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BMPs(骨形成プロテイン)の多彩な役割
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概要
骨形成タンパク質(BMP)は、その名の通り、最初は骨組織や軟骨の分化を誘導、促進する因子として同定されたたんぱく質。
その後、胚、成体の神経系で高度に発現していることが見出され、細胞の生存、増殖、分化制御、海馬歯状回の維持と増殖速度に関わるなど、神経新生プロセスに多くの重要な効果をもつことが明らかとなった。
BMPシグナルの機能異常は神経系疾患への関与が示唆されている。
TGF-βスーパーファミリーのサブグループに属し、20を超えるリガンドを含む。
BMPのモルフォゲン作用
成人の神経原性のニッチ領域ではBMPは拡散が調整されており、近距離でのモルフォゲン(濃度依存的に細胞の分化方向を決定する物質)として作用することがある。
多くのモルフォゲンと同様にBMPの作用は、シグナル伝達が起こる状況によって異なる作用を示す。
BMP阻害因子による調節
BMP阻害による細胞分化
Chordin、Noggin、Neurogenesin-1などのいくつかのBMP阻害因子が海馬のニッチ領域に存在し、細胞外空間でBMPと直接結合することで、BMPシグナル伝達のレベルを局所的に調整(負の調節)すると考えられている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18784300
低すぎるBMPレベルは幹細胞を枯渇させる
成体マウスの海馬では、BMPシグナルレベルを下げると神経幹細胞は顆粒細胞の増殖を一時的に早めるが幹細胞のプールが枯渇してしまい、結果的にニューロンの数が減少する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20621052
ノギン(Noggin)
成人期までにBMPのアンタゴニストであるノギンシグナルがDGに強く集中する。
これはRNA結合タンパク質FXR2によって制御されることが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21658585
ノギン投与は、老齢マウスにおける海馬歯状回BMP6発現の増加と関連して、加齢性の幹細胞喪失を救済する。
www.pnas.org/content/115/45/11625
BMP4の阻害
骨形成たんぱく質4型受容体シグナル伝達の阻害は、オリゴデンドロサイト分化を増強し再ミエリン化を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31028086
加齢によるBMPの増加
加齢によってBMPシグナル伝達の増加が報告されており、このことは老齢動物における神経新生機能低下の一因となる可能性がある。
そのためこの経路の阻害は、加齢による神経新生の低下を抑制する潜在的な標的であることを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4818000/
加齢によるBMP2、4、6の増加
加齢に伴いSMAD1,5,8を介してBMP2,4,6シグナル伝達発現の増加を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15621726/
アルツハイマー病でのBMP6増加
BMP6の増加はアルツハイマー病マウスモデル、ヒトアルツハイマー病患者の両方で増加が示されており、神経新生の減少とも関連している。
アルツハイマー病におけるBMP6レベルの増加は海馬だけではなく、複数の脳領域に起こり得る。
アミロイドβなどのAPP代謝物は受容体の転写調節を介して、おそらくBMP産生の増加に関与し得る。
BMPは急性期における中枢神経系の損傷において神経保護効果を有する可能性があるが、アルツハイマー病のような慢性神経変性過程においては病態へ寄与する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2978735/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20844121/
www.jneurosci.org/content/31/2/371
BMP6のGDNF発現下方制御
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29750278
BMP6のFSH・プロゲステロン阻害
BMP6はFSH受容体の下流のアデニレートシクラーゼ活性を抑制により卵胞刺激ホルモン(FSH)作用を阻害し、プロゲステロン産生を阻害することができる。この阻害作用はメラトニンによって妨げられる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29544628
ヘプシジン調節因子BMP6
体内鉄とBMP6は正の相関を示しており、鉄過剰時にはBMP6発現量が増加しヘプシジン発現を誘導する。BMP6はヘプシジンの内因性調節因子と考えられている。
www.jtnrs.com/sym31/15-O-07.pdf
BMP発現の調整
BMP6発現の抑制
セレコキシブ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26379884
メラトニン
BMP6によって誘導されるSmadシグナル伝達はメラトニンによって抑制される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29544628
ヘパリン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21076043
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25241290
ヘパリン添加はBMP6を阻害する。
www.bloodjournal.org/content/117/3/997?sso-checked=true
鶏血藤 Caulis Spatholobi
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23700338
エリスロフェロン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30097509/
BMP6発現の促進
エストロゲン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22792339
マグネシウム欠乏
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21736832
ケルセチン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27393927
Bactris setosaMart
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26901220
BMP4発現の促進
イカリイン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18295595
BMP9投与
鼻腔内BMP9投与は、おそらくLRP1媒介のアミロイドβクリアランス促進によって、APP / PS1マウスの脳内のアミロイド斑蓄積およびアミロイドβレベルを有意に減少させた。
BMP9は、おそらくGSK3-βの不活性化により、皮質および海馬におけるタウの過剰リン酸化を阻害した。
BMP9はアストロサイトおよびミクログリアの活性化を減弱させた。
さらにBMP9はAPP / PS1マウスの空間、連想学習、記憶障害を救済した。
www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnmol.2017.00032/full
TDP43
TDP-43の誤った発現は、BMPシグナル伝達を阻害する。
www.molbiolcell.org/doi/full/10.1091/mbc.e16-07-0519