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肝臓X受容体(LXR)とアルツハイマー病研究
概要
コレステロールセンサー
核内受容体肝臓X受容体(LXR)はコレステロール恒常性を調節するコレステロールセンサーと(オキシステロール活性化核内受容体)して知られている。
コレステロール逆輸送、胆汁酸へのコレステロール変換などの腸内コレステロール吸収に関連する標的遺伝子(ABCA1、ABCG1、ABCG5、ABCG8、リン脂質輸送タンパク質、アポリポタンパク質(apo)E / CI / CII / CIVおよびCyp7a)の上方制御を介してコレステロールレベルを下げることができる。
2つのサブタイプ
LXRには、LXRα(NR1H3)とLXRβ(NR1H2)の2つのサブタイプが同定されている。2つのアイソフォームの発現パターンはいくらか重複しているが、組織分布パターンは全体的にかなり異なる。
LXRαは遍在的に発現しており、肝臓、小腸、脂肪、腎臓、副腎組織、およびマクロファージで豊富に発現している。LXRβはほぼすべての組織、器官で発現している。
それらはすべて、レチノイドX受容体(RXR)に結合してヘテロダイマーLXR / RXRを形成し、LXRおよび22-ヒドロキシコレステロール、9-cis-レチノイン酸などのRXRアゴニストによって活性化される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18063918
LXRと認知機能
脳の脂質恒常性
LXRは脳の脂質恒常性も調節する。LXRノックアウトマウスでは、脳組織に神経変性を引き起こすことが示されており、LXRを刺激する治療は、アルツハイマー病マウスモデルの治療での有効性が示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12368482
血液脳関門機能の維持(LXRα)
BBBの完全性を維持するためにはLXRβではなくLXRαが必要である。in vitro,in vivo
www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2019.01811/full
ミクログリア活性化の変化
アルツハイマー病ではミクログリアのM1活性(炎症誘発性)状態と関連しており、LXRの活性化が抗炎症性サイトカイン産生を特徴とするM2活性状態へ変化させることがADマウスモデルで実証されている。
そのことからLXRの活性化は炎症を抑制し、ミクログリアによるアミロイドβの貧食を促進する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21562267
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23542729
LXRβ変異によるアルツハイマー病リスク
LXR-β(イントロン5)AA遺伝子型(OR = 1.90)、またはLXR-β(イントロン7)TT遺伝子型(OR = 1.75)は、これらのリスク遺伝子型を持たない被験者よりも、コレステロールの蓄積とアミロイドβ産生の増加が見いだされており、アルツハイマー病を発症するリスクが高かった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18597895/
LXRβ欠損マウスは、Notch1発現が低下しており、歯状回の発育不全と自閉症症状を示す。
www.pnas.org/content/115/12/E2725
LXRの利点・作用
アテローム性動脈硬化症治療標的
LXRが脂質代謝と炎症を調節することから、アテローム性動脈硬化症を治療するための潜在的な標的として研究されている。
耐糖能の改善
LXRの活性化はグルコース輸送体の誘導を介してグルコース取り込みを誘導し、耐糖能を改善する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17661008
LXRβ遺伝子SNP rs17373080、rs35463555の遺伝子多型は、2型糖尿病と関連する。
bmcmedgenet.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2350-10-27
自然免疫
LXR機能の喪失は、動物モデルにおいて自然免疫が低下しており、LXR投与は免疫低下を緩和した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18650918/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21204733
LXR多型の遺伝子多型炎症性腸疾患(IBD)リスク
喫煙をしたことがにない人ではのLXR遺伝子多型は、IBDのリスク上昇と関連していた。
(喫煙は3000種類の化学物質を含み、IBDに関連する多くの生物学的経路に影響を及ぼす。)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3020373/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17120402/
前立腺がん・乳がん細胞の抑制
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15520170
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16818617
PUFA合成
肝臓X受容体の活性化はマクロファージの多価不飽和脂肪酸合成を促進する:アテローム性動脈硬化症との関連性
LXRの活性化はマクロファージのPUFA合成を引き起こし、マクロファージの脂質組成に大きな変化をもたらす。LXRアゴニスト治療がアテローム性動脈硬化症の動脈におけるPUFA代謝を調節する。
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25838428/
LXRアゴニスト・アンタゴニスト
LXRアゴニストおよび阻害剤LXRアゴニストは、内因性と化学合成の2つのタイプに分類でる。
主な内因性アゴニスト
- (22R)-22-ヒドロキシコレステロール(22(R-HC)
- 24(S)-ヒドロキシコレステロール(24(S-HC)
- 27-ヒドロキシコレステロール(27-HC)
などのオキシステロール。それらの代謝はコレステロールよりもはるかに速く体内に存在するレベルは非常に低い。
オキシステロールレベルは主に酵素反応、酸化ストレス(ROS)、食事からの供給の3つによって影響される。
www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCHEARTFAILURE.114.001260
シトクロムP450(CYP11A1)はミトコンドリアの膜内の酵素であり、LXRアゴニストの形成を触媒できる。
24(S)-ヒドロキシコレステロール(24(S-HC)
CYP46によって触媒されるは、24(S)-ヒドロキシコレステロール(24(S-HC)脳のコレステロール恒常性にとって重要。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9374499
27-ヒドロキシコレステロール(27-HC)
27-ヒドロキシコレステロール(27-HC)は、細胞内のHDLに依存しないコレステロール流出を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10377398
これらのアゴニストはすべてヒドロキシル基を有しており、これがLXRを活性化する主な理由である可能性がある。
合成アゴニスト
T0901317とGW3965が合成のLXRアゴニストとして広く使用されている。天然のアゴニストと比較して化学的アゴニストのが優れており、LXRを活性化するメカニズムが異なる。
www.jbc.org/content/281/8/4920.full
LXR阻害剤はゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)や多価不飽和脂肪酸(PUFA)など、合成のLXR阻害剤はほとんどない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11371634
肝X受容体(LXR)の活性
食品成分
植物ステロール/ スタノール
植物に含まれるフィトケミカル
- エルゴステロール
- ブラシカステロール
- カンペステロール
- β-シトステロール
- スチグマステロール
- フコステロール
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24666673/
journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0110758
一般的な西洋型の食事に含まれる量のフィトステロールはLXRを活性化しない。
マンダリンオレンジジュース 338mg/100ml
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4085189/
- メキシカオレガノ 372mg/100g 乾燥重量
- ローズマリー 24mg/100g 乾燥重量
- ホワイトグレープフルーツジュース 31mg/100g
- グレープフルーツジュース 生 53mg/100ml
- ゆず 生 24mg/100ml
www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/80400525/Data/Flav/Flav_R03.pdf
フコステロール(昆布などのねばねば成分)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23116181/
エルゴステロール(しいたけ、きのこ類、酵母)
- きくらげ
- まつたけ
- まいたけ
- しいたけ
- えのきたけ
- ひらたけ
- マッシュルーム
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12847102/
ブラシカステロール(藻類)
藻類、アブラナ科植物
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12847102/
Sargassum fusiforme(海藻)
24(S)-サリンゴステロールを含む海藻Sargassum fusiformeの脂質抽出物は、LXRβを強力に活性化し、アルツハイマー病マウスの短期記憶を有意に改善、海馬Aβプラーク負荷を81%減少させた。
www.nature.com/articles/s41598-019-41399-4
シアニジン(赤い果物)
- ブドウ
- ビルベリー
- ブラックベリー
- ブルーベリー
- サクランボ
- ニワトコ
- サンザシ
- ローガンベリー
- アサイベリー
- ラズベリー
などの赤色液果類
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23769638/
ジテルペン(コーヒー)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24802811/
シネオール(ユーカリ植物)
- ローリエ
- ヨモギ
- バジリコ
- ニガヨモギ
- ローズマリー
- セージなどの葉
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23246324/
漢方・ハーブ
ペオニフロリン/Paeoniflorin
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23281636/
アマチャズル
LXR-αの活性化に対してより高い選択性
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16154115
クリシン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25857322?dopt=Abstract
ゲティフェロン/Guttiferone
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15844964/
ヒオウギ/Belamcanda chinensis
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23011313/
大黄/Dahuang(Rheum palmatum L.)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21364120/
ポドカルピン酸/podocarpic acid
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15911262/
ホノキオール(マグノロール樹皮)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20606297/
サプリメント
タウリン
LXR-αリガンド
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22707265/
胆汁
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3654004/
LXR活性経路
Sirt1
SIRT1は核内受容体LXRを脱アセチル化し積極的に調節する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17936707
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3543030/
PGC-1α
PGC-1αは肝臓X受容体LXR-αのコアクチベーターとして機能する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12470296
トリヨードサイロニン(T3)
マウス視床下部における甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン転写の肝臓X受容体調節は、甲状腺の状態に依存する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25229406
アゴニスト/アンタゴニスト
ナリンゲニン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20811644/
ナリンゲニンは、グレープフルーツ、オレンジ、トマトに含まれるフラボノイドである。Goldwasserらは、ナリンゲニンがLXRαアゴニストT0901317の存在下でLXRαに対してアンタゴニスト活性を示すことを確認した。
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20811644/
ゲニステイン(大豆イソフラボン)
そら豆、ルピナス属、クズ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22739758/
ゲニステインはリン酸化を促進することで間接的にLXR活性を調節すると考えられている。ゲニステインはLXRαの活性化を抑制することで、SREBP-1cやABCA1の発現を低下させた。同時に、LXRβの活性化によりABCG5およびABCG8の発現を増加させることが示され、このように2つの異なるLXRに対して相反する作用を示すことが示された。
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22739758/
LXR阻害剤
エストロゲン
エストロゲン(17β-エストラジオール)はマウス脂肪細胞のmRNA発現を減少させることが示された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15171719?dopt=Abstract