CIRS(慢性炎症反応症候群)概要
CIRS = Chronic Inflammatory Response Syndrome
「知識は力である」 Dr.Shoemaker
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概要
診断
治療アプローチ
CIRS 概要
遺伝的に脆弱な人が、生物毒性によって感染することによって、慢性的に(全身的に)炎症が起こる病気、健康問題の総称。
全身性炎症反応症候群(SIRS)の一種とも言えるが、病因のメカニズムは異なる。
特定の毒物による疾患名ではなく、Dr. Ritchie Shoemakerによって造られた用語、そしてそれに基づく診断や治療を含む。
現在、CIRSという広義の概念は、認知症の専門家を含め一般的にまだ認知されていない。
CIRS発症の二大要因
世界人口の25%は、HLA遺伝子のうちの一つに変異を持っており、以下の2つの条件が重なることでCIRSを発症する可能性が高まる。
2.毒素暴露に先立って、すでに炎症を起こしている
(重篤な上気道感染、ライム病などの免疫系を刺激する因子)
さらに人口の2%(25%の約1割)では、生物毒素に曝露後、多系統、多症状の疾患を発症しやすい遺伝子をもっている。
CIRSのメカニズム
通常、人がカビや真菌などの生物毒に曝露すると一時的に病気になるが、免疫システムが働くまたは毒素が取り除かれることで回復する。
しかし一部のHLA遺伝子に問題がある人たちは、特定の毒素を認識することができない(抗体が作れない)ため、生物毒素は体内に残り持続的に免疫応答を引き起こす。
マクロファージやリンパ球などの免疫細胞が動員され、サイトカインが侵入者がいなくなるまで炎症プロセスが続き、炎症が慢性化する。
カビ毒 + 分泌毒素 + 免疫障害 +(解毒能力の低下)
微生物(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、その他の感染病原体)の感染による病気のメカニズムや治療方法はすでに明らかになっている。 しかし、すでに上記で述べたように問題はそれだけではなく、いくつかの微生物は免疫系に殺される過程で、さらに病気を悪化させる毒素を放出するということが現在明らかになってきている。
これらの毒素の一部は体内に残り、排出や解毒が難しくなることを医師は認識し始めている。 毒素の多くは解毒能力も損なうため、毒素の蓄積が一定レベルを超えると悪循環により除去することがより困難になる。
腸肝循環による毒素の再吸収
身体が毒素を処理する最も一般的な方法は、毒素を解毒器官である肝臓に集中させることだ。
生物毒素が肝臓に集まると、胆汁と結合され便として排出するために胃腸管に送り出される。
しかし、胆汁は腸肝循環によって再度、腸管から吸収されて肝臓に戻る。この腸肝循環の目的は大量に必要な胆汁を温存しておくことにあるが、このことが裏目に出る。胆汁と結合した毒素も肝臓に戻り体内に蓄積されるからだ。
誰もがこの問題の影響を受けるわけではない。人口の75%は免疫系がこれらの毒素を認識し防御システムを利用してそれらを破壊する。残念ながら残りの25%は遺伝的にこれらの毒素の抗体を作ることができず、毒素を蓄積していく。
アルツハイマー病真菌仮説
アルツハイマー病患者全員が、異なる脳部位領域において真菌感染が示される。
www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/10270
www.nature.com/articles/srep15015(英語)
www.afpbb.com/articles/-/3063366
研究者5人からなるチームは、分析対象としたアルツハイマー病患者11人の遺体の全てで、脳組織と脳血管に「数種類の真菌種」の細胞や関連物質を発見した。これらは、アルツハイマー病にかかっていない対照群にはみられなかった。
アルツハイマー病の「主病因」はこれまで、粘着性タンパク質の蓄積によって形成される脳の「アミロイド斑(プラーク)」とされてきたが、プラークを標的とする薬剤の試験は、期待はずれの結果に終わっている。
数種類の真菌の痕跡が発見されたことでアルツハイマー病の臨床症状の進行と重症度が患者によって異なることを説明できるかもしれない。
また真菌の原因は、病気の進行がゆっくりであることや炎症反応がみられることなどの、アルツハイマー病の特徴とぴたりと符合すると研究チームは補足した。
デール・E・ブレデセン博士
炎症は、真菌類などの感染性病原体に対する免疫反応の一つである。
CIRSはアルツハイマー病1~3型すべてに影響を及ぼす可能性がある。
認知機能の低下のないCIRSの症例も多い。また逆にCIRSのない3型アルツハイマーも存在する。3型アルツハイマー病の患者では、バイオ毒素感受性、HLA-DR/DQハプロタイプの異常がよく見つかる。
カビ毒種
自然にはカビが何千種と存在しその一部は人間に有害な毒素を産生する。カビが毒素を作るのは人間にダメージを与えるためではなく、他のカビの種を寄せ付けないようにするためだ。
しかし、例えば湿った壁の内部で自由に成長できる環境では、カビの種同士の競合が起こらずに増殖するため、マイコトキシンと胞子を大量に増やすことができる。
カビ毒の有害性はカビの真菌部分だけではなく、カビの胞子断片、揮発性有機化合物、放線菌(マイコバクテリアなど)βグルカン、溶血素、マンナン、プロテイナーゼなども毒性に寄与するためカビ毒の有害性はより包括的に考えていくことを必要とする。
カビ種のほとんどは人間には比較的無害だが、スタキボトリ、ペニシリウム、ワレミア、ケトミウム、フザリウム、アルテルナリア、アスペルギルスなどいくつかの種は、病気を強く引き起こす毒素を産生することができる。
有害なカビ毒種
カビ毒がもっとも一般的な犯人であり、具体的には Stachybotrys Aspergillus Penicillium Fusarium Chaetomium Alternaria Wallemia など
カビ毒以外では エプスタイン・バーウイルスなどのヘルペスファミリー サイトメガロウイルス ヒトヘルペスウイルス(HHV-6)なども有毒な毒素を生成する
特に、HHV-6の有毒な株は、慢性疲労、線維筋痛症と関連する。 ライム病病原体も毒素を産生する。 一般的に見られる、マイコプラズマやクラミジアと、バルトネラ、バベシアなどのライム病病原体との重複感染においても同様である。
- 真菌
- バクテリア(おそらくボレリア、バベシア、およびダニ刺咬によって伝播する他の生物を含む)
- 放線菌(糸状体および棒状細菌からグラム陽性菌放線菌目)
- マイコバクテリア
- カビ
- カビ胞子
- エンドトキシン(別名リポポリサッカライド/LPS、グラム陰性細菌の細胞壁成分)
- インフルエンザジェン(炎症および浮腫を引き起こす刺激物)
- β-グルカン(ポリサッカライド)
- 溶血素(細胞を破壊することができる細菌によって産生される外毒素)
- 微生物揮発性有機化合物
カビ毒の特性
通常、体内の分子は油と水が混ざらない仕組みによって全身をくまなくは移動できない。 しかし、カビ毒は一端が水に溶け反対では脂肪に溶ける能力をもつため、身体組織のすべての膜を通過することができる。 このことが様々な組織に毒性反応を引き起こし、身体が自然に毒素を除去することを難しくする。
マイコトキシンは吸入、経口、接触など外部から侵入することもあるが、体内でカビがコロニーを形成することによって作られることもある。 最も一般的な形成部位は副鼻腔と腸の領域。
多くの人では体内に入った毒素を遺伝的に除去する能力をもつためこの反応の影響は受けず一部の人に影響を与える。 そのため、職場や家庭で1人や2人は深刻な影響を受けるかもしれないが、その他の人は完全に元気であるため心理的な問題だと誤解されやすい。
CIRS 脳萎縮
尾状核の萎縮
MRIで分析されたCIRS患者の11の脳領域のうち、対照群と比べて、以下の脳構造に異常が見られた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24946038
kyou89.fc2web.com/cope/co_brain.htm
尾状核の役割
脳の学習と記憶システムに深く関わる。フィードバック処理、
空間情報と運動の実行を統合、四肢の姿勢制御の速度や正確さにも関係
左尾状核は特に単語理解と調音を複数の言語間で切り替えをする時に関わる。そのため言語学習能力、翻訳能力、学習言語のスピーキング流暢性にも関わってくる。
尾状核の障害
尾状核に障害を受けた患者は、やる気を喪失、強迫性障害、多動などのADHD症状を見せる。
アルツハイマー病患者は、健常者と比べて尾状核体積が有意に減少している。
淡蒼球の損傷
detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1455193589
淡蒼球は随意運動の制御に関与する。
損傷を受けると小脳の興奮作用を鎮める働きを失い、痙攣、振戦などの運動障害をもたらす可能性がある。
例えば、犬を撫でるときなどに生じる無意識的な身体活動の細やかな調整にも関わっている。
やる気やモチベーションにも大きく関わる。
参考動画
私から開業医へのメッセージは、もしあなたが難治性の患者に関わっているのなら、まずはライム病とカビ毒を早期に考慮してもらいたい、なぜならライム病の進行を止めるには、おそらくカビ毒を最初に治療する必要があるからだ。
ニール・ネイサン博士
ニール・ネイサン博士
サンディープ・グプタ博士 インタビュー(英語)
カビ毒テスト、毒素曝露 ジル・カーナハン医師による解説(英語)
CIRS リッチー・シューメーカー博士 インタビュー(英語)
セルフハック リッチー・シューメーカー博士 スカイプカンバセーション(英語)
www.youtube.com/watch?v=sK9DOCLzuig
参考サイト
Chronic Inflammatory Response Syndrome – Surviving Mold
www.survivingmold.com/docs/Berndtson_essay_2_CIRS.pdf
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4789584/
chriskresser.com/5-things-you-should-know-about-toxic-mold-illness/
biotoxinwars.blogspot.jp/p/biotoxin-illness.html