アセチル-L-カルニチンの効果と研究
概要
カルニチン(アセチル-L-カルニチン)は、ミトコンドリアの脂肪を燃焼を助ける化合物。肉やミルクなどに含まれる天然のアミノ酸、牛乳も飲まない厳格なベジタリアン(ビーガン)には不足傾向がある。
必須アミノ酸であるリジンとメチオニンから体内で合成することができる。生合成にはヒドロキシラーゼ酵素であるビタミンCが必要であるため、ビタミンCが不足すると、Lカルニチン生合成を損なう可能性がある。
加齢による減少
カルニチンの血清レベルは70歳までは増加する傾向があり、理由はよくわかっていないがその後減少していく。若年者は体内に十分なカルニチンを保持しているため、カルニチンを摂取しても高齢者ほどの効果は得られない。
吸収
Lカルニチンはトリメチルアミンで代謝され、その後腎臓で再吸収される。排出は腎臓。1~6gのカルニチンサプリメントの生物学的利用能は14~18%、食品は54~87%
血清
500mgのアセチル-L-カルニチン摂取後の血清半減期は4.2時間
2gの液体L-カルニチン投与では血清半減期は60分前後
効果・効能
効果中
- アンモニアを減少させる。
- 精子の質を上げる
- 間欠性跛行症状(歩くと足に痛みやしびれが生じ、一時休息で再び歩行できる症状)を減少させる。
- 自閉症の症状を軽減(高用量 50mg/kg)
効果小
- 血糖値の低下
- 運動誘発性の酸化を減少
- 脂肪の減少
- 抗疲労
- インスリン感受性を高める
- 乳酸産生の減少
- 脂質過酸化反応の減少
- 筋肉中のカルニチン濃度を高める。
- 筋肉の損傷を低減する。
- 肝性脳症の治療
- 小児ADHDの減少
- アディポネクチンの増加
- アルコール依存症の再発率低下
- 嫌気性運動能力の増加
- アンドロゲン受容体密度の増加
- 抗酸化酵素SOD、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼの増加
- 注意力の増加
- 血流の増加
- 血圧の低下
- 認知能力の改善
- 心拍数の低下
- IGF結合タンパク質の増加
- 抗炎症
- インスリンの減少
- 除脂肪体重の増加
- 肝臓酵素の低下
- 筋肉中の酸素低下
- 筋肉痛の減少
- 酸化窒素
- プラズマ硝酸塩の増加
- 運動速度の知覚的な低下
- 線維筋痛症症状の軽減
- 甲状腺機能亢進症の減少
- 多発性硬化症の軽減
- 尿酸値の減少
- 勃起の改善
相互作用する栄養素
αリポ酸
アセチル-L-カルニチン単独、高用量では代謝に多くの酸化が生じるが、αリポ酸併用で酸化を抑制する。用量依存性
コリン
コリン、カルニチンそれぞれ単独ではアセチルコリン産生を刺激しないが併用することで、アセチルコリン産生を増強する(ラット18%)
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンのひとつであるゲニステイン、そしてアセチル-L-カルニチンはそれぞれβ酸化の律速酵素(カルニチンpalmoylトランスフェラーゼ1)を増加させることができる。組み合わせることで相乗的に脂肪燃焼を促進させることができる。
COQ10
心不全の人ではCOQ10と、アセチル-L-カルニチン両方が不足している証拠があり、ふたつの組み合わせがQOLを高め、炎症を低下させることができる。
カフェイン
L-カルニチンとカフェインをラグビー選手が摂取すると、それぞれの薬単独よりもフィジカルな持久力が大幅に改善され、相乗効果を見せる。
認知症・神経保護メカニズム
アルツハイマー病の進行とともに、体内のカルニチンレベルは低下する。そのため、アルツハイマー病患者ではアセチル-L-カルニチンの補充が利益をもたらす可能性がある。
アセチルコリン
アルツハイマー病で減少が見られる神経伝達物質アセチルコリンは、カルニチンの消費によって産生される。
ミトコンドリア
L-カルニチンは、ミトコンドリアのタンパク質数と密度の増加に関与している。ラットの飲料水にカルニチンを入れると骨格筋でのミトコンドリア生合成の増加が一ヶ月後に生じた。
エネルギー代謝
アセチルLカルニチンの経口補給は、一部の脳領域(座位核、コルチコル扁桃体)において、グルコース及びクレアチンレベルを増加させる。
神経保護
アセチル-L-カルニチンは、アミロイドβ神経毒性からの保護効果をもつ。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12199155
用量依存的にAβ42誘導性細胞毒性、タンパク質酸化、脂質過酸化およびアポトーシスを有意に弱めた。
グルタチオン・ヒートショックプロテインの増強
ニューロンへのALCARの添加は、未処理対照細胞と比較して、細胞のGSHおよび熱ショックタンパク質(HSP)レベルを上昇させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16634066
TMAOの天然阻害剤
吸収されたコリンは体内に吸収されベタインに代謝される。吸収されたコリンは腸内細菌の栄養となり腸内細菌によりトリメチルアミン(TMA)が産生される。
TMAが体内に吸収されると肝臓に運ばれ、肝臓酵素によってTMAOに代謝される。TMAOはさまざまな疾患に関わっており動脈硬化を悪化させる。
www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151217130454.htm
認知機能への効果
慢性疲労
慢性疲労を伴う高齢者男女(平均年齢77歳)ALC2gを一日二回摂取、180日継続
筋肉痛、運動後の長期疲労、睡眠障害、精神的疲労、身体的疲労、機能的状態など全般的に慢性疲労を改善、MMSEが3.4ポイント上昇
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17658628
口頭での流暢性
ランダム化比較試験 アセチルレボカルニチンを2.5g/日3ヶ月、その後3g/日3ヶ月摂取、神経心理学的なテストには差がなかったが、口頭での流暢性タスク、数字の読み上げ、特定のタスクで悪化の進行が低い傾向にあった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1444880
短期記憶・反応速度の低下抑制
ランダム化比較試験 アルツハイマー病患者 統計的有意性には達しなかったが、コンピューターテストによる反応時間の悪化が少ない傾向、短期記憶についていくつか有益な効果があることを示唆している。
www.tandfonline.com/doi/abs/10.1185/03007999009112690
デメリット
腸内細菌叢への影響・TMAOへの影響
患者のカルニチン濃度の増加は、高いTMAO(トリメチルアミン-N酸化物)レベルを有する患者においてのみ、心臓発作、脳卒中など心血管疾患のリスクが増加した。
ベジタリアンではTMAOレベルが有意に低く、大量のカルニチンを消費しても、TMAOレベルは有意に増加しなかった。カルニチン多く含む食事は、腸内細菌叢がカルニチンを好む微生物の組性にシフトさせる。
nutritionreview.org/2013/11/red-meat-linked-to-heart-disease-carnitine-and-tmao/
肝機能と腎機能
ラットのへのLカルニチン投与(ヒト換算3~6g)に伴う、肝臓での活性酸素種の産生の増加、肝機能および腎機能の低下。NLRP3活性。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25669660
甲状腺ホルモンの阻害
L-カルニチンは甲状腺ホルモン作用の末梢アンタゴニストである。L-カルニチンは、トリヨードサイロニン(T3)およびチロキシン(T4)の細胞核への侵入を阻害する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15591013
サプリメント
慢性疲労、脳への神経学的な効果がある化合物の形態はアセチル-L-カルニチンであり、その他のフォームはそれほど顕著な効果はない。
推奨摂取量
リコード法で推奨されている一般的な用量 500mg(0.5g)
食後、脂質を含む食事の後を推奨
多くの臨床研究論文ベースでは、一日2~3gで認知症患者への有意な改善を示している。リコード法では、摂取量が500mgとされている。(TMAOとの関連?)
カルニチンはT3、T4両方の細胞への侵襲を阻害することから、甲状腺ホルモンが低下している場合は控えめに摂取したほうが良いかもしれない。