シャペロンシステム・シャペロノロジー
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低分子量HSP(スモールヒートショックプロテイン)
概要
シャペロンシステム
シャペロンとは、変性状態のタンパク質を正しく折りたたむことで正常に機能させるサポートを行うタンパク質の総称。
シャペロンシステムの概念には、分子シャペロン、コシャペロン、補因子が含まれ、これらのシステムを研究する科学分野をシャペロノロジー(chaperonology)と呼ばれる。
最近の研究により、分子シャペロンは、免疫系の調節、アポトーシス、発がんの促進など、シャペロン以外の役割をもつことが示されている。
熱ショックタンパク質(HSP)
多くの熱ショックタンパク質(HSP)は、他のタンパク質の生合成、折り畳み/展開、輸送、および集合において重要な役割を果たし、分子シャペロンとして機能する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23430704
HSPは、熱によるショックによって発現が誘導される分子グループとして最初に発見された
HSPは進化的に保存されており、すべての生物および細胞タイプに見られる。
熱ショックという名前であるにも関わらず、HSPは低酸素症、虚血、重金属、エタノール、感染症などのさまざまなストレッサーやいくつかの疾患によっても誘発されることが多くの証拠によって証明されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16207851
すべてのシャペロン遺伝子が熱によって誘導されるわけではないため、分子シャペロンとHSPはイコールでは結ばれない。
また、熱ショック遺伝子によってコードされていない、多くのヒト遺伝子も熱によって誘導される。(例、アルファヘモグロビン安定化熱ショックタンパク質)
シャペロノパシー
シャペロンシステムは、ヒト細胞の抗ストレスメカニズムの主要なコンポーネントであり、細胞のホメオスタシスに重要な役割を果たしている。
その機能不全はいくつかのヒト障害の病因因子として実証されており、シャペロノパシーとして知られている。
研究当初シャペロンは、熱ショック、化学的損傷、pHまたは浸透圧の急激な変化、炎症、虚血、低酸素など、細菌、古細菌、真核生物などのストレッサーに対して細胞を保護するる防御機構の一部とみなされていた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11530097
しかし、時間の経過とともに、さまざまな病理学的状態がシャペロンの障害または機能不全に関連しているようであることが発見されてきた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16207851
シャペロンは細胞損傷、組織異常、疾患を引き起こすメカニズムの中心にある可能性が示されてきたことから、シャペロンを標的とした治療開発を行う必要性も認識され始めた。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014579307004206
ネガティブシャペロン療法
シャペロンが主要な病因の因子であり、その活性を阻害する治療方法をネガティブシャペロン療法と呼ぶことがある。
反対に、シャペロンを活性する場合はポジティブシャペロン療法と呼ぶ。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24286280
HSP サブタイプ
Hspは分子量により分類されている。
HSP27
主な機能は心臓の修復
HSP40
Hsp70の補助因子。
HSP60
通常はミトコンドリアと細胞質に局在し、ストレスがかかると変性タンパク質を修復する。
HSP70
最も豊富にあるHSP、ストレスの多い状況でタンパク質の折りたたみ、組み立て、修飾を仲介する。
HSP90
細胞内タンパク質の構成を維持する。ステロイド受容体と転写因子の維持。
Hsp110
極端な温度に対して細胞に熱耐性を与える。
アルツハイマー病
シャペロンは、アミロイド凝集体の毒性による酸化ストレスから保護するために、アミロイドの増加と損傷に対し著しく発現を増加させ神経保護作用を発揮する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15611723
シャペロン活性を持つHSPには、HSP60、HSP70、HSP90、HSP100、sHSPなどがあり、さまざまなシャペロングループに属している。(機能的には大きく3つのグループに分けられる)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21086986
アミロイド
HSP70の増加
アルツハイマー病患者の脳では、HSP70の発現レベルの増加が報告されており、アミロイドβに対する神経保護応答に関与する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14973234
TGFβ1の媒介
HSP70レベルの増加は、アミロイドβ分解を促進する酵素TGFβ1発現の増加と関連している可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21471357
HSP104
HSP104はアミロイドβ42プラークは分解できないが、Aβ42のアミロイド形成を強く阻害するようであり、パーキンソン病に関連するα-シヌクレインオリゴマーおよび線維の形成を阻害および逆転させることから、HSP104を治療薬として使用する方法を開発する期待が高まっている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20130674
タウ
シャペロンとUPSのクロストーク
分子シャペロンとユビキチン-プロテアソーム系の間のクロストークは、タウ沈着メカニズムにおいて重要であると考えられてきた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15611723
シャペロンによるタウ凝集の阻害
試験管研究においてタウタンパク質とHSP70およびHSP90との相互作用が示されており、これらのシャペロンは、タウタンパク質の可溶性かつ機能的な立体構造を維持することでタウの凝集を防ぐことが示唆されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC141063/