タウタンパク質 9つの神経保護アプローチ(認知症・アルツハイマー)

概要

キーワード:タウ、タウタングル、NFT、神経原線維変化、タウ蛋白、pタウ、リン酸化、アミロイドβ、タウ凝集、タウ蓄積、p-tau

免責事項を先にお読みください。

はじめに

アルツハイマー病という用語が1910年に生まれて100年、かたや神経原線維変化が異常なフィラメントで構成されていることが発見されたのは1963年、アルツハイマー病の100年の歴史のちょうど道半ばで発見されている。

タウタンパク質のかたまりがアルツハイマーの原因じゃないかと推測されて、半世紀もたっている。

にも関わらず、それではどのタウ種がどう具体的にアルツハイマー病を引き起こすのか、調べてみると、その詳細はわかっていないことだらけで少し驚いた。

A02?1 タウタンパク質老化と毒性機序

http://www.protein-dementia.jp/research/a02/

古典的なタウタンパク質のアルツハイマー発症機序

教科書的な理解は、正常なタウタンパク質は微小管に結合して、微小管の形成や安定化を助ける役割をもっている。しかし、タウタンパク質が過剰にリン酸化されると微小管は不安定になり、崩壊し始める。崩壊したタウタンパク質はからみついて神経原線維変化を呼ばれる塊となる、といったものだろう。

大雑把に書くと

正常なタウタンパク質(MAP) → タウの過剰なリン酸化 → タウオリゴマー → ヘリカルフィラメント(PHF) → 神経原線維変化(NFT)

という流れでアルツハイマー病の発症因子として変化していくのだが、タウオリゴマー、タウ凝集体であるNFTの構造にもいくつかのタイプがあって、どういったタイプがあり、どのタイプが最も有毒であるかなど、まだ多くの点が議論の段階にある。

「tau nft」の画像検索結果

タウタンパク質の形態

「helical filament tau map phf」の画像検索結果
タウタンパク質(MAP)

微小管を安定化させるタンパク質で、中枢神経系のニューロンに豊富に存在する。

6つのアイソフォーム(1~4リピートと1,2インサート)が存在

ピック病 3リピートタウが多い

進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症 4リピートが多い

アルツハイマー病 3,4リピート両方

「tau 3-repeat」の画像検索結果

タウタンパク質のアイソフォーム発現を変化させる突然変異が過剰なタウタンパク質のリン酸化につながる。

タウタンパク質はα-シヌクレインと相互作用しタウオパチーを形成しうる。

タウのリン酸化も必ずしも悪いものではなく、ニューロンに対する保護効果があるという研究報告!

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161117151205.htm

神経原線維変化(NFT)

タウタングルには3つのタイプがある。

タウタンパク質のアセチル化がアルツハイマー病のタウ凝集の原因である可能性が示唆されている。

マウスモデルの研究では、タウ凝集の構造の違いが、脳の特定の領域によって脆弱だったりそうでなかったりする可能性がある。(同じタウ病理でありながら、異なる進行過程を見せる神経変性疾患の説明にもつながる)

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161028205358.htm

また、NFT自体が毒性をもつという直接的な証拠はないらしく、NFTはタウオリゴマーなどの可溶性タウの高い毒性を防ぐために凝集したということを示唆する研究もいくつかある。

タウの沈着部位

典型アルツハイマー病 タウの沈着部位 海馬CA1、次いでCA2

可溶性タウ

正常なタウからNFT(神経原線維変化)へと変化する過程で、タンパク質が過剰にリン酸化され、誤った場所に局在化し、立体構造が変化してしまったオリゴマー性のタウはNFTではなく、広い意味での「可溶性タウ」と定義されている。

可溶性タウとNFTは、異なる方法異なる時間スケールで細胞に対して有毒である。

タウタングルの存在が、ニューロンの可溶性タウに閾値があることを示しており、細胞の補償機構が働いてくれない可能性がある。

つまりタウ凝集阻害剤が、可溶性タウを増加させることで有害となる可能性がある。

タウの削減には、従来と異なる戦略が必要かもしれない。

図6

タウによるアルツハイマー病発症機序

タウタンパク質に過剰リン酸化が起こる。 → 他のPHFと絡み合る → 軸索からニューロンの体細胞樹洞区画へタウタンパク質が移動 → 微小管の崩壊、輸送システム、不溶性の凝集体が形成される。→ ニューロン細胞の死 → 残りのNFTは死滅した細胞外で「ゴーストタングル」として存在する。

※ゴーストタングルはアルツハイマー病発症前段階でも起こりうる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4939203/

アミロイドβと相互影響する作用機序

アミロイドβ増加 → タウ蛋白の異常リン酸化 → 微小管から単量体タウ蛋白が遊離 → 軸索から神経細胞の細胞体樹状突起部分に移動 → チロシンキナーゼfynと相互作用→ fynが高濃度に → NMDA受容体GluN28をリン酸化安定化 → グルタミン酸シグナルが増幅 → 細胞内へのCa2+流入増加 → アミロイドβ毒性が増加 → 以下繰り返し

タウ標的 治療戦略

1 タウ過剰リン酸化の阻害

キナーゼとホスファターゼとのバランスが崩れていることが、タウタンパク質の過剰なリン酸化の原因。

アルツハイマー病患者の脳にあるタウは、同年齢の健常者と比べて4~5倍高い!

この増加分はすべてリン酸化されたタウ。

タウキナーゼの過剰なアップレギュレーション、タウホスファターゼの過剰なダウンレギュレーションでありえる。

※リン酸化タウ阻害剤単独投与の臨床試験はフェーズ2で2件失敗している。

タウのリン酸化に関わる重要なキナーゼ 

GSK-3β  グリコーゲン合成酵素キナーゼ3

CDK5 サイクリン依存性キナーゼ5

PKA cAMP依存性プロテインキナーゼ

CaMKII カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼII

写真、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はbiomolecules-06-00006-g007.jpgです。

リン酸化タウの阻害化合物

・リファンピシン

マイコバクテリア感染の26名の高齢者(うち12名がアルツハイマー病の兆候) 450mg/日  用量依存効果の可能性 予防的治療には、450mg以上の用量と12ヶ月の期間が必要。抗生物質であるリファンピシン投与によってマイコバクテリウムの耐性化を防ぐために、他の抗生物質と共に投与すべき。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5498941/

・リチウム 

GSK-3β、JNKはタウ蛋白をリン酸化する酵素。

リチウムがGSK-3βを抑制する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23596350

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3460520/

・セレノメチオニン

セレノメチオニンをADマウスへ投与、タウの総量とタウの過剰リン酸化が減少、

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28137967

・葉酸
葉酸は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスにおけるPP2Aメチル化を調節することによってタウタンパクのリン酸化を低下させる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28422052

・サフラワーイエロー

サフラワーイエロー(ベニバナから取れるベニバナ黄色素類)は認識欠損を改善し、APP / PS1トランスジェニックマウスにおけるタウタンパクのリン酸化 を減少させる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27311611

・カプサイシン
カプサイシンは2型糖尿病ラットの海馬におけるアルツハイマー関連タウ変化を減少させる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28225806

グルカゴン様ペプチド-1

進行した糖化最終生成物誘発タウタンパクの過剰リン酸化から海馬ニューロンを保護する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24183963

・デカフェのグリーンコーヒー

グリーンコーヒーがタウ病変を有するマウスの認知機能、運動能力を改善

https://www.degruyter.com/view/j/tnsci.2014.5.issue-2/s13380-014-0213-y/s13380-014-0213-y.xml

https://www.degruyter.com/downloadpdf/j/tnsci.2014.5.issue-2/s13380-014-0213-y/s13380-014-0213-y.pdf

2 微小管を安定化

微小管安定化剤

・ダブネチド(Davunetide、NAP)フェーズ2で失敗

(活性依存性神経保護タンパク質(ADNP)由来)

微小管安定に加えてαシヌクレイン凝集を防ぐ作用

3 タウクリアランスを増加

タウタンパク質を分解する化合物

・アミノペプチダーゼ

・トロンビン

・ヒト高温要件セリンプロテアーゼA1(HTRA1)

・カルパイン

・カスパーゼ

・カテプシン

しかし、これらの酵素はタウタンパク質のクリアランスへは直接的に結びつかず、装飾タウ種を再び生成することで、タウ病理の進行、タウのクリアランスの増強どちらか、または両方に寄与しうる。

タウタンパク質の分解

タウクリアランス(タウタンパク質の排出)のほとんどは、プロテアソーム系、オートファージー系によって媒介される。

オートファジーシステムとプロテアソームシステムとの間に、有意で広範な相互作用がある。

ラットのプロテアソームを阻害することで、オートファジーの代償的アップレギュレーションにより細胞中のオートファゴソームが増加し、総タウタンパクが減少した!

画像、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はfneur-04-00122-g002.jpgです。

家族性アルツハイマー(PS1)はリソソーム酸性化、オートファゴソーム作用の障害に両方に関連している。オートファージ障害はおそらくp62(両方の系のシャペロン)の蓄積を介してプロテアソームを阻害する。

タウタンパクはプロテアソーム系、オートファジー系の両者によってそのほとんどが分解される。
どちらもタウの処理に負われて処理できなくなると、クリアランスの機構が不全になるだけでなくクリアランス機構そのものが壊れる可能性がある。

両者のタウクリアランスは相互作用をしている。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3759803/

オートファジー

オートファジーは唯一のタウオリゴマークリアランス経路

・マクロオートファジー

(オートファゴソームで取り囲みバルク分解)

・ミクロオートファジー 

(オートファゴソームを介さない)

・シャペロン介在性オートファジー

(HSPを使った標的型分解)

・マイトファジー

(障害のあるミトコンドリアスカベンジャーとして選択的に作用、アルツハイマー病ではマイトファジーに障害がある。)

画像、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はfneur-04-00122-g003.jpgです。

アルツハイマー病においてオートファジー障害があることを示唆する証拠が存在する。

プロテアソームを阻害! → コシャペロンBAG3とJNK活性 → タウクリアランスが増加

BAG3がタウタンパク質レベルに重要な役割を担っている。

画像、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はfnmol-10-00176-g0002.jpgです。

ミスフォールドタンパク質が分解経路によって効率的に除去されない場合、ミスフォールドタンパク質は蓄積し、UPSおよびオートファジーをブロックしえる。

BAG3およびBAG1は、HSP70結合クライアントに対して競合し、標的化する。

4 マクロオートファジーによるタウ分解

・ライフスタイル

有酸素運動、間欠断食、ケトンダイエット

・食事

コーヒー、緑茶、ココナッツオイル、ジンジャー、MCTオイル、ブロッコリー(スルフォラファン)、グレープフルーツ(ナリンジン)

トレハロース(タウのリン酸化、凝集タウのクリアランスを促進)

・サプリメント

クルクミン、レスベラトロール、霊芝、高麗人参、ウルソル酸
リチウム、メラトニン、DHA、EPA、ビタミンD、ニコチンアミド、

・医薬

ラパマイシン(マクロファージ誘導剤として研究されている。)

メトホルミン

5 ユビキチン-プロテアソーム系(UPS)によるタウ分解

可溶性タウモノマーはプロテアソームの理想的な基質

低アセチル化タウはUPS(ユビキチンプロテアソームシステム)の基質にむいている。

オリゴマー化したタウ、凝集タウは、プロテアソームの好ましい標的ではないかもしれない。

プロテアソーム活性とタウの高分子量形態との間には逆相関がある。これは、異常なタンパク質自体が、プロテアソームの分解プロセスを妨害しえることを示唆する。

異常タウがプロテアソームと結合すると、プロテアソーム自体の機能が阻害され異常タウを含め他のタンパク質も処理できなくなる。

A152T変異体タウがプロテアソーム活性を損ない、タウだけでなくプロテアソームの基質の蓄積も引き起こす。プロテアソーム基質の蓄積はαシヌクレイン、TDP-43にも影響を及ぼす。

オートファジーを高めることによるタウオパチー治療の可能性。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5382950/


プロテアソームの活性は過剰酸素、放射線、酸化的損傷などの外傷性ストレス因子によって誘導される。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16690988/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10775409/


プロテアソームの機能不全がパーキンソン病、レビー小体型認知症発症の根底にある可能性。プロテアソーム機能障害の原因は遺伝子変異、酸化的損傷、ATPの枯渇、環境からの毒素に関連している可能性がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16717251

A152Tタウのクリアランスとして知られるオートファジー誘導剤

・クロニジン:高血圧症治療剤

・リルメ二ジン:血圧降下薬, α2アドレナリン受容体作動薬)

・ラパマイシン(シロリムス):免疫抑制剤

メチレンブルー

メチレンブルーは、プロテアソームの活性を増強することによって、アミロイドβを減少させADマウスの認知機能を改善する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20731659

ガストロジン

ガストロジンのプロテアソーム活性 ハンチントン病モデルマウス

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0020934

エクササイズ

有酸素運動トレーニングは、マウスのユビキチン-プロテアソーム系をアップレギュレートする。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22461440

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22461440


有酸素運動が、ユビキチン・プロテアソーム系の過剰活性を防ぐ

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22870245


自発的な運動は、外傷を受けた脳のプロテアソームを活性し、シナプス可塑性に寄与する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19368831


高齢者によるレジスタンストレーニング後のロイシン摂取(3.5g)は、オートファジーを減少させるようだが、ユビキチンプロテアソーム系の増加、または骨格筋のタンパク質分解は妨げない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27586837


タンパク質摂取は運動によるHSP70の発現NF-κBの増加を妨げたが、プロテアソーム活性を維持した。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28831951


エネルギーが不足した状態での低強度の運動は、オートファジーの誘導をもたらすが、ユビキチンプロテアソーム系の活性は増加しない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29208687

cAMPの活性を介してPKAを刺激すると、異常タウが存在していても、プロテアソームの機能が保たれる。

・cAMP活性方法

PDE阻害剤、フォルスコリン、レスベラトロール、カフェイン

6 シャペロン系 HSP増加方法によるタウ分解

ミスフォールドタンパク質に結合するHSP90をターゲットにする。

温熱療法(HSP入浴法)(たぶん最強)

テプレノン、ブロッコリー、オリーブオイル、亜鉛、クルクミン、レスベラトロール、ヤマブシタケなど

7 タウ凝集の阻害

タウ凝集阻害剤

・塩化メチルチオニニウム(メチレンブルー) 臨床試験138mg /日投与

・リファンピシン

・オレウロペイン アグリコン(オリーブオイル、オリーブリーフに含まれる)

・EGCG (緑茶の成分)

8 変性タウタンパク質モノマーに作用する化合物

・クルクミン

・ポリフェノール

・フェノチアジン、ポリエンマクロライド、ポルフィリン

・サルサレート

非ステロイド系抗炎症薬であるサルサレートによるアセチル化の阻止はマウスの認知機能を保持し、病理学的な改善につながった。治療中の2〜3ヶ月は海馬の体積を保持し、神経原線維変化(NFT)の数を3分の2まで減らした。

サルサレート 9mg/kg マウスの最小有効量

臨床試験 150~250mg/day

9 ミトコンドリア標的療法

タウのターゲットがミトコンドリアであるため、ミトコンドリア機能を増大させる方法は、合理的な戦略である。

脳のミトコンドリア機能改善サプリメント

ビタミンC、E、グルタチオン、コエンザイムQ10、ユビキノン、MitoQ、

「tau nft」の画像検索結果

マイトファジー

損傷したミトコンドリアを除去するマイトファジーの刺激が重要

p62、NBR1がマイトファジーに必須、誘導経路はPINK1、Parkin

アルツハイマー病では頭頂皮質のSIRT1発現が45%減少しており、タウタングルとタウの蓄積に密接に関連している。

SIRT1活性によりPGC-1aをアップレギュレートすることでマイトファジー誘導に重要な役割を果たす。

SIRT3は興奮毒性による障害からミトコンドリアと神経細胞を保護することができる。

マイトファジー活性

・ライフスタイル

断食、カロリー制限、運動、ケトン生成

・薬理学的アプローチ

ニコチンアミドはSIRT3を活性

mTOR阻害剤、ラパマイシン

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28190529

PGC-1aの活性

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