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亜鉛とアルツハイマー病
リコード法
推定では20億人つまり世界人口の4人に1人が亜鉛欠乏状態にある。特に高齢者の亜鉛不足は深刻で、アルツハイマー病の発症につながっている。
アルツハイマー病患者の多くは血清亜鉛が低く銅が高い。亜鉛:銅の比率で銅が高すぎる。
亜鉛と銅の正常な比率は1:1であり、血清値は亜鉛、銅それぞれ100mcg/dL
特に3型のアルツハイマー患者は低い亜鉛血清値が見られる。
血清または赤血球の亜鉛値が75mcg/dl以下であり、亜鉛と銅の比率で銅が1.3を超える場合は認知機能の低下と関連する。βアミロイドの切断(プロセシング)は亜鉛に反応する。
アルツハイマー病への亜鉛の作用
アルツハイマー病の金属仮説
高齢のアルツハイマー病患者では、脳の鉄レベルの増加、銅と亜鉛の蓄積が特徴的である。亜鉛および銅の両方が、アミロイドβの凝集を促進する。
銅および鉄はアミロイドβの神経毒性酸化還元活性を促進し、アミロイドβペプチドから安定したオリゴマーへと酸化誘導する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18625454
亜鉛パラドックス
アルツハイマー病において、亜鉛は神経保護的側面と神経変性の可能性があり、脳に固有の複雑な疾患的ストレス要因によって決定される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12505647
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12505647
タウの放出 GSK-3βのリン酸化を増加
高い亜鉛濃度が微小管からのタウの放出を誘導する。
また高い亜鉛濃度は、GSK-3βのリン酸化を増加させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19111579
亜鉛濃度の重要性
低い濃度の亜鉛は、還元条件下での野生型タウのフィブリル形成を亜鉛なしと比べて劇的に加速する。しかし、より高い濃度の亜鉛は、野生型タウが還元条件下で顆粒凝集体を形成するよう誘導する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19826005
マウスの記憶障害を遅延、BNDFを増加
ADマウスへの亜鉛投与は、海馬のアミロイドβ及びタウを強力に現象させ、海馬損傷による記憶障害の進行をを大きく遅らせた。またBDNFを大幅に増加した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21368864
アルツハイマー病における亜鉛欠乏
亜鉛血清濃度は加齢とともに減少する。亜鉛輸送体であるZnT3は、主に海馬や新皮質などのグルタミン酸作動性シナプスに局在し、シナプス伝達可塑性の調節に主要な役割を果たしている可能性が高く、高い認知機能と関連する。
ZnT3トランスポーター濃度は、加齢によって減少し、アルツハイマー病によってさらに減少する。また、細胞外のアミロイドプラークがニューロンによって利用されている亜鉛と結合し枯渇させる。
その他のメカニズムとして、アルツハイマー病の多くの原因因子によって活性化されるカルシニューリンを亜鉛は阻害するが、亜鉛欠乏によってニューロンのカルシニューリンが過活性され、ニューロンの機能低下を招き、損傷を増加させることでアルツハイマー病の認知機能喪失につながることが考えられる。
過剰の銅はその毒性がアミロイド班を生じさせ、その拡大によって亜鉛を補足することにより亜鉛欠乏をもたらす可能性がある。
アルツハイマー病患者の亜鉛ホメオスタシスの回復は有益であるという仮説への支持。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4175048/
亜鉛摂取について
亜鉛不足をもたらすフィチン酸
玄米など多くの食品に含まれるフィチン酸は、フィチン酸塩としてリン保持する。
リンは亜鉛と強力に結合してしまうため、血流に入らず体内から排除されてしまう。
玄米などのフィチン酸を含む食品を多く食べる人は亜鉛不足を誘発しやすい。
フィチン酸塩を多く含む食品
小麦ふすま、米ぬか、全粒小麦、トウモロコシ、ライ麦、オート麦、玄米
大豆、レンズ豆、キドニービーンズ、ピーナッツ、
じゃがいも(調理加熱してもフィチン酸は残る)
玄米のフィチン酸を減らす方法
フィターゼはフィチン酸を分解する酵素。
※玄米にはフィチン酸の量に影響を与えるほどのフィターゼが含まれていない。
玄米、豆、ナッツなどを水に漬ける、発芽させることでこのフィターゼが活性化され、フィチン酸を分解してくれる。
米、豆、生ナッツ
- 24時間の浸水で50%のフィチン酸が減少
- 発芽させることで75%のフィチン酸が減少
また、マーケットで売られているいくつかの加工食品はフィターゼが破壊されている。
これは特定の加工食品がより多くのフィチン酸塩を含有することになり、亜鉛をキレートしてしまうことにつながる。
加工食品経由での穀物類、豆類摂取は亜鉛欠乏をもたらしやすい。
healthyeating.sfgate.com/foods-high-phytates-3307.html
摂取方法
一日15mg~30mg 最大で50mgを超えないこと。(一般推奨量)
食事に多くのフィチン酸を含む場合、他の有益なミネラルを積極的に摂取することを考えている場合には、食事の時間を外して摂取した方がよい。
相互作用
アスタキサンチン
アスタキサンチンと亜鉛の同時摂取が視床下部の変動遺伝子数を増加、マウスのノンレム睡眠を増加させる。
www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0873.html
グルタミン・ビタミンA
グルタミン・ビタミンA、亜鉛の複合摂取は子供の腸のバリア機能を改善した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24714829
ビタミンC
ビタミンC1000mgと亜鉛10mgの同時摂取は、風邪をひいた患者の鼻呼吸持続時間を有意に減少させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22429343
マグネシウム・亜鉛
夜間のメラトニン、マグネシウム、亜鉛の夜間投与は、長期療養施設滞在の原発性不眠症患者の睡眠の質と生活の質の改善を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21226679
亜鉛キレートタイプ 各種
カルノシン亜鉛 Zinc Carnosine
またピロリ菌、薬物使用などによる胃潰瘍の原因に対して保護効果をもつ。ただし価格は他のキレートタイプ亜鉛と比べると高目。
医薬製剤として販売されているプロマックD錠、ポラプレジンクは、これに該当する。胃潰瘍、亜鉛欠乏症に伴う味覚障害、嗅覚障害がある場合は、病院での処方してもらえるかもしれない。
オプチジンク/L-モノメチオニン亜鉛 Opti-Zinc /Zinc L-monomethionine
無機亜鉛とメチオニンと結合させたキレート亜鉛
吸収力に優れたフォーム、栄養状態としてビタミンB12とグリシンが不足していないことが前提カルノシンタイプより安価。胃腸に問題がなければこれでOK
または、吸収率は劣るが食後に摂取すれば、胃腸の心配はしなくてすむ。
ピコリン酸亜鉛 Zinc Picolinate
ピコリン酸と亜鉛を人工的に結合させたキレート亜鉛
※ピコリン酸はナイアシンの異性体
グルコン酸よりも吸収力が高いことも確かめられている。コストパフォーマンスが高い。亜鉛欠乏や亜鉛摂取で胃腸に違和感がなければこれで十分かも。
グリシン酸亜鉛 Zinc Glycinate
グリシンと結合したキレート亜鉛。グリシン自体の薬理効果は少量のため期待できない。
グルコン酸亜鉛よりも吸収率が高く、グルコン酸亜鉛との比較で有意に血清亜鉛濃度を上昇させる。グリシン酸亜鉛もコスパの良い亜鉛といえる。変形関節症と関連する痛みや腫れの軽減にバイオフラボノイドと組み合わせて処方されることがある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16684142
www.incaparina.com/articulos_cientificos/zinc-study-2015.pdf
オロチン酸亜鉛 Zinc Orotate
オロチン酸にキレートは細胞膜への通過に優れており、容易に吸収される。抗酸化特性も高い。オロチン酸が筋肉の修復に役立つかもしれない。妊娠中の女性は避けておいたほうがいい。
クエン酸亜鉛 Zinc Citrate
平均的な吸収力、フィチン酸の多い食事を摂取すると、吸収を妨げられてしまう可能性がある。グルコン酸亜鉛と同程度の吸収力があるが、苦味はより少ない。
グルコン酸亜鉛 Zinc Gluconate
日本で売られている多くの亜鉛サプリはこのタイプ。トローチや点鼻薬などの風邪薬としてよく使用される。
食品から得られる亜鉛と同様、生体吸収率が悪い。溶解性が高く胃腸への刺激は穏やか。
硫酸亜鉛
水溶性で体に吸収されやすいが、胃腸への刺激が強い。亜鉛欠乏症の予防に役立ち、にきびに重症度を軽減することが示されている。
酸化亜鉛 Zinc Oxide
火傷や軽度の皮膚の悪化、日焼け止めなどに使われる。
人体に吸収されにくい。経口の研究データは少ない。
参考サイト
www.globalhealingcenter.com/natural-health/types-of-zinc/
fixyourgut.com/the-magic-bullet-supplement-for-stomach-issues-zinc-carnosine/