アスタキサンチン
概略
βカロテンと類似するカロテノイド
アスタキサンチンは多くの魚介類、甲殻類に含まれるカルテノイド化の赤い色素。
構造的にはβカロテンに似ているが、化学的な違いがある。
心臓への有益な効果
心臓病に有益な効果があるとされており、一日6~8mgの摂取量で、LDLコレステロールの酸化を減少させることで、アテローム性動脈硬化を防ぐことができる。
しかも健常な人には影響を与えないが、糖尿病患者では血糖値を低下させ、高血圧モデルのラットでは血圧を低下させることができる。
強力な抗炎症剤でもあり、ビタミンAよりも多くの抗酸化作用をもつ。
脳に届き効果を発揮
アスタキサンチンのカルテノイド色素は血液脳関門を通過することわかっており、最近の研究で脳の可塑性を増強し、加齢に伴う認知障害を潜在的に予防または改善することが示されている。(Grimmig 2017; Wu 2015)
認知機能への効果
記憶障害を有する高齢者10名のパイロット研究では、1日12mgの藻類アスタキサンチンの12週間の投与により、認知能力試験に改善が認められた。(Satoh 2009)
無作為化対照試験において96名の記憶低下を訴える中年から高齢者への12週間の投与でも、同様に認知能力の改善が示された。(Katagiri 2012)
試験管研究では、アスタキサンチンは、炎症因子の抑制、酸化ストレスの減少など複数の機序によって、アミロイドβ誘発性の損傷を防いでいることが認められている。
www.lifeextension.com/Protocols/Neurological/Alzheimers-Disease/Page-09
効果・効能
一般的な効果
・長寿効果 低用量で肝細胞増殖を刺激することを示唆する。
・心臓血管の健康
・高血圧を低下させる
・内皮細胞への抗酸化剤、抗炎症剤
・赤血球濃度の増加(3~4mgの用量で、12週間後)
・LDLコレステロールの低下
・トリグリセリドの低下(用量依存)
・目の細胞DNAをUVA紫外線から保護
・肌 アスタキサンチンを含むオイルの局所適用で弾力性が形成されシワを減らす。0.094%
・免疫応答の改善(感染症リスクの低下、Tリンパ球、Bリンパ球の増殖活性が低下)
・抗脂質過酸化 細胞膜の内側と外側、脂質二重層の内部で酸化的損傷を保護する。(その点でβカロチンやビタミンCよりも優れている)
神経保護、神経変性関連
・アスタキサンチンはニューロン細胞に入り込みミトコンドリア機能を特異的に調節する。
・アミロイドβの神経毒性を低下
・神経前駆細胞の増殖を促進
・ERKシグナル伝達の調節 > Nrf2の放出 > HO-1転写の増加
・BDNFのアップレギュレーション > シナプスのか組成
・加齢によって増加するグリア産生原線維タンパク質(GFAP)を抑制
・IL-6のダウンレギュレーション、COX-2、NF-κBの抑制、iNOS窒素酸化物を減少.
研究
・慢性的に活性化されたミクログリアに対して、抗酸化と炎症促進因子の阻害作用の二重作用により神経保護効果をもたらす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5352583/
アスタキサンチン レビュー
食品に含まれるアスタキサンチンの含有量はは120~150度で低下。
ph4.0、低い温度での安定性が高い。
アスタキサンチンは、細胞膜の内側と外側から働きかけることで、他の抗酸化剤よりも強い抗酸化能、生物活性を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3917265/
臨床研究
無作為二重盲検 96名の物忘れを訴える中高齢者への投与
CogHealth試験投与量12mg GMLTスコア6mgで改善 短期記憶空間には6mg/day
認知症患者の赤血球に蓄積すると言われているリン脂質ヒドロペルオキシド(PLOOH)がアスタキサンチンの摂取によって有意に低下 40~50%
thedailyhealth.co.uk/astaxanthin-dementia-antioxidant-alzheimers-disease/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22962526
アスタキサンチンのアミロイドβ低下作用
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23166730
www.jstage.jst.go.jp/article/jaam/6/4/6_4_15/_pdf
摂取
6~8mgの範囲での投与量が推奨されている。(理想的な用量はまだわかっていない)
正確に毒性が生じる上限量はわかっていないが、20~50mgまでは許容されている。
カロテノイドであるため、食事(脂肪酸)とともに摂取することで吸収率が大きく高まる。
※喫煙者は生物学的利用率が40%低い。
血清半減期
摂取量によって血清半減期は大きく異なる。10mgで1日以上、100mgでは72時間。
飽和効果
アスタキサンチンの4週間継続摂取により、1mgのアスタキサンチンが体内に蓄積することによる飽和効果がある。
食品のアスタキサンチン含有量 100gあたり
甘エビ 4mg
オキアミ 3〜4mg
紅鮭 3〜5.8mg
車エビ 2.8mg
イクラ 2.5〜3.0mg
釜揚げ桜えび 1.47mg
キングサーモン 0.9mg
銀鮭 0.9〜2.8mg
アトランティックサーモン 0.5〜0.7mg
カラフトマス 0.3〜0.7mg
鮭(通称シロザケ) 0.3〜0.8mg
サーモンの種類によってけっこう含有量は異なってくる。見た目の赤さがそのままアスタキサンチンの濃さと考えて良さそうだ。
食品からの摂取となると紅鮭が一番現実的っぽそうだ。
天然と合成の違い
天然アスタキサンチンは藻類、酵母、甲殻類から、合成アスタキサンチンは石油化学製品から作られる。
合成アスタキサンチンは異性体の比率が1:2で含まれており、抗酸化性能のORAC値が天然と比べ3分の1しかない。異性体が原因で、合成アスタキサンチンは全ての抗酸化能が劣っており天然と同様の抗酸化力を得るには20~30倍必要であるという報告もある。
合成アスタキサンチンはやめて天然アスタキサンチンにしておこう。
まとめ
・認知症患者にとって3本指に入る重要な抗酸化サプリメント
・摂取量は重要 4mg以上 認知症患者は6~12mgは摂取したい。
・蓄積性があり、摂取を持続することで効果を持続的に発揮する。
・食品から取るなら紅鮭一押し、できるだけ赤身のもの。
・養殖のサーモンは避けておく。
・合成アスタキサンチンのサプリメントはやめておく。
・安定性は比較的高いものの冷蔵保存が望ましい。
・併用する食事によって吸収率が大きく変わるため、必ず脂質を含む食事などと一緒に摂る。
サプリメント
認知症予防 4mg
一日1~2錠 朝食後 昼食後
認知症治療 12mg
脂質を含む食事と同時に摂取。