内でのヤギミルク購入
市販の乳製品を摂る場合(グルテンにも使用可)
有機・無農薬食品
有機・無農薬食品の優先度や重要度は腸内環境にも依存する。
理想的には有機、無農薬が望ましいが、危険性と重要性の順番を間違えないこと。
また無農薬にこだわるあまり重金属やカビ毒も多くの人が見落としている。当然毒性の量にも依存するが、3型の患者であればマイコトキシンなどのカビ毒が穀物やナッツなどに含まれていないことに農薬使用かどうかよりもより多くの警戒のためのリソースを要する。
リスクの高さ
- 野菜を少ししか食べない>>市販野菜>有機・無農薬野菜
- グルテンを含む有機パスタ>グルテンフリーの加工パスタ>グルテンフリーの自作パスタ
- カドミウム含有量の高い有機・無農薬米>>カドミウム含有量の低い一般のお米
- 鉛含有量の高いオーガニックチョコレート(南米産に多い)>鉛含有量の低い一般のチョコレート(アフリカ産は比較的OK)
6.タンパク質
リコード法ではケトンダイエットを実行することを前提とするため、その阻害要因の可能性のある高タンパク食(アミノ酸が糖質として利用される可能性がある)は過剰摂取を控え、グラスフェビーフや天然の新鮮な小型魚、グラスフェッドの卵、キノコなどがタンパク質源として推奨となっている。しかし、このアルサプではケトンダイエットを毎日行うことが必ずしも前提としていない。
また多くの高齢者が一般的な食事ではタンパク質の摂取不足があることは広く知られており、体を作る材料であるタンパク質が不足すると様々な不調のみならず、抗酸化作用、解毒作用をもつタンパク質酵素の低下など認知機能にも影響を及ぼしかねない。
フェーズ1
- 卵
- 納豆
- グラスフェッドプロテイン
- チキン胸肉・ささみ、軟骨(週1~2回まで)
一般家庭で現実的かつ妥協できるファーストラインは、市販の卵と納豆だろう。腎臓疾患等の制限理由がない限り食事からのタンパク質量を体重×1.0~1.3倍は確保したい。本格的なりコード法の開始まで、不足分をグラスフェッドのホエイプロテインで補うのはけして悪い選択ではない。(ただしホエイプロテインはβ2カゼイン、乳糖など懸念する成分も含まれるため、トレードオフとしての利益を考える)
ただし、プロテインの過剰消費(特に糖質や脂肪が不足している場合)は、アルツハイマー病患者さんで障害のあるアミノ酸の異化作用により神経変性に寄与する可能性も理論的にありえる。一度の食事で極端に多すぎる高タンパク食品には注意が必要。
豆腐は認知機能を低下させる可能性を示唆する研究がいくつ報告さえている。過剰摂取するのでない限り大きな影響はないと考えているが、主要なタンパク源として、または毎日食べることは控えておいたほうが良いかもしれない。
プロテインの原材料には一長一短、製法や品質などこだわりだすと選択が難しくなるが、予算が潤沢にあれば、ヤギミルクプロテイン、次点でヘンププロテイン、予算が限られている場合は、グラスフェッドのホエイプロテイン。
- フレーバーなしがベスト、フレーバー付きを買う場合、人工甘味料を使っていないものを選ぶ(ステビアがベター)
- 乳糖不耐症を有する場合は、WPCではなくWPI(ホエイ・プロテイン・アイソレート)を選択。さらには乳糖分解酵素を利用する。WPCにも利点はある。
- 加工されていない100%の製品では、糖質の含有比率が少ないものがよりタンパク質変性が少ない傾向にあることが文献で示唆されている。
7. お酒・アルコール
ApoE遺伝子検査を受ける。ApoE4遺伝子を持っていない場合は赤ワイン(ロゼではない)を140ccまでなら飲むことができる。
ApoE4患者さんは禁止
ただし、酒飲みだった人の突然の禁酒は認知機能の悪化を招く可能性もあるため、何らかの形で酢酸を摂取しながら徐々に減らしていく。
どうしても飲むことがやめられない場合のための対策方法を以下に記載しておく。
飲み方
- ゆっくり飲む
- 食後に飲む
- 紅茶や緑茶の後に飲む
- 水分補給(アルコールの利尿作用による脱水を防ぐ)
- 喫煙しない
- 薬との相互作用に注意(アスピリン、シメチジン、ラニチジンなど)
アルコール摂取前の緩和策
- 高用量ビタミンC
- N-アセチル-L-システインまたはL-システイン
- グルタチオン
- タウリン
- SAMe
- αリポ酸
- クローブの芽
- ニコチンアミドリボシド
重要な栄養素・ハーブ
- ミルクシスル(シリマリン) 肝機能の強化
- ビタミンB1(チアミン)重要
- ビタミンB6、B12
- ビタミンE + セレン
- マグネシウム (アルコール消費は体内マグネシウムを消耗させる)
ライフスタイル
- 運動 解毒酵素Nrf2の活性、発汗による排出
- サウナ (サウナでの飲酒は避ける)
www.nutranews.org/en–liver–preventing-some-the-harmful-effects-alcohol–1246