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レビー小体型認知症・パーキンソン病・多系統萎縮症
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概要
脳に必要なαシヌクレイン
αシヌクレインは脳が正常に機能するために重要な役割をもつタンパク質。その機能はよく理解されていないが近年多彩な作用を有することが報告されている。
しかし、αシヌクレインの過剰な脳への蓄積は、パーキンソン病、レビー小体型認知症などの神経変性疾患を引き起こす要因となると考えられている。
αシヌクレインの役割
αシヌクレインは、一般に神経細胞の軸索終末に蓄積するシナプス小胞の供給を維持する役割を果たしていることが示唆されており、そのことからドーパミンなどの神経伝達物質の放出の調節に関わる可能性がある。
また細胞骨格を維持するための微小管構造の動きにおいても役割を果たす可能性がある。
αシヌクレインの部位
αシヌクレインは心臓、筋肉などの組織には少量存在し、脳に最も豊富に存在する。
αシヌクレインは神経細胞内のサイトゾルの約1%を占めており、主に新皮質、海馬、黒質、視床、小脳で発現されている。
ミトコンドリア
αシヌクレインはまた、嗅球、海馬、線条体、視床ニューロンのミトコンドリアにも局在しており、細胞質ゾルにおいても豊富に存在する。
大脳皮質と小脳では細胞質ゾルには豊富に存在するが、ミトコンドリア内のαシヌクレインは少ない。
ミトコンドリア内膜に存在するαシヌクレインは用量依存的に複合体Ⅰ活性を阻害することが示されており、ニューロン変性の潜在的因子であることが示唆される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19429081
αシヌクレインの役割
- 脂質酸化からの保護・膜脂質の組織化
- 血糖値の調節
- カルモジュリン活性の調節
- 分子シャペロン
- 多価不飽和脂肪酸レベルの維持
- 小胞の抗酸化剤
- 神経分化
- ドーパミン生合成の調節
- 小胞輸送の調節
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5122110/
αシヌクレインと相互作用するタンパク質
チューブリン
環境毒素がチューブリンの微小管への集合を破壊することによりαシヌクレイン凝集が引き起こされる可能性がある。
パーキン
LRRK2
ドーパミン受容体
シンフィリン
ホスホリパーゼ
ユビキチン
αシヌクレイン凝集阻害剤
カフェイン
αシヌクレイン凝集防止
カフェインはすべてのアデノシン受容体に拮抗し、αシヌクレインの凝集を防止する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4962431/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26167732
摂取量と保護効果の比例
メタアナリシス パーキンソン病リスクの減少とカフェイン摂取量には直線的な用量依存関係がある。コーヒー1日3杯で保護効果が最大化した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23879665/
朝と昼摂取 一回半錠からスタート、コーヒーと併用または食後
昼以降は摂取しない。
ミリセチン/Myricetin
αシヌクレインの凝集を阻害
ミリセチンおよびロズマリン酸は、αシヌクレインのオリゴマー化および二次凝集物への集積を阻害し、αシヌクレインの神経毒性を低下させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26016728
食品に多く含まれるミリセチン
ミリセチンは、ぶどう、ベリー、果物、野菜、ハーブなど多くの植物に含まれるフラボノイド。クルミ、赤ワインに豊富に含まれている。
食品に含まれるミリセチン(100g中)
14.7mg キャベツ
9.74mg サツマイモの葉、生
8.08 mg パセリ、生
6.25mg ブロッコリー
2.60 mg ブロードバン、未熟種子、生
1.47 mg ブルーベリー、冷凍、無糖
分解されやすい
ミリセチンは高温に弱く、ph条件に敏感であるため分解の影響を受けやすい。
加工食品や保存によって利用可能な濃度に影響を及ぼすことが知られている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4772053/
一日1~2錠 朝または昼
ロズマリン酸/Rosmarinic acid
αシヌクレイン原繊維の形成阻害効果 強い順 in vitro
1. タンニン酸 = ノルジヒドログアレア酸 = クルクミン = ロスマリン酸 = ミリセチン
2. > ケンペロール=フェルラ酸
3. >(+) – カテキン=( – ) – エピカテキン
4. > リファンピシン = テトラサイクリンの順
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16524383/
ロズマリン酸含有量(100g中)
乾燥セージ 610mg
乾燥オレガノ 154mg
乾燥ペパーミント 1734mg
乾燥ローズマリー 987mg
乾燥スペアミント 900mg
乾燥バジル 308mg
一回二錠 朝、昼摂取
テアフラビン(発酵紅茶成分)
αシヌクレイン原繊維形成の阻害
発酵紅茶の主要成分であるテアフラビンはアミロイドβおよびαシヌクレイン原繊維の形成を阻害。
テアフラビンはEGCGとは異なる作用でアミロイドβフィブルリルを非毒性の凝集体に改変する。EGCGと比較して酸化の影響を受けにくく、酸化条件下では効力が増した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22054421
紅茶でパーキンソン病発症リスクが減少
シンガポールの疫学調査 緑茶の摂取はパーキンソン病のリスクとは無関係であったが、紅茶の摂取はカフェイン以外の成分が、パーキンソン病の発症リスク低下と相関していた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18156141
クルクミン
クルクミンの多彩な効果
パーキンソン病におけるクルクミンの複数の薬学的可能性
www.eurekaselect.com/112659/article
αシヌクレインの毒性緩和
クルクミンはαシヌクレイン誘導性の毒性を緩和し、細胞内の活性酸素種を低下させ、細胞をアポトーシスから保護する。in vitro
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20433710
抗炎症・抗酸化・鉄沈着防止
クルクミンはパーキンソン病動物モデルの炎症促進性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、およびIL-1α)、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ならびに内在性アポトーシスの調節分子のLPS誘導性アップレギュレーションを阻害した。
グルタチオン系の有意な改善ももたらし、ドーパミン作動性ニューロンにおける鉄沈着を防止した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29027056
バイカレイン(Scutellaria baicalensis)
コガネバナ(Scutellaria baicalensis)の根に含まれるバイカレイン(baicalein)は、インビトロでニューロンのアミロイド凝集を強く阻害し、アミロイド沈着物を溶解する。
強力な抗酸化作用および抗炎症作用を発揮し、抗けいれん、抗不安薬および軽度の鎮静作用も示す。
またバイカレインとオロキシリンAは加齢および神経変性の動物モデルにおいて、認知および自閉症の機能を著しく向上させた。
さらにもうひとつのフラボン、wogoninが脳組織の再生を刺激し、神経前駆細胞の分化を誘導することが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21222632
αシヌクレインのオリゴマー形成阻害
バイカレインはin vitroでαシヌクレインモノマーのオリゴマー形成を防ぐ。
バイカレインはパーキンソン病モデルマウスにおいて、 アルファシヌクレインオリゴマーの形成を部分的に阻害し蓄積の進行を防止する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27425033
リグナン化合物(ホノキオール)
リグナン化合物ホノキオール(マグノリア樹皮/Magnolia Officinalis に含まれる成分のひとつ)は天然化合物の中で異常型αシヌクレイン(αS A53T)に対してもっとも高い結合スコアを示した。ミリセチンも同様の結合作用を示した。in vitro
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5983024/
en.wikipedia.org/wiki/Honokiol
その他
サフラワー/Safflower
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26906725
NDGA(Nordihydroguaiaretic Acid)
チャパラル/Chaparral
南米の砂漠に生息するクレオソートブッシュに含まれるポリフェノール
スクテラリン(タイパンヘビの毒酵素)
ヘビ(タイパン)の毒から単離された酵素
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014579311002122
スクアラミン(アイザメの肝臓酵素)
スクアラミンがin vivo、in vitroにおいて、初期段階での脂質誘導性のαシヌクレイン凝集を有意に阻害し毒性を劇的に低下させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5307473/
ヘスペリジン
ケルセチン
ルチン
オートファジーによるαシヌクレインの除去
アルファシヌクレインクリアランス
αシヌクレインの排出(クリアランス)が、レビー小体型認知症、パーキンソン病の鍵
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23015436/
αシヌクレインのクリアランスは、凝集形態により異なり
・シャペロン媒介性オートファジー、
・マクロオートファジー
・ユビキチン-プロテアソーム系
モノマー、オリゴマー、凝集物、沈着物によって、それぞれ適切なオートファジーによる分解除去を必要とする。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25874605
マクロオートファジーへの抵抗性
αシヌクレイン凝集体は、マクロオートファジーによる分解に抵抗性を示す。
αシヌクレイン凝集体は、オートファゴソームクリアランスを減少させることによって全体のマクロオートファジーを損なう。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23532841
化合物(一部)
ラパマイシン
オートファジー刺激剤ラパマイシンによってαシヌクレインのクリアランスが増加
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12719433
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20174468
トレハロース
αシヌクレインに対するトレハロースの効果 (A53Tα-Syn)
トレハロースはA53Tα-Synのクリアランスを促進するが、WTα-Syn(野生型)は除去しない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22707286
カギカズラ 釣藤鈎(ちょうとうこう)
東アジアで伝統的に神経疾患に使われていた中国漢方薬(Isorhynchophylline)
抑肝散にも含まれる。
www.tokyo-shoyaku.jp/f_wakan/wakan2.php?id=163
オートファジー誘導剤 分化したヒトドーパミン作動性ニューロンにおける野生型およびA53Tαシヌクレインの発現レベルを低下させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22113202
www.asianscientist.com/2011/07/pharma/chinese-herb-uncaria-rhynchophylla-parkinsons-disease/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24522518
αシヌクレインのオリゴマー化
DHA/レチノインX受容体
in vitro分析では、DHAは、レチノインX受容体(RXR)の内因性リガンドであり、RXRを介してα-シヌクレインのオリゴマー化が促進することが示唆されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11981034/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11118147/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15073272/
ジスキネジアの緩和
重盲検プラセボ対照試験 遅発性ジスキネジア発症の統合失調症患者への12週間のEPA2 g /日投与では一過性の効果が示された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16632329/