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カスパーゼ3切断を減少させる
カスパーゼ
アポトーシスと関連するカスパーゼがアルツハイマー病の進行性神経細胞死に寄与することがこれまでの研究で提案されてきた。
哺乳動物のカスパーゼは1から14まで見つかっており、まとめてカスパーゼファミリーと呼ばれる。
ほとんどのカスパーゼはプログラム細胞死であるアポトーシスの誘導に関与している。
カスパーゼは大きく以下の2つタイプが存在する。
・イニシエーター・カスパーゼ(アポトーシスの誘導の初期に関わる)
・エフェクター・カスパーゼ(アポトーシスの実行そのものに関わる)
健常者の脳にも豊富にあるカスパーゼ
成熟した神経系において、カスパーゼ活性化は脳の外傷と関連している。
しかし、健康な成人のニューロンにも外傷がないにもかかわらず、カスパーゼが比較的豊富に存在する。
これはカスパーゼがシナプス修飾に関与するなど、神経系においてその他の生理学的な役割を有している可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20510932
カスパーゼ3の神経系における役割
アポトーシスの最終段階
カスパーゼ3の活性化は、アポトーシス細胞死をもたらす生化学カスケードの最終段階で実行されると考えられている。
しかし、カスパーゼ3は単に細胞を自殺させる殺人者ではなく、シナプス可塑性の調節にも関与しているという研究も支持されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1847391/
シナプス可塑性と長期抑圧
カスパーゼ3の活性はシナプスの可塑性、脳の発達に必要な長期抑圧(LTD)を誘導する。
長期抑圧を誘導するNMDA受容体刺激は、アポトーシスを引き起こすことなくカスパーゼ3を一時的に活性化させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2909748/
アルツハイマー病におけるカスパーゼ3
カスパーゼ3と6の異常発現
アルツハイマー病患者の死後の脳組織では、イニシエーターカスパーゼであるカスパーゼ8,9ならびにエフェクターカスパーゼであるカスパーゼ3,6の異常な発現が報告されている。
カスパーゼ3切断による細胞毒性
アミロイドβペプチドはタウのカスパーゼ切断に寄与する。
カスパーゼ3で切断されたC末端断片が、細胞内で毒性をもつことも示されている。
アルツハイマー病初期段階に関与
カスパーゼ3はアルツハイマー病進行初期の神経変性事象である可能性。
カスパーゼ3はアルツハイマー病の初期のバイオマーカとして使用できるかもしれない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2570138/
カスパーゼ3の加齢脳での悪影響
健常な成人の脳においては限定的なカスパーゼ3の活性が重要だが、老化した脳においての慢性的な活性化は神経変性プロセスに関与する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3838299/
カスパーゼ3とアミロイドβ
アミロイドβ↑> カスパーゼ3↑>アポトーシス↑
アルツハイマー病患者の脳内では、カスパーゼ3が老人斑と共局在化することが臨床試験で実証されている。
アミロイドβはカスパーゼ3を活性化を介して、神経細胞の細胞死を誘導し得ることが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27227450
カスパーゼ3↑ >GASP↑>γセクレターゼ↑>アミロイドβ
γセクレターゼ複合体活性化タンパク質(GASP)の形成にはカスパーゼ3が必須。
カスパーゼ3を遮断するとADマウスのGASPレベルおよびアミロイドβレベルが有意に減少をもたらした。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25052851
GASP
γセクレターゼ複合体活性化タンパク質(GASP)
GASPの薬理学的調節は、ADマウスのアミロイドβレベルおよびタウのリン酸化を減少させる。
GASPはNotchに影響を与えずにγセクレターゼと相互作用するため、抗アミロイドβ両方の理想的な標的。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24662099
カスパーゼ3とタウ
タウはカスパーゼ3の基質であり、カスパーゼ3はアルツハイマー病におけるタウ媒介性の神経変性のメカニズムにも関与している。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12888622/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15750210/
カスパーゼ3の阻害因子
天然フラボノイド
ミリセチン
ミリセチンは、カスパーゼ3の活性部位に直接結合することで強力に阻害する。in vitro その他カスパーゼ1、7も阻害。
カスパーゼ1.3.7阻害フラボノイド
・ケンフェロール
・ルテオリン
・ミリセチン
・ケルセチン
カスパーゼ1.3.7の用量依存的阻害を示さなかったフラボノイド
アピゲニン、カテキン、クリシン、ダイゼイン、ナリンゲニン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3226999/
イサチン-スルホンアミド
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16844966
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