フェーズ4 感染直後~初期
4.0 総合
これは非常に初期の段階で、感染から重篤な症状の最初の発症まで始まり、通常は2~11日(平均潜伏期間:6日)持続し、患者は症状発症の1~3日前に感染している可能性が高い。
末期のウイルス脱落まで無症状のまま、あるいは症状が軽いだけの患者の真の割合はまだ不明であるが、その数が50%にもなる可能性があることを示唆する証拠もある。この割合は検査不足や報告不足のために過小評価されている可能性がある。
現在では、感染直前から直後の症状が出る前の段階が、おそらくパンデミックを食い止めるために最も重要であるという仮説が妥当であると考えられ始めている。
無症状、無症状前、または軽度の症状を持つ被験者のウイルス負荷は、明らかな疾患を持つ患者のウイルス負荷に匹敵する。このことは、この第一段階でのウイルス感染のリスクが大きいことを浮き彫りにしている。
証拠は、全症例の50~80%が無症候性または無症候性前の患者からの感染に起因する可能性があることを示唆している。このように、比較的長い潜伏期間と無症候性・無症候性の個人の割合がかなり高いことが、公衆衛生上の介入と国民の意識向上にもかかわらず、パンデミックと症例数の増加を説明している。
ケースタイプ | 日 | 症状 | 回復段階 | ソース |
---|---|---|---|---|
軽度 | 1 | 風邪 | [ 30 ] | |
2 | 軽度の喉の痛み | [ 53 ] | ||
3 | 喉の痛み、体温の上昇、嘔吐、吐き気。 | [ 53 ] | ||
4 | 激しい喉の痛み、脱力感、関節の痛み | [ 53 ] | ||
5 | 軽度の発熱、乾いた咳、呼吸困難 | [ 30 ] | ||
6 | 呼吸困難、倦怠感 | 軽度の症例の回復 | [ 54 ] | |
中程度 | 7 | 重度の咳、呼吸困難、高熱、頭痛、体の痛み、悪化する下痢、および肺炎。患者は病院に入院する必要がある | [ 30、53、55 ] | |
8 | 既存の病状のある患者では症状が悪化。 | [ 30 ] | ||
9 | 頻繁な呼吸、平均敗血症感染が始まる(患者の40%に影響を与える) | [ 53 ] | ||
10 | 呼吸困難の胸部診断 | 中程度のケースの回復 | [ 56 ] | |
重度 | 11 | 食欲不振、腹痛 | [ 55 ] | |
12 | 発熱はゆっくりと緩和し、呼吸困難は止まる | [ 54、63 ] | ||
13 | ||||
14 | 退院後も口の咳が続く。 | [ 54 ] | ||
15 | 心臓の怪我または腎臓の障害の可能性 | 重大なケースの回復 | [ 57 ] | |
16 | ||||
クリティカル | 17 | 脆弱な患者は、下気道、ARDSで二次感染を発症 | [ 30、56 ] | |
18 | 症例はICUでの治療を必要とする致命的になる | [ 58 ] | ||
19 | 重度の状態は、血液凝固と虚血につながる | [ 56 ] | ||
20 | 酸素療法と換気が必要 | [ 56 ] | ||
21 | 生存者は完全に回復するが、それでも伝染性である傾向がある。 | 重大なケースの回復 | [ 56 ] |
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7588316/
早期介入(参考)
ビタミン・ミネラルサプリメントの追加
予防サプリメントに加えて
- ビタミンA 10000~50000IU
- ビタミンC 3~5g 1日1回
- ビタミンD 5000~10000IU(血清検査ができない場合)
- 亜鉛 80~100mg 4~5日限定
- セレン 600mcg
※機能性医学(リコード法)医師の推奨用量を参照しており、直接的にサポートする文献はない。
サプリメント以外の方法
サプリメントを多く摂ることに抵抗がある場合、食事からの摂取を試みることになるが、サンシャインビタミンとも呼ばれるビタミンDだけは食事からの摂取によって必要摂取量を満たすことが、非常にむずかしいと考えておく。
亜鉛は食事から満たすことが可能ではあるが、やはり、必要量を満たすのが難しいミネラルのひとつ。マグネシウムも、栄養計算をして満たしているのでもない限り、できればその必要なリストに加えたい。
食事のバランスが崩れている個人では栄養不良の状態が異なるため一般化が難しいが、品質の確かなマルチビタミン・ミネラル、プロテイン、ビタミンDとビタミンCを別途加えることで、平均的な栄養欠乏の半分は防げるかもしれない。
サプリメントが一切不可という場合は、アーモンド、納豆、サバ缶あたりを摂取することで、特定の不足しがちな栄養素の最低レベルの欠乏症は防げるかもしれない。
全般的に感染初期において生理学的用量を著しく超えるメガドースの効果は、抗炎症応答によるネガティブな作用を上回るのかはっきりしない。
タンパク質
特にトリプトファン、カルニチンを多く含むタンパク質源。
プロテインパウダーからの摂取の場合は、人工甘味料の含まないグラスフェッドホエイを選択。(ステビアはOK)。炭水化物の含有割合が少ないものを選択。
卵、理想的にはグラスフェッドの鶏胸肉
電解質バランス・ミネラル類
水分補給・経口補水液など
水分不足、低塩食による極端なナトリウム不足、カリウム不足による電解質バランスの崩れは、栄養素や食事と比べて見過ごされやすい。
実際にコロナウイルスのリスク増加要因として介在しているという研究者の報告もいくつかあり、報告が増加している脳卒中リスクの予防としても重要。
ナトリウム
低ナトリウムもまた、COVID-19患者の腎障害リスクと関連している可能性があり、感染期間中の極端な低塩食は、特に腎障害をもつ患者では回避すべきかもしれない。
カリウム・低マグネシウム
低カリウム血症は、ACE2のダウンレギュレーションによって引き起こされるレニン・アンジオテンシン系の不均衡を誘発し、重症化を構成する要素のひとつの可能性がある。
低カルシウム
低カルシムのリスクが指摘されており、特に肥満者では適切なカルシウムレベルとタンパク質が重要となるかもしれない。
4.1 ウイルス侵入の阻害
ゴブレット細胞・線毛細胞
鼻の中の2つの細胞タイプが、ウイルスが末梢神経系に侵入するための最も可能性の高い初期感染ポイントであることが発見された。この2つの細胞タイプは、ゴブレット細胞と繊毛細胞と呼ばれている。[R]
ゴブレット細胞は粘膜の表面で粘液を産生する上皮細胞で、粘液によって上皮を潤滑にし、外来の侵入者から上皮を保護する(38)。
繊毛細胞は、上皮性呼吸管の内膜に沿って固定された小さな毛のような突起を持つことで知られている別の細胞タイプ。繊毛細胞は、粘液の輸送を助け、肺に到達する外来細菌を阻止する。
これら2つの細胞タイプは、両方ともSARS-CoV-2が宿主細胞に侵入するACE2受容体とTMPRSS2を高濃度に含んでいる。
コロナウイルスは鼻組織に集中して存在するため、投薬の最良の方法として鼻腔内スプレーが検討されている。マレイン酸クロルフェニラミン鼻腔内スプレーは、は抗ヒスタミン薬であり、これまでの研究ではインフルエンザの株に対する抗ウイルス治療に有効であることが示唆されている。
ACE2
ACE2受容体にはいくつかの変異が存在し、そのうちのいくつかの変異がコロナウイルスの侵入を制限したり、減少させたりする可能性がある。
ACE2受容体拮抗薬
ロサルタン
ACE2遺伝子多形
ADAM17
ACE2は、ADAM17とTMPRSS2という2つのプロテアーゼによって放出される。TMPRSS2で切断されたACE2はSARS-CoV-2細胞の侵入を可能にするが、ADAM17で切断されたACE2は臓器を保護する。(有害であるとする議論もある)
α-セクレターゼとして機能し、非アミロイド経路の神経保護作用をもつ可溶性フラグメント(sAPPα)を生成することが示されている。[R]
- ホスファチジルセリン[R]
- ペオニフロリン[R]
- エストラジオール[R]
- グルタミン酸[R]
- タバコの煙[R]
- 低酸素[R]
- TMPRSS2阻害剤(TMPRSS2の発現がACE2のADAM17脱落を阻害する)
Tmprss2阻害剤
- カモスタット(強力)(慢性膵炎、逆流性食道炎など)
- ブロムヘキシン 去痰薬
- アンブロキソール(ブロムヘキシンの活性代謝物)
- シチコリン
- メラトニン
- アロマターゼ阻害剤(EGCG、レスベラトロールなど)
tmprss2阻害作用をもつ天然化合物
- ティノスポラ(グドゥッチ)
- ゲニポシド(杜仲茶)
- アシュワガンダ
- ネオヘスペリジン
- ナリンゲニン
- イカリイン(イカリソウ)
- クェルシトリン(ピーマンの苦味成分)
- ミリシトリン(ヤマモモ抽出物)
カテプシンL阻害剤
- メマンチン、アマンタジン
- グリコペプチド系抗菌薬
メマリー
メマンチンは元々抗ウイルス薬として開発されており、ウイルスに対して保護効果もつという研究がある。例えば神経変性疾患の診断を受けており、すでに処方対象の摂取していない患者さんにおいて、感染リスクが高いと考えられる場所や時期の中では検討する価値はあるかもしれない。
抗アンドロゲン療法
フーリン(Furin)
news.ucr.edu/articles/2020/05/29/how-coronavirus-could-be-prevented-invading-host-cell
COVID-19は付着して感染するために膜の中にはSタンパク質という糖タンパク質スパイクが埋め込まれている。Sタンパク質は、セリンエンドプロテアーゼであるフーリンによって活性化されるS1/S2活性化開裂部位を含んでいる。
フーリンは、ユビキタスに発現しているが、唾液腺でACE2、Tmprss2とともに高レベルで発現している。唾液中のフーリンはくしゃみや咳を介したCOVID-19ウイルスの拡散性を説明できる。[R]
フーリンは、正常な生理的状態と異常な生理的状態を引き起こすことができる重要なタンパク質であり、恒常性維持の鍵となる神経成長因子の活性化にも関与しているため、神経学的に重要である。
しかし、SARS-CoV-2の場合、フーリンは、Sタンパク質のサブユニットが分離するのを助け、ウイルスが開いて宿主細胞に入るのを可能にしており、ウイルス活性化因子の役割を果たしている。この活性化は、フリンの酵素活性によって起こり、前駆体タンパク質を不可逆的に切断して生物学的に活性な状態にする。この切断はACE2と相互作用した後に行われる。
フーリン阻害
- ルテオリン[R]
- 歯周病治療(慢性歯周炎は、フーリンレベルを上昇させる)
- イリシン(運動ホルモン)
- 葉酸
COVID-19患者から特定された変異株は、SARS-CoV2ウイルスが細胞に侵入するためのフーリン切断部位を必要としない可能性がある。
フリン切断部位が削除されたSARS-CoV-2は、依然としてヒト、アフリカミドリザル、ベイハムスターの細胞株に侵入する可能性がある。t.co/8UgcWyYSw8— Alzhacker (@Alzhacker) August 11, 2020
エンドサイトーシス経路
クラスリン媒介エンドサイトーシス
リソソモトロピックエージェント
- クロロキン
- ヒドロキシクロロキン
- バフィロマイシン(マクロライド抗生物質)
エンドソーム/リソソームプロテアーゼの直接的な阻害剤
- テラパシン
- テイコプラニン
- ビタミン(葉酸)[R]
AAK1阻害剤
ヤーヌスキナーゼ阻害剤(JAK阻害剤)
- バリシチニブ
- アンドログラフォライド[R]
その他
ギンコ・ビローバ
4.2 自然免疫の活性
ナチュラルキラー細胞
COVID-19ウイルスとの戦いにおいて、自然免疫系での主役であるNK細胞。ウイルスの排出に重要な役割を果たす。
また重要患者では減少しているが、軽症患者では減少は認められていないことなどから、NK細胞が疾患の進行の推移に重要な影響を与えていると仮定されている。COVID-19ウイルスによって抑制されているNK細胞を初期フェーズで活性化させることができれば、この感染症を克服できる可能性がある。[R]
免疫チェックポイント NKG2Aの発現増加が確認されている。
インターフェロンⅠ型・Ⅲ型
インターフェロンは、ウイルスが細胞に侵入すると即座に強力な局所応答を開始する分子メッセンジャー。
抗ウイルス作用をもつインターフェロンはⅠ型とⅢ型。Ⅰ型インターフェロンは、ウイルスの複製を制御し、効果的な獲得免疫誘導に重要な役割を果たす。コロナウイルスは免疫回避の仕組みをもっており、それは主にこのⅠ型インターフェロンの抑制に依存している。初期段階で投与または活性化すればコロナウイルスの複製と拡散を抑制し、その後の進行を止めることができる可能性が高いと考えられている。[R]
特にIFN-β(Ⅰ型インターフェロンに属する)は著しく低下しており、I型IFNの欠乏はTh1細胞応答に影響を与え、Th2型免疫を有利にする。
JAK-STAT
STAT1は、コロナウイルスによってブロックされ、これはI型IFNシグナリングの防止につながる。
ガレクチン-1
ガレクチン-1は、多くの自然免疫および適応免疫プログラムを抑制することにより、典型的には分解前メディエーターとして作用する。COVID-19患者で対照と比較して増加していることが見いだされている。
温熱療法・サウナ
感染初期の早いタイミングで利用することにより後の重症化への進行を抑制する可能性がある。温熱療法に限らず、基本的に自然免疫を活性化させるようなアプローチはすべて初期の早い段階に行う必要がある。
- 個人宅でサウナを利用 フィンランド式サウナ(毎日)
- シャワーを使った簡易的な温冷入浴
タイミングと適用時間が重要!
注意
- 理論的には感染前後の初期が最も効果があり、重症期は(入らないだろうが)逆効果の可能性がある。
- 適応するため初心者は短めに、予防と治療で緩急をもうける。
- 温熱などのストレスによって上昇するHSP70はウイルスや細菌の感染に応答して細胞の自然免疫に大きく寄与していることが明らかになっている。一方で全てのHSP(Hsp90s, Hsp70s, Hsp60s, Hsp40s, Hsp27)がコロナウイルス感染に関与していることが実証されている。直感的に答えるなら過剰な温熱療法は逆効果となるかもしれない。
Tips
- 経口補水液をたっぷり補給
- 折りたたみ可能なポータブルサウナが1万円台で購入できる。
- ケルセチンはHSP70を阻害する。
- アスコルビン酸/ナメジオン(合成ビタミンK)、スルフォラファン、EGCG、アシュワガンダ(ウィザフェリンA)はHsp90を阻害する。
N-アセチル-システイン(NAC)
NACは重症期の投与治療による抗酸化戦略として重要なアミノ酸。T細胞の回復によるCOVID-19治療としても期待されており、現在第二相臨床試験が行われている。フェーズ4.2と5.1
インフルエンザなどでの改善例も多く、臨床的な証拠が比較的豊富。感染リスクそのものを下げることはできないが、理論上、重症化する前の経口投与でCOVID-19の重症化リスクを軽減する可能性はある。入手性が高く安価であるのも魅力的であり、栄養素以外では常備しておきたいサプリメントのひとつ。
感染後~発熱、咳 NAC 600mg×2錠/日
COVID-19と戦うためのN-アセチルシステイン:エビデンスレビュー NACは何十年も使用されてきており、免疫システムを強化しウイルス複製を抑制し炎症を軽減できる。これらの貴重な機能にもかかわらず、SARS-Cov、MERS-CovそしてCOVID-19においてほとんど見過ごされてきた。
ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/P
- 感染後 ~ 発熱、咳 経口NAC 600mg×2/ 日
- 発熱、咳~ 肺炎、呼吸困難 経口NAC 1200mg×2/日(可能性であればNAC吸入)
- 肺炎、呼吸困難 ~ ARD 静注NAC 100mg/kg/日
- ARD ~ 多臓器不全 静注NAC 150mg/kg/日
COVID-19と戦うためのN-アセチルシステイン:エビデンスレビュー NACは何十年も使用されてきており、免疫システムを強化しウイルス複製を抑制し炎症を軽減できる。これらの重要な機能にもかかわらず、SARS-Cov、MERS-CovそしてCOVID-19においてほとんど見過ごされてきた。
ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/P
グルタチオン
基礎疾患をもつ患者さんではまたは発症後においてはNACの効果は限定的かもしれない。リポソームグルタチオンを用意しておき併用することが望まれるかもしれない。
COVID-19と酸化ストレスの環境下では、共存疾患を持つ患者はGSH合成に関与する酵素であるグルタチオンシンターゼ(GS)とグルタミン-システインリガーゼ(GCL)のレベルが低下している可能性がある。このため、GSとGCLのレベルが不足している患者はGSH合成の基質としてNACを使用できない。
— Alzhacker (@Alzhacker) October 8, 2020
解熱鎮痛薬
解熱鎮痛薬、NSAIDは感染初期では適切な自然免疫応答を抑制してしまう危険性があり、一般的には感染初期では推奨されない、または最小限の使用とする研究者の声は少なくない。
一方で重症期の特定のタイミングの使用では致命的なサイトカインストームを抑制する可能性がある。ただし、細菌感染リスク増加が伴う。
例えば、イブプロフェンは単に熱を下げるだけではなく、ACE2発現の増加など、ポジティブに働くと考えることのできるメカニズムをもあることから、実際にどう影響するかはわからない。イブプロフェン使用による直接的なリスク増加の証拠は得られていない。
ハーブ・漢方
5SARS感染症の流行初期に中医学を補助療法として使用すると、オキシヘモグロビンの動脈飽和度が上昇することが報告されている。
コクランレビューでは、SARS患者に漢方薬と西洋薬を併用することで、症状、生活の質、肺浸潤の吸収を改善し、コルチコステロイドの使用量を減少させることができることが明らかにされている。
中国のSARS-CoV-2患者の85%以上が中医学を受けており、Yangらによってレビューされている。[R]
中医学の使用は、COVID-19患者に対する中国国家治療ガイドラインに記載されており、病期や重症度に応じて推奨されている。しかし、COVID-19患者の治療における中医学の有効性はまだ不明である。知る限り二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果はない。
中国国家衛生委員会&国家中医薬管理局が推奨する漢方薬
busan.china-consulate.org/chn/zt/4/P020200310548447287942.pdf
コロナウイルス疾患治療のための韓国の漢方薬のコンセンサスガイドライン2019
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7335489/
免疫サポート系のハーブ・漢方、天然素材などを用いる難しさ
感染初期において、COVID-19ウイルスは獲得免疫と自然免疫の一部を低下させる能力をもっている。体の初期の炎症反応は主に自然免疫を誘発するために必要だが、免疫系をサポートすると考えられている漢方やハーブ、サプリメントの摂取は、その種類によってその炎症反応を沈めてしまい逆効果となる可能性がある。これらは自己免疫疾患への効果が知られている漢方に多い。[R]
そういった漢方やハーブは、サイトカインストームなどの重症化したCOVID-19患者では効果を補助的に発揮する可能性があるが、異なる漢方やハーブ類は反対に損傷を拡大させてしまう可能性もある。
多くのウイルスには少なからず、免疫システムをハックしようとする仕組みがあるが、はSARS-Cov2ウイルスの免疫システムへの影響は他のウイルスと比べてやや独特な特性をもっているため、一般的な風邪やインフルエンザ(過去のSARSも含め)で効果が漢方やハーブなどがあったとしても、そのまま単純にCOVID-19感染症には外挿できない難しさがある。
おおまかな言い方をすると、理論的には感染直後または初期ではナチュラルキラー細胞などの自然免疫を活性化させる、強力な抗ウイルス作用をもつインターフェロンを増強させるアプローチが有効である可能性があり、初期を過ぎてから疾患後期に至るまでに適応免疫を強化する、重症化してしまった場合には自然免疫や体内の炎症を抑制するアプローチがさらなる重症化や致死率を軽減する可能性がある。
漢方も単一のハーブもそういった細かいニュアンスに、その作用が都合よく対応できているのかどうかわからない。おそらく良い効果があったとしても、6のポジティブ作用と4のネガティブ作用でトータルでは良い効果を多少得れるといったようなものだろう。当然、中には7:3や8:2といったものもあれば、その逆もあるだろうが、薬理作用から推測するには変数が多過ぎて、信頼性の高い臨床研究結果も得られないことから扱いにくい。
単一の植物成分は複合的なメカニズムを有するものの、機構的な薬理作用がある程度解明されているため、異なる風邪に対して経験的に混合された漢方を用いるよりは理論的にまだ採用しやすい側面がある。
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28274529/
フェーズ4.1-4.4 甘草(グリチルリチン)
感染初期がより望ましい作用機序を理論的にもつ。DGLはグリチルリチンが除去されている。
4.2
エルダーベリー
エルダーベリーはインフルエンザに対しては効果的であり、COVID-19においても同様に感染初期においては有効である理論的可能性がある。感染が重篤化した場合には推奨されない。700~1000mg
エキナセア
IL-1、IL-6、およびTNF-αを含む炎症誘発性サイトカインのマクロファージ産生を刺激する可能性があることが示唆されており、これは重症化した患者では肺損傷を悪化させる理論的な可能性がある。にんにく抽出物も同様[R]
アシュワガンダ(ウィザノライド)
4.2-4.3 CD4+/CD8+、NK細胞増殖の促進[R]
4.4 ウイルス複製阻害[R]
ゴツコラ(アジア酸)
アンドログラフィス
4.3 獲得免疫の活性
T細胞
T細胞 CD8+、CD4+の両方の減少がすべてのCOVID-19患者で観察されている。SARS-CoV2にばく露していない個人では、T細胞の反応が観察されていることから、証明はされていないが、T細胞性免疫応答がコロナウイルスの疾患重症度に大きな影響を与えているのではないかと複数の専門家の間で考えられている。
T細胞 CD8+
CD8 + T細胞はウイルスに感染した細胞を直接破壊する。肺間質におけるCD8+ T細胞の数は、コロナウイルスを排出するために非常に重要。
T細胞 CD4+
CD4+ T細胞は、B細胞の成熟を誘導し、マクロファージや細胞傷害性CD8+ T細胞を活性化することでエフェクター免疫応答を駆動するため、コロナウイルスによる免疫システムへの影響との関連性が高い。
CD4+の2つのサブセットのうち、Th1細胞はナチュラルキラー細胞またはCD8+T細胞を活性化するか、またはメモリーT細胞として残る。
一方、CD4 + Th2細胞はB細胞を刺激して血漿中のB細胞に変換し、SARS-CoV-2特異的抗体(主にIgMとIgG)を産生する。これらの抗体はSARS-CoV-2と結合し、中和する。B細胞の一部は免疫メモリーを形成することがある。
CD4+ T細胞は、IL-2、IFN-γ(Th1細胞)、IL-17(Th17)細胞のようなプロ炎症性サイトカインを産生することもできる。
重症患者ではCD8+よりもCD4+の欠損がより顕著。その他、調節性T細胞サブセットの制御異常も報告されており、主に重症患者ではCD8+CD28-抑制性Tの増加とCD4+CD25+CD127-調節性T細胞の減少が観察されている。
- ワクチン接種記憶にも影響を与える。
- 中和抗体応答の増加を促進する。
- 活性化は既存のT細胞メモリーに依存することもある。
- 交差反応性T細胞免疫が有益な影響を及ぼしている可能性もある。
T細胞 CD4+・CD8+ の増強
※ 試験管研究(in vitro)を含む
CD39+、PD-1(PD1/PD-L1軸)
抗生物質
抗生物質治療も、T細胞を妨害し、腸内細菌の抗ウイルス免疫を抑制する一方で細菌、真菌などとの重複感染が、重症化の原因の一つとなっている可能性を示唆する報告もあり、同様に諸刃の剣的側面がある。
抗菌治療は、真菌または細菌の呼吸器の同時感染が確認された、または疑われる場合には重要な役割を果たすかもしれないが、[R]これまでの証拠は、COVID-19患者の10%未満で細菌の同時感染が発生しており、確率論的には不要である率が高い。[R]
4.4 ウイルスの複製阻害
プロテアーゼ阻害剤
RdRp阻害剤
- メチルコバラミン 間接的にRdRPを阻害
- 亜鉛
- レンデシビル
ヌクレオシド類似体
- レムデシビル
- リバビリン
- クレブジン
ウイルスタンパク質阻害剤
イベルメクチン
ビタミンB12(メチルコバラミン)
抗ウイルス活性をもつ天然化合物
ケルセチン
- 亜鉛イオノフォアとして活用するには数gの高用量、またはリポソーム化が必要となるかもしれない。ただし様々な抗ウイルスメカニズムがわかってきており、一般推奨量でも意義はあると考えられる。
- 特に肥満者では、重症期のマスト細胞活性の抑制という標的候補に有効かもしれない。
- 温熱療法・サウナの前後での摂取タイミングは避けておく。
クルクミン
その他
- クロロゲン酸
- バイカリン
- ルテオリン
- レスベラトロール
- クルクミン
- ヘスペリジン
- タキシフォリン
薬剤 複合的な作用
エストロゲン
閉経後のCOVID-19患者は、閉経していない同年齢の女性患者よりも入院期間が長くなる。規則正しい月経は、COVID-19患者にとって重要な防御因子である可能性がある。
重症ではない女性では、重症の女性患者よりもテストステロンのレベルが高い。エストラジオールがテストステロンからの潜在的な負の影響に対してより強い保護効果を持っていることを示す。
高用量のエストラジオールは炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、TNF-α)の産生を阻害する可能性があるが、反対に生理学的レベルのエストラジオールによる刺激ではそれらの産生を増強する。
COVID-19に対する17β-エストラジオールの保護的役割の可能性
高リスクの患者は、エストロゲンピルや17β-エストラジオールを濃縮したハーブを摂取することにより、17β-エストラジオールレベルを増加させるように設計された戦略から利益を得ることができるかもしれない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7665224/
メトホルミン
リコード法の2型に該当する場合、メトホルミンが処方されることがある。
最近、メトホルミンのCOVID-19感染保護効果の証拠が増加し始めている。ビタミンDや亜鉛ほどではないにしても、古くからある薬で、その他の医薬品よりも高い安全プロファイルが確立されている。
メチオニン制限療法
4.5 呼吸器症状(~30%の感染者)
SARS-CoV-2感染者全体の~30%がこのフェーズに進み、典型的なCOVID-19症状の発現する。
一般的症状(〜85%の患者)[R]
- 発熱、呼吸困難(〜70〜80%)
- 咳(〜40〜80%)
- 嗅覚・味覚障害(〜50%)
- 筋肉痛(〜30%)
- 消化器症状(〜10〜30%)
喉の痛み、鼻づまり、鼻漏などの上気道感染症の典型的な症状は少数派(20%未満)にとどまる。
これらの患者における呼吸困難の有病率が高いのは、呼吸器病変が進行していることを反映しており、胸部CT画像では、グラウンドグラスの不鮮明さと混合圧密、胸膜とローブ間中隔の肥厚、および気管支図との関連性など様々。[R]
特に高齢者では、明らかな呼吸窮迫の兆候がなく、有意な低酸素血症と呼吸不全を特徴とするサイレント低酸素血症が起こることがある。[R]