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毒性試験をすり抜ける低用量化学物質の危険性

化学物質過敏症・安全性・

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「あらゆるものは毒であり、毒でないものなど存在しない。その服用量こそが毒であるかないかを決めるのだ」

毒性学の父 パラケルスス

はじめに

87000の新規化学物質

過去50年間で、87000以上の新しい化学物質が承認され、環境保護庁(EPA)に登録されている。これらのうち発がん性リスクが正式に検査された化学物質は数千しかなく、そのほとんどは日常における使用リスクは評価されていない。

リスクの等級付けがなされているのは1000わずかに超える程度であり、そのうち500が、発がんリスクの可能性のあるものとして(高いもの低いものを含め)格付けされている。

現在の有毒化学物質は、古くからある水銀や鉛、ヒ素などの有害金属、アレルゲンやカビ毒などの有機化学物質とは異なる。これまで人類が遭遇したことのない膨大な種類の有毒化学物質が体内に運び込まれており、壮大な人体実験を行なっているに等しい。

有害物質規制法(TSCA)は毎年、市場に導入される700の新規化合物について、毒性テストを要求しておらず、一般企業も自発的には実施しない。

www.gao.gov/new.items/d09428t.pdf

www.nytimes.com/2010/05/06/opinion/06kristof.html?_r=0.

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6546253/

証明できなければ無害

化学物質は歴史的に「有罪が証明されるまで無害」と想定されてきた。数十年その化学物質が使用され、科学的知識が向上した後に、特定の毒物が制限されるといったことが歴史上繰り返されている。

DDT、鉛、アスベスト、ホルムアルデヒド、フッ素(PFC)、塩素系難燃剤、塩化ビニル(PVC)、ビスフェノールA(BPA)、フタル酸A、ガソリン添加剤MTBE、グリホサート(係争中)

慢性疾患の急増

医療費の86%が慢性疾患

米国の医療費は毎年3.3兆ドル(356兆円)費やされており、このうち86%が慢性疾患のケアに費やされている。ヘルスケアのコストは2025年までに5.5兆ドルに上昇すると予測されている。

12歳未満の30%が慢性疾患

現在12歳未満の子供の30%が慢性疾患を患っており、20%が10代で重度の精神疾患を発症する。

www.hhs.gov/ash/oah/facts-and-stats/national-and-state-data-sheets/adolescent-mental-health-fact-sheets/united-states/index.html

アメリカ人の60%が慢性疾患

18〜64歳の成人米国市民の60%が慢性疾患を、65歳以上の90%の人々が1つ以上の慢性疾患をもっており、65~81%が2つ以上の慢性疾患を抱えている。

www.policymed.com/2017/03/2016-2025-projections-of-national-health-expenditures-data-released.html

若者の慢性疾患の増加

医学の進歩によって平均寿命が伸びてきたのとは対照的に、若者の(感染症以外の)慢性疾患の増加率は増加している。

慢性疾患には心血管疾患、脳血管疾患、癌、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、神経認知障害、自己免疫疾患などの免疫機能障害が含まれる。

特に女性では死亡率は低下しているものの、その低下率の伸びは鈍化し病気の有病率は増加している。これらは、先進国の主な死亡要因であり、発展途上国でも広がり始めている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21135070/

www.who.int/nutrition/topics/2_background/en/

多因子疾患である慢性疾患

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や、エイズ、ヘリコバクター・ピロリ菌、ライム病、細菌に影響を受けやすい個人では、単一の原因によって慢性疾患を発症することがあるが、ほとんどの主要な慢性疾患に単一の原因はない。

自閉症有病率は20倍に

米国の子供の自閉症の有病率は過去数十年にわたって急速に増加している。CDDSとカリフォルニアIDEAのデータでは、1970年から2005年の間に自閉症有病率は20倍以上増加している。これは、喘息の有病率2倍、クローン病の入院率2倍と増加率と比べても際立っている。

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www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4177682/

糖尿病の有病率は7~10倍に

疾病対策予防センター(CDC)の発表では、糖尿病の発症率は1958年では0.9%であったが、2013年には7.2%と、過去50年間で7~10倍に増加している。

相関しない糖質摂取量と糖尿病

糖質の消費量は糖尿病に寄与するだろう。しかし、糖質の消費量の増加はすでに1920年代には増加し(下記図)糖尿病の発症はその40年後に始まっている。糖質摂取量と糖尿病の増加はほとんど相関していない。

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www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4991654/figure/f2-8-17/

相関する環境POPsと糖尿病

一方で、低レベルの残留性有機汚染物質(POPs)の環境への放出率と糖尿病の流行は強く相関する。

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www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4991654/figure/f3-8-17/

体内POPと相関するメタボリックシンドローム

上記図はもちろん因果関係を示すものではないが、以下の図も参照してもらいたい。POPの体内蓄積量はメタボリックシンドローム(糖尿病リスク)と相関し、二つの事象に強い関連性があることが示唆される。

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www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4991654/

多種類化学物質過敏症(MCS)は10年間で3倍に

多種類化学物質過敏症(MCS)とは

多種類化学物質過敏症(MCS)は、一般的な化学物質や汚染物質への暴露、農薬、新しいカーペットや塗料、リフォーム材料、ディーゼル排気、クリーニング用品、香水、香料入りの洗濯製品などの製品による健康への悪影響を特徴とする病状。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15117694/

MCSは、急性、慢性、多臓器にわたって、頭痛、めまい、認知機能障害、呼吸困難、動悸、吐き気、粘膜の炎症、および喘息発作など、健康への影響の範囲を引き起こす可能性がある。

onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/(SICI)1098-240X(199804)21:2%3C103::AID-NUR2%3E3.0.CO;2-N

4人に1人が多種類化学物質過敏症

アメリカ人人口の12.8%(2560万人)が多種類化学物質過敏症(MCS)の医学的な診断を満たし、25.9%(5180万人)のアメリカ人が多種類化学物質過敏症を訴える。

多種類化学物質過敏症患者患者の86.2%は、芳香のある製品に曝露した時に偏頭痛などの健康上の問題を経験する。71%は喘息であり、70.3%は芳香剤を使用している場所に近づくことができない。

過去10年間で、多種類化学物質過敏症の有病率は3倍を超えて増加、自己申告の化学物質過敏症は2倍を超えた。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5865484/

MCSとうつ病の関連性

多種類の化学物質に敏感な患者は、認知機能障害、呼吸困難、気分障害を訴える。特にうつ病を併発するMCS患者は言語記憶テストで著しい悪化が観察された。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12391767

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28712429

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10789611/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4597346/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11576318/

「多因子心理生物学」

MCSは、懐疑論者は化学物質過敏症が完全に心因性であると主張し、支持者は完全に毒性であると主張することによりしばしば論争を引き起こす。しかしこれまでの積み重なる研究では、多因子の心理的、生物学的プロセスが条件の根底にあることを示している。

化学物質曝露がもたらす悪影響は、長年にわたる工業化社会における労働衛生の問題の一部であり、さまざまな化学物質にさらされる産業労働者で発生する傾向がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4597346/

メンタルヘルスと複数の化学物質過敏症との相関:日本人労働者の調査研究

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25500796/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4827900/

MCS発症機序仮説

神経学的機序

化学物質の持続的な刺激により耐性を失い、その後微量化学物質曝露による症状が発現するという2段階プロセスで発症するという仮説。

免疫学的機序

アレルギーと同様に、化学物質が一度過敏性を獲得すると、ごく微量の化学物質に曝露しただけで症状を発現するという仮説。しかしアレルギーにおけるIgE抗体やヒスタミンに相当するような指標は見つかっていない。

心身医学的機序

化学物質過敏症は多彩な不定愁訴が自覚症状として出現しており、化学物質との因果関係を説明できる検査所見や病理学的所見に乏しく、精神疾患と類似していることなどが心因性の機序仮説の主な根拠とされている。

高感受性集団の存在

化学物質に対する感受性の個人差が、一貫した科学的説明を難しくするという考え方がある。そこで、代謝酵素の遺伝的個体差により高感受性集団が存在するという仮説がたてられている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26656090

生体総負荷量限界説

この仮説では、化学物質がストレッサーとして想定されており、その蓄積量が許容量を超えてしまうことで様々な病的反応が起こるとする仮説。硫酸抱合経路の障害、HPA軸障害など。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29386440

MCSリスクの高い職業

  • 農業従事者
  • 美容師
  • レントゲン技師、麻酔医など特定の医療従事者
  • 都市勤務の警察官
  • 航空機搭乗員
  • 客室乗務員
  • スイミングプールでの労働者
  • 教師
  • 学生
  • オフィスワーカー(特に密集した建物内)
  • 主婦
  • 建設労働者
  • 室内画家
  • 農薬を扱う労働者
  • 薬物を扱う労働者

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3697784/

乳がんの発生率の大幅な増加

乳がんの危険因子として遺伝リスクは、せいぜい30%の症例しか占めない。危険因子の殆どは、塩素化有機物、多環芳香族炭化水素(PAH)、トリアジン除草剤、医薬品などの化合物であり、これらはエストロゲンの生産と代謝に影響を与え、それにより異種エストロゲンとして機能する。

これらの異種エストロゲン化合物の多くは、試験管実験、動物実験によって乳がんを誘発することが示されている。

最近の疫学研究では、乳がんの女性の乳脂肪と血清脂質には、非がん対照者と比較して、かなり高いレベルの有機塩素化化合物が含まれていることがわかっている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8119245/

男性の生殖障害は2倍に、精子数は半分に

男性の生殖の発達障害発症率は過去30〜50年で2倍以上増加し、精子数は約半減した。同様の異常は、妊娠中にジエチルスチルベストロール(DES)に曝露した女性の男児でも発生する。

動物実験により、妊娠中に外因性エストロゲン/ DESに短時間曝露することで誘発される可能性があることが示されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8098802/

低用量毒性の問題

低用量毒性は単調な用量反応曲線を描かない

化学物質のリスクはまず最初に、毒性(多くの場合急性毒性)、化学物質に持続性、蓄積性があるか、暴露する可能性がどの程度あるかによってスクリーニングされる。

毒性リスク評価は、動物研究に基づき悪影響をもたらさない用量レベルが決定され、そこから低用量のリスクが外挿される。しかし動物毒性学の明らかな欠点は、人間はげっ歯類ではないということである。

未検査の低用量毒性領域

現在の毒性学は、高用量の毒性が低用量で生じる毒性のすべてを予測できるという仮説に基づく。これはパラケルススの「用量が毒と薬を区別する」という言葉の言い換えとも言える。

だが、毒性物質の内分泌への作用は単調な用量反応曲線を描かないということはすでに認識されており、高用量毒性から外挿される閾値以下の低用量毒性は検出されないという毒性試験の仮説はそもそも矛盾をきたしている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20049113/

NOAEL以下はゼロ効果ではない

理論上は、NOAEL未満の成分がゼロ効果である場合、その組み合わせ効果は生じないはずである。しかし、実際にはNOAEL未満の化学物質の混合物に有意な効果が生じる。

NOAELは仮説検定のプロセスを経て統計的に導き出される。つまりNOAEL以下では統計の検出力不足により影響がないと解釈されているに過ぎない。

NOAEL以下がゼロであれば、100種類の化学物質がおよぼす影響もゼロとなる。しかし、仮に1%の効果を生み出す場合、理論的な式によるカクテル効果は最大で63%となりうる。

現在のin vivo研究ではNOAELの1%の効果を検出することは非常に困難である。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2174412/

「noael noel chemical low dose」の画像検索結果

www.epmmagazine.com/latest-issue/top-tweets-from-md-m-east/

NOAEL以下での混合物の毒性

妊婦、胎児は、混合化学物質の毒性に対する感受性を高くもつ。混合物の化学物質は単独でのLOAELを下回る影響で生殖組織に影響を与える(抗アンドロゲン作用など)。いくつかの分子作用機序はNOAELを遥かに下回る用量でも累積的な影響をもたらした。

人間の健康を守るためのリスク評価には、単独ではなく複数の化学物質曝露による潜在的な危険性を考慮していくことが重要である。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6677127/

独自の毒性リスク政策

スウェーデンなど一部の国では、予防原則に基づき、安全性、化学物質、製品の重要性、リスクの低い代替品が実現可能か、独自に検討を始めている。

www.kemi.se/global/rapporter/2007/rapport-8-07-the-substitution-principle.pdf

検査から逃れる毒性化合物

組織中に隔離される毒素

血液、尿は残留毒物レベルを評価するためのサンプリングとして用いられる。しかし、多くの化合物は組織に隔離されるため、血液中にとどまらず尿中には排出されないかもしれず生体内の蓄積の指標としては著しい欠陥を有する可能性がある。

環境による毒性化合物レベルの変化

また、栄養素や医薬品の使用、カロリー制限、水分補給、熱による変化、運動による変化によって血液中や尿中の毒性化合物のレベルも急速に変動する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21811501/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15863245

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15513954

代替検査方法の限界

唾液検査、毛髪分析、糞便採取、発汗検査、呼気分析、誘発検査、脂肪組織の生検など、他の組織および体排泄物の検査も検討されてはいるが、これらのアプローチにはそれぞれに制限があることが最近の研究で確認されている。

脂肪生検の研究では、毒性成分は脂肪部位によって異なって隔離されるため、毒性濃度は脂肪組織部位によって大きく異なる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21647350

化学物質のカクテル曝露

新生児の汚染物質

さい帯血から287種類の産業化学物質

米国の病院で、10人の新生児のさい帯血を検査した所、平均200以上の産業化学物質、汚染物質が検出された。グループ内では287種類の化学物質があることが明らかとなった。

臍帯血で検出された287種類の化学物質のうち、180種類は人間または動物で癌を引き起こし、217種類は脳や神経系への毒性作用を示し、208種類は動物試験で先天異常または異常発達を引き起こすことが知られている。

この発がん性物質、発生毒素、神経毒の複雑な混合物の出生前または出生後の暴露の危険性は研究されていない。

www.ewg.org/research/body-burden-pollution-newborns

一日7個の新規化学物質

数十年前のPCB、鉛、DDTなどの化学物質の禁止は、大幅な血中濃度の低下をもたらしたが、現在では一日7個の新しい化学物質が承認されており、それらを検査で見つけだすことが困難になっている。

これらの化学物質の子宮内への暴露の安全性は保証されておらず、胎児にどのような影響をおよぼすかはわかっていない。

www.ewg.org/research/body-burden-pollution-newborns

化学物質の混合効果

パーソナルケア製品に含まれる30種類の化学物質の共同効果

多くの生体異物は、アンドロゲン受容体に対して拮抗作用を有する。

農薬、酸化防止剤、パラベン、UVフィルター、合成香料、ビスフェノールA、ベンゾピレン、ペルフルオロオクタンスルホネート、ペンタブロモジフェニルエーテルからなる30種類の抗アンドロゲン作用を有する化学物質の組み合わせテストでは、非常に低い濃度によって混合効果(抗アンドロゲン作用)を発揮することが観察された。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24055644/

毒素からの逃げ場所はない

われわれは日常生活で無数の毒物に前例のない猛攻撃に曝されていおり、現代のアメリカ人女性のほとんどが様々な有毒化学物質を持っている。それらの多くは胎児へと感染することが、臍帯血サンプルの研究調査で明らかとなっている。

西欧文化で生活する妊婦女性の一日

妊婦である彼女の一日は、臭素系難燃剤を使用したベッドからの起床で始まる。

起床後、シャワーで塩素から気化したトリハロメタンを吸い込み、抗菌剤トリクロサンを含む石鹸で体を洗い、水銀暴露の原因となる歯科用アマルガムのある歯を研磨する。

ホルモン撹乱作用のあるパラベンとメタロエストロゲンアルミニウムを含んだ化粧品、クリーム、デオドランドを塗り、内分泌かく乱作用や毒性作用を潜在的にもつ香水、マニキュア、ヘアスプレーなどで化粧をし身支度をする。

通勤中には、運転手も乗客もディーゼル化合物、一酸化炭素、カドミウムが含まれる車の排気ガスを吸い込み、ガソリンの給油時には気化したベンゼンも吸い込む。

買ったばかりの新車であれば、車内に放出されているより多くの溶剤を吸い込む。

職場では、化学芳香剤の匂いを嗅ぎ、室内装飾品、建設資材、床材、塗料から放出される揮発性有機化合物を吸い続ける。

工場、研究所、製造工場などで務める労働者は、有毒な溶剤、各種産業用化合物も暴露源となる。

帰宅後、さまざまな化学防腐剤、殺虫剤、着色料、香料物質の混ざった食品を、フッ素化合物が浸出するノンスティックのフライパンで調理し晩飯を作る。

缶詰のコーティングから放出されたビスフェノールA(またはBPAフリーと書かれたその他の有毒物質)の食材も盛り込まれる。

食後には、フッ素化された水によってエストロゲン様作用をもつフタル酸エステルやBPAを放出するプラスチック飲料容器に、飲み物や、余った食材を保存する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19490835/

レジレシート

ビスフェノールA(BPA)はレジレシートなどで使われる感熱紙に高濃度で含まれる 。

消毒剤、スキンケア製品には皮膚吸収を最大で100倍高める化学物質が含まれ可能性がある。

消毒後、感熱紙を保持しフライドポテトを食べた被験者では、経皮と経口からの曝露により血清、尿中BPAが急激に増加した。

ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2533779

生殖毒性学のリソース不足

この問題の厄介な点は、母体への多数の化学物質の曝露と、妊娠中の中毒、発達中の子供の短期、長期の潜在的な後遺症を関連付ける新規論文を査読する時間が十分にないことである。

インスリン、テストステロン、エストロゲンなどの内因性ホルモンが10億分の1の量で、生理的または発達的効果を持っていることからも明らかなように、化学物質は非常に低いレベルで生物活性の影響を及ぼす。

生殖毒性学の議論はより広範囲になされるべきであり、妊娠、妊婦に関わる医学界が、母体および胎児の化学物質曝露という現代のパンデミックを認識することが推奨される。

魚介類、ワクチン接種、肉食などの毒性の議論も重要だが、それらは環境に存在する広範囲の毒性の一部を代表するに過ぎない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19490835/

メーカーの偽装

化学メーカーは「環境に優しい」という消費者の欲求を満たすために、毒性のある製品を実際よりも害が少ないと偽装するテクニックを身に着けている。

例えば、商品成分の「香料」は、製造業者が開示する必要なのない化学物質の混合物であり、ホルモンへの影響を与える内分泌かく乱剤が含まれることがある。

onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/clen.200900038

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6546253/

BPAフリー

現在、多くのプラスチック製品はビスフェノールA(BPA)フリーである。

メーカーはこの有害物質を除去したかもしれないが、BPAと同レベルのまたはそれよりも凶悪な有害物質に置き換えた可能性もある。

ビスフェノールS、ビスフェノールFは、ビスフェノールAの安全な代替品ではない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25475787/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23458715/

はっきりしない単一化学物質との疫学的相関

自閉症や学習障害を引き起こすと疑われているトップ10の環境化合物鉛、メチル水銀、ポリ塩化ビフェニル、有機リン系農薬、有機塩素系農薬、内分泌かく乱物質、自動車排気ガス、多環式芳香族炭化水素、ポリ臭素化ジフェニルエーテル、過フッ素化化合物

ポリ臭素化ジフェニルエーテル、アルミニウムアジュバント、除草剤グリホサート、米国女性の肥満は、自閉症の増加と正の相関の傾向がある。

しかし、自閉症を引き起こす環境化合物と考えられていた、鉛、PCB、有機塩素系殺虫剤、車両排出物、大気汚染などの毒素のほとんどは、過去35年にわたり横ばいまたは減少する傾向にあり、疫学的にはそれらが自閉症の増加を促進する可能性は低くなっている。

しかし今回の研究では、現在使用されている数千の環境化学物質のわずかな毒素の傾向のみを調査しており、その他の膨大な毒素の量が自閉症の増加を促進している可能性を排除することはできない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4177682/

多因子ヒット仮説

人間が日々の生活において曝露する化学物質は、単体ではなくカクテルとして曝露する。加えてこれらの化学物質の混合物は、その他の多くの環境的現実、例えば生活上のストレスであったり、高齢者や妊婦、小児における脆弱性、普段の食事、遺伝的背景、基礎疾患、社会経済状況、喫煙やアルコールなどの広範のコンテクストの中で曝露する。

しかし、ヒトへの健康リスクに対する現在の化学物質の評価方法や理解の仕方は、そのような前提にほとんど基づいていない。

脳固有の毒性感受性

中枢神経系は、そのインタラクティブな特性をもつシステムの複雑さのため、化学物質の混合物または、その他の危険因子との相互作用の問題は、中枢神経系に重大な影響を与える可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16112317/

内分泌かく乱化学物質(EDC)

内分泌かく乱物質の問題は、これらが多様であり、分子量が1000ダルトン以下の化合物であるということ以外では、構造的類似性を有していないように見えることである。

そのため、ある化合物が内分泌かく乱作用を発揮するかどうかを予測することは非常に困難である。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2726844/

残留し拡散する内分泌かく乱物質

一部の撹乱物質は、半減期が長くなるよう設計されており、容易に分解しないため代謝されない、または代謝されてより毒性の高い化合物に分解される可能性がある。

実際に数十年前に禁止された物質が環境中へ高レベルで残留し、動物やヒトから検出されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16723279/

www.mdpi.com/2072-6694/11/8/1063

内分泌かく乱物質の一部は、汚染された地域で渡り鳥を介して、水や気流にのって、使用され放出された場所から離れた場所でも検出される。

BPAの蓄積

これまでの文献では、BPA摂取後体内から急速に排出されると述べられてきたが、断食によってBPAはすぐには低下しなかった。これはBPAの慢性的な曝露による脂肪などの身体組織へ蓄積、または食品以外の経路からの曝露を示唆する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19479022/

非単調用量反応

ホルモンの最大効果は通常、受容体飽和を引き起こすリガンド濃度よりも十分に低いリガンド濃度で発生する「逆U字型」の用量反応を示す。過剰なホルモンは受容体のダウンレギュレーションを引き起こし、細胞の感受性低下をもたらす。

内分泌かく乱剤化学物質(EDC)は、この特性を模倣する。この非単調用量反応は、高用量の化学物質の影響から低用量の化学物質の影響の予測を困難にする。

さらに、内因性のホルモンも低用量で変動しているため、その作用がEDCの低用量効果にも影響を及ぼす。

低用量でより高くなる毒性

BPAの無有害作用量(NOAEL)100nMでは、1nMよりも低い前立腺がん細胞増殖の誘導を示す。この値はコントロール群動物との間に差が見られず毒性試験において低用量での試験はスルーされてしまう。

画像、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はehp-117-1652f1.jpgです

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2801170/figure/f1-ehp-117-1652/

内分泌かく乱物質(EDC)試験の難しさ

内分泌かく乱剤試験の高い感受性

内分泌かく乱剤が及ぼす研究において、わずかな外的要因が動物研究の実験結果に影響を与えることが示されている。

  • 動物に与える餌に含まれる植物エストロゲン含有量の違い。
  • ラット、マウス、種と系統の違い。
  • 実験動物の飼育環境、例えば火災報知器や建設騒音による生理学的濃度の変動など

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18335098/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16256977/

内分泌かく乱剤の多面性

複数の内分泌系に多面的に影響を及ぼすダイオキシン様化合物などのEDCは、内分泌かく乱スクリーングプログラム(EDSP)毒性試験では簡単に特定できない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3423612/

長期的な影響・潜伏の可能性

重要なポイントは、内分泌かく乱剤による成長中の子供へのホルモン作用は、しばしば永続的であり生涯に渡って影響をおよぼす可能性がある。同様に発達中のホルモンの破壊も永続的な効果をもたらす可能性があり、その一部は成人になるまで現れない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16096877/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21263448/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19015723/

自然のホルモンとは異なる内分泌かく乱剤の作用

内分泌かく乱剤は内因性のホルモンと同様に異なる組織で非常に複雑な作用を同時にもつであろうが、おそらく内因性のホルモンの効果のパターンを正確には再現しないであろう。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3423612/

科学的根拠の弱体化

アメリカ化学会は、低用量の内分泌かく乱作用が、化学規制の根拠となる毒性試験の科学的立場を弱体化させていることを認めている。

academic.oup.com/edrv/article/30/4/293/2355049

エピジェネティクス

これまでの研究で、多数の環境因子が特定の細胞のエピジェネティックパターン、miRNA発現を変化させ、異常な遺伝子発現につながることが示されている。

内分泌かく乱剤によるエピゲノムの破壊には、用量反応、年齢、曝露期間、など多くの要因が介在する。

エピゲノムの可塑性は進化に重要な役割を果たすが、これは環境曝露に対する脆弱性も生み出している。内分泌かく乱剤によるエピゲノムの変化は、個人の生涯、さらには後の世代にまで伝達される可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22945581

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4965844/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26544531

内分泌かく乱物質は、エピジェネティクスによって世代間を超えて影響を精子の質に影響を与える可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16690803/