認知症における甲状腺ホルモン(覚書)

概要

免責事項をお読みください。

リコード法

適切なホルモンの働きは適切な認知機能にきわめて重要。アルツハイマー病患者では甲状腺ホルモンが欠乏していることが多い。

通常の甲状腺ホルモン治療ではT4が使われる、しかし効果的にT3に変換されるかどうかわからない。そのためT3とT4を組み合わせたもの(armour thyroide,NP thyroide,nature thyroid,他)を摂取することが望ましい。

甲状腺ホルモンの産生にはヨウ素が必要であるため、ヨウ素値も調べてみる。ヨウ素が低値の場合は、ヨウ素の錠剤またはサプリメントを摂取するか、昆布などのヨウ素を含む食品を摂取する。

病院での一般的な検査は甲状腺刺激ホルモン(TSH)しか行われない。しかしTSHだけの検査では、甲状腺ホルモンが最適値となっているかどうかわからない。そのため、フリーT3、フリーT4、リバースT3もチェックする必要がある。

リコード法目標値

TSH    2.0 μIU / ml 未満(一般的な正常値は0.4~4.2)

TSHが2.0を超えている場合は、以下の検査も追加で受ける。

フリーT3  3.2~4.2 pg/ml

フリーT4  1.3~1.8 ng/ml

リバースT3 20 ng/dl以下

フリーT3×100倍:リバースT3比率 20以下

体温計による家庭での簡易診断

精度の高い温度計で、朝起きてすぐベッドの中で”10分間”脇にはさんで体温を測る。

摂氏36.5~36.8度の間であるべき、もしそれより低ければ甲状腺ホルモンが低い可能性がある。

「The End of Alzheimer」

甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)

thyrotropin-releasing hormone

picture of Hypothalamic-pituitary-thyroid axis

online.epocrates.com/diseases/1121/Thyroid-function-testing

TRHは主にHPT軸の主な調節因子として知られている。しかし、HPT軸活性とは無関係に、種々の中枢神経に作用をおよぼす。

加齢に伴い、TRHの産生、発現活性の低下が実証されており、アルツハイマー病、パーキンソン病を含む老年性の神経変性疾患にも関与することが示唆されている。

TRHは、脳脊髄および脊髄のニューロンにおける栄養因子として、酸化ストレス、グルタミン毒性、カスパーゼ誘導性細胞死、DNA断片化、炎症に対する神経保護剤としての役割が認識されはじめている。

TRHの役割

・甲状腺ホルモン放出

・プロラクチン、成長ホルモンの放出を刺激

・概日リズムへの影響

・HPT軸活性と関連しない中枢神経への作用(気分の調整、覚醒、認知、不安、運動の協調)

・膵臓のインスリン吸収を増加させる。

・胃腸管活動を活性(運動性、酸の分泌)

・毛髪の成長

・pro-TRH遺伝子発現は中枢神経におけるニューロンのアポトーシス予防への役割

・ミトコンドリアタンパク質の発現(抗アポトーシス効果)

・グルタミン酸、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、アセチルコリン、GABAなどの神経伝達物質への干渉、(エピネフリン、ドーパミン、セロトニンのフィードバックによるTRH放出、特にドーパミンはTRH活性を機能的に調節する)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3817016/

TRH産生

TRHは視床下部の視床下部外側領域、特に脳室内核および前室傍核で合成される。

髄質では、甲状腺淡蒼球、甲状髄甲状腺およびパラピラミル領域の核でも、TRHの合成が認められる。

海馬のごく一部の領域でTRHが局所的に産生される可能性がある。

TRHの発現は、視床下部の室傍核(PVN)に存在するpro-TRHmRNAレベルに反比例する。その調節はT4ではなくT3によって効果が発揮される。

TRHの半減期は4~5分

加齢による変化

加齢によって脳のTRHレベル、T4レベルは顕著な減少を示す。

TRH刺激によるTSHの応答の低下、T4の分泌低下、減少も加齢にともなって観察されている。

アルツハイマー病

ラットへのTRH投与は、皮質および海馬でアセチルコリンを放出させることができる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1901747/


ラットへのTRHの投与は脳血流を増加させ、海馬においてアセチルコリンの代謝速度を加速させることができる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8835640/


ラットへのTRH投与は、GSK-3β活性の阻害を介して神経保護効果を示すことができる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15505375/


TRHアナログリガンドはインビトロでアミロイドβ毒性に対する保護効果を発揮する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15907950/


TRH投与は炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6を減少させ、脂質過酸化を減弱させることができる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21515320/

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

甲状腺ホルモン濃度を感知するセンサーが下垂体のTSH産生細胞に存在する。fT3やfT4が一般的な正常範囲にあっても、その人のセンサーにより不足していればTSHは上昇し、不足していればTSHは減少する。

つまりfT4が正常範囲であってもTSHが高値だったり低値だったりする。わずかにfT4が下がってもTSHは上昇し、わずかにfT4が増加してもTSHは減少する。

そのため、TSHは正常値である場合は、fT4、fT3も正常であると通常みなされることから、甲状腺疾患スクリーニングの検査項目として扱われる。

リコード法

「TSHは脳下垂体の応答によりTRHの指令によって放出されるホルモンであり、視床下部で作られる。理論的には甲状腺機能が低下すると脳下垂体を刺激しようとTSHが増強されうる。つまり高いTSHは低い甲状腺機能の働きを示唆する。」

「一般的な甲状腺刺激ホルモン検査の基準値はTSH 0.4~4.2mIU/Lだが、リコード法においてはTSHが2よりも高い場合は懸念材料となる。そのため、その他の甲状腺ホルモン値を検査することが重要となってくる。」


アルツハイマー病患者ではTSHが非常に低い傾向

血清TSHと、右大脳半球の中および下側頭区域において脳血流が有意に逆相関

FT4濃度と、アルツハイマー病患者の恐怖および疲労感情の自己報告に有意な関連。

アルツハイマー病患者では、TSHの概日リズムが現れない。健常者では19~20時が一番低く2時が一番高い。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23739900

 アルツハイマー病患者の右大脳半球および下側頭領域の脳血流とTSH値が逆相関していた。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20975518/


女性では、甲状腺ホルモンの低値および高値の両方が、アルツハイマー病発症リスクと強く関連する。(男性ではない)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2694610/

TSHの低値または高値は女性のアルツハイマー病発症リスク増加と関連していたが、男性では関連が見られなかった。


アルツハイマー病患者では一般的にTSH(甲状腺刺激ホルモン)とTT4(総テトラヨードチロニン)が有意に異常値を示す。

jim.bmj.com/content/61/3/578.long


 
 

TSHの一般的減少要因

・ストレス

・HPA軸の活性

・コルチゾール、CRH、ACTH

・飢餓によってレプチンが低下>TRH刺激が抑制>TSH分泌が低下

TSHの改善に必要な栄養素

・ヨウ素の摂取 0.4mg以下、最大0.8~1mg (甲状腺ホルモンの合成に必要)

・セレニウム  100~200mcg (T4をT3に変換するのに必要)

・クロム (セレニウムがクロムの排出を増加させる)150~250mcg

・適度な亜鉛(過剰な亜鉛はFT3、FT4を減少させる)

・ビタミンA(甲状腺ホルモン受容体に結合する)

甲状腺ホルモン/サイロイドホルモン(T3、T4)

役割

甲状腺から分泌され、ほぼすべての細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きを持つホルモン。

タンパク質合成、炭水化物、脂質代謝の調節、成長ホルモンとの相互作用、神経の成熟を調節、アドレナリンなどのカテコールアミンの感受性を高め、ビタミンの代謝を刺激する。

ホルモン1分子中のヨード(ヨウ素)数が3つのトリヨードチロニン(T3)と、4つのサイロキシン(T4)の二つがある。

血中を循環する甲状腺ホルモンのほとんどはT4、

生理活性が強いのはT3(3~4倍)、ヨウ素濃度を高くすると一時的にヨウ素の有機化が抑制され甲状腺ホルモンの合成が低下する。(ウォルフ・チャイコフ効果)

リコード法

甲状腺ホルモンは多くの認知機能低下を抱える人々で、準最適にある。主に活動する甲状腺ホルモンはT3。しかし、一般的にはT3へと変換されたりされなかったりすることのあるT4が治療対象となる。

そのため、好ましくはアーマーサイロイド、NPサイトサイロイド、ナチュラル甲状腺、その他類似物といったT3とT4両方の抽出成分を用いるのが良い。

化学合成品を気にしなければ、リオチロニン(チロナミン)を用いる必要があるかもしれない。もしTSHの値が準最適であれば、甲状腺の活動にはヨウ素を必要とするため、ヨウ素の血清濃度をチェックし、低すぎればケルプなどのヨウ素を摂取する。

甲状腺ホルモンを減少させる

・カロリー制限

・うつ病

・コルチゾール

・レプチン低値

・飽和脂肪

・糖質制限

・高いインスリン抵抗

・テストステロン低値

・アルコール

・フッ化物、BPA、殺虫剤、水銀、鉛、放射線

・紅茶、かぼちゃ、大豆、フェヌグリーク

甲状腺機能の最適化

・概日リズムを整える

・ミトコンドリアの質を高める(PQQ)

・腸内細菌のバランスを整える

・T4をT3に変換する肝臓機能の正常化

・炎症の軽減 HPT軸の正常化 レクチン回避食など

・甲状腺機能を妨げる環境汚染、大気汚染の低減(空気清浄機、禁煙、高い場所に住む40m以上)

・寒冷療法(冷水、寒風摩擦)

・フォルスコリン

一般的な摂取量 一日 20mg 朝摂取 最大50mgまで (フォルスコリン)

・LLLT

甲状腺ホルモンを用いる

・ナチュラルホルモン補充療法(BHRT)

サイロキシン(T4)

サイロキシンまたはチロキシン (Thyroxine) と呼ばれる。

甲状腺の濾胞から分泌される甲状腺ホルモンの一種

トリヨードサイロニンの前駆体であり、T4と略記される。

T4は、ほとんどがサイロキシン結合タンパク質やアルブミンなどのタンパク質と結合した状態で血液中を運ばれる。

血中での寿命はおよそ1週間。

T4は代謝量の制御に関わり、成長に影響を与えていることが示されている。


交絡因子調整後のTSHレベル高値は認知症発症リスク低下と関連するが、T4高値は認知症発症リスクの高さと有意に関連する。

高齢者の海馬容積減少はfT4レベルの上昇と関連していた。

(T4、1pmolあたり海馬容積-2.1ml)

www.medscape.com/viewarticle/853079


血漿中の高いfT4は、認知障害の悪化およびアルツハイマー病の抑うつへ影響を与えうる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17136019


アミロイドβ凝集体を海馬内に注射したADマウスへT4を投与したところ、マウスの認知障害を予防し、記憶機能を改善することが示された。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20045708

「t4 t3 tsh」の画像検索結果

 

トリヨードチロニン(T3)

Triiodothyronine

トリヨードサイロニン(Triiodothyronine, TIT)、T3とも言われる。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)はT4とT3の生産を促す。

T4は視床下部でT3に変換され、TSHの生産はおもにT3によって阻害されることで負のフィードバックが働く。

甲状腺はT3よりもT4を多く生産する。そのため血漿中のT4の濃度はT3の40倍高い。

体内を循環するT3の大部分はT4が脱ヨード化されたもの。

T3の構造はT4と類似しているが、1分子あたりヨウ素原子が1つだけ少ない。

T3は活性が強く少量しか生産されない。

T3は最も強力な甲状腺ホルモンで、体温、成長、心拍数などを含めた体内のほぼ全ての過程に関与している。

役割

全身の組織に甲状腺ホルモン受容体が存在s,T3が結合することで多彩な生理的作用を示す。

・心拍出量を増加させる。

・心拍数を増加させる。

・肺胞換気率を上げる。

・基礎代謝率を増加させる。

・カテコールアミンの効果を増強する(交感神経活動の増加)

・脳の発達を促進する。

・女性の子宮内膜の厚くする。

・タンパク質と炭水化物の異化作用を増加させる。

T3はAPPペプチドのプロセシングおよび分泌を調節し、APP遺伝子のスプライシングを調節することが示されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9607774/

T3だけ低値を示す要因

過剰な糖質制限・断食(レプチン低下)

※レプチンは特定の神経細胞のTRH発現阻害を抑制する。

レプチンを増加させるもの

感情的なストレス、コルチゾール、インスリン、肥満、睡眠時無呼吸、グルコサミン、快眠、エストロゲン、TNF/IL-1、エンドトキシン

炎症

長期にわたる病気

タンパク質不足 栄養不良
農薬、水銀、PBDEなどの毒素
過剰なヨウ素摂取
大量のヨウ素はT4からT3への変換を阻害する。
ステロイドホルモンの投与
鉄欠乏性貧血
甲状腺機能低下症

低T3症候群 / Low T3 Syndrome

TSH、T4が正常でT3だけが低いケース 一般的に「低T3症候群」と言われる。低代謝、T4からT3への変換がうまく行われていないことが原因。

低T3症候群は甲状腺機能の低下と直接関わっておらず、以下の複数の作用機序が推察されている。

・HPA軸の障害

・甲状腺ホルモンと輸送体たんぱく質同士の結合の変化

・甲状腺ホルモンの組織流入口の変更

・デヨージナーゼ/ヨウ素ペルオキシターゼ(甲状腺ホルモンの失活に関わる酵素)発現の変化による甲状腺ホルモン代謝の変化

・甲状腺ホルモン受容体(THR)の発現または機能の変化

chriskresser.com/low-t3-syndrome-i-its-not-about-the-thyroid/


アルツハイマー病患者のT4、TSHは対照群と統計的な有意差はなかった。

T3レベルの低下は正常範囲内であっても、アルツハイマー病患者の認知低下と関連する可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3470275/


T3高値となる要因

・グレーブス病

・甲状腺機能亢進症

・痛みのない甲状腺炎

・甲状腺刺激性周期性麻痺

・有毒な結節性甲状腺腫

・血中の高タンパク質

・甲状腺癌、甲状腺中毒症

T4からT3への変換

大部分のT4>T3変換は、脱ヨード酵素によって肝臓で行われるが、甲状腺、腎臓、脾臓、脳の視床下部を含む他の末梢器官でも起こる。

変換されたT3の効果は1~2日持続する。

進行したアルツハイマー病において、T4>T3への変換は脱ヨウ素酵素活性の変化により影響される。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20021390/

T4>T3の変換障害要因

・ステロイド、甲状腺関連の薬、アンドロゲン、エストロゲンを含む薬

・慢性消耗性疾患

・クッシング症候群

・ストレス(コルチゾール)

・エストロゲン低値

・慢性疼痛

・成長ホルモン低値

・ヨウ素

healyourselfathome.com/SUPPORTING_INFORMATION/CELL_MESSENGERS/HORMONES/AMINES/TH/t3_and_t4.aspx#Thyroid_Gland_Thermostat

脱ヨード酵素

T4>T3への変換は、脱ヨード酵素(D1、D2、D3)によって変換される。

D3はT3を肝臓で不活性型の甲状腺ホルモンに変換する。

D1 肝臓、腎臓、甲状腺(細胞質膜) T3の80%以上を産生

D2 脳、下垂体(小胞体)、局所でのT3産生

D3 子宮と胎盤(細胞質膜)に強く発現 T4>rT3 T3>T2 産生

サイロキシン結合グロブリン(TBG)

肝臓で産生された輸送タンパク質であるサイロキシン結合グロブリン(TBG)は、T4およびT3を末梢組織へ運搬する。

輸送タンパク質から切断され、遊離T4、遊離T3となり、標的の甲状腺ホルモン受容体へ働きかける。

T4>T3への変換を促進する栄養素

・ヨウ素

・セレン 200mcg

・亜鉛

・鉄

・クロム

・銅

・ビタミンA

・ビタミンB2、B6、B12

www.selfhacked.com/blog/low-thyroid-hormones-low-t3-syndrome/

リバースT3(rT3)

リコード法

リバースT3は甲状腺の活性化を阻害する。そのためリバースT3は甲状腺機能を測定する上でもっとも重要な測定値のひとつとなる。リバースT3はストレスとともに上昇し、T3の活性を低下させる。


60〜90歳の高齢の1077人のコホート研究

TSHおよび甲状腺ホルモンは、認知症、アルツハイマー病のリスクと関連していなかった。

認知障害を有しない被験者において、TSHおよびT3は脳萎縮と関連がなく、fT4レベル、rT3レベルの高値は海馬と扁桃体萎縮をより多く有していた。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16636121

ヨウ素

ヨウ素の測定

尿中ヨウ素

90%のヨウ素が尿中に排出される。食事のヨウ素量を反映しており、日によって変動が大きい。

甲状腺ホルモン

甲状腺はヨウ素欠乏に対して部分的に適応する。

ヨウ素欠乏は血清TSHの増加を引き起こし、T3/T4産生の比率を増加させ、T4からT3への変換が増加する。

中程度から重度のヨウ素欠乏では、血清TSH濃度は上昇し、血清T4濃度はわずかに低く、血清T3濃度はわずかに高い。

しかし、高齢者の平均血清TSHでは低い可能性がある。また、重度のヨウ素欠乏症では、代償応答が十分に行われず、甲状腺機能低下症を生じることがある。

そのため、甲状腺機能検査(血清TSH、T3、T4)は、感受性の高いヨウ素の指標とはみなされない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5004493/

毛髪

毛髪中のヨウ素は、長期のヨウ素欠乏および過剰を評価するための有効な指標である。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24446669/

甲状腺機能へ作用する薬剤

甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制

抗甲状腺薬,ヨード剤,ヨード含有薬剤(アミオダロン,造影剤,
含嗽薬など),リチウム薬,インターフェロン,性腺刺激ホルモ
ン放出ホルモン誘導体,分子標的治療薬など

甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌の抑制

ドパミン,トルブタミド,副腎皮質ホルモン(グルココルチコイ
ド),オクトレオチド酢酸塩など

甲状腺ホルモンの代謝を促進

フェノバルビタール,リファンピシン,フェニトイン,カルバマ
ゼピンなど

甲状腺ホルモン結合蛋白を増加

エストロゲン(卵胞ホルモン),タモキシフェンクエン酸塩,酢
酸ラロキシフェン,5-フルオロウラシルなど

甲状腺ホルモンの吸収を抑制

コレスチラミン,コレスチミド,水酸化アルミニウムゲル,沈降
炭酸カルシウム,グルコン酸カルシウム,ポリカルボフィルカル
シウム,硫酸鉄,スクラルファート,活性炭,セベラマー塩酸塩,
ポラプレジンク,酢酸ラロキシフェン,シプロフロキサシンなど

www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/54/2/54_2_118/_pdf

甲状腺ホルモン剤

乾燥甲状腺剤(T4とT3の組み合わせ )

通常の甲状腺治療ではT3の補充はあまり行われておらず、T4(レボチロキシン、シンスロイド)が使われる。

T4とT3の組み合わせ錠剤のT4:T3 比率はほぼすべて4.2:1

アーマーサイロイド

1錠 60mg(T4:38mcg T3:9mcg

ごく少量のT1、T2、カルシトニンも含まれる。

グルテンと乳糖は含まないが、トウモロコシは含んでいる。

コーティングに使われる二酸化チタンを気にする人が一部でいる。

NPサイロイド
ネイチャーサイロイド

1錠 65mg T4:38mcg、t3:9mcg

ごく少量のT1、T2、カルシトニンも含まれる。

人工着色料、人口甘味料、トウモロコシ、ピーナッツ、米、グルテン、大豆、酵母、卵、魚、貝などは含まれていない。少量の乳糖含む。

WPサイロイド

1錠 65mg T4:38mcg、t3:9mcg

ごく少量のT1、T2、カルシトニンも含まれる。

ネイチャーサイロイドと同じメーカー、二種類の天然成分だけを使って製造されておりもっとも低刺激性。Dr. Christiansonが推奨するタイプ。アーマサイロイドやNPサイロイドを使って反応がある場合に試してみると良いかも


アーマーサイロイド vs シンセロイド(レボチロキシン)

www.dietvsdisease.org/armour-thyroid-vs-synthroid-unbiased-look-evidence/


プラセボ無作為化二重盲検 乾燥甲状腺エキスからレボチロキシンに切り替えると、患者の気分は悪化する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23539727


若年性成人男性へのT3投与はTSHを低下させるのに、T4の単独投与よりも3.3倍効果的

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/402379


メタアナリシス T4+T3の併用療法がよりよい結果をもたらすか。

academic.oup.com/jcem/article/91/7/2592/2656394


TSHは甲状腺機能低下症患者の最適なマーカーではない。一日3回のT3投与は、一日のT3血清レベルを改善することができる。T3徐放剤は内因性のT3産生を模倣し、甲状腺障害を有する患者の症状を効果的に治療し、安定的なTSHレベル、血清fT3、fT4を維持する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22593590


T4とT3の併用療法 実際の効果は?

www.eje-online.org/content/177/6/R287.long


T4単独療法よりもT4 + T3併用療法が甲状腺機能低下症患者に役立つ、という証拠は不十分である。

D1酵素は、T4からT3への変換およびrT3のクリアランスにおいて重要な役割を果たす。

DIO1におけるSNP rs2235544のC-アレルは、血清fT3の増加、血清fT4およびrT3の減少、血清T4:fT3濃度比の減少にともなうD1活性の増加と関連する。

DIO1における多型rs2235544とT4甲状腺機能低下症患者における甲状腺機能との関係

http://www.karger.com/WebMaterial/ShowPic/212202

www.karger.com/Article/FullText/339444

まれにある表現型rs225014 DIO2は、 T4治療中の被験者の16%が有しており、健康状態質問票(GHQ)のスコアの悪さと関連付けられている。

この遺伝子型は、T4単独療法と比較して、T4 + T3併用療法でより大きな改善を示した。

T4 + T3併用療法の投薬量算出方法

http://www.karger.com/WebMaterial/ShowPic/212201

Prothyrid 用量比 10:1

T4 + T3の併用療法では、個別のT4およびT3錠剤を使用することが推奨される。

これらを組み合わせた錠剤は、T3含有量が内因性の比率と比べ高いため甲状腺ホルモン過剰症を誘発するリスクがある。

乾燥甲状腺剤による治療

archive.foundationalmedicinereview.com/publications/9/2/157.pdf

レボチロキシンよりも患者の広範囲の症状に対して有効である。

T3の半減期の短さから行われる分割摂取は、副作用を減少させるためというよりも有効性を増加させる意義にある。つまり利便性から一日一回の摂取でも構わない。

治療開始

アーマーサイロイド朝に30mg(50mcgのレボチロキシンに相当)摂取

10日後に顕著な改善や副作用が見られない場合は、朝60mg一回に増加

それからの増量は6週間間隔で検討していく。

薬物感受性の病歴を有する患者、神経弛緩薬は15mgから開始して4-6週間ごとに段階的に増やしていき最大60mgとする。

副作用

不安感、緊張感、不眠症、動悸、早い脈拍、胸部の痛み、緊張感などの副作用を観察しておく。そういった症状が、ストレスやコーヒーを飲むといった理由などと関係なく起こる場合は、用量を減らすか投薬を中止する。

副作用は投与開始日のみに起こることがあり、その後消失することがある。また副作用が徐々に現れることも珍しいことではないので、注意をしておく必要がある。

治療開始後、症状、脈拍数、血圧、皮膚症状、ATRリターンの変化を評価する。有害な副作用がなく症状の緩和が認められてば同一の用量を継続していき、3ヶ月後、6ヶ月後に再評価する。しかし、頻脈や手のふるえなど有害な所見が見られた場合には、用量を減量する必要がある。TSHレベルは顕著に下がらない限り、減薬の判断材料とはならない。

過剰な甲状腺剤投与による副作用

不安または疲労感、動悸、過剰な発汗、熱さに我慢できない、早い心拍数、下痢、手や四肢の震え、血圧の上昇、苛立ち、不眠症、体重減少

アーマーサイロイドの投与が不十分である時の症状

持続的な疲労感、体重増加、持続的な月経の乱れ、脳霧(ブレインフォグ)が持続する、または精神的な集中力/明晰性が低下、便秘、首の腫れ、四肢と目の周りの腫れ(特に朝)、乾燥肌、脱毛、寒さへの不耐性、うつ病/不安

治療期間

安全と考えられている最大用量で6-8週間後に改善が見られない場合、治療は通常中止される。しかし患者が治療に応答するのに2ヶ月以上かかる場合もあるため、必要に応じて治療期間を延長する。

摂取量

患者の10%が15mg以下、20-25%で30mg、40%で60mg、15-20%で90mg、10%で120mg以上

一部の患者は冬の期間より高用量が必要と思われる。

ほとんどの患者では午前中に甲状腺ホルモン剤の一日量全部を服用するが、一部の患者では午前中に一日用量の半分から3分の2を服薬し、残りを午後か夕方に摂取するとよりよい気分が保たれる。

120mg以上を摂取している患者は、一度の大量のT3摂取を避けるため、分割して摂取することが推奨される。しかし、一般用量を摂取している患者では分割投与と一回投与に差異は感じられない。

治療の中止

内因性の甲状腺ホルモンが回復するのに通常4週間以上かかるため、治療から離脱する際は4週間かけて中止する。半分の量を2週間続け、4部の1の量で残りの2週間かけて減薬する。

グルココルチコイド治療による副腎の抑制とは対照的に、甲状腺ホルモン治療は長期間、重度の治療であっても、甲状腺機能が抑制されてしまうことはない。

その他の副作用

前述した副作用に加え、高齢者および心臓病患者の心房細動を引き起こす可能性がある。そのため最低有効用量を用いるべきである。

甲状腺ホルモン治療にともない脈拍数が上昇する可能性があるが、すでに頻脈が見られる患者への適用はかならずしも治療上の禁忌とはならない。甲状腺ホルモン治療によって脈拍数が減少した患者もいる。

甲状腺ホルモンの長期投与を受ける患者では、骨密度を維持する微量栄養素(カルシウム、マグネシウム、微量ミネラル、Bビタミン、ビタミンD、ビタミンKなど)の補充が強く推奨される。


甲状腺ホルモン剤の摂取は、朝飲んだり食べたりする前に摂取。

一般的ではないが就寝時に摂取する方法も効果的

drchristianson.com/what-is-the-best-medication-for-an-underactive-thyroid/


高濃度のヨウ素摂取による甲状腺機能不全の誘発

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23529350

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