アルツハイマー病・神経変性疾患へのケトン食研究

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ケトン療法による認知症・アルツハイマー病治療研究

ケトンとは

空腹・高脂肪食で高まるケトン

ケトン体は幼児期において脳のエネルギー源としてグルコースに次いで重要な役割を果たしている。成人では空腹時、高脂肪食でケトン体濃度が高まる。血液脳関門の透過性は空腹時に増加する。

onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1007/s10545-005-5518-0

www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213453016301355#bib0080

脳の代替エネルギー

ケトン体は体内に十分な濃度で存在する場合、すべてではないがほとんどのニューロン基礎的代謝(非シグナル伝達)必要量と、ニューロンの活動による酸化的代謝必要量の約半分までをサポートできる。

ケトン飽和条件下ではケトンによるTCAサイクルフラックスは約62%、グルコースは38%。

journals.sagepub.com/doi/full/10.1038/jcbfm.2014.77

食料欠乏時の代替エネルギー

ケトーシスは、食物が不足している状況において生き残るための進化的に発達したメカニズムである可能性がある。

www.jci.org/articles/view/105650

炭水化物を大量に含む食事は比較的最近の出来事であり、高脂肪食よりも進化的な不一致を生む可能性がある。

www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1095643303000114

アルツハイマー病

アルツハイマー病患者のグルコース代謝能低下

高炭水化物食は、インスリンシグナル伝達を刺激し、脂質代謝とケトン生成を抑制につながる。ケトンが欠乏する炭水化物を多く含む食事はアルツハイマー病の発症に役割を果たすと仮定されている。

www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0306987704000167

脳エネルギー代謝能の低下

エネルギー欠乏はニューロンに有害であり、アルツハイマー病患者ではグルコースの取り込み能力が損なわれていることが示されているため、アルツハイマー病発症に寄与する可能性がある。

脳血流の低下、脳の酸素利用能は認知症の重症度と相関することがわかっている。

academic.oup.com/brain/article-abstract/104/4/753/289346?redirectedFrom=fulltext

脳の局所的なグルコース代謝能低下

健康な同年齢の高齢者と比較すると、高齢認知症患者は、後部帯状回、側頭葉、頭頂部、前頭前野 において局所的にグルコース代謝の低下を示した。この代謝低下は認知機能のスコアと有意に相関する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16839732

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6410799

発症のはるか前から低下するグルコース代謝率

脳のグルコース取り込み能力は、認知障害の発生よりもずっと前(5~10年前)の段階でも観察されている。海馬および皮質グルコースの代謝率の低下は、70~80%の精度でMCI、アルツハイマー病への移行を予測する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17222480

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21276856

図6

 

グルコース代謝を賦活する部位の初期変性

アルツハイマー病の初発変性部位である青斑核は、アストロサイトのグルコース代謝を刺激することから、グルコース代謝の機能低下がアルツハイマー病の病因である可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4469831/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25832906

グルコース代謝能を低下させる特性

ApoE4でのより低いグルコース代謝能

グルコース代謝はアルツハイマー病患者で低下しているが、ApoE4キャリアではより顕著に低下を示す。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15932949

母方のアルツハイマー病家族歴での高い糖代謝の低下

認知機能低下を示す前のグルコース代謝脳の低下は、母方に家族にアルツハイマー病歴がある高齢者が、父方での家族歴がある場合よりも大きい。これはミトコンドリアDNAが母性遺伝するためである。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18003925

グルコース代謝能力の低下要因

アルツハイマー病患者の脳グルコース代謝低下の原因はよくわかっていないが、以下の経路の障害が関与している可能性がある。

  • グルコース輸送の欠陥
  • 解糖系の破壊
  • ミトコンドリア機能の低下(インスリン抵抗性と密接に関連する)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25832906

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15123336

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3881550/

グルコース代謝酵素活性の低下(グルコースの効率的利用低下)

プロテオーム解析によりアルツハイマー病脳組織において酸化還元の影響を受けた領域の酸化修飾酵素

  • 解糖系酵素アルドラーゼ
  • トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)
  • グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)
  • ホスホグリセリン酸ムターゼ1(PGAM1)
  • α-エノラーゼ
  • アコニターゼ(TCAサイクルの重要な鉄硫黄含有酵素)
  • クレアチンキナーゼ(ニューロンがATPレベルの維持をサポートする酵素)
  • 脳ミトコンドリアのATPシンターゼに対する酸化修飾

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29562527

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27626216

SIRT3障害

SIRT3はミトコンドリア内から筋肉のグルコース取り込みを促進し、インスリン感受性を促進することが示されている。高脂肪食を与えられたSIRT3ノックアウトマウスでは、インスリン刺激による筋肉へのグルコース取り込みに著しい障害が生じる。

diabetes.diabetesjournals.org/content/64/9/3081

サーチュイン3(SIRT3)の欠陥がアルツハイマー病ミトコンドリアの酸化的損傷に寄与する可能性。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29130578

mTORの活性化・オートファジー障害

インスリン抵抗性が発生するメカニズムのひとつにmTORの活性化が存在する。

mTORはアミロイドβによって活性化される。MCI、アルツハイマー病患者はオートファジー障害と関連してPI3K / Akt / mTOR障害が示されており、この障害はインスリン抵抗性を誘導する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25645581

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5748251/

終末糖化産物(RAGE)

RAGEの活性化は酸化ストレスを誘発し神経細胞死を引き起こす。アミロイドβ凝集体はAGEの特徴を有しており、ニューロンおよび脳内皮細胞のRAGEへ結合する。

RAGEリガンドの蓄積は、糖尿病性ニューロパシー、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症において観察されており、酸化ストレス、進行性神経機能障害、および神経変性を促進する。

AGE蓄積とニューロンへのRAGEによる毒性効果は、糖尿病性ニューロパシーの病因メカニズムにおいて最も重要な役割を果たすと考えられており、AGE-RAGEに対する治療アプローチが提案されている。

www.hindawi.com/journals/omcl/2016/9348651/

 

www.nature.com/articles/s41583-019-0132-6

ケトン代謝による治療

維持されるケトン代謝

アルツハイマー病患者のグルコース代謝低下の証拠は蓄積しているが、ケトン代謝は、少なくとも病気の初期段階では変化していない。

アルツハイマー病患者のエネルギー利用能力の低下はグルコースに特異的であるため脳のエネルギー危機の状態では、ケトン体は大体燃料として使用することができる。

www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213453016301355#bib0170

カロリー制限の模倣

ケトン食はカロリー制限の模倣食として、ミトコンドリア機能を改善し、アポトーシスおよび炎症性メディエーターの発現を低下させ、神経栄養因子の活性を高めることが示されている。

ケトン食およびカロリー制限によって上昇するケトン体は、複数の経路からのニューロン損傷に対する保護効果を有し、脳グルコース代謝障害を緩和することが予想される。

onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1474-9726.2006.00202.x

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18845187

ケトン療法 臨床研究

小規模のランダム化比較試験 BHB投与

アルツハイマー病、MCI患者20人の中鎖脂肪酸飲料の経口投与により 90 分後にβ-ヒドロキシ酪酸レベルの有意な増加が観察された。

βヒドロキシ酪酸の増加は、ApoE 遺伝子型によって異なり、ApoE4陽性の参加者では、平均で90分後に5倍に、120分後に8倍に血清βヒドロキシ酪酸レベルが上昇した。しかしアルツハイマー病認知機能テストでのパフォーマンスには有意な影響がなかった。

ApoE4陰性患者での想起能力の改善

ApoE4陰性の被験者での血清βヒドロキシ酪酸レベルを90分後に平均して7.7倍に上昇させその値のまま維持した。認知機能テスト(ADAS-cogスコア)でのスコアに有意な改善を示した。

すべての参加者はプラセボと比較して、MCT投与による高いケトン値がパラグラフ想起のより大きな改善と関連していた 。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15123336

ランダム化比較試験 152名 AC-1202投与

軽度から中等度のアルツハイマー病と診断された152人の患者へのAC-1202の90 日間の投与。AC-1202は中鎖脂肪酸の一種(C8:0)であり、炭水化物を含む食事においても血清ケトン体を上昇させる。

参加者は通常の炭水化物を含む食事と通常のアルツハイマー病薬を継続して摂取。主な副作用は軽度から中程度の一時的な胃腸障害。

ApoE4陰性患者でのADAS-Cogスコアの改善

AC-1202は、プラセボと比較して、45日後、90日後ADAS-Cogスコアを有意に改善した。ApoE4陰性の患者でこの効果は顕著であったが、ApoE4陽性の患者では改善が示されなかった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19664276https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21992747

ApoE4陽性患者への低い有効性要因(推定)
  • ミトコンドリア機能の低下
  • ケトン体を脳へ運搬するモノカルボン酸輸送体の低下(ApoE4キャリアはMCT4が低い)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4942726/

 

 

図2

ランダム化比較試験 炭水化物制限食によるケトーシス誘導

軽度認知障害のある23人の高齢者へ、高炭水化物と非常に低い炭水化物の食事グループにランダムに割り当てられた。この食事介入には炭水化物制限のみで従来の顕著な高脂肪食、高タンパク質は含まれていない。

6週間後、低炭水化物食を摂取した参加者で言語記憶能力の改善が観察された。

カロリー摂取量、インスリンレベル、体重の変化は、全体の記憶能力と相関していなかったが、低炭水化物食グループではインスリンの改善と記憶能力の間に中程度の関連性が観察された。ケトンレベルは、記憶力と正の相関があった。

低炭水化物食のグループではケトン体レベルは記憶能力と関連していた。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3116949/

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症例研究 ケトンエステル投与による著効

MMSE12点の若年性発症の散発性アルツハイマー病患者63歳へのケトンモノエステル投与

3~4時間毎の服用(25~50g)により、一日中高いケトンレベル(6~8mM)を維持できることが示唆された。

初日~三日目

ApoE4陽性患者であったが、高いケトンレベルにより、初めて摂取した直後から気分が著しく向上し、アルファベットを完全に暗唱して書き出すことが可能になった。

翌朝、彼は自発的に服を選び、身なりを整えることができた。

3日目には投与量を28.7gに増量し、他者の支援なくシャワー、ひげそり、歯磨き、家中を歩き回る、メニューから食べ物を選択して注文し、食器洗い機から食器を配るといった多くの日常的な活動を行うことができるようになった。

ケトンモノエステルを始める前の数か月間はこれらの活動は行われていなかった。

自覚的な改善

抽象的思考、洞察力、微妙なユーモアのセンスが彼の会話に戻った。

彼は自分自身を「Good」と感じ、「もっと元気」になり、「幸せである」と述べた。そして「用事をするのが簡単だ」と気付いた。

3~8週間後 記憶回復・日常生活の行動が可能に

毎日28.7gのケトンモノエステルを3〜8週間摂取した後、彼は再び記憶回復を示し始めた。

1週間前までに起きた出来事について自発的に議論をした。

再び掃除機をかける、皿の手洗い、庭仕事など、より複雑なタスクを実行することができるようになった。

0.2mMを大きく上回るケトンレベルでなければ、グルコース欠乏を引き起こしたアルツハイマー病患者の脳に到達させることができない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25301680

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その他の神経変性疾患へのケトン治療

パーキンソン病の改善

MPTP神経毒性への保護効果(パーキンソン病)

ケトンダイエットは抗酸化作用とATP生成の強化によってロテノン毒性による海馬のシナプス機能不全を防ぐ。中脳のドーパミンレベルを増加させマウスの運動能力の改善を示した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20374433/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12975474/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10805800/

パーキンソン病ラットモデルのケトジェニックダイエットでは、運動機能を高め薬(プラミペキソール)の有効性を高めた。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27326359/

ドーパミンの増加

オクタン酸(C8)はパーキンソン病の線条体ドーパミン減少を防ぐ。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30107349/

非運動症状での改善 パイロット無作為化比較試験

パーキンソン病患者47人 低脂肪食グループとケトン食グループの比較。

低脂肪食グループ

1750 kcal/日、脂質42 g(22%)、タンパク質75 g(17%)、炭水化物246g(56%)、食物繊維33 g(5%)

ケトン食グループ

1750 kcal/日、脂質152 g(78%)、タンパク質75 g(17%)、炭水化物16g(3-5%)、食物繊維11 g(1〜5%)。

8週間の継続で両方の食事グループは運動症状および非運動症状を著しく改善した。

ケトン食グループでは非運動症状においてより大きな改善を示した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30098269/

外傷性脳損傷

ケトン体は損傷によるATPの減少を緩和するための代替エネルギーとして役立つ可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10926303/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11700013/

Bヒドロキシ酪酸が虚血時の脳エネルギー代謝の改善と再灌流後の脂質過酸化の抑制によりラットの脳浮腫形成と梗塞領域を減少させたことを示す。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12083741/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3219306/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16007235/

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

運動ニューロンの保護

ケトジェニック食は、エネルギー産生の促進を通じてALSマウスモデルの運動悪化を遅らせ、運動ニューロンを保護する可能性がある。

ケトジェニックダイエットによって増加するD-β-3ヒドロキシブチレート(DBH)の神経保護効果は、マウスのミトコンドリア電子輸送またはミトコンドリア内NAD / NADHおよび補酵素Qレベルを調節することによって、反応性酸素種(ROS)の産生を減少させ、基質を回復させる能力と関連するかもしれない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1488864/

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