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CIRS マイコトキシン治療プロトコル
alisonvickery.com.au/mold-illness/
1. データベースを元に区分診断を行う
一般 ERMI 2以下、またはHERTSMI 2 <10
CIRS-WDB、バイオトキシン病の治療ばく露試験
カビ毒治療後4〜6週間後に、ERMIまたはHERTSMI-2テストを再度行う。
2. ERMI試験の実施
C4aが20,000未満でMSHが35未満の場合、建物のERMIスコアは2未満である必要がある。
C4aが20,000を超え、MSHが35未満の場合、治療効果を高めるためにERMIは外部環境からのカビ毒曝露を低下させる必要があり、そのためERMIは-1にまで低下させる必要がある。
3. 毒素の暴露源を除去
水害建物(WDB)に住まない、水害建物で働かない、水害建物へ通学しない。
4. 毒素結合剤による毒素除去
生物毒素は胆汁-小腸を通じて体内を循環しており、95%の生物毒素は小腸から再吸収され、わずか5%が便によって体外に排出される。
CIRS患者にとって胆汁とバイオトキシンの再吸収および再循環が、持続的な炎症性疾患の原因となる。
投与スケジュール
胆汁と毒素の再吸収を防ぎ治療効果を得るにはコレスチラミン、Welchol等の胆汁結合剤を1日4回摂ることが必須。
コレスチラミンは非常に効果的な胆汁結合剤であり、解毒目的として用いる場合、処方薬で定められた時間帯とは異なるタイミング(空腹時)に服用する必要がある。
空腹時の一日4回投与がどうしても難しい場合、空腹時に二倍量のコレスチラミンを一日二回服用し、Welchol 2錠を食後2回服用することで、効果的に生物毒素を除去することができる。
投与量
コレスチラミンの服用量は理想的には一回あたり4グラム~
(リコード法では1gからスタートして様子を見ながら徐々に増やしていく)
Welchol では625mg/錠。
コレスチラミンの原末に敏感に反応する場合、調剤されたコレスチラミン粉末またはカプセル形態を薬局から入手できるのでそれを用いてみる。
※日本ではコレステロール値が高い場合、処方してもらえる可能性がある。
副作用
胸焼け/逆流、便秘(マグネシウム塩で改善可)
副作用を示す場合より少ない用量から始めて、用量と回数を増やしてみる。
MMP9高値のライム病、カビ、生物毒の曝露などの一部の患者では毒素結合剤使用によって、症状の悪化とともに全身性炎症性反応を引き起こす可能性がある。
この副作用症状は、週に5日以上の低アミロース食、そして2.4gのEPAと1.8gのDHAが含まれるフィッシュオイルサプリメント(腸溶コーティングされているもの)摂取によって軽減することができる。
ピオグリタゾン
フィッシュオイルが毒素結合剤の副作用緩和に効果的でない場合は、より効果的であるピオグリタゾン(アクトス)を用いる。
ただしピオグリタゾンはレプチン低下作用があるため、レプチンが7未満の患者では、高用量のオメガ-3脂肪酸投与がピオグリタゾンよりも好ましい。
モニタリング検査
VCSテストは、毒素結合剤の効果の客観的指標。
VCSテストに合格すれば毒素結合剤を減らすことができる。
肝機能も定期的に検査していくこと。
5. 形成されたバイオフィルムMARCoNSの撲滅
MARCoNS (多重抗生物質耐性コアグラーゼ陰性菌)
(Multiple Antibiotic Resistant Coagulase Negative Staph)
MARCoNSによるMSH低値
バイオフィルム耐性ブドウ球菌によりMSHが低下する。
MSHが正常である患者でのMARCoNS感染率は2%未満。
MSHが低い患者では、MARCoNSは80%以上存在する。
検査
API 黄色ブドウ球菌鼻腔スワブ法検査スクリーニング
15歳未満の患者でのMARCoNS感染率は低いため、スクリーニングテストは、臨床医の判断で行う。
粘膜免疫機能の低下を伴うMSH低値は、MARCoNSの感染と相関するように思われる。
治療
コレスチラミンで治療して一ヶ月が経過してもMSHレベルが低く改善されない場合は、MARCoNSを疑う。
www.herbaltransitions.com/MARCoNS.html
BEG鼻腔内スプレー
- BEG鼻腔内スプレー成分
- バクトロバン(ムピロシン)0.2%
- エデト酸二ナトリウム(EDTA)1%
- ゲンタマイシン0.5%
コレスチラミンなどの毒素結合剤治療を開始して1ヵ月後に、一回2噴霧×3/日、鼻孔へ向けてBEG鼻腔内スプレーを開始することができる。
MARCoNSは微生物環境を守るために、バイオフィルムから生体防御、抗生物質に対して外毒素A、Bを分泌する。BEG鼻腔スプレーに含まれるEDTAは、バイオフィルムを構成する金属をキレートすることで抗生物質の浸透力を高める。
コロイダル銀鼻腔スプレー
www.herbaltransitions.com/MycotoxinEffectOnRespiratorySystem.html
リドカイン鼻腔スプレー
リドカイン鼻腔用スプレーをBEGスプレー投与の前に使用することで、治療の不快感を軽減することができる。
BEG鼻腔スプレーによるMARCoNS根絶治療中に、副鼻腔炎のような鼻出血、腫れ、うっ血からくる不快感を経験することがある。
難治性でのリファンピン使用
改善が難しいケースでは、リファンピシン300mg の1日2回投与を一ヶ月間行うことができる。
リファンピンは日常的に使用するような抗生物質ではない。一般的に使用されている抗生物質と比較して副作用が生じやすいので注意が必要。
治療4週間後、根絶されたことを確認するために、API黄色ブドウ球菌培養による検査チェックを繰り返す必要がある。
個人輸入で入手可
灼熱感の減少、治癒の促進(リコード法)
- SinuClenz
- Xlear
カビ菌種の治療(リコード法)
- 抗真菌薬イトラコナゾール
- 免疫増強剤グドゥッチ
副鼻腔プロバイオティクス(リコード法)
- ProbioMax ENT
- Restoreスプレー Restore鼻腔スプレー
- キムチ汁
6. グルテンの排除
血清IgA、IgG抗グリアジン抗体のチェック
抗グリアジン抗体が陽性の場合、免疫寛容が失われグルテン曝露に対する炎症性機能不全が生じる。
抗グリアジン抗体陽性の場合、tTG-IgA / IgG(組織トランスグルタミナーゼIgA / IgG)をチェックして、本当のセリアック病ではないことを確かめる。
治療
少なくとも3ヶ月間の100%グルテンフリーダイエットが必須。
グリアジン抗体の陰性を再検査して確認すること。
7. アンドロゲンレベルの改善
副腎および生殖腺サイトカインとレプチンレベルの増加は、神経内分泌機能障害を伴う視床下部機能障害を引き起こす。
プレグネノロンは生物毒素曝露の患者では正常範囲を下回り検出できないことがしばしばある。
免疫再構築症候群(IRS)患者は、アロマターゼの高い活性によってテストステロンからのエストロゲン産生を増加させ、より高いエストロゲンとより低いアンドロゲンを生じさせる。
検査
治療開始前にアンドロステンジオン、DHEA、テストステロン、エストラジオールの検査が必要。
DHEA投与は、血清DHEAレベルが正常範囲になるまで4〜8週間のおきに検査行う必要がある。
CIRSで観察されるアロマターゼ活性の増加のために、エストラジオールレベルも同様に測定する必要がある。
治療の初期段階においては3ヶ月以上の頻度で再検査することが重要。
テストステロンの投与はできれば控えておく。
VIP鼻腔用スプレーはアロマターゼの過剰活性を補正する。
8. ADH /浸透圧の改善
正常範囲 1.0~13.3 pg / ml
血清浸透圧 275~290 mOsm/L
正常な血液浸透圧と神経毒性のあるCIRS、ライム病、混合患者は、しばしば検出閾値を下回る低濃度のAVP / ADHレベルを有し、血清浸透圧は高すぎることがある。
症状
のどの渇き、口の渇き、頻繁な排尿(尿は透明)
ADHの低下により腎臓での水分再吸収がないため、水分を失うと血中の塩分濃度が上昇する。
発汗によりナトリウム/塩化物が増加し、静電気、静電気によるショックを感じやすくなる。
これらの細胞浸透圧脱水を伴う高い血清浸透圧は、頭痛、片頭痛、特に脚や足首のけいれんを引き起こす可能性がある。
治療
注意を要するが、バソプレシンの類似体である抗利尿薬デスモプレシンを用いることができる。
デスモプレシン0.2mgを、夜間隔日おきに2週間服用する。
再検査
2週間ごとにADH、浸透圧、血清ナトリウムを再検査する。
薬剤の過剰投与または過剰な水分補給は、それらの検査値を低下させる。
水分保持による浮腫がないか手足をチェックし、体重に増加がないか数日ごとに体重を測定する。
9. MMP9高値の補正
正常範囲:85-332 ng / mL
治療
高用量のフィッシュオイル(DHA1.8g、EPA3.6g)と低アミロースダイエットの組み合わせ。
MMP9を減少させる食品・サプリメント
魚油、
低アミロース食
リンゴ、イチゴ、豆類
グルテンと乳製品を避ける。
ミルクシスル、レスベラトロール、EGCG、ロディオラロデア、クルクミン
10. VEGF低値の改善
正常範囲:31-86 pg / mL
VEGFは、CIRS-WDB患者の酸素欠乏に寄与する。
VEGF低値の回復は毛細血管の血流を改善し、血管の形成をサポートする。
治療
高用量のフィッシュオイル(DHA1.8g、EPA3.6g)と低アミロースダイエットの組み合わせ。
11. C3a高値の改善
55-486 ng / mL
炎症低下作用をもつC3aは、一部のバイオトキシン病患者にのみに存在する補体成分。
C3aが高値の場合は、急性ライム病22またはSLE 23など、他の疾患の可能性を考え、診断を仰ぐ。
C3aは補体系の最も強力な因子の1つで、好中球を引き寄せて活性化させ顆粒を放出することにより毛細血管、血管収縮、血管透過性の亢進が起こる。
治療
高用量スタチンは、コレステロールへの効果に加えて、T細胞活性化、マクロファージ活性化および血管壁炎症を減少させる。
ただし、スタチンは副作用を引き起こす可能性がありため、スタチン摂取前に150mg以上のCoQ10、ユビキノンを10日間摂取して、副作用リスクを下げておく。
12. C4a高値の矯正
正常0-2830 ng / mL(目標値)
水害建物(WDB)の自然免疫応答炎症マーカー
C4aは、炎症の度合いと治療反応を見るための有用な指標。
CIRS-WDBと強く関連する重要なバイオマーカー。
C4a高値
認知機能障害、平滑筋収縮の増加、血管透過性、走化性因子の放出、毛細血管過灌流、組織の低酸素状態
グリコーゲン枯渇による慢性疲労。
グルコース貯蔵(グリコーゲン)を消費し、補充されるのに数日を要する。
乳酸産生が増加するため作業後に筋肉痛を引き起こす。
治療
C4aはVIP鼻腔内スプレーに良い治療応答を示す。
慢性的に副鼻腔炎がある場合は、副鼻腔、鼻咽腔フローラに取り組むことが重要(リコード法)
13. TGFβ-1高値を低下させる
正常範囲 2380 pg / ml以下
TGF-β1 ハプロタイプ
- 4-3-53、
- 11-3-52B(特にTGF-β1レベル高値を示す。)
ロサルタン
ロサルタン代謝産物はTGF-β1を低下させる。
スタート 12.5mg×2/日からスタート、増量して副作用等見られなければ25mg×2/日まで増加する。
TGF-β1が顕著に高い場合(>5000) ロサルタンを使用し5000以下に回復するまで用いる。25mg×2回/日(血圧降下作用を最小限に抑える量)
TGF-β1を減少させるハーブ類
- レスベラトロール
- アストラガルス
- ロディオラロデア
- 丹参
- タウリン
- EGCG
- ゲニステイン
- クルクミン
- ベルベリン
- スルフォラファン
- 甘草
- Nアセチルシステイン
- ビタミンDと日光浴
14. VIPを補充、低値の改善
正常範囲23-63 pg / mL
VIP欠乏症
VIP欠乏症は、正常対照郡では10%未満だが、CIRS-WDB患者では98%に起こるため、非常に信頼性の高い指標となる。
VIP鼻腔用スプレーは、これまでの12のステップが実行された後の最後の治療。
VIP治療の効果
VIPは、TGF-β1などの炎症マーカーを低下させ、樹状細胞(先天性免疫システムと適応性免疫システムの間を仲介するAPC)を調節し、IL-10産生を増強する。
VIPの最も重要な役割は、T-reg数を回復させることでTh-17細胞の自己免疫応答調節能を回復させることにある。
VIPは、ビタミンDを含むホルモンレベルを回復させ、アロマターゼの過剰活性を修正し、それによってエストロゲンとテストステロンのレベルと比率を改善し、細胞シグナル伝達を改善するcAMPレベルを上昇させ、浸透圧、概日リズムを回復させる。
CIRS-WDBに関連する異常なゲノム転写はVIPによって正常化される。
三尖弁逆流の心エコー検査によって診断測定される肺動脈高血圧症は、より低いレベルの血清VIPと関連している。
PASP改善後、息切れや運動不耐症は改善を示す。
VIP鼻スプレーの効果
- 難治性の症状の減少
- C4a、TGF-β1, VEGF、MMP9の改善。
- VIP、MSHレベルの上昇。
- 運動中のPASPの正常化。
- エストラジオール、テストステロン、25-OHビタミンD濃度の改善
- T-regレベルの改善
- 患者の生活の質の向上。
VIP鼻腔スプレーの使用条件
- VCSテストで合格
- ERMI 2以下またはHERTSMI 2 <10
- API Staph鼻腔培養でのMARCoNS陰性
- VIPを初めて投与する際は、投与前と投与後15分後にそれぞれ血清検査を行い陽性反応の影響を測定する。
VIP投与前の検査項目 VIP、MSH、C4a、TGFβ-1、MMP-9、VEGF、リパーゼ
VIP50mcg鼻腔内投与15分後の検査項目 TGF-β1、リパーゼ
症状の急激な変化に注意し、継続的なVIP投与についての中止要件を理解する。
VIPの中止
腹痛を発症しリパーゼレベルが基準範囲を超えて上昇した場合は、VIP治療を中止する。
追跡検査
VIP開始後30日の検査項目
PASP、リパーゼ、C4a、TGFβ-1、VCS
症状の変化、水分補給、血圧のエコー。
症状が改善すると、TGF-β1濃度は安定し、VCSテストは正常になり、リパーゼは安定する。
VIPの減薬
2回/日×30日後VIPスプレーを50 mcgにまで減らす。
腹部の痛みがないこと、リパーゼレベル、VCS検査の正常化を再確認して、1回×50mcg/日にまで減らし30日後に中止する。
6ヶ月後、PASP、リパーゼ、VCS検査に変化がないか再チェック。VCSテストは毎年行う。
VIP鼻腔スプレーの入手
日本での入手は困難
アメリカでは医師の処方箋が必要。いくつかのサイトがVIP鼻腔スプレーをオンラインで販売している。
15. 最終チェック(薬物効果の安定性を確認)
www.survivingmold.com/treatment/step-by-step
参考サイト
www.herbaltransitions.com/WhatIsCholestyramine.html
www.survivingmold.com/docs/12_STEP_SHOEMAKER_PROTOCOL_FOR_CIRS.PDF
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