アルツハイマー病の進行について調べてみた(若年性・高齢期)

アルツハイマー病の進行経過、平均余命、段階など

病気の進行段階によって私たちを分類しないでほしい。 それは個人のレベルでは無意味なことだ。私たちの大脳皮質はその人自身の学習と経験によって決定されるので、脳のどの部分が破壊されても、反応の仕方は人によって違うのだ。

クリスティーン・ボーデン

免責事項を先にお読みください。

乏しい若年性アルツハイマー病の予後データ

若年性アルツハイマーの患者数は、65歳以上で発症するアルツハイマー病患者に対して、1~2%と言われている。

そういうわけで絶対数が少ないせいか、老齢期のアルツハイマーデータはあっても、若年性アルツハイマー病の予後の疫学データがほとんど見当たらなかった。

また、若年性アルツハイマーの定義である65歳以下というカットオフ値に、何か特定の生物学的な意義はないらしい。

もともとは退職年齢に応じた社会学的区分で設けられたという記述があった。

※ただし、65歳を境に進行過程や進行部位の特徴も微妙に変わってくるため、カットオフ値として採用することに、臨床診断としての合理性はあるとみなされているようだ。

また、若年性アルツハイマーの進行過程も大きな違いを見せる亜型が、高齢期のアルツハイマーと比較して多いのみならず、その臨床的な区分もそれほど確立されていない。一般的な若年性アルツハイマー病という形で進行過程をまとめることができないことも、文献の数の少なさに反映されているのかもしれない。

そういうわけで、若年性アルツハイマー病患者の情報と、高齢期のアルツハイマー病患者が入れ混じっている。

また、治療の開始時期、被験者の数、投薬、投与量などによっても、かなりスコアがばらついている。(特に投薬の開始時期は大きく認知機能の進行過程を変える)

ランダムに目についた文献をピックアップしており、まとまった情報とは言い難い。

MMSE低下率グラフ

 

http://my-dementia.co.uk/Stages%20and%20Cases.html

このグラフと、サイトの説明が臨床段階の全体像を知るには、一番わかりやすかった。

AD患者と若年性AD患者の低下率の比較

https://www.researchgate.net/publication/240263475_Early_Onset_Alzheimer_Type_Dementia_More_Rapidly_Deteriorates_than_Late_Onset_Type_A_Follow-up_Study_on_MMSE_Scores_in_Japanese_Patients

上 ドット線 AD 65歳以上の老齢期のアルツハイマー型認知症

下 黒の一本線 SDAT = 65歳以下の若年性アルツハイマー病

年5ポイントぐらい?

軽度アルツハイマー病、予測モデル

https://alzres.biomedcentral.com/articles/10.1186/alzrt210

軽度アルツハイマー病患者へのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与による、認知機能低下の違い

赤線がアリセプトやガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤を投与したグループ。青線はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤未投与のグループ

疾患の進行速度を早める予測因子

・性別が男性である。

・高齢

・教育レベルが低い

・ApoE4遺伝子

・日常生活の基本動作能力

・コリンエステラーゼ阻害剤の平均投与量

機能低下が少ない予測因子

年齢が若い(より若いと若年性アルツハイマー、急速進行するアルツハイマーと関連が見られるようになり逆に機能低下が早くなる)

教育レベル(認知予備力の高さ)

家族との生活が良好

認知状態が良好

アセチルコリンエステラーゼの投与量が多い

(必要以上の高用量とは関係しない。最適化が必要)

その他

軽度アルツハイマー病患者への、前駆体およびシナプス形成を強化する栄養素、医療食品の投与は、プラセボと比較して有意に記憶力を改善した。

アルツハイマー病患者と若年性アルツハイマー病患者の比較

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4559486/

デフォルトモードネットワーク

若年性、老齢期のアルツハイマー、両者とも初期の段階では、萎縮は異なるパターンを示すが、疾患が進行するにつれて、両者とも、デフォルトモードネットワーク領域の一部で灰白質の体積減少が生じる。

病気の早期段階で、後部デフォルトモードネットワークの領域が解離し始め、前部および側部ネットワーク内の領域は接続が強化された。しかし病気の進行につれて、デフォルトモードネットワーク全体を含む広範囲の領域の接続性の低下が観察された。

楔前部及び、後部帯状皮質がアルツハイマー病患者における最も深刻な領域であり、特に若年性アルツハイマー病患者ではそれが顕著である。

老齢期のアルツハイマー病患者の萎縮領域、障害過程(若年性ADと比較して)

より広範囲の萎縮を示す。”年性アルツハイマーと比較すると” 明確な萎縮領域というのは見つからない。

若年性アルツハイマー病患者の萎縮領域、障害過程(老齢期ADと比較して)

初期の段階では若年性アルツハイマーは老齢期アルツハイマーよりも萎縮性を見せるが、1年経過後の萎縮率は老齢期よりも緩やか。最大で5.9%(若年者は認知予備力があるために一定レベルからの進行が緩やかになっているのかもしれない)

剖検では、より大きな神経原線維変化濃度と大きなシナプス喪失が見られる。

56歳前後の若いアルツハイマー病患者では、頭頂葉でより大きな代謝低下が見られる。

機能低下 注意力、言語症状の低下

体積の減少 両側側頭葉、頭頂葉

灰白質の萎縮 角回、中側頭回

灰白質の損失 後頭葉後部、両側前頭葉全部(中心前回、下前頭回)

楔前部、帯状回、両側前大脳、海馬後部、楔前部、後帯状皮質、前島

急速進行性アルツハイマー rpAD

http://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/1107857

上記論文では典型アルツハイマー病患者で一年3ポイント

進行が非常に早いタイプのアルツハイマー(急速進行性アルツハイマー、RPAD)が存在し、その場合は年5ポイント以上の早さで急低下する。

しかし、RPADは明確に定義されておらず、またいくつかの(3~6)サブタイプに分かれる可能性がある。

アルツハイマー病症例のうち、10~30%が急速進行性アルツハイマー(rpAD)

急速に進行する予測因子は、ほとんどわかっていない。

推定されている予測因子

臨床症状 精神的なストレスが高い。

バイオマーカー 脳脊髄液 高いリン酸化タウ、低いベータアミロイド1-42

アミロイドβに対する総タウ蛋白の高い比率

 典型ではないアルツハイマー病

https://alzres.biomedcentral.com/articles/10.1186/alzrt155

若年性アルツハイマーの亜型は32%、老齢期アルツハイマーの亜型は6%

ApoE4陰性であることと、若年性アルツハイマーの亜型であることは相関する。

ApoE4キャリアでは、海馬の萎縮が強く見られる。

島皮質コリン作動性経路を伴う併存性大脳白質病変への療法は、コリンエステラーゼ単独療法よりも好ましいかもしれない。

早期発症ADは、アセチルコリンに加えて、ノルアドレナリン、γアミノ酪酸、ソマトスタチンレベルに影響する。

複数の神経伝達物質を回復させる併用療法は、コリン作動性単独療法よりも有効である可能性がある。

MMSEと要介護度の関連

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/37/9/37_9_754/_pdf

2000年と少し古いデータ

ADLsとMMSEスコアの関係

以下のMMSEのスコアと日常生活動作の関係も分かりやすかったので載せておく。

Keep appointments     人との約束

Telephone        電話する

Obtain meal snack    食品の購入

Travel alone         一人で旅行する

Use home appliances 家電製品を使う

Find belongings     自分の持ち物を探す

Select clothes      服を選ぶ

Dress          服を着る

Groom          身なりを整える

maintain hobby     趣味を持つ

Dispose of litter     ゴミを捨てる

Walk          歩く

Eat          食べる

雑観

アルツハイマー病

・治療の開始時期によって、かなりMMSE下落率、期待寿命ともに変わってくる。

・典型アルツハイマー病(老齢期)の場合、AchE阻害剤の投与開始が23点前後だと初期の低下率は低く抑えられるかも。1.4~1.8/年

・典型アルツハイマー病の場合(老齢期)、AchE阻害剤の投与開始が16点前後と開始が遅いと、年3~5ポイントで下落するかも

・若年性アルツハイマー病の平均MMSE下落率は4~5ポイント

・若年性アルツハイマー病には亜型が多い。特にAPOE4陰性

・若年性アルツハイマー病でAPOE4陰性の場合は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の単独療法よりも、もっと複合的に神経伝達物質へ関わる療法が有効かも。

・若年性アルツハイマー病でAPOE4陽性の場合、海馬がより早く進行していく。

・治療開始時期とは別に、個人差で早く進行するタイプがある。年平均6ポイント!

・MMSEのスコアポイント、初期の進行が遅い人は末期も遅く、初期の進行が早い人は末期の進行も早いというように、低下率は基本的には末期まで同じペースですすむ傾向がある。

・ただし、上記グラフにあるように、直線で下落するのではなく、中期に入ったあたりから落ち込みが少し加速して、末期で横ばい気味というゆるいS字曲線を描く。

・APOE4遺伝子持ちの人は、そうでない人に比べて認知機能の低下率がわずかに大きい。

・瞑想はしておこう!※若年性アルツハイマー病患者は特に。

※参考にする場合は原文あたってください。

Translate »