キヌレニン経路と神経変性疾患・アルツハイマー病
概要
キヌレニン経路は必須アミノ酸であるトリプトファンの主要な経路のひとつ。
トリプトファンの代謝は非常に複雑、主な代謝経路は4つ存在する。
- ヒドロキシル化 → セロトニン、メラトニン
- 脱カルボキシル化 → トリプタミン
- 脱アミノ → インドールピルビン酸
- 酸化 → キヌレニン経路代謝物 NAD
摂取されたトリプトファンのほとんどが(約90~95%)がキヌレニン経路により肝臓で代謝される。その他のトリプトファン代謝経路は量的には重要ではない。
肝臓以外では5~10%しか代謝されないが、免疫が活性化された際には肝臓外でのトリプトファン代謝の重要性が高まる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5821294/
アルツハイマー病
キヌレニン経路の異常な活性または恒常性の調節不全は、興奮性の毒素であるキノリン酸の増加につながり、脳への障害をもたらしうる。
アルツハイマー病においてキヌレニン経路がアップレギュレーションされており、直接、間接的にキヌレニン経路がアルツハイマー病と関連する証拠が存在する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12396664
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12214038
老化関連疾患と関わるキヌレニン経路
加齢によって変化するキヌレニン経路(アップレギュレーション)は認知障害、炎症、酸化ストレス、免疫反応の低下と密接につながっており、神経変性の重要な要因であることが研究者に受け入れられてきている。
体内のトリプトファンレベルは老化とともに減少し、セロトニン(5HT)は増加する。
キヌレニン経路の高い活性(KYN/Trp比によるIDO活性)の測定では、高齢者が健常者よりも高く、また個人の死亡率も予測できることが示されている。
link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-319-11870-3_5
キヌレニン経路代謝図
journals.plos.org/plosone/article/figures?id=10.1371/journal.pone.0059749
キヌレニン経路 略記
キヌレニン経路代謝物
- KP キヌレニン経路
- TRP トリプトファン
- KYN キヌレニン
- KYNA(KA) キヌレン酸
- AA アントラニル酸
- 3-HK 3-ヒドロキシキヌレニン
- 3-HAA 3-ヒドロキシアントラニル酸
- QUIN(QA) キノリン酸
- XA キサンツレン酸
- PIC(PA) ピコリン酸
- NAD ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
- 5-HT 5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)
キヌレニン経路変換酵素
- IDO インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ
- TDO トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ
- KAT (KAT I、KAT II、KAT III)キヌレニンアミノトランスフェラーゼ1,2,3
- KYNU キヌレニナーゼ
- KMO キヌレニン3-モノオキシゲナーゼ
- 3-HAO 3-ヒドロキシアントラニル酸3,4-ジオキシゲナーゼ
- ACMSD α-アミノ-β-カルボキシムコン酸-ε-セミアルデヒドデカルボキシラーゼ
- QPRT キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ
- TPH トリプトファンヒドロキシラーゼ
- AADC 芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ
- AA-NAT セロトニンN-アセチルトランスフェラーゼ
- HIOMT 5-ヒドロキシインドール-O-メチルトランスフェラーゼ
疾患と関連するキヌレニン経路代謝物・変換酵素
キヌレニン経路代謝物
- TRP AD↓
- 5-HT IBS↑、統合失調症↑、PD↑、不眠症、不安↑うつ病↓
- KYN 記憶障害↓AD(血漿)↓、ハンチントン病↓、うつ病↓
- KYNA AD(被殻、尾状核)↑、AD(CSF、血漿)↓
- 3-HK 妊娠↑ AD↑ PD↑、HD初期↑、VB欠乏症↑、HD後期↓、VB補充↓
- 3-HAA 膀胱がん(尿)↑、HD初期↓、
- QUIN AD↑加齢↑TBI↑
- XA VB欠乏↑、2型糖尿病↑
- AA AD女性Aβ↑、統合失調症↑
キヌレニン経路変換酵素
- IDO うつ病↑ガン↑IBS↑AD↓
- TDO
- KAT 統合失調症↑HD↓
- KYNU VB欠乏症↓妊娠↓
- KMO AD↑PD↑
- 3-HAO CBI↓脳卒中↓うつ病↓
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27010891
キヌレニン経路
トリプトファン(TRP)
トリプトファンはヒトの必須アミノ酸のひとつ。ヒトタンパクの1.3%を占める。
キヌレニン経路においてメラトニン、セロトニン、NAD+、ナイアシンなどを産生するための材料となる。
血漿中では10%が遊離しており、L-アミノ酸輸送体1(LAT-1)によって血中から血液脳関門を超えて輸送される。
トリプトファン濃度と逆相関する認知障害
アルツハイマー病患者の認知障害と血中トリプトファン濃度はある程度逆相関するが、疾患期間とは相関しない。免疫刺激によるIDO活性化の可能性が高い。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10721050
血漿トリプトファンの低い患者では、対照群と比べて有意に嗅覚能力が低かった。
アルツハイマー病を含む神経変性疾患を有する高齢の患者144人の11%で血漿トリプトファンレベルの低値が観察された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29037152
アルツハイマー病患者の低いトリプトファン濃度
血清トリプトファン濃度は、アルツハイマー病患者では低い傾向にある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10821443
うつ病のキヌレニン仮説
キヌレニン経路の律速酵素であるTDOはコルチゾールによって過剰活性され、トリプトファン-セロトニン(メラトニン)経路を阻害することによりうつ病を発症するという仮説。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3726541/
キヌレニン(KYN)
トリプトファンからナイアシンを生合成する主要な代謝中間体のひとつ。
キヌレニンとその分解産物は、炎症での血管拡張や免疫反応の調節など様々な生物学的機能を果たす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20190767
天然のUVフィルター
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11726659/
アルツハイマー病 キヌレニン(KYN)の増加
血清キヌレニン濃度の上昇がアルツハイマー病認められており、認知能力の低下と相関していた。キヌレニンの増加によるNMDA受容体の遮断が原因でありえる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10821443
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10226937
アルツハイマー病患者の線条体でそれらの上昇が観察されており、キノリン酸、キヌレン酸の上昇は補償応答かもしれない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16008823
キヌレン酸/トリプトファン比(Kyn/Trp)
キヌレン酸/トリプトファン比率は、若年者よりも高齢者で高いことが示されている。
アルツハイマー病患者においてもキヌレン酸:トリプトファン比率は増加しており、トリプトファン代謝の増強が示唆されている。
キヌレン酸/トリプトファン比(kyn/try)の増加(キヌレン酸が増加しトリプトファンが減少)は、IDOとIFN-γの活性を反映する。
Kyn/Trpの比率の増加と認知能力の低下
アルツハイマー病患者では、トリプトファン分解の増大により、Kyn(キヌレン酸)/Trp(トリプトファン)の比率が有意に増加していた。
Kyn/Trpの比率の増加は認知能力の低下と関連していた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10821443
キヌレン酸(KYNA)
キヌレニン経路で最も研究されている代謝産物
キヌレン酸は、免疫機能の調節作用を有し、マウスでは抗炎症作用を発揮し炎症性サイトカインを減少させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27095921/
キヌレン酸は、消化管で抗炎症作用をもつ可能性があり、大腸がんの増殖を抑制することがin vitroで示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19650771
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21617892
リポ多糖毒性に対する保護効果
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22215208/
神経変性
キヌレン酸はα7ニコチン性アセチルコリン受容体を阻害する能力を有することから、キヌレン酸の増加は認知障害と関連する可能性がある。
アルツハイマー病 キヌレン酸の低下と上昇
アルツハイマー病患者の脊髄液中において、神経保護作用を有するキヌレン酸濃度は有意に低い。一方で血清キヌレン酸濃度、脳内の海馬、線条体では上昇しており代償応答である可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29037152
キヌレン酸は作業記憶障害と認識記憶の改善の両方を引き起こす可能性がある。
link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-319-11870-3_5
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8539328
外傷性脳損傷でのキヌレン酸増加
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26025142
キヌレン酸はBBBをほとんど通過できない。
血清キヌレン酸レベルは、重度の臨床状態を有するALS患者では軽度よりより低い。
AA アントラニル酸
アントラニル酸は、芳香族アミノ酸の一種であり、催乳作用を示すためビタミンL1とも呼ばれる。
www.nature.com/articles/s41598-018-25968-7
アミロイドβ負荷女性での高いアントラニル酸
新皮質のアミロイドβ負荷が高い女性では、低い女性と比べAA、3-HKの両方が増加しているが、その下流の3-HAAは増加していない。一方アミロイドβ蓄積の高い男性では、3-HKは減少している。
エストロゲン、テストステロンの複雑な関与が示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5964182/
3-HK
3-HK(キヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ)は、キヌレニンモノオキシゲナーゼとしても知られている。
キヌレン酸 → (キヌレニナーゼ) → 3-HK → (HAAO)→ 3-HAA
3-HKはミトコンドリア呼吸鎖Ⅰ、Ⅱ,Ⅳ複合体を阻害する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17151944/
毒性をもつと考えられていた3-HK、および3-HAAは特定の条件下で神経保護作用を示す。上流であるKMOの遮断はある条件下では意図しない有害な結果をもたらすかもしれない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3157215/
3-HAA
3-ヒドロキシアントラニル酸
3-HAAはHO-1(ヘモキシゲナーゼ-1)を強力に誘導する。
TNF-α、IP-10発現を阻害することで抗炎症作用を発揮する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3157215/
キノリン酸(QUIN)
キノリン酸
キノリン酸は、NMDA受容体の弱い内因性アゴニスト。
NR2AおよびNR2B受容体サブタイプに選択的に作用する。線条体および海馬ではNR2AおよびNR2Bサブユニットを含むNMDA受容体が豊富に存在し損傷を受ける。
キノリン酸の部位特異性
アルツハイマー病の初期では脳または脊髄液中のキノリン酸レベルには有意な変化は見られない。このことはキノリン酸の増加が部位特異的または疾患の時期によって生じている可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8996832
アルツハイマー病 キノリン酸の増加
link.springer.com/article/10.1186/1742-2094-6-36
外傷性脳損傷でのキノリン酸増加
予後不良の外傷性脳損傷患者ではキノリン酸が有意に高い。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26025142
トリプトファン枯渇によるキノリン酸の増強
キノリン酸は、CD4+およびCD8+Tリンパ球、NK細胞の増殖を選択的に阻害することができ、トリプトファンが枯渇化すると増幅する。健常者では、意図的なトリプトファンの枯渇は長期記憶の固定化を損なう。
ナイアシン合成
ナイアシンが十分に摂取されていない場合、トリプトファンからキノリン酸への経路を介して合成される。
ナイアシン欠乏症であるペラグラは皮膚炎、下痢、認知症(せん妄)を特徴とする疾患である。栄養ペラグラはナイアシンとトリプトファンの両方が不足している場合にのみ生じる。 ペラグラは現在でも世界の貧しい国々で栄養失調として引き起こされているが、先進国でもアルコール依存症として時々見られる。(エタノール消費がTDOを阻害する)。
キノリン酸(QUIN)の神経毒性
キノリン酸は生理学的な低濃度であっても、慢性暴露によりヒトニューロン培養モデルにおいて超微細構造の変化を引き起すことが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3195234/
キノリン酸は鉄と複合体を形成し、ROSを形成する。
脂質過酸化はキノリン酸毒性に寄与する。
IL-18の関与により、キノリン酸を産生する。
キノリン酸はミトコンドリア機能不全に関与。
炎症における過剰キノリン酸の神経毒性
脳が炎症している状態では、マクロファージ、ミクログリア、樹状細胞がキノリン酸の主要な産生源。
キノリン酸は通常アストロサイトおよびニューロン両方に対して神経保護的であるが、大量のキノリン酸が生じると容易に飽和し、細胞内でキノリン酸の毒性蓄積をもたらす。
体重の減少・身体活動の低下
ラット脳へのキノリン酸投与は、体重を著しく減少させ酸化ストレスを増大し、運動活動が大きく低下した。カフェイン投与はこのキノリン酸誘発性の症状および酸化ストレスを軽減した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25443748
ピコリン酸
概日リズム
ピコリン酸は内因性の神経保護剤
概日リズム変動を示し夜間に高い脊髄液中のピコリン酸濃度を示す。
神経保護特性
ピコリン酸は、コリン作動性ニューロンとドーパミン作動性ニューロンの両方のキノリン酸神経毒性から保護する。
内因性の金属キレート剤
クロム、亜鉛、マンガン、銅、鉄などの効果的なキレーター
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15207800/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16205720/
鉄キレート
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17346427/
抗腫瘍効果
抗真菌
ピコリン酸は、in vitroにおいてマクロファージの活性を介して抗真菌活性を有する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17296287/
抗ウイルス
ピコリン酸は、培養細胞においてエイズウイルス、ヘルペスウイルス2型に対して抗ウイルス作用を有する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11911246/
キヌレニン経路 代謝酵素
Kynurenine pathway
IDO酵素
IDO(インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ)
indoleamine 2,3-dioxygenase
トリプトファン代謝酵素 IDO
IDOは炎症湯発性サイトカインIFN-γ(インターフェロンガンマ)、リポ多糖類などの免疫を刺激する因子によって誘導される。(IFN-γはアミロイドβによっても誘導される)
IDOの活性化はトリプトファンの枯渇化を引き起こし、微生物、T細胞の増殖抑制を行う。悪性腫瘍ではIDOが高発現しており、エフェクター細胞、NK細胞を不活化させる免疫系の攻撃を回避する。
またIDOの活性は、キノリン酸産生の代謝経路活性を誘導し、アルツハイマー病などの神経変性疾患への関与も疑われている。
IDO1・IDO2
ガン、感染症、アレルギー性疾患など多くの慢性炎症疾患は、インターフェロンに対する応答によってIDO1活性が増加する。
IDO2は炎症性自己免疫疾患、T、B細胞の活性化、慢性関節リウマチなどの発症によって誘発される。
IDOとキノリン酸の過剰発現
アルツハイマー病患者ではキヌレニン経路の律速段階であるIDO-1が強く発現している。
IDOおよびキヌレニン経路の代謝産物であるキノリン酸は、老人班周辺のミクログリアおよびアストロサイトで最も高く発現していた。
免疫活性によるIDOの活性
アルツハイマー病は全身の免疫活性化と関連している可能性があり、IFNγは免疫応答により、トリプトファンをNホルミルキヌレニンに代謝し、その次にIDOを刺激する。
IFN-γ(インターフェロンγ)はアミロイド班を取り囲む免疫ミクログリアにおいてIDO過剰発現を誘導する。
IDOを上方制御する炎症性因子・他
LPS、BCG、インターフェロン、INF-α、IL-1β、IL-6
Fe3+
コルチゾール
エストロゲン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/5624543
TDO酵素
トリプトファン−2,3−ジオキシゲナーゼ
トリプトファン代謝酵素のひとつ。TDOはトリプトファン自体またはストレスホルモンによって誘導される。
ヒトIDOが全身の広範囲に基質を有するのに対して、TDOは肝臓、表皮に限定されている。しかし、最近の研究では脳内においてもTDO2が神経変性疾患に重要な役割を果たしている証拠が増加している。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19323847/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15836620
IDO1、TDO2はそれぞれ異なる生理学的なメカニズムによって誘導または阻害される。
アルツハイマー病
TDO、KMOの阻害はハエモデルのパーキンソン病および、アルツハイマー病を改善する。
www.pnas.org/content/113/19/5435
アルツハイマー病患者の海馬では高いTDOの活性が観察されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23630570/
うつ病
TDOはうつ病の程度と正の相関を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27995966/
いくつかの疾患ではIDOよりTDOの発現が高いため、TDO阻害にはより多くの注意を払う必要がある。
TDO2の誘導
- トリプトファン
- トリプトファン類似体
- グルココルチコイド コルチゾール
- Fe3+
- エストロゲン
TDO2阻害
- インドールアミン(セロトニン、メラトニンなど)
- ニコチンアミド類似体
- 抗うつ薬
- 銅(Cu2+)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19323847/
TDOまたはIDOと関連する疾患
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6584917/
KAT酵素
KATはキヌレニンアミノトランスフェラーゼの略であり、キヌレニンからキヌレン酸へ変換する酵素。
KAT阻害剤統合失調症の治療標的として研究されている。
KATの上方制御
ビタミンB6
europepmc.org/abstract/med/24473062
キヌレニナーゼ(KYNU)
キヌレニナーゼは、トリプトファンからナイアシンを合成する際に関与する酵素。限られた量ではあるがNADもこの経路から合成される。
ビタミンB6誘導体であるPLP(P-5-P)は、キヌレニナーゼ酵素の補助因子であり、PLPの利用性が低下するとNADも低下する。
ハンチントン病、アルツハイマー病、AIDS、認知症などの神経変性においてキノリン酸レベルを低下させるため治療標的のひとつとして阻害剤が開発研究されている。
KYNUを上方制御する炎症性因子
LPS、IFN-γ、IL-1β
KMO酵素
アルツハイマー病 KMOの増加
link.springer.com/article/10.1186/1742-2094-6-36
KMOの阻害は、ラットにおける3-HKおよびキノリン酸レベルの減少を誘導する。
ガランタミンおよびメマンチンはα-7ニコチン酸受容体およびNMDA受容体を介してKYNA(キヌレン酸)の作用を打ち消すことにより統合失調症の認知障害を改善し得る。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S221500131630004X
選択的KMO阻害剤の投与は、脳内キノリン酸レベルに影響をまったく与えない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16041050/
KMOを上方制御する炎症性因子・他
LPS、IFN-γ、IL-1β
ビタミンB2
治療アプローチ
キヌレニン経路の標的化薬剤治療に対する批評的的論文
キヌレニン経路は感染症やウイルス、ストレスなど外的因子により複雑に調節される代謝経路であり、病因の理解と疾患予防の観点から理解をすすめていくべきである。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5803785/
腸内細菌叢
微生物叢がキヌレニン経路を調節し神経炎症を調節することから、腸内細菌叢の改善はアルツハイマー病の治療標的となり得る。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31089885
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28643167
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27392632
Toll様受容体(TLR)の活性化は、キヌレニン経路代謝の増加と関連している。
これはIFN-γ依存性また依存しない経路でのIDO誘導の可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3357104/
KYNA
エストロゲン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27342132
キヌレニナーゼ(KYNU)ダウンレギュレーション
亜鉛(Zn2+)
コバルト(Co2+)
銅(Cu2+)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4415963
IDO阻害
ストレスの軽減
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20153778/
ナイアシン
トリプトファンの枯渇は免疫応答を改善することができるが、神経毒を増加させる可能性もある。しかし、ナイアシンの補充によるトリプトファンの間接的な増加は、IDO-1活性を抑制するフィードバック機構として作用する。
アロエ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5307915/
ベルベリン(コプチシン)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25079795
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4498586/
ハーブ
- パルマチン
- ジャトロリジン
- アピゲニン
- バイカレイン
- クリシン
- ベルベリン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23063682
アブラナ科野菜(ブラシニン)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18026137/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16420054/
プロゲステロン・テストステロン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27342132
インドメタシン
www.tandfonline.com/doi/abs/10.1517/13543770903512974?src=recsys&journalCode=ietp20
ミノサイクリン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3501391/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6151010/
プロベネシド
IDOの強力な阻害剤
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20219555
ミコナゾール
皮膚、粘膜の真菌治療に使われる抗真菌薬
BuChE、IDO-1の二重阻害剤
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29475581
TDO阻害
セロトニン・メラトニン・ニコチンアミド類似体
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6154900/
プロゲステロン・テストステロン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27342132
エストロゲン
初期の報告ではエストロゲンはTDOを誘導することが報告されていただ、現在ではエストロゲンはラットおよびヒトの肝臓においてTDO活性を阻害し、肝臓のトリプトファン代謝を損なうことが認められている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3196323/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/656268/
銅(Cu2+)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2536
抗うつ薬(三環系)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1867646
SSRI
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7126996
パロキセチン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1826617
フルオキセチン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8522987
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4276862/
KMO阻害
19のKMO阻害剤
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31372510
ビタミンB6
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24693337
KAT酵素活性または阻害
活性
有酸素運動
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30649918
PGC-1α
www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(14)01049-6
阻害
甘草
13000のスクリーニングにより、グリチルリチン酸(GL)およびその類似体がKAT2阻害剤として同定された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31308447
エストロゲン
女性の統合失調症の発症率は白人の男性よりも高い。この性差はエストロゲンのKAT阻害作用により女性のキヌレン酸を低下させていることが可能性として示唆される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27547036/
3-HAO阻害
亜鉛
GPR35
Gタンパク質共役型受容体GPR35は免疫系や消化器系に比較的多量に発現にしている受容体。キヌレン酸はGPR35の内在性リガンド。
活性化させるには比較的高濃度のキヌレン酸が必要
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30141532
アリール炭化水素受容体(AhR)
Aryl Hydrocarbon Receptor
環境汚染物質であるダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類の受容体として働く転写因子。
Kynurenineはアリール炭化水素受容体を活性化するが、アリール炭化水素受容体自体もIDO、TDO発現の調節の役割を果たす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25368620
アリール炭化水素受容体の非存在下では、マウスの内因性キヌレン酸レベルが増加する。
アストロサイト活性、中枢神経炎症はアリール炭化水素受容体を介したⅠ型インターフェロンおよびトリプトファン代謝産物によって調節されることが実証されている。
onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cen3.12293
アリール炭化水素受容体アゴニストの投与はマウスの腸の炎症を軽減する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27158904
アリール炭化水素受容体アゴニスト
- オウゴン
- カンゾウ
- ビャクシ
- ブクリョウ
- ゴシュユ
www.inm.u-toyama.ac.jp/jp/collabo/h24_download/report/24_18.pdf
AhRフルアゴニスト
- クミン
- ジャスミン
- バニラ
- ベイリーフ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29191726
- ケルセチン
- クルクミン
- レスベラトロール
- インディゴ
- DIM(ブロッコリー、カリフラワーなどのアブラナ科野菜の主成分)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4076843/
内因性因子
cAMP
ホルモン、神経伝達物質、プロスタグランジンを媒介するセカンドメッセンジャーであるサイクリックAMPはアリール炭化水素受容体も活性化することができることが最近の研究で示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15972329/
セロトニン(5-HT)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5904159/
7-ketoコレステロール
コレステロールの主要な酸化代謝物
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11042205/
プロバイオティクス
ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii )
ラクトバチルス・ジョンソニイの投与は、おそらく過酸化水素(H202)の産生を増加させることによって、血清キヌレニン濃度の低下をもたらす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23303207
トリプトファン代謝産物インドール
結腸内の細菌に供給されるトリプトファンのほとんどは未消化たんぱく質であり、その主要な代謝産物はインドールである。
細菌によるインドール産生は真核細胞には存在しない酵素トリプトファナーゼによって触媒される。トリプトファンは、細菌および植物におけるシキミ酸経路を介して合成することが知られている。
細菌によって代謝されたインドールは腸粘膜を強化し、腸上皮細胞に有益な作用がある。
www.pnas.org/content/107/1/228
インドール代謝産物から5-HT合成を促進することが実証されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25860609
ケトンダイエット
- CAL 自由摂食
- CCR カロリー制限
- KAL ケトンダイエット 自由摂食
- KCR ケトンダイエット カロリー制限
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29605816
トキソプラズマ感染治療
トキソプラズマに感染したマウスでは脳内に高レベルのキヌレニン、キヌレン酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キノリン酸を有し、脳内IDOの活性化と関連する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24345671
トリプトファン投与
BCAA、競合アミノ酸
トリプトファンはBBBを透過する際、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンと競合することによりBBBを透過するトリプトファンが減少する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26271721
www.embopress.org/doi/full/10.15252/msb.20156487