低T3症候群 (Low T3 Syndrome) 原因と治療アプローチ

低T3症候群 / Low T3 Syndrome/Euthyroid Sick Syndrome

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甲状腺ホルモン関連記事

甲状腺ホルモン 概要(アルツハイマー・リコード法)

TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)

TSH(甲状腺刺激ホルモン)

T4(サイロキシン)/T3(トリヨードチロニン)/rT3(リバースT3)

脱ヨード酵素(D1、D2、D3)

脱ヨード酵素の阻害因子・T4→T3の変換障害要因

ヨウ素・トランスサイレチン

低T3症候群 (Low T3 Syndrome)

天然甲状腺ホルモン補充療法(乾燥甲状腺末)

バイオアイデンティカルホルモン補充療法(BHRT)

概要

TSH、T4が正常でT3だけが低いケース 一般的に「低T3症候群」と言われる。

低代謝、T4からT3への変換がうまく行われていないことが原因と考えられている。

アルツハイマー病患者でもこのT3だけが低い(T4は正常か若干低い程度)患者さんがよく見られることから、低T3症候群について調べてみた。

評価項目

fT3 低値 (40~100%)

fT4 正常 → 進行後 fT4低下

TSH 正常(低TSH10%)→ 重篤時 TSH低値

rT3 高値

低T3症候群が進行または甲状腺機能低下症が合併すると、fT4が下がり、TSHも下がりうる。

アルツハイマー病(リコード法)では、低T3の補償応答としてTSHは高値を示す傾向にある。

低T3症候群の機序仮説

・HPT軸の障害

・甲状腺ホルモンと輸送体たんぱく質同士の結合の変化

・甲状腺ホルモンの組織流入口の変化

脱ヨード酵素/ヨウ素ペルオキシターゼ(甲状腺ホルモンの失活に関わる酵素)発現の変化による甲状腺ホルモン代謝の変化

・甲状腺ホルモン受容体(THR)発現、機能の変化

chriskresser.com/low-t3-syndrome-i-its-not-about-the-thyroid/

アルツハイマー病

アルツハイマー病とTSH、fT3、fT4の相関

TSHの血清レベルはT3、T4ではなく、アルツハイマー病患者の脳血流と相関していた。

アルツハイマー病患者のTSH、fT4レベルは低下傾向を示し、fT3は有意に低いレベルを示した。

さらに、TSHとfT3またはfT4との間に相関がなくなっていることも見出され、アルツハイマー病ににおける視床下部 – 下垂体 – 甲状腺軸の異常機能が示唆される。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5524843/

無症候性甲状腺機能亢進症のADリスク

高齢者の無症候性甲状腺機能亢進症は、2年後に認知症とアルツハイマー病の発症リスクが3倍増加することが示されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15184598/

bmcneurosci.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12868-018-0436-x

自己免疫性下垂体炎症との類似性

自己免疫性下垂体機能低下症/自己免疫性下垂体炎(LAH)は、下垂体の機能が低下し下垂体組織の損傷を特徴とした自己免疫性の炎症性疾患。

進行するにつれ複数のホルモン(成長ホルモン、TSH、黄体形成ホルモン)が影響を受ける。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11683401

LAHの治療

・自己免疫応答を引き起こす食事を摂らない。パレオダイエット

・ビタミンD、グルタチオン、ビタミンC、ヨウ素、セレン

・低用量ナルトレキソン

HPT軸不全

HPT軸不全によるT3の低下とrT3の増加

甲状腺疾患の重篤患者では、HPT軸(視床下部 – 下垂体 – 甲状腺軸)の顕著な変化が、甲状腺疾患関連の証拠なしに生じる。

T3は減少し、リバースT3は疾患の発症後数時間以内に増加。

疾患の重篤度および期間は、それらの変化の大きさと関連する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17689479

T3欠乏の脂質代謝への影響

低いT3は胆汁酸合成を低下させ、肝臓コレステロールが枯渇するが肝内コレステロールは増加する。

循環コレステロールからの吸収が低下する。

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www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30233497

T3低値を示す要因

T4からT3への変換は、脱ヨード酵素(D1、D2、D3)によって細胞内で変換される。

脱ヨード酵素(D1,D2,D3)

低T3症候群は甲状腺機能の低下と直接関わっておらず、複数の外因的要因・慢性疾患などによる脱ヨード酵素の阻害を介したT4、T3の変換障害が起因している。

脱ヨード酵素の阻害因子・T4→T3の変換障害要因

低T3症候群の治療

低T3症候群は、慢性疾患に対する身体の生理的な適応であり、エネルギーの節約をしようとしていることによって低いレベルが生じている。そのためこの状況において甲状腺ホルモン濃度が上昇すると悪影響が生じる可能性がある。

臨床医クリス・クレッサーレ

低T3レベルを上昇させる7つの方法

1.合成T4剤を摂取

最も一般的な方法。

リコード法では推奨されないが、用いる場合はtirosintのような低刺激性のものを検討する。

2.合成T3剤を摂取

T3合成剤、リオチロニンとして知られている。

一般推奨開始用量は25mcgだが、5mcgからスタートする。

T4およびT3レベルの両方が低い場合はT3ではなくT4補充を選択する。

T3は甲状腺ホルモンの活性型であるため、甲状腺機能亢進症に注意する。

3.乾燥タイプの甲状腺ホルモンを摂取

T4とT3の両方が低い場合に役に立つ。

低刺激性であるネイチャーサイロイド、WPサイロイドが勧められる。

乾燥タイプの天然ホルモン剤が合う人もいるが、一部の人では不適応症状を示す場合もあり、むしろ合成甲状腺ホルモン剤が適切であるケースも存在する。

4.甲状腺機能を高める栄養補助食品

甲状腺サプリメントは甲状腺機能をサポートする栄養素、ハーブが含まれていることが一般的。

セレン、チロシン、亜鉛、アシュワガンダなど。

5.カスタマイズされた甲状腺ホルモン剤を摂取

T4/T3カスタマイズ配合のメリットは、用量が自由に設定できることもだが、低アレルギー性の製品を処方できることもにもある。

ただし一般的な調剤薬局では、非常に高価なものになるかもしれない。

6.T4→T3の変換の問題を修正

T4のレベルが正常である場合、T4→T3の変換に問題があることを示唆する良い指標となる。

ただしT4、T3の両方が低くても変換に問題がある場合もある。

T4→T3の変換プロセスを妨害する要因は多くあるが、一般的には

1 肝臓の問題

2 消化不良

3 コルチゾール値の上昇

が認められる。

T4→T3の変換に問題がある人が甲状腺ホルモン剤を服用すべきかどうかは人によって異なる。

変換の問題は、肝臓や腸、副腎の不均衡に対処する必要があり、解決には数ヶ月かかることもある。

7.自己免疫疾患の原因を見つけ出し除去する

甲状腺機能低下症のほとんどの人は、橋本甲状腺炎を患っている。

橋本病では甲状腺ホルモン剤の補充が不要な人もいるが、問題原因に対処しながら服用する必要のある人もいる。

これは甲状腺のダメージに依存して判断しなければならない。

T3レベルが低いその他の要因

T3低値の最も一般的な理由は以下の2つ

・橋本病

・T4→T3変換障害

その他には、

・HPT軸(視床下部-下垂体-甲状腺)の調節不全

・甲状腺の直接的な阻害

甲状腺ホルモン産生を直接阻害する因子、例えば水銀、環境化学物質などの毒素

甲状腺ホルモン様食品 大豆の摂取には注意が必要。

・T3と結合するキャリアタンパク質の問題

T3、T4は特定のタンパク質に結合して血流にのって運ばれる。サイロキシン結合グロブリン(TBG)はそのひとつ。

T3と比べてT4への親和性が高い。例えばコルチコステロイドを服用しているとTBGレベルが低くなり、血中の甲状腺ホルモンレベルを低下させる。

www.naturalendocrinesolutions.com/archives/7-ways-to-increase-low-t3-levels/

T4→T3への変換を促進する栄養素

・ヨウ素

・セレン 200mcg

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4115520/

・亜鉛

・鉄

・クロム

・銅

・ビタミンA

・ビタミンB2、B6、B12

www.selfhacked.com/blog/low-thyroid-hormones-low-t3-syndrome/

T3高値となる要因(参考)

・グレーブス病

・甲状腺機能亢進症

・痛みのない甲状腺炎

・甲状腺刺激性周期性麻痺

・有毒な結節性甲状腺腫

・血中の高タンパク質

・甲状腺癌、甲状腺中毒症