全員に推奨される非薬理学的治療
サウナ(温熱療法)、瞑想などの代替的とみなされている療法は、いずれも認知症への補助療法としての役割だけではなく、根本的な代謝障害へ働きかけることのできる医学的証拠が存在する。また作用メカニズムとしての独自性があり、その他の治療アプローチとは異なる働きもあるため、運動や食事に次いでマルチモーダルな認知症治療を構成する基本要素のひとつとして実行してもらうことが望ましい。
サウナ・温浴
赤外線サウナが難しい場合は、お風呂を利用したHSP温浴 併用も可。これまでの研究から頻度が大きな効果をもたらすことがわかっている。(週4-7回)


www.youko-itoh-hsp.com/hsp%E3%81%A8%E3%81%AF/hsp%E5%85%A5%E6%B5%B4%E6%B3%95/
瞑想・呼吸法
介護者と患者の生活は密着しており、瞑想を患者と介護者が一緒に行うことで、トレーニングの有益な効果を高めることができるかもしれない。現在の研究では、認知症患者さんと介護者を対象としたマインドフルネスに基づく介入の理論的根拠は支持されており、二人一組での実行が可能であり、患者さんのウェルビーイング(幸福)を改善することが示されている。

初心者、高齢者におすすめ キルタンクリヤ瞑想

呼吸法

ヨガ
ヨガの有益な医学的・心理学的効果に関する臨床研究は増えてきており、ヨガの生理学的効果としては、心拍数や血圧の低下、筋力の増加などが挙げられる。さらに、抑うつ状態、不安状態、ストレス状態の改善および痛みの状態の緩和は、いくつかの研究で実証されている。
ほとんどのヨガは身体的なポーズ、呼吸法、瞑想の3つの要素を含んでおり、それぞれが異なる形で脳へ貢献していることが示されている。ヨガはスタイルによってそれら3つの要素が異なるため、脳への影響も異なる可能性がある。


費用対効果の高い補完的アプローチ
認知症への補助的な治療アプローチには実に様々な方法が提案されており、そのすべてを実行することはできない。一般的には氾濫する情報の中から、なんとなくといった好みや企業の宣伝などの中で選択されてしまいがちだが、効果量や信頼性を重視することは当然として、費用や時間、手間暇などの実行コストの低さも選択する上で重要な要素となる。
ここで紹介する代替的アプローチは、古くから研究または利用されており一定の評価を得ているもの、そして、その中から(初期の準備段階を除き)工夫次第で維持費用や毎回の実行の手間などを最小限にすることが可能、かつ比較して得られる効果が大きいものをピックアップしている。
回想法
回想療法では、写真や過去の身近なもの、音楽や映画などの有形の補助具を用いて、過去の出来事や活動、記憶を呼び覚まさせる。認知症の人にとって、最近の記憶(例えば昼食に食べたものなど)を思い出すことは難しいかもしれないが、個人的に重要な記憶は簡単に思い出すことができる。
エビデンスは、回想療法が認知症の人の気分を改善する効果的な手段であることを示唆している。全体的に、回想療法は認知機能と抑うつ症状に対して中程度の効果を示している。

ある回想法の研究では、女性と男性で意味のある記憶イベントが非常に異なることを発見しており、女性は結婚式、子供の世話、食事などの家族の出来事を思い出す傾向があったのに対し、男性は政治的な出来事、兵役、仕事を思い出す傾向があった。そのため、回想法のコンテンツは男性向け、女性向けに合わせて開発するよう提案されている
bmcgeriatr.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12877-020-01563-2
デジタルフォトフレームを利用した回想法
過去の写真をすべてデジタル化して、デジタルフォトフレーム(またはタブレットなど)にデータを入れ、自動再生する。
日記
「いいこと日記」を初期のうちに始めることで、認知機能の改善とともにいい思い出が残っていき、介護疲れでギスギスしやすい介護者、家族との関係を暖かいものにしてくれる可能性がある。また、介護者さんの「いいこと日記」も、介護において(または介護を終えて)心が砕けそうになったときに支えてくれる命綱になる可能性もある。

音楽リスニング
認知症患者さんは音楽を楽しむことができ、言葉によるコミュニケーションが途絶えた後期から重度の段階でも、音楽に反応する能力が維持される可能性があることを示すエビデンスが増えている。いくつかの研究では、BPSDの治療に音楽が有効であることが報告されている
- 音楽療法は即時的な効果を示す。
- 同じ曲であっても患者さんによって効果的な影響と否定的な影響がある場合がある。
- 第三者が良いと考え選択した曲(クラシックや自然音など)、または強制的に聞かせた場合には効果が示されていない。
- 個人の好みに合わせた曲、個別化されることが鍵。プレイリスト作りには本人に確認をとりながら時間をかけて作製する。
- 懐かしい馴染みのある音楽が一般的に良い。悲しい音楽がより良い可能性がある。
- ヘッドフォンとスピーカー効果への違いに有意差は示されていない。
- 音楽鑑賞はQOLにプラスの効果をもたらし、歌うことはまた、短期記憶と作業記憶、そして介護者の幸福を高める可能性がある。ただし介護者の負担が高まり頻度が低下するため、より実行が容易で毎日行える音楽リスニングが結果としては効果が上回るかもしれない。
- 優秀な音楽療法士がついた場合、有益な効果を得られる可能性があるが決定的ではない。+費用対効果の問題


好みで選ぶ代替療法
以下の項目も伝統的に認知障害を抱える高齢者に用いられてきたアプローチであり、医学的研究においても一定の支持が存在する。ただし上記とは対照的に、実行に際して多少のコストや手間暇などがかかるため、患者さん介護者さんの嗜好性に基づき実行してみると良いだろう。また変化を取り入れる目的として(重要)時々取り入れてみても良いかもしれない。
マッサージ、タッチ
エビデンスは、マッサージやタッチが認知症の高齢者をリラックスさせ、歩行、徘徊、介護に抵抗するなどのBPSDを軽減し、食欲、睡眠、コミュニケーションの問題を改善し、認知機能の低下をある程度抑制することを示唆している。
手と足のマッサージ
文献(Field 2014)によると、適度な圧力またはストレッチを用いた皮膚のメカノレセプターの刺激は、ストレスホルモンであるコルチゾールレベルを減少させることができ、様々なストレス調節機構に作用するるようである。メカノレセプターは手と足に特に多く見られる。[R][R]
フットマッサージが唾液性コルチゾール(sC)レベルの低下、痛みの軽減、中等度の認知障害を持つ高齢のがんサバイバー患者の気分の改善に有意な効果があること示されている。[R]
アロマセラピー
エッセンシャルオイルの潜在的な効果は様々で、リラクゼーションや睡眠の促進、痛みの緩和、抑うつ症状の軽減などがある。アロマテラピーはBPSDや睡眠障害に対処し、意欲的な行動を刺激するために用いられてきた。



アートセラピー
認知症患者は視覚的なアートを制作して鑑賞することができ、認知機能が低下していても美的嗜好は安定していることが示唆されている。
事例報告、観察研究、小規模臨床試験、逸話的証拠からアートセラピーは集中力を高め、楽しみを得ることができ、BPSD、社会的行動、自尊心を改善し、認知症の人の幸福感に寄与し、これらの効果は長期的に持続する可能性があることが示唆されている。
音楽演奏
睡眠時無呼吸症候群
https://alzhacker.com/didgeridoo-playing-as-alternative-treatment-for-obstructive-sleep-apnoea-syndrome-randomised-controlled-trial/