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はじめに
イチョウ葉は、西洋で最も人気のある栄養補助食品トップ10の一つ。現在販売されているイチョウ葉は葉からの抽出物だが、伝統的には果実と種子が漢方薬としても使用されてきた。日本では、江戸時代に毒消しの民間薬として用いられている。
ドイツな一部の国では薬として扱われているため、抑肝散のような漢方医薬品とも見なされている。日本では医薬品として認可されておらず食品として扱われる。
イチョウ葉の作用機序・メカニズム
脳血流の改善
イチョウは血小板活性化因子(PAF)受容体の阻害剤。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15693702
PAFはシナプス前終末のグルタミン酸放出を促進し、長期増強(LTP)を促進する神経調節作用も有する。これは神経損傷がある場合グルタミン酸の神経毒性により悪化させる可能性もある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9932449
8週間のイチョウ葉抽出物(60mg/kg)の経口投与は、ラットの脳血流を29%増加させる。(バコパ投与では25%)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22447676
イチョウ葉抽出物40mgとアスピリン75mgの組み合わせ投与は、脳梗塞を経験した患者の脳血流を大幅に改善する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22840457
4週間にわたる120mgのイチョウ葉抽出物投与は高齢者の左頭頂後頭部における脳血流のわずかな増加と関連する。血流の全体的な改善は白質で15%、灰白質で13%に達っする。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21061003
240mgの使用では、高齢者の左前頭葉、前頭頭頂葉、頭頂葉、右前頭葉の血流の変化を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12905098
ミトコンドリア機能の改善
イチョウ葉抽出物に含まれるビロバライド(bilobalide)は、ミトコンドリアの虚血状態において呼吸活動を維持する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10403524
イチョウ葉抽出物であるビロバライドは、正常な酸素状態下でグルコース輸送を増加させる。加えて低酸素状態において加齢と関連したミトコンドリア複合体Ⅰ、Ⅲの活性低下を減衰するようである。in vitro
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7575684
神経新生・BDNFの増加
アルツハイマー病マウスモデルへのビロバライド投与(5~15μM)は、海馬細胞増殖を55~80%増加させる。10μMで最大の効果を示し、これは同濃度のロリプラムやケルセチンよりもはるかに強力であり、BDNFの増加と関連するようである。in vivo in vitro
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19661619
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14585700
ビロバライド処理によるラットの運動神経再生
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8372143
アミロイドβの減少
イチョウ葉抽出物の投与は、アルツハイマー病マウスのCREBリン酸化を促進、海馬アミロイドβオリゴマーの減少を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17356006
イチョウ葉抽出物は、アミロイドβ凝集とカスパーゼ3の活性化を阻害する。in vitro
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12213959
タウの減少
タウ変異体マウスへの2ヶ月または5ヶ月のイチョウ葉抽出物を含む食餌は、脳内の過剰リン酸化タウを減少させ、炎症性ミクログリア活性を抗炎症性ミクログリア活性へと移行した。
これは精製されたギンコライドではなく、イチョウ葉抽出物に含まれるギンコライドA、ビロバライド、フラボノイドなどの複合成分が潜在的な治療効果を発揮したことを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30010136
ミクログリアの抗炎症性活性
イチョウ葉抽出物は、プロスタグランジンEの放出を阻害し、炎症性サイトカインを調節し、ミクログリア細胞の抗炎症性活性を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29895492
コリン作動性・AChE阻害作用
イチョウ葉に含まれるアシル化フラボノイド配糖体は、ラットの前頭前野のアセチルコリン濃度を増加させる。これは経口で摂取される低い濃度のイチョウ葉抽出物に相当する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22784425
イチョウ葉抽出物は、アセチルコリンエステラーゼのmRNAレベルには有意な影響は与えないが、直接アセチルコリンエステラーゼを阻害する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19902022
イチョウ葉のAChE阻害作用は、バコパ・モンニエリよりも数倍強力
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12213536
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17060346
ドーパミン作動性
イチョウ葉の継続的な経口摂取は、ラット前頭前者のドーパミン濃度を増加させるようであり、これはフラボノイドと関連している可能性がある。(ビロバライドではない)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20105177
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21640798
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22784425
GABA-A受容体アンタゴニスト
イチョウ葉抽出物の一つであるビロバライドは、GABA受容体への拮抗作用を有する可能性を示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12600688
プレグナンX受容体(PXR)アゴニスト
プレグナンX受容体(PXR)は、脂肪肝、ビタミンDの恒常性、胆汁酸ホメオスタシス、ステロイドホルモンホメオスタシス、炎症性腸疾患に関与する受容体。
体内に化学物質などの異物が侵入した際に、処理する上で重要な役割を果たす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2593625/
www.nature.com/articles/srep31936
イチョウ葉抽出物、テルペントリラクトンのひとつギンコライドAのみがアゴニストしてラットPXRを活性化させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20739453
臨床研究
クオリティー・オブ・ライフ(QOL)
患者および介護者の認知、精神病理学、機能的尺度および生活の質において有意に臨床的な改善がもたらされた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22459264
単独では効果は限定的
8つの臨床研究のメタアナリシスによると、ギンコビロバ単独による認知機能低下や認知症を予防することはできないとされている。
www.alzdiscovery.org/cognitive-vitality/ratings/ginkgo-biloba
疫学研究
ApoE4患者へのより大きな効果
疫学データ イチョウ葉エキス、リコペン、オメガ3脂肪酸の抗酸化栄養素の複合摂取、3年後、認知機能に大きな改善効果があった。
ApoE4陽性患者でより大きな認知機能の改善をした。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22886021
相乗効果
ホスファチジルセリン
二重盲検無作為化プラセボ対照クロスオーバー 28人の健康な若い参加者
120 mgのイチョウ葉抽出物では制限されていた二次記憶(長期記憶)の向上が、ホスファチジルセリンとイチョウ葉抽出物の併用投与によって大幅に向上した。また、すべての記憶タスクテストの向上を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17457961
高麗人参・オタネニンジン
イチョウ葉とオタネニンジンを3:5の比率で組み合わせたハーブは、「Gincosan」(ギンコサン)という商品として使用されている。(イチョウ葉60mg、オタネニンジン100mg)
www.ginsanaproducts.com/gincosan
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 イチョウ葉とオタネニンジンの6週間と12週間の投与治療は閉経後の女性のの気分と認知に対する効果は見られなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15682929
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 256人の健康な中年ボランティアへの12週間の投与、イチョウ葉とオタネニンジンの投与は作業記憶と長期記憶を改善し、平均で記憶能力を7.5%改善した。この効果は2週間後のウォッシュアウト後にも観察された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11140327
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 クロスオーバー 健康な若いボランティアへの投与。 イチョウ葉単独、高麗人参単独、それら二つの組み合わせの3つ比較研究。イチョウ葉と高麗人参の組み合わせは、コンピューターによる計算問題の処理速度と精度を向上させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12404705
イチョウと高麗人参の組み合わせはわずかではあるが、自己評価による気分の改善が見られた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12020739
アスピリン
アスピリンの投与は高齢者の出血時間を長くしたが、イチョウ葉エキスとアスピリンの同時投与によってさらなる出血時間の延長を有意にもたらさなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16752942
1日325mg /日のアスピリンと組み合わせた比較的高用量のイチョウ葉抽出物の4週間の投与は、アスピリン単独の効果と比較して、心血管危険因子を有する平均69歳の高齢者(プラセボ21名、投与群23名)の血液凝固指数、または臨床的に有意な影響を与えなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17982321
バコパ・モンニエリ
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 イチョウ葉120mgとバコパ・モンニエリ300mgの2週間および4週間の併用投与は、85名の健康な被験者には認知機能増強効果は得られなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14994318
摂取
ドネペジルとの組み合わせで、認知能力を改善した研究結果がある。
一日 120mg~240mg 一般的には活動前の朝、食後に摂取する。
認知低下を緩和するための用量、一日3回40~120mg
アレルギー原因物質であるギンコール酸が除去されているものを選択
単剤では大きな効果は期待できない。抗酸化物質、DHA、EPA、ホスファチジルセリン、AchE阻害剤、高麗人参などと併用することで効果が高まる。
代謝酵素の阻害
イチョウ葉抽出物は、薬物代謝酵素CYP2B6、CYP3A4を阻害する可能性がある。
日本では、江戸時代に毒消しの民間薬として用いられてきたが、これはビロバライドの代謝酵素の阻害作用によるものかもしれない。
薬物との同時摂取は、薬物の過剰な代謝を促進し薬物の効果を低下させる可能性がある。
製造業者によって異なるかもしれないイチョウ葉抽出物の効果
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30123130