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脂肪という言葉遣いは忌み嫌われたりもするが、ミクロの世界ではそれなしで生きていくことのできない「分子の建築ブロック」なのだ。
不飽和脂肪酸の炭素数別効果
ココナッツオイルの中鎖脂肪酸を中心に、炭素数の違いによる認知症・アルツハイマーへの効能をまとめてみる。
脂肪酸の炭素数ってそもそも何?という人もいると思うが、他の多くのサイトでわかりやすく説明されているためバッサリ割愛する。(汗)
以下脂肪酸の仕組みがある程度分かっている人向け。
とはいえ、分からない人も炭素数の違いはけっこう重要なので、ざっくり理解しておくことをおすすめする。
炭素数の違いが理解できると、自然とココナッツオイルがなぜ身体にいいとされるのかといったこともわかってくる。
短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸は、ココナッツオイルも含め食品の中に大量には含まれておらず、その多くは腸内細菌が発酵することによって補給される。一日20~30g
酢酸 C2
(お酢の主成分 4~20%)
酢酸はお酒からも代謝されて作られる。そのため、長年の酒飲みはお酒から酢酸エネルギーを得るような代謝の仕組みになっており、お酒をやめると認知症が悪化する可能性がある。
一方で代謝されずに残ったアルコールそれ自体には身体的に何のメリットもなく、(精神的なメリットは一応除いておく)、脳を萎縮させる。
断酒はお酢を飲みながらやめよう!
blog.livedoor.jp/beziehungswahn/archives/28140763.html
プロピオン酸 C3
代謝にはビタミンB12を必要とする。
カルシウムやマグネシウムなどのミネラル吸収を促進
抗菌性が強く、大腸菌、サルモネラ、赤痢菌などの感染を抑える。
ビフィズス菌がプロピオン酸を産生
酪酸 C4
脳機能の回復へ働きかけるだけではなく、抗炎症効果、自己免疫疾患の改善、腸内環境を整える、IBS改善、抗うつ、抗がん、血糖バランス、肝臓、膵臓、心臓の保護効果、赤血球増加、殺菌作用、ミトコンドリアの保護作用等、非常に幅広い効能をもつ。
認知症・アルツハイマーに関係する研究論文
βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する
first.lifesciencedb.jp/archives/6286
酪酸ナトリウムの神経細胞保護効果
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC55534/
www.hindawi.com/journals/bmri/2015/412946/
酪酸ナトリウムがマウスの脳領域の遺伝子を活性化させ、記憶障害を改善
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21593570
フェニル酪酸がアミロイドを減少させマウスの認知行動を回復
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21272191%20
酪酸ナトリウムと運動によってBDNFが増加
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19549282
酪酸ナトリウムによって損傷した脳細胞の神経新生が増加
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19549282
酪酸ナトリウムによって血液脳関門が回復
linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0006899316301317?via=sd
酪酸菌のほとんどは腸内で生成され、食べ物からの摂取は小腸で代謝されるから関係ないという意見も目にするが、研究報告を見ていると錠剤で空腹時に摂取することによる影響は、体内生成量だけでは説明できない効果があるように見える。
酪酸が含まれる食品
バター2.7%、ギー、牛乳0.12%、ナチュラルチーズ1%前後、紅茶キノコ、青バナナ、たんぽぽの葉っぱ、ヒカマ
裏をとっていないが、グラスフェッドバターには通常のバターの数倍の酪酸が含まれているらしい。そうであれば5~8%も含まれていることになり、酪酸摂取最強の食品はグラスフェッドバター(放牧で育てられた牛のミルクから作られたバター)になる。
www.geocities.jp/jr2bvb/syokuhin/sibosan2/houwa/raku.htm
少量だと小腸で代謝されてしまうため大腸には届かない。大腸まで届けば上皮細胞のエネルギー源になる。
グラスフェッドバターを使ったレシプ バレットプルーフコーヒー
酪酸・酪酸菌を増やす方法
・整腸剤として知られるミヤリサンは酪酸菌であり、腸内で酪酸を生成する。
・レジスタントスターチも酪酸菌を大量に生成。
水で溶いた片栗粉を飲むだけ、最も安く酪酸菌を増やす方法。
ミヤリサンとレジスタントスターチ、さらにココナッツオイルは強力なコンボになるはず。
炭水化物+酪酸によって腫瘍を引きおこす可能性(マウス)
dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.05.018
吉草酸・イソ吉草酸 C5
高タンパク、高脂肪の肉類を食べると、腸内の悪玉菌がアミノ酸を利用して産生する、そして悪臭の原因になる。
↓ ココナッツオイルに含まれる脂肪酸はここから ↓
カプロン酸 C6
ココナッツオイルには約0.6%前後と、ほんのわずかではあるが含まれる。少なすぎて成分表示には書かれていないことが多い。バターには1.7%、チーズには0.6%、含まれる。
MCTオイルでも通常は1%未満、味が非常にまずくなるため、通常は除去されているが、低品質のMCTオイルは、C6が1~2%含まれていることがある。
カプロン酸の消化器への影響
少量でも消化問題を起こしたりする。MCTオイルが下痢を起こす原因のひとつはこのカプロン酸とも言われたりもしている。
ただし、当然のことながら炭素数が少ないので、ケトンへの変換が超早い。炭水化物と併用してもケトン濃度は上がる。
中鎖脂肪酸
カプリル酸 C8
C10のカプリン酸と並びケトン体治療において重要な脂肪酸
臨床試験で使われた中鎖脂肪酸はカプリル酸C8のみの脂肪酸(AC-1202)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2731764/
少々特殊だが市販品として売られている、Axona、オクタンオイルがそれに該当する。価格が高いのが難点。
ココナッツオイルに含まれるカプリル酸
ココナッツオイルには、このカプリル酸は6%しか含まれない。
パーム核油3.9%、母乳、バター1%、チーズ0.4%、牛乳0.04% ヤギ乳0.1%
カプリル酸の効果
・食欲を抑える。神経細胞への賦活作用
・カンジダ菌の死滅作用
・サイトカインIL-8抑制
カプリル酸は数分でケトン体に変換される。
炭水化物を食べていてもケトン濃度を上昇させる力をもっている。
ココナッツオイルに含まれる脂肪酸の中で、ケトンスパイクに最も有効な炭素数。
※C8をココナッツオイルやC12以上の脂肪酸に混ぜてしまうとケトンスパイクは発生しにくくなる。
カプリン酸 C10
認知症へのケトン治療においてもっとも重要な脂肪酸
肝臓で代謝される必要があり、C8よりもケトン体への変換効率は悪い。
価格がC8よりも安いというメリット。
LDLとHDL”両方”を増加させる。
抗菌性、抗ウイルス性、筋合成を高める。ダイエット、トレーニング向き
記憶の改善
(ラット)炭素数10(カプリン酸)の脂肪酸が物体の認識記憶を改善(炭素数8(カプリル酸)では見られなかった)炭素数10の脂肪酸のみがAktリン酸化を増加。
ケトン産生ばかりがフォーカスされているが、ケトン産生とは関係なく炭素数8、10の脂肪酸それ自体が認知機能を改善する可能性もある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27517611
MCTオイルに多く含まれる
ココナッツオイルに含まれるC10は9%、MCTオイルのC10は約40%、
高価なXCTオイルにはC8、C10のみが含まれる。日本未発売
ココナッツオイル
カプリン酸 8%
パーム核油3.4%、バター2%、チーズ0.7%、母乳、ヤギ乳0.26%、牛乳0.08%、
長鎖脂肪酸
ラウリン酸 C12
ココナッツオイルに含まれるラウリン酸は50%。他の脂肪酸に比べ圧倒的に多く含まれている。
パーム核油45%、バター2.5%、チーズ1%、
ラウリン酸の作用
ラウリン酸は、ウイルスやカンジダ菌、真菌などの殺菌作用が(カプリル酸C8、カプリン酸C10よりも)あるため、通常の健康目的の観点からは十分に有用。
ラウリン酸はコレステロールを上げるが、善玉コレステロールであるHDLをより多く増加させる。
ラウリン酸は中鎖脂肪酸なのか長鎖脂肪酸なのか?
ラウリン酸は長鎖脂肪酸なのか中鎖脂肪酸なのか論争がある。
定義上は長鎖脂肪酸に含まれるが、門脈を通って直接肝臓へと代謝経路としては中鎖脂肪酸と同様。
ただ、長鎖脂肪酸のβ酸化に必要なカルニチンがあまりなくても、分解されやすいという点から中鎖脂肪酸でもいいんでないの、という意見もある。
しかし長鎖脂肪酸同様、糖質制限、激しい運動などで血糖値を下げなければ、肝臓で代謝されにくいため、長鎖脂肪酸にしとけ、という意見もある。
ココナッツオイルに多く含まれるラウリン酸
ココナッツオイルはラウリン酸を多く含む。そのためココナッツオイルだけでケトン体濃度を大きく高めるのは難しく、糖質制限とセットで実行しなければケトンの治療効果も薄い。
ただ、ココナッツオイルに含まれるC8、C10がある程度はラウリン酸を含めた長鎖脂肪酸の分解も促すため、糖質制限なしで、まったくケトン体が増加しなわけではない。
ミリスチン酸 C14
ココナッツオイルに約16%含まれる。
パーム核油16%、バター8%、チーズ3%、牛肉2%、さば、さんま1.5%
HDL、LDLとも同じ比率で総コレステロールを上げる。
パルミチン酸 C16
ココナッツオイルに約9%含まれる。
オリーブオイル14%、動物性油脂にも多く含まれる。
抗酸化特性はオレイン酸より劣る。
トランス脂肪酸と組み合わさるとLDLが増加
単体、またはリノール酸との摂取ではコレステロールを増加させない。
ステアリン酸 C18
ココナッツオイルに2%だけ含まれる。
牛肉の脂身、チョコレート、バター、などに多い。
摂取してもLDLを上昇させない。コレステロールを減少させる。
↑ ココナッツオイルに含まれる脂肪酸はここまで ↑
参考サイト
en.wikipedia.org/wiki/Butyric_acid
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%94%E3%82%AA%E3%83%B3%E9%85%B8
yukoji.com/IntestinalFlora/Entericbacteria/merit.html
hlgs.jp/archive/asath_48-15.pdf
www.jmi.or.jp/qanda/bunrui3/q_060.html
www.livestrong.com/article/521518-palmitic-acid-health-benefits/