アミロイドβの分解を促進するホルモン ソマトスタチン

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ソマトスタチン(アルツハイマー病・認知症)

概要

ソマトスタチンは、視床下部、膵臓、消化管で産生され分泌し、その他多くのホルモンの分泌を抑制し身体の広範囲に作用するペプチドホルモン。

ソマトスタチン受容体を介して、神経伝達、細胞増殖などに影響を与え、ガストリン、セクレチン、インスリン、グルカゴンなどの分泌を抑制する。

Wiki[R]

アルツハイマー病患者の低いソマトスタチン

ソマトスタチンは、アルツハイマー病患者の脳および加齢によって低下することが知られている。

ソマトスタチンの低下

ネプリライシンの活性低下

アミロイドβの上昇という機序仮説

[R][R]

ソマトスタチンの主な機能
  • 下垂体からの成長ホルモンの分泌の抑制
  • ランゲルハンス島からのインスリンおよびグルカゴンの産生・分泌の抑制
  • 消化管からの栄養吸収の抑制
  • セクレチン・ガストリン、胃液、胃酸の分泌の抑制
  • ネプリライシンの活性を高め、アミロイドベータの分解を促進

Wiki[R]

ソマトスタチンの脳における機能

ソマトスタチン産生細胞と受容体は、脳および脊髄を含むいくつかの領域に広範囲に分布する。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2907936

視床下部

視床下部から分泌されたソマトスタチンは成長ホルモンとTSHを阻害する。

体温、のどの渇き、空腹、下垂体によるホルモン放出、一部は睡眠と感情を制御する。

下垂体

成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなど、多くのホルモンの分泌を抑制する。

成長ホルモン分泌は負のフィードバック制御を行っており、成長ホルモン、ソマトメジンの濃度が高いとソマトスタチンを放出して成長ホルモンの分泌を低下させる。

海馬

記憶と感情に関与する。

皮質

記憶、注意、意識において重要な役割を果たす。

脳幹

心拍数、呼吸、睡眠、食事を制御する。

脊髄

感覚と運動機能を制御するために、脳との間でメッセージを体の他の部分に送る。

神経伝達物質・ホルモン

ソマトスタチンは、神経伝達物質とホルモンに対する抑制効果と興奮性効果の両方の効果がある

アセチルコリン、セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン、およびエピネフリンを増加させる。

成長ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモンの放出を阻害する。[R]

アルツハイマー病

ソマトスタチンは、脳内の神経伝達物質とホルモンによって制御されている。[R]

神経ペプチドでもあるソマトスタチンが、アミロイドβ分解作用のあるネプリライシン活性させる。[R]

アミロイドβ分解酵素ネプリライシンを上昇させる10の方法(アルツハイマー病・認知症)

ドーパミン、アセチルコリン、成長ホルモンはソマトスタチンを増加させる。

GABA、副腎皮質刺激ホルモンはソマトスタチンを阻害する。

ニューロテンシンは、視床下部および皮質の一部(新皮質)のソマトスタチン分泌を刺激する。

血管作動性腸管ペプチドは、視床下部のソマトスタチン分泌を阻害するが、新皮質からの放出を刺激する。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2907936

「somatostatin」の画像検索結果

www.researchgate.net/figure/Schematic-depicting-the-hormonal-actions-of-somatostatin_fig2_38038932

ソマトスタチン受容体、5種類のサブタイプ

ソマトスタチン受容体(SSTR)は5種類存在し、ソマトスタチンはすべての受容体に対して高い親和性を示す。

SST遺伝子の多型がAD発症リスクと関連している。

ウサギ抗体を使用した研究では、アルツハイマー病皮質では、SSTR1、3、4のような免疫反応性がグリア細胞で強く発現していたが、SSTR2と5は発現していなかった。このことはアルツハイマー病脳ではSSTR1ではなく、SSTR2、4、5の免疫反応性の損失を示し、前頭皮質のSSTR3の増加を示唆する。[R]

ソマトスタチン受容体サブタイプ
SSTR1

アルツハイマー病の創薬標的として研究されているのは、SSTR1とSSTR4

SSTR2

がん細胞、腫瘍血管で異常に発現

ソマトスタチンは、脳内のSSTR 2と相互作用して、グレリン血漿レベルの増加を強く誘導する。[R]

SSTR3

アルツハイマー病患者の皮質で増加

SSTR4

哺乳類では、SSTR4は海馬や皮質、嗅球に高度に、発現しており、アルツハイマー病治療標的として有望視されている。[R][R]

しかし、SSTR4アゴニスト投与による長期的な活性は受容体のダウンレギュレーションを引き起こし、逆にシナプスの密度を低下させるかもしれない。

ソマトスタチンの活性と阻害

ソマトスタチンの活性

食事

食事摂取などにより血中の高いグルコース、アミノ酸レベルによって膵臓から分泌される。

睡眠不足

睡眠不足はラットの視床下部からのソマトスタチンおよび成長ホルモンを増加させる。[R]

ヘチマ(Luffa cylindrica)

ヘチマの2つの成分は、ラットの脳の海馬領域でソマトスタチンを上昇させる[R]

ほうれん草、イボウキクサ

ソマトスタチンタンパク質が含まれる植物[R]

ソマトスタチンの阻害

インスリン、膵臓ポリペプチド、オピオイド、サブスタンスP

CDP-コリン

視床下部で産生されるソマトスタチンは、下垂体前葉からの成長ホルモンの放出を阻害する。

ソマトスタチンはCDP-コリンによって阻害され、成長ホルモンの減少速度を遅らせることを示唆している。[R]

コリン作動薬

実験的研究により、コリン作動薬での治療により、視床下部からのソマトスタチンの放出が阻害され、成長ホルモンの放出が増加することが示された。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2108443

血管作動性腸管ペプチド(VIP)

血管作動性腸管ペプチドは、視床下部のソマトスタチン分泌を阻害するが、新皮質からの放出を刺激する。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2907936

ソマトスタチンが阻害するその他のホルモン分泌

成長ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモンの下垂体分泌、

インスリン、グルカゴンなどの膵臓ホルモン分泌、

ガストリン、セクレチンなどの胃腸ホルモン分泌、

睡眠の質の低下

ソマトスタチンの投与は、高齢者の総睡眠とレム睡眠を短縮し睡眠の質を低下させた。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9109105

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