Contents
CIRS(慢性炎症反応症候群) 診断
概要
カビ毒はほとんどの開業医は認知していないため、診断が可能な症状のある患者が開業医の元に赴いたとしても、通常、病気の存在そのものを疑われたり白眼視されて終わる。患者は医師に頼ることができないため、自らが治療者となる必要がある。
心の病気とされてしまうカビ毒患者
しかし、カビ毒の症状がある患者は、そのことを表現することが難しいと感じることが多く、カビ毒に精通していない多くの医師は心理的な問題として判断する。
悲しいことだが、患者が研究や証明が十分ではない領域の病気の説明を試みると、医師は得てして心の問題として捉える。
ライム病は何年もの間議論されてきた病気であったため、すぐに診断されることはなく、患者の異常な症状に対して医師はライム病の診断を診断リストの最後に行う。
これまで、共感染を伴うライム病が診断されるには5~15年かかっていたが、2013年に米国疾病対策センター(CDC)は、毎年約30万人のライム病患者がアメリカ人で見つかっていると報告があり、この公式発表により、ライム病は診断リストの上位に位置付けられ、医師が早い段階で診断できるうようになった。(米国)
カビ毒の曝露経路
カビ毒治療においてまず行うことは、最初にカビ毒性の診断だ。
患者の家、屋根、屋根裏部屋、地下室、壁などが水害や漏水の被害があったか?
カビの臭いに気がつくか? 目に見えるカビは、たいてい氷山の一角にすぎない。
カビは壁の裏側で成長したり、冷暖房機器の内部に入り込み胞子を撒き散らす。
カビ毒素は長期間体内に残留する可能性があるため、現在はカビがない環境に住んでいても、過去の住居や職場、車でのカビ曝露の可能性がある。 カビ曝露環境から離れて数年経過しても体内に残っていることがある。
カビはマイコトキシンと呼ばれる毒素を産生する。これは他のカビを生態学的なニッチ領域から締め出すためだ。 マイコトキシンの曝露には大きく2つの経路があり、胞子を吸い込み肺から吸収する経路と、汚染された食品を摂取する経路だ。
食品のマイコトキシンには、ドライフルーツ、熟成チーズ、マッシュルーム、熟した果物や野菜、ビール、ワイン、ワインビネガー、加工肉などに微量含まれていることがある。 しかし主要な感染源はマイコトキシンを肺から吸入することだ。これは自宅、職場、車内などが感染源となっていることを意味する。
カビ毒の症状
カビ毒の症状がひどい患者の多くは、カビ毒特有の特徴的な症状を示す。
- 感電したような感覚
- アイスピックで刺されたような痛み
- 脊髄が上下に振動または拍動するような感覚
これらの症状はカビ毒性曝露の強力な指標となるが、すべての患者がこの症状を示すわけではない。 カビ毒は多くの器官にも広範囲に影響を与えるため、これらの症状から外れることもある。
特に以下の症状と関連する場合、カビ毒性の可能性が浮かび上がる。
- 体のさまざまな部分の筋力低下
- しびれ
- うずき
- 平衡障害
- めまい
- 疲労
- 認知機能障害を伴う重度の不安と抑うつ
- 関節と筋肉の痛み
- 頭痛
- 胃腸症状との関連
- 胸の圧迫感と痛み
子供の示すカビ毒症状はADHDとよく似ている。 実際にADHA関連の診断を受けた子供の患者では、直接的な原因としては認識されていないが、生物毒性をもっている可能性がある。 多くの患者がカビ毒性の検査を行い評価することの恩恵を受けるだろう。
CIRSの臨床診断
- 疲労
- 新しい知識の会得が苦手、痛がる、頭痛、光を眩しく感じる
- 記憶の問題、言葉が出てこない
- 集中力
- 関節痛、筋肉のけいれん、朝に体が凝る
- 皮膚感覚の違和感、うずき
- 息切れ、副鼻腔のつまり
- セキ、喉の渇き、混乱
- 食欲の変化、体温の不規則性、尿の頻度
- 赤目、視界がぼやける、汗をかく、気分が変わりやすい、つきささる痛み
- 腹痛、下痢、しびれ
- かきむしる、方向感覚を喪失、味覚異常(食べものが金属っぽい味)
- めまい、静電気へのショック反応
以上の13の項目のうち、一つ以上該当するものがあればCIRSの可能性は存在する。※診断基準は満たさない
11歳以下の子供の場合6個以上、高齢者の場合8個以上の該当が簡易的な診断基準(カットオフ値)となる。
※3型アルツハイマーの診断基準とは異なる
※スクリーニングテストとして使われているが、曝露歴が長い(5年以上)場合の精度は高い。
視覚コントラスト感度検査(スクリーニングテスト)
カビ毒が疑われる場合は、シューメーカー博士のサイト survivingmold.com (英語) にアクセスして、オンラインでスクリーニング検査を行うことをおすすめする。
ただし視覚コントラス感度検査はスクリーニングとしては有用ではあるが、カビ毒性の具体的な診断には向いていない。 他の炎症疾患や、ライム病、マイコプラズマ、クラミジア種も、VSC検査のテスト結果に影響を与える可能性がある。
カビ毒尿検査
慢性疲労症候群の患者112人に、尿検査を行ったところ93%でカビ毒素のレベルが上昇していることが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3705282/
GPL-MycoTOX
www.greatplainslaboratory.com/gplmycotox
現在は、尿や血液、鼻腔などの検体採取によりマイコトキシン種を特定することができる検査があり、より精度の高い診断ができるようになった。
検査精度を高める
グルタチオン
カビ毒の尿検査を行う際は、テストの一週間前からグルタチオン500mgを一日二回摂取すると、尿中マイコトキシンの検出能力が向上することがわかった。 いわゆるチャンジテスト(尿誘発試験)
グルタチオンによる身体からの排出よりも体内でのカビ毒の動員速度が早いことはよくあり、このことが症状の悪化につながることもある。 この場合グルタチオンの服用をすぐに中止するべきだ。
サウナ
グルタチオンと同様に遠赤外線サウナ(または熱いお風呂)に入って30分後に検査することでもカビ毒の検出能力を向上させることができる。やはり 毒素が動員されることによって気分が悪くなることもあるので注意が必要だ。
解毒能力があって初めて毒素は尿中に排出される。カビ毒の症状が深刻な患者はそもそも毒素を除去する能力が著しく損なわれているため、検査だけを行ってもほとんど患者は陰性となってしまう。
サウナだけでは初回の検査で偽陰性を示すことがあり、サウナとグルタチオンチャレンジテストの両方を行うことで診断精度がかなり上昇することができる。
解毒能力の改善による尿中カビ毒の上昇
初回のカビ毒尿検査で示される毒性の量は患者の解毒能力にも依存するため、大まかなものとして理解したほうが良い。解毒能力が低下している患者ではチャレンジテストを行っても少量しか排出できない可能性があるからだ。
数カ月後のカビ毒再検査で、治療に取り組んだ患者の尿のカビ毒レベルは上昇していることがある。 これは患者の解毒能力が向上した結果の反映であることがある。 検査結果は、治療の流れに応じて再解釈していく必要がある。
初回の偽陰性
カビ毒性の典型的な症状があるものの初回の尿検査では陰性で、治療を行うと患者のほとんどが臨床的な改善を示し、3~4ヶ月後の尿の再検査によって大量のマイコトキシンを示すことがままある。
検査での検出の難しさを考えれば、現時点では一部の患者は病歴と症状に基づいて治療すべきなのかもしれない。
初回にグルタチオンや発汗によるマイコトキシンの尿誘発試験を行ったのなら、再検査も結果の比較を行うためにも同様の条件で行ったほうが良い。
治療後のカビ毒レベルの変動
治療経過において尿検査でマイコトキシンレベルが上昇した場合、以下の可能性が考えられる。
- 解毒能力の改善
- カビ毒曝露の継続
- 毒素結合剤または抗真菌療法の過剰治療
尿中の毒性レベルが下降した場合には、治療が順調に進んでいることを示唆する。
鼻洗浄による検査
時々、尿検査では診断が確認できないことがある。その場合は、鼻洗浄というシンプルなテストを繰り返し、検査機関へ送って分析してらもうことで有用なデータが得られる。