歯周病(P.ジンジバリス)とアルツハイマー病 36の予防・治療方法

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口腔衛生・咀嚼機能感染症生物毒素

歯周病菌 P.ジンジバリスの原因と改善方法

Porphyromonas gingivalis
ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.ジンジバリス)

概要

歯周病菌の親分 P.ジンジバリス

WHOによると歯周病は世界中で成人の10~15%に影響を及ぼしている。[R]

歯周病菌は500種類を超えると言われており、その中でもP.ジンジバリスは歯周病に関わるもっとも重要(極悪)な細菌。口腔内の二大感染症のひとつと言われる。

慢性歯周炎患者のプラークサンプルの87.75%でP.ジンジバリスが見つかっている。[R]

口腔以外でも見つかるP.ジンジバリス

P.ジンジバリスは主に歯周病の感染者の歯肉に見られる。しかし、口腔疾患のない健常者でも25%の確率で発見されることもある。[R]

歯周病だけではなく上部消化管、気道、結腸に存在することがあり、女性の膣炎において見つかることもある。[R]

長年にわたり歯周病と心血管疾患の関係を示す多くの研究が行われており[R]、最近の研究で心血管疾患患者全員の冠状動脈でもP.ジンジバリスが検出されることがわかった。[R]

口腔内は微生物の動物園

口腔の表面は34~36度、pHは中性に近く、微生物が住むのに非常に最適な環境となっており、様々なクラスの微生物相がニッチに分布している。

口の中には細菌だけではなく、真菌、マイコプラズマ、原生動物、ウイルスも住んでおり、700種類以上の細菌が少なくとも60億個存在する。[R]

口腔内はこうした多様なコミュニティによって安定した環境が成立している。そのため口腔内の微生物叢のバランスが崩れると、虫歯や歯周病などの口腔疾患を発症し、病原性微生物の増殖につながる。

歯周病の原因は?

歯周病の原因はなにか歯周病研究の歴史を紐解くと、興味深いことが見えてくる。

1930年代から1970年代までは歯周病に特異的な細菌を見つけることができなかったことから歯周病の「非特異的理論」が提案される。特定の菌種は重要ではなく微生物の共同事業によって歯周病は引き起こされるという仮説である。[R]

しかし、1970年代後半以降にはより特異的な歯周炎の病原体が見つかったことから、やっぱり特異的な病原菌の関与が大きいのではという側に傾く。[R][R]

現在は無数の細菌が段階的に関与していると再び考えられようになった。歯周組織の炎症は歯周細菌の定着によって引き起こされるが、歯の表面に最初に定着するのは主にレンサ球菌と放線菌であり、時間が経過するとグラム陽性通性嫌気性細菌の割合は減少し、歯と歯茎でグラム陰性嫌気性菌が最終的に定着するという言わば多段階説だ。[R]

しかし、歯周病が最終的に引き起こされるかどうかの決定には、病原菌の攻撃性、細菌叢と宿主防御メカニズムの間にある複雑な相互作用が大きく影響を与える。[R]

歯周病は多因子疾患ではあるが、P.ジンジバリスのような病原菌も活躍しており単純に寄り集まって生じるというわけではない。現在進行系のアルツハイマー病の原因探索の過程を思い返さずにはいられない。

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歯周病の病原菌
  • アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス
  • タンネレラレンギョウ(バクテロイデスフォルサイス)
  • プレボテラ、フソバクテリウム
  • P.ジンジバリスなどのグラム陰性桿菌

これらは単一では歯周病の進行に破壊的な影響を与えることはできない。菌同士の協調的な相互作用を必要とする。[R]

P.ジンジバリスの感染源

  • ペット
  • キス
  • せき
  • くしゃみ
  • 食べ物をシェアする
  • カップやグラスを共有する
  • ストローやスプーンなどの共有

アルツハイマー病

脳感染による認知機能の早い低下

脳のジンジパイン負荷はアルツハイマー病の認知障害と相関することが示されている。

アルツハイマー病患者の前向き観察研究では、慢性歯周炎を有するアルツハイマー病患者では慢性歯周炎のない患者と比較して6ヶ月後に認知機能(MMSE)の顕著な低下が報告された。[R]

アミロイドを増加させる

マウスモデルの実験では、P.ジンジバリスの経口感染は認知機能を損ない、脳のアミロイドプラーク沈着を増加させた。[R]

アルツハイマー病患者の死後の脳解剖ではP.ジンジバリスが検出されており[R]、脳のP.ジンジバリス感染がアルツハイマー病の病因に役割を果たす仮説が提案されている[R]

ダウン症候群と歯周炎、そしてアルツハイマー病

ダウン症候群患者ではアルツハイマー病の有病率が著しく高いことが知られている。[R]

ダウン症候群の患者は、非常に早い年齢で歯周炎を発症することが知られており、他の精神障害の患者と比較しても歯周病の有病率が高い。この原因はわかっていないがダウン症候群と関連する免疫不全である可能性がある。[R]

ジンジパイン

ジンジパインは、P.ジンジバリスが産生する毒性因子。(システインプロテアーゼ)

  • リジン-ジンジパイン(Kgp)
  • アルギニン-ジンジパインA(RgpA)
  • アルギニン-ジンジパインB(RgpB)
アルギニン-ジンジパインB(RgpB)

アルギニン-ジンジパインB(RgpB)は、アルツハイマー病海馬、アストロサイト、アルツハイマー病病理と共局在する。[R]

リジン-ジンジパイン(Kgp)

リジン-ジンジパイン(Kgp)は、アルツハイマー病大脳皮質において検出されている。[R]

免疫反応の低下

ジンジパインは宿主の複数の免疫反応シグナルを低下させる能力をもち、炎症誘発性サイトカイン(IL-1β、IL-2、IL-6、TNF-α、IL-8など)を切断することで、宿主の免疫応答を回避する。[R]

創傷治癒を妨害

P.ジンジバリスは、外膜小胞に包まれた毒性因子ジンジパインを放出する。これは、宿主細胞の障害を引き起こす細菌爆弾である。マトリックス金属タンパク質、コラーゲン、フィブロネクチンの分解により、宿主細胞と細胞外マトリックスの相互作用を妨害し、創傷治癒を妨げ、歯周組織の破壊を引き起こす。[R]

発症メカニズム

タウの断片化

P.ジンジバリスとジンジパインはタウを断片化する。[R]

アミロイドβのP.ジンジバリスに対する抗菌作用

アミロイドβ42はP.ジンジバリスに対して抗菌効果を有する。[R]

Determining the Presence of Periodontopathic Virulence Factors in Short-Term Postmortem Alzheimer's Disease Brain Tissue - IOS Press
The aim of this study was to establish a link between periodontal disease and Alzheimer's disease (AD) with a view to identifying the major periodontal disease ...
カスパーゼ3の活性化

ジンジパインは、プロカスパーゼ3を直接切断してカスパーゼ-3を活性化することが示されている。[R]

P.ジンジバリス/ジンジパインの予防・改善・治療

早期歯周病治療・鉄・出血の阻止

ジンジバリスの成長には鉄が不可欠。そのため歯茎の出血は(血に鉄を含むため)ジンジバリスの増殖を促進させ歯周炎を悪化させる。歯周炎の悪化は出血を拡大させるため悪循環を引き起こす。

禁煙・禁酒

疫学的研究、生化学的研究から喫煙、飲酒、肥満メタボが歯周病リスク因子であることが示されている。

糖尿病治療

糖尿病は歯周病のリスク因子として知られる。

口腔ケア
pH

P.ジンジバリスのバイオフィルム形成は、酸性(pH5.0)で減少し、アルカリ性(pH9.0)で顕著に減少した。[R]

P.ジンジバリスの成長は37度と39度で違いは示されなかったが、線毛の量が39度で54%減少し、mRNAの発現が減少した。in vitro[R]

 

P.ジンジバリス・ジンジパイン阻害作用をもつ食品

緑茶カテキン カメリアシネンシス

臨床パイロット研究 緑茶カテキンを週に一回歯周ポケットへの局所適用 P.ジンジバリスに対して殺菌効果を示した。 [R] [R]

ラクトフェリン

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クランベリー(プロアントシアニジン)

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カプサイシン

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マヌカハニー

ハチミツは、P。ジンジバリスに対して抗菌作用がある。地元の養蜂家の蜂蜜ではP.ジンジバリスの成長を50%阻止する濃度が5%であるのに対し、マヌカハニーでは2%であった。

マヌカハニーの顕著な効果は、抗菌成分メチルグリオキサールに起因する可能性がある。[R]

プロポリス

P.ジンジバリスに対するプロポリスの殺菌作用 プロポリスに含まれるアルテピリン、バカリン、ウルソール酸が抗菌作用をもつ。[R]

カルダモン

カルダモン果実と種子抽出物の両方がP.ジンジバリスがに対して抗菌効果を発揮した。[R]

エリスリトール

糖アルコールのエリスリトールがP.ジンジバリスのバイオフィルム形成を軽減し効果的に抑制する。[R]

コーヒー

1日1杯以上のコーヒーを飲むグループは、1日1杯未満のコーヒーを飲むグループよりも重度の歯周炎の有病率が低い。コーヒーに含まれるフェノール化合物(クロロゲン酸、フェルラ酸、p-クマル酸)の保護抗酸化特性が歯周炎の重症度の軽減と関連する可能性。[R]

マンゴスチン(α-マンゴスチン)

αマンゴスチンは、P.ジンジバリスのLPS刺激によるヒトの歯肉線維芽細胞(HGF)のIL-6、IL-8増加を減少させた。[R]

 

栄養素

ビタミンD

カルシトリオール(ビタミンD)は、オートファジーを促進することにより、P.ジンジバリスを減少させる。in vitro[R]

ビタミンDの直接適用

マウスのビタミンD欠乏は歯周病に寄与する。ビタミンDは歯周病予防のために歯肉に直接適用が可能。[R][R]

ビタミンC

ビタミンCは、P.ジンジバリスの細胞毒性およびアポトーシス効果を低減する。in vitro[R]

α-トコフェロール

α-トコフェロールは、P.ジンジバリスリポ多糖で刺激されたヒト歯肉線維芽細胞のIL-1βおよびIL-6を減少させ、ヒトβ-デフェンシン-1および-2の分泌を増加させた。[R]

オメガ3脂肪酸・アスピリン

ラットへのオメガ3脂肪酸+アスピリンの投与は、歯槽骨の損失を減少させ、歯周炎に対する保護を増加させた。[R]

亜鉛・銅

亜鉛と銅イオンは、P.ジンジバリスがの共凝集と血球凝集を阻害したことが示唆された。歯周病予防目的として歯肉溝内のP.ジンジバリスの定着を制限するのに役立つかもしれない。[R]

ジンジパインの阻害作用をもつハーブ

レスベラトール

レスベラトロールは、P.ジンジバリス線毛で刺激されたRAW264.7細胞に対して強力な抗炎症活性を発揮し、全身性疾患の症状として炎症性歯周疾患の治療薬として適用できる可能性がある。[R]

トリファラ

歯周炎管理におけるトリファラの補助的使用[R]

鶏血藤 (ケイケットウ:Jixueteng)

Jixuetengは、P.ジンジバリスに対する抗菌活性と破骨細胞形成に対する阻害効果を有し、P.ジンジバリス誘発性歯周炎の治療における治療薬として有用である可能性がある。[R]

Inhibitory effects of Jixueteng on P. gingivalis-induced bone loss and osteoclast differentiation - PubMed
Jixueteng has an antibacterial activity against P. gingivalis and inhibitory effects on osteoclastogenesis, it may be useful as a therapeutic drug in the treatm...
ラブドシアルベセンス(Rabdosia Rubescens )

ランダム化比較試験

Efficacy of rabdosia rubescens in the treatment of gingivitis - PubMed
This study evaluated the efficacy of rabdosia rubescens against gingivitis and compared the therapeutic efficacy of different dosage forms of rabdosia rubescens...
Efficacy of rabdosia rubescens in the treatment of gingivitis - PubMed
This study evaluated the efficacy of rabdosia rubescens against gingivitis and compared the therapeutic efficacy of different dosage forms of rabdosia rubescens...
キトサン

キトサンは海洋性甲殻類の外骨格に存在するキチン由来の天然線状多糖類。P.ジンジバリスに対する抗バイオフィルム活性がある。[R]

トルメンチン酸(ヘビイチゴ)

トルメンチン酸は、TLR4発現を抑制し、NF-κBおよびMAPKシグナル伝達経路の阻害を介して、ヒト歯肉線維芽細胞のLPS誘発炎症反応を阻害する。[R]

アロエエモジン [R]

サルドバル・ペルシカ(Salvadora persica) [R][R]

プレニル化フラボノイド [R]

クマリン(シナモン、桜の葉) [R]

ローゼル(Hibiscus sabdariffa L. ) [R]

エッセンシャルオイル

オレガノオイル(カルバクロール) 

高い細胞毒性効果を示したクロルヘキシジンとは対照的に、T4olとカルバクロールは上皮細胞の生存率に影響しなかった。T4olとカルバクロールで処理された単一種のバイオフィルムの抑制と根絶が観察され、歯周病原体に対する複数種のバイオフィルムでも同じ阻害効果が観察された。[R][R]

シイタケキノコ(Lentinula edodes)エッセンシャルオイル

シイタケ精油は、口腔病原体に対する効果的な抗菌および抗バイオフィルム剤であり、経口抗バイオフィルム剤として治療に使用できる可能性がある。[R]

Coriandrum sativumn・C.articulatus

ほとんどの精油は口腔の病原体に対して中程度から強い抗菌活性を示す。

Coriandrum sativumエッセンシャルオイルは、すべての口腔種を阻害した。C.articulatusエッセンシャルオイルは、バイオフィルム形成の阻害と抗菌活性能力において最良の結果を示した。[R]

プロバイオティクス

ラクトバシラスロイテリ

プロバイオティクスと口腔衛生の使用[R]

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ラクトバシラス・カゼイ

ラクトバチルスカゼイを含むプロバイオティクス飲料の経口投与は、Porphyromonas gingivalisの細菌レベルの著しい減少を示した。[R]

ラクトバシラス・ラムノサス

ランダム化比較試験 LGGの短期間の日常消費とBB-12プロバイオティクストローチは青年の歯肉の健康を改善し、A.アクチノマイセテムコミタンス、およびP.ジンジバリスの数の減少を示した。[R]

ラクトバチルスラムノサスはポルフィロモナスジンジバリスよって減弱されるCXCL8(IL-8)を阻害する可能性がある[R]

ラクトバシラス・サリバリウス

乳酸菌LS1[R]

乳酸と乳酸ナトリウムを用いて解離型と非解離型乳酸のどちらが生菌数減少に関わっているかを調べたところ、乳酸のほうにはるかに大きい効果が認められ、LS 1のPg殺菌作用は非解離型乳酸によるものであることが示された。[R][R]

LLLT

スケーリングとルートプレーニング後のLLLT療法の補助使用は、炎症と歯槽骨の損失を大幅に減らすことが示された。100mw 810nm 1分間 [R]

ランダム化比較試験 60人の被験者、SRP(スケーリングルートプランニング)グループ(n = 30)とLLLT + SRPグループの比較。治療後のどちらのグループでもP.ジンジバリスの減少が見られたが、統計的有意性はLLLTグループでより高かった。[R]

無作為化対照試験 685 nmおよび1.6 J cm -2の罹患歯周ポケットへのGaAlAsダイオードレーザー照射は、慢性歯周炎を治療するための機械的器具の効果的な補助剤と考えられる。[R]

ラットへのLLLT 10 J / cm2のエネルギー密度のLED ライト(660 nm)は、炎症を一時的に軽減し、コラーゲンの再配列と骨の沈着を促進することにより、歯周炎の補助療法として適しているようである。[R]

白色LED・日光浴

P.ジンジバリスに白色LEDを照射するだけで、顕著な殺菌効果が認められた。P.ジンジバリスががポルフィリンを産生しており、光と反応して一重項酸素を発生するので、光照射単独でも殺菌効果が得られると考えられている。[R]

薬学的治療

抗生物質への抵抗性

P.ジンジバリスは広域スペクトルの抗生物質による治療では根絶させることがむずかしく、抵抗性をもつ。[R]

ジンジパイン阻害剤は神経保護作用を示す。[R]

メトホルミン

メトホルミンは、活性化転写因子3(ATF3)の発現を介してヒトの歯肉線維芽細胞(HGF)においてポルフィロモナス・ジンジバリスによって誘発される炎症反応を阻害する。[R]

ワクチン

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駆虫薬オキサンテル

腸内寄生虫の治療薬。フマル酸還元酵素の阻害により、P.ジンジバリスによるバイオフィルム形成も著しく阻害することが証明されている。

抗生物質メトロニダゾールよりも効果的にバイオフィルム形成を阻害する。[R]