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コリン補給(認知症・アルツハイマー)
概要
コリンは、ヒトに必須の水溶性栄養素。
認知症患者さんに投与されるアリセプトアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、神経伝達物質でありアセチルコリンを増加させることを目的としたものだが、コリンはまさにそのアセチルコリンの材料。
コリンは神経伝達物質としてだけではなく、ニューロンを含めた細胞膜、脂質輸送であるリポ蛋白の材料、ホモシステインの還元に必要なメチル基の代謝など、幅広い生体の代謝に関わり、コリンが欠乏することで神経疾患に影響をおよぼすと考えられている。
日本ではコリンの必要摂取量は定められていないが、コリンは多くの食品に含まれており、多くの人にとってはバランスの摂れた食事をしていれば必要摂取量を得ることができる。
しかし、一般的な日本人の食事からの一日平均摂取量は300mgであり、これは米国医学研究所IOMが定めている推奨量425mg/日を下回る。
またコリンは肝臓でリサイクルされメチル化によって代謝されるため、遺伝子異常によりメチル化の機能に問題がある、またはApoE遺伝子でも脂質代謝に問題があるケースなど、食事から得られるコリン形態での摂取では欠乏する可能性もある。
つまり、サプリメントによるコリンの補給には2つの側面があり、ひとつは食事からの欠乏を補う側面があるが、食事に加えてホスファチジルコリンやαGPCなど代謝された形態のコリンを補給することによって、疾患や遺伝などにより脂質代謝に問題がある人たちにとって有益である可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2782876/
examine.com/supplements/choline/
α-GPC(アルファ-グリセロホスホコリン)
アルファGPC1000mg中400mgがコリンとして利用される。
グリセロリン酸の前駆体でもある。
コリンソースとして見るならCDPコリン185mgに対して多く含むため、低用量の摂取であればアルファGPCが良いかもしれない。
またアルファGPCは、成長ホルモンの放出を増強することが証明されている。
認知症高齢者の認知機能低下率の低下
高用量(1,200mg)のアルファ-GPCは、軽度から中等度のアルツハイマー病において、標準療法(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)との併用で効果がある。
研究
プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験 軽度から中程度の認知症患者へ400mgのαGPCを一日に三回投与 90日後、180日後にADAS-Cog、MMSE、GDS、ADAS-TotalおよびCGIスコアにおいて有意な改善が観察された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12637119
軽度から中等度の血管性認知症患者へ90日間、アルファ-GPC1gとCDPコリン1g/日を筋肉内に投与。Parkside行動評価尺度の変更、Sandoz臨床評価老齢尺度、単語流暢性試験Hamiltonのうつ病評価尺度、Wechsler記憶スケールのナレーション・サブテスト)の心理テストで明確な症状の改善をもたらし、良好な忍容性を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1916007
多施設、無作為化対照試験 高齢者で軽度のアルツハイマー型認知症患者へアルファ-GPCおよびアセチルカルニチンを別々に投与し比較した。アルファ-GPCを投与した患者ではほとんどの神経心理学的パラメーターが改善を示した。アセチルカルニチンを投与した患者でも改善が見られたが、その程度は低かった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8477148
多施設無作為化 軽度から中等度の多発性梗塞型認知症を有する112人の患者へCDPコリンとアルファGPCを比較投与。アルファGPC投与の患者では認知機能、行動および人格に有意な改善を示した。Word Fluency試験で見られた失語症がCDPコリン投与によって有意に改善された。認知症尺度、WMS、RDRSではアルファGPCがCDPコリンの投与よりも有意に改善を示した。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0011393X05805181
www.life-enhancement.com/magazine/article/1004-alzheimers-patients-benefit-from-cdp-choline
サプリメント
一日1錠からスタート、様子を見ながら4錠まで増やし継続摂取していく。
朝を中心に一日3回。
空腹時の摂取でより吸収力を大きく高められる。
アリセプトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と併用する場合は、過剰に脳内のアセチルコリン濃度を高める可能性があるため摂取量に注意が必要。
CDPコリン シチコリン
概要
シチコリンはヨーロッパ諸国においては、認知障害機能の改善薬として高い頻度で用いいられる薬剤のひとつである。
日本では意識障害治療の医薬品と使われている。
2018年より日本国内では厚生労働省の規制により、医師の処方箋がなければ個人輸入ができなくなる。
成分的にはアルファGPCとウリジンの組み合わせで代替が可能。
効能
CDPコリン(シチコリン)は、神経伝達物質であるアセチルコリンの合成のためのコリンソースとして作用する。また天然のリン脂質前駆体であり、神経可塑性を増強することもできる。
・神経伝達物質アセチルコリンの原材料
・神経細胞膜のリン脂質合成を活性化
・ノルアドレナリン、ドーパミンレベルを増加
・ミトコンドリアのリン脂質であるカルジオリピンの消失を防ぐ
・ミトコンドリアATPアーゼおよび膜のNaを回復することで、低酸素、虚血に対して神経保護効果を示す。
・遊離脂肪酸の放出を抑制することで虚血細胞の損傷の進行を減弱させる可能性
・サーチュイン1活性
・アルツハイマー病患者で血清ヒスタミンレベル低下の可能性
αGPCとの比較
コリンとして利用されるのは1000mg中185mg、アルファGPCの約半分であるため、同量でコリンの改善効果を求めるならアルファGPCに軍配が上がる。
しかし、CDPコリンにはシナプス結合の増強に結びつくウリジンが含まれており、ウリジン補給も同時に可能であるため、摂取量をアルファGPCよりも増やせれるなら(1000mg以上)CDPコリンの有用性が高くなる。
研究
プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験 記憶力の低下が見られるが認知症ではない高齢者への4週間のCDP-コリン単独投与とニモジピン併用の試験
プラセボ郡と比較して、CDP-コリン投与群は単語の想起能力の改善が示された。CDP-コリン300~1000mgの用量で記憶力の増強が示された。
また収縮期血圧低下、およびリンパ球数の変化も観察されシチコリンが脳神経および脳血管の調節機構へ影響を与えることで記憶改善作用を有する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9203170
57から78歳のアルツハイマー病患者へCDPコリンを一ヶ月間投与(1000mg/日)
若年性の初期型アルツハイマー病患者においてMMSEスコアは有意に増加。
アルツハイマー病患者全体でもオリエンテーションサブテストでスコアが有意に増加した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7913981
シチコリンの代謝経路
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4562749/
脳卒中、中枢神経系障害におけるCDPコリン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1934404/
サプリメント
覚醒効果、Sirt1活性があるため就寝前は基本摂らないほうがいいかも。夕食後も控え目にする。
空腹時の摂取により生体吸収率がアップ(約2倍)
長期投与(数ヶ月~1年)による有益性がより高いと考えられている。
臨床研究においてアルツハイマー患者への投与量は1000mg/day
重度の副作用は報告されておらず、長期間の投与で500~2000mgの範囲で安全であると推測されている。
2~4錠 徐々に増やしていく。ウリジン、αGPCなどと作用機序が重複するため、それらの利用に応じて増減をはかる。
アリセプトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と併用する場合は、過剰に脳内のアセチルコリン濃度を高める可能性があるため摂取量に注意が必要。
ウリジン
Uridine-5′-Monophosphate (UMP)
ウリジンは、膜リン脂質のホスファチジルコリン合成に関わる重要な成分。
代謝経路 ウリジン → CDPコリン → ホスファチジルコリン
ニューロン膜を修復し、新しい膜を構築する。
DHAと協力してニューロン膜の量も増加させる。つまり神経突起、樹状突起の産生を増加させる。
修復材料としてだけでなく、脳全体のコリン供給源としても働きアセチルコリン産生、ドーパミン産生を増加させる。
・ウリジン Uridine-5′-Monophosphate (UMP) 水溶性 舌下吸収で7~10倍!
高価格帯のサプリメントに入るので、少量で吸収力を上げたいなら舌下吸収がいいかもしれない。
ウリジン、EPA、DHA、コリン、ビタミンなどの細胞膜合成に必要な栄養の組み合わせ飼料は、マウスのアルツハイマー病を軽減する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22914588
トリアセチル・ウリジンはUMPの4~7倍強い。
www.limitlessmindset.com/nootropic-ingredients/298-uridine.html
ウリジンスタック
健常者 500~1000mg
ウリジンスタック 150~250mg +DHA・EPA +αGPC150mg
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11322706
夕方以降、寝る前
ビタミンB摂取の効果がない人には、ウリジンのメリットはないかも。
www.longecity.org/forum/topic/51802-gpc-choline-uridine-dha/
コリンとウリジン、オメガ3脂肪酸をセットで投与。
サプリメント
ウリジン 250mg通常の推奨投与量 500~2000mg 午前中から夜を中心に摂取
CDPコリン、αGPCと併用する場合は、減薬可能
レシチン(ホスファチジルコリン)
概要
レシチンは、二つの異なる意味で使われることがあり、ちょっと混乱しやすい言葉。
レシチンというとき、大豆レシチンのように多くのタイプの脂質が含まれた意味、そしてその中に含まれる一成分であるホスファチジルコリンのどちらかを意味する。
ホスファチジルコリンは、人体にとって、スフィンゴ脂質についで二番目に重要なリン脂質。アルツハイマー病患者においては、血清のホスファチジルコリンが健常者と比べて減少している。
アルツハイマー病患者におけるホスファチジルコリンの重要な二つの役割
・神経伝達物質アセチルコリンの伝達材料
・脳神経細胞膜の材料、主成分
サプリメント
大豆レシチン
概要
レシチンだけだと、その中のホスファチジルコリンだけを意味することが多いが、大豆レシチンと言うと、それは大豆由来のレシチンということだけでなく、同時にホスファチジルコリンだけでなく、その他ホスファチジルセリンやホスファチジルエタノールアミンなどの成分が含まれ、それらが溶媒抽出されていないということも意味する。
大豆レシチンは脂質の混合物であるため、大豆レシチンと言うかたちで行われた研究はより細分化されたホスファチジルコリンやホスファチジルセリンなどの脂質と比べると限られている。
大豆レシチンの成分
ホスファチジルセリン3%
ホスファチジルコリン30%
ホスファチジルエタノールアミン21%
ホスファチジルイノシトール16%
ホスファチジン酸7~17%
フィトグリコ脂質15%が含まれている。
大豆レシチンを摂取すれば、ホスファチジルコリンも摂取したことになるため別に摂取している場合は減らしたほうがいいかもしれない。
ホスファチジルセリンに関しては、大豆レシチンに含まれる含有量が少ないため、大豆レシチン摂取によってホスファチジルセリンの臨床的な認知機能改善効果を期待しようと思うと、大量の大豆レシチンを摂取しなければならなくなる。
大豆レシチンの効果(エビデンスのあるもの)
LDL-Cを下げる。
総コレステロールを下げる。
コルチゾールを下げる
ストレスの軽減
大豆レシチンによって吸収が高まる栄養素
ボスウェリアコナラ
クルクミン
シリマリン(ミルクアザミ)
グレープシードエクストラクト
緑茶カテキン
レスベラトロール
ナプロキセン
上記で上げた以外栄養素以外にも、大豆レシチンは多くの脂溶性/疎水性の吸収を高める。そのため、脂質の補給という点でも重要だが、他の栄養素と組み合わせることで地味に効果を発揮するサプリメントでもある。
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなどと組み合わせる場合、アルツハイマー病患者にとって、大豆レシチンはイノシトールを含むことに価値がある。
認知症予防の場合、食事からコリンの補給が不足しているときには必須のサプリメントとなる。(もちろん可能なら食事からの摂取のほうが理想)
しかし、認知症患者の場合、コリンの必要量が高まるため適切な脂質を含む食事+補助的なコリン補給源としてあってもいいように思う。脂質のマルチビタミンという感じ。
純粋なコリンの補給としては、やはりα-GPC、CDPコリン、次点でウリジン、ホスファチジルコリンを推奨したい。
サプリメント
一般用量 一日1g~5g
認知機能の改善 一日7.5g~10g
※食事や他のコリン補給サプリメントとの兼ね合いで考える。