書籍要約『ホームを創る:定住するための家と生活の適応』シャロン・アスティク 2012

介護・介護者崩壊シナリオ・崩壊学・実存リスク・終末論生態経済学・脱成長

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英語タイトル:

『Making Home:Adapting Our Homes and Our Lives to Settle in Place』Sharon Astyk [2012]

日本語タイトル:

『ホームを創る:定住するための家と生活の適応』シャロン・アスティク [2012]

目次

  • 第1章 ようこそ、わが家へ / Welcome Home
  • 第2章 未来と失敗に備える / Planning for Both a Future and Failure
  • 第3章 家を選ぶ / Choosing Home
  • 第4章 状況のトリアージ / Triaging Your Situation
  • 第5章 暖かさを保ち、涼しく過ごす / Staying Warm and Keeping Cool
  • 第6章 日常生活の基本 / The Basics of Daily Life
  • 第7章 移動手段 / Getting Around
  • 第8章 育てる / Growing
  • 第9章 大小の生き物たち / All Creatures Great and Small
  • 第10章 結婚と家族 / Marriage and Family
  • 第11章 父、母、そしておじさん:部族主義と家族 / Father and Mother and Uncle John:Tribalism and Family
  • 第12章 あなたの愛は十分か? / Is Your Love Enough?
  • 第13章 スキル、仕事、お金 / Skills, Work and Money
  • 第14章 安全保障の問題 / Security Matters
  • 第15章 すべてをまとめる / Putting It Together

本書の概要:

短い解説:

本書は、気候変動、エネルギー資源の枯渇、経済不安という三重の危機に直面した現代において、私たちが「住み慣れた場所で適応する」ための具体的な戦略と哲学を提供する実践的ガイドである。

著者について:

シャロン・アスティクは、ニューヨーク州北部で家族とともに自給自足の農場を営む作家、教師、ブロガーである。元アカデミックで、持続可能な食料貯蔵やピークオイル問題に関する著書もあり、自身の経験に基づいた現実的かつ思慮深い提言で知られる。

テーマ解説

本書は、経済成長を前提とした従来のライフスタイルから脱却し、コミュニティと家族を核とした、より強靭で持続可能な家庭生活への移行を訴える。

キーワード解説

  • 適応 (Adapting in Place):住み慣れた現在の家やコミュニティを離れずに、資源消費を減らし、変化する状況に対応できるよう生活様式を変えていくプロセス。
  • 強靭性 (Resilience):危機やショック(停電、経済的困窮、気候変動の影響など)が発生しても、機能を維持し、回復する能力。本書では家庭とコミュニティの強靭性構築が中心テーマとなる。
  • 収縮 (Collapse):複雑な社会システムが、資源の枯渇や経済的破綻などにより、より単純で低いレベルの機能へと急速に低下する現象。著者は米国がこの段階にあると見る。
  • スケールの適正化 (Fair Share):地球上の限られた資源を、将来の世代や世界中の人々と公平に分け合うという考え方。著者は「アメリカン・ドリーム」的な大量消費生活を見直す必要性を説く。
  • ローカリゼーション (Localization):食料、エネルギー、経済活動などを可能な限り地域内で完結させること。輸送コスト削減とコミュニティの結束強化に繋がる。

3分要約

シャロン・アスティクの『ホームを創る』は、先行き不透明な時代に、私たちがどのように家と人生を再構築すべきかを示した、希望と実践に満ちたロードマップである。著者は、気候変動、ピークオイル、経済不安という三重の危機が、従来の「アメリカン・ドリーム」を終焉に導きつつあると論じる。もはや「成長」を前提とした大量消費生活は持続不可能であり、私たちは新たな生き方のモデルを必要としている。

本書の核心は「その場で適応する(Adapting in Place)」という概念にある。これは、理想の土地を求めて移動するのではなく、今住んでいる家やコミュニティに根を下ろし、そこで直面する課題に対応するという選択である。そのプロセスは、単なる「備え」ではなく、家族、近隣住民との繋がりを再構築し、富や快適さの定義そのものを変える、より深い変革を伴う。

著者はまず、短期的な停電や災害への備えから、長期的な生活の質を維持するための段階的な準備へと進む方法を説明する。暖房、水道、洗濯、照明といった日常生活の基盤を、いかに化石燃料への依存から、薪、太陽光、人力といった再生可能でローカルな資源へと移行させるか、具体的なノウハウを提供する。

さらに、食料生産の重要性を強調し、たとえ小さな庭やバルコニーであっても、食料を育てることが経済的・精神的な安全保障に繋がると説く。家畜の飼育、食品保存、調理技術といった、失われつつある「家庭の知恵」を再評価する。

しかし、本書の真価は、技術的な側面を超えて、人間関係の重要性を深く掘り下げている点にある。変化に消極的な配偶者との折り合いの付け方、子育てと家事労働の両立、高齢者や障害者の介護、さらには失業や災害で家を失った親族を自宅に受け入れる方法まで、具体的な人間模様に基づいた実践的なアドバイスが満載である。著者は、孤立した個人では困難な課題も、愛と相互扶助に基づく「部族」やコミュニティがあれば乗り越えられると主張する。

最終的にアスティクが提案するのは、単なる倹約や我慢の生活ではない。より少ない資源で、より多くの喜びと意味を見出す「経済 of love(愛の経済学)」への移行である。不完全であっても、自分たちの手で作り上げた生活の中にこそ、真の豊かさと未来への希望があると力強く語りかける。


各章の要約

第1章 ようこそ、わが家へ

著者は自身の農場での生活風景を描写し、「家」とは単なる物理的な場所ではなく、人々や土地との深い繋がりであると述べる。現在の経済・環境危機の中で、従来のアメリカ的なライフスタイルは持続不可能であり、私たちは「その場で適応する」という新しいモデルを必要としている。このプロセスは、裕福な人だけのものではなく、誰もが自分たちの状況に合わせて、より少ない資源でより良く生きる術を見つけることだと主張する。

第2章 未来と失敗に備える

私たちの社会は「失敗」を想定した計画を立てていないと批判する。むしろ、災害を想定することは不吉だとする風潮がある。しかし、複雑なシステムは頻繁に失敗するため、それを前提に設計された解決策こそが強靭である。例えば、停電時にも使える薪ストーブは、普段の暖房費も削減する。経済、エネルギー、気候の同時危機(収縮)はもはや避けられない可能性が高い。歴史的な収縮の事例から学ぶべき教訓は、相互扶助と自給の技術が生存の鍵を握るということである。

第3章 家を選ぶ

私たちの「美しさ」の基準は、実際の生活の機能性から切り離されている。真に機能的な家庭は、雑誌の写真のように完璧ではありえない。庭仕事や保存食作りといった活動の痕跡こそが、その家の豊かさを物語る。また、現代社会では自己規律の文化が失われている。より持続可能な生活を送るためには、車を持たない、家電製品を減らすなど、誘惑そのものを減らす仕組み作りが必要である。アーミッシュのコミュニティのように、外部の規範を利用することも有効な戦略である。

第4章 状況のトリアージ

まず、誰もが対応すべきは数週間単位の短期危機(停電、災害)であり、食料、水、簡易調理器具などの基本的な備えが必要である。次の段階として、長期的に快適に暮らすためのシステム(例:高効率薪ストーブ、雨水タンク)への投資を検討する。ただし、経済的に困難な場合は、従来の生活を維持するよりも、代替システムへの完全移行を目指す方が現実的である。また、すべての人が「その場で適応する」べきではなく、極端な気候地域や将来の見込みがない地域に住む人は、移住を真剣に考えるべきである。都市、郊外、農村のいずれも未来はあるが、その生活様式は大きく異なるものになる。

第5章 暖かさを保ち、涼しく過ごす

現代人の快適さの基準は文化に過ぎず、多くの人はより寒い環境にも適応可能である。重要なのは部屋全体ではなく「自分自身」を温めることである。重ね着、温かい飲み物、湯たんぽなどの局所的な暖房が有効だ。極端な暑さでは、水と日陰が最も重要である。エネルギー源としては、薪ストーブが再生可能で局所的なため理想的だが、環境への影響を考慮する必要がある。その他の選択肢としては、ロケットマスヒーターやペレットストーブがあるが、いずれも適切な知識と換気が必須である。

第6章 日常生活の基本

日々のエネルギー消費を減らすための10の基本原則(例:物を買わない、誘惑を減らす、大きなエネルギー消費源に取り組む)を紹介する。具体的な対策として、照明はLEDと太陽光充電器の併用、洗濯は節水型洗濯機と天日干しの組み合わせを推奨する。トイレ問題では、堆肥トイレ(『Humanure Handbook』参照)の安全性と有用性を説く。キッチンでは、電気冷蔵庫を断熱庫や軒下の天然冷蔵に置き換え、電気オーブンをパン庫として転用するなど、既存の家電製品を創造的に再利用する方法を提案する。

第7章 移動手段

自動車は公衆衛生上の脅威であり、その使用を減らすことは健康上のメリットをもたらす。重要なのは燃費ではなく、一人当たりの走行距離と乗車人数である。相乗り、徒歩、自転車への移行が最も効果的な対策である。長距離の移動については、航空機や貨物輸送への依存を減らし、地域経済を強化することが重要だと論じる。

第8章 育てる

食料不安の主な原因は「不足」ではなく「貧困」である。庭で食料を育てることは、たとえ少量であっても、経済的に困難な時期の栄養と安全保障に大きく貢献する。都市や郊外の小さなスペースでの食料生産は、世界的に見ても重要な役割を果たしている。小さな農場であっても、主穀ではなく高付加価値作物に特化することで経済的に成り立つ。著者は、美観と実用性を兼ね備えた「コテージガーデン」や「掃き出し庭院」のような伝統的な栽培様式を再評価することを勧める。

第9章 大小の生き物たち

多様な動物を飼育する伝統的な農場は、生態系のバランスを保ち、化石燃料への依存を減らしていた(例:カタツムリを駆除するアヒル)。都市部でも、ウサギやニワトリなどの小動物を飼育することで、生ゴミを資源に変え、貴重なタンパク源を得ることができる。ペットフードの問題も重要であり、工業的に生産された肉への依存を減らすために、残飯や自給飼料を活用する責任がある。農業において「感傷」と「感傷的になること」は区別されるべきで、真の愛情は時に殺処分という難しい決断も含む。

第10章 結婚と家族

持続可能な生活への移行は、しばしば家族内の対立を生む。最も重要なのは「問題はあなた自身かもしれない」と自省することである。配偶者を説得するには、彼らの価値観(倹約、健康、美など)に訴えかけるのが効果的である。最初は「変わった趣味」として扱ってもらい、時間をかけてコミュニティに巻き込むことで、徐々に理解を得られる可能性がある。小さな子どもや障害のある子どもがいる家庭では、家事に参加させる工夫(例:水遊びを皿洗いに見立てる)や、安全な「囲い」を作ることが生産性向上に繋がる。

第11章 父、母、そしておじさん:部族主義と家族

これからの時代、核家族は経済的にも労働力的にも持続不可能であり、血縁や選択的な「部族」の復権が必要である。失業や災害で家を失った親族を受け入れるための準備(食料、寝具の備蓄)は、早めに始めるべきである。複数世代が同居する際のルール作りやプライバシーの確保、トラウマを抱えた避難者への対応方法を具体的に解説する。さらに、高齢者や障害者の介護は、私たちが人間性を取り戻すための重要な行為であり、避けて通れない課題であると論じる。

第12章 あなたの愛は十分か?

お金を媒介にしない「贈与の経済」においては、与える量と受ける量が常に平等になることはない。この不均衡を受け入れ、互いに「十分に与えられていない」と感じる関係性こそが「愛の経済学」の基盤である。近所付き合いが苦手でも、食料品の価格や子どもの将来といった共通の関心事から協力関係を築くことは可能である。ただし、悪質な隣人にエネルギーを注ぐより、協力的な人々に集中する方が賢明である。最後に、自家消費活動(菜園、飼育、物干しなど)を制限する悪しき zoning 法(土地利用規制)を変革するための戦略を提案する。

第13章 スキル、仕事、お金

「自分は不器用だ」と言うのは、多くの場合、単なる言い訳である。これからの時代に必要なのは、パニックにならない技術、新しいことを学ぶ技術、そして他者と折り合う技術である。金融危機に備え、借金をなくし、可能であれば現金を食料生産可能な土地や地域ビジネスなどの実物資産に投資すべきである。今後、多くの人が失業する可能性が高い。だからこそ、今から薪販売や修理業など、インフォーマル・エコノミー(非公式経済)で通用するスキルを複数身につけておく必要がある。

第14章 安全保障の問題

「安全」を確保する最善の方法は、まずリスクそのものを減らすこと(予防)である。具体的には、コミュニティの結束を強め、近所付き合いを活発にすることが抑止力となる。個人レベルでは、護身術の習得や犬の飼育が有効である。武器(特に銃)については、家庭内暴力や自殺のリスクを高める可能性があるため、家族構成や精神状態に応じて慎重に判断すべきである。最終的に、どんなに備えても絶対の安全はなく、死は避けられないという現実を受け入れることも、健全な安全保障戦略の一部である。

第15章 すべてをまとめる

著者は、10年前に農業経験もなく家を購入したときの話を振り返る。失敗の連続だったが、薪ストーブの活用、家畜の導入、家族やコミュニティとの協力を通じて、徐々にアメリカ人平均の10分の1の資源で暮らす生活に近づいている。この道のりは不完全だが、変化を生み出すためには「馬鹿げた楽観主義」が必要であると語る。たとえ社会が大きく変わらなくても、地下室で平和の青図を描き続ける人々のように、自らの場所で良い暮らしを創造する努力は決して無駄ではないと結論付ける。

プロフィール6:ジェリ

アフリカ系アメリカ人女性のジェリは、外交官として世界中を渡り歩いた後、ワシントンDCに定住することを決意する。彼女は「その場で適応する」ことを実践するため、Master Gardener(園芸指導員)コースを受講し、裏庭での食料栽培を開始する。彼女の課題は、ピークオイルという専門用語がマイノリティ・コミュニティにとって馴染みにくいことであった。そこで彼女は、過去の地域の農業史を調査し、コミュニティの強靭性という観点から適応の必要性を伝える方法を模索している。彼女にとって、庭仕事は世界市民としての新たな繋がり方を学ぶ場でもある。


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