アルツハイマー病改善回復例 MENDプログラム
Everyone knows someone who is a Cancer Survivor but no one knows an Alzheimer’s Survivor.
癌で生き残った人を誰もが知っている、しかし誰もアルツハイマーで生き残った人を知らない
※ブレデセン博士による引用
Muses labs(MENDプログラムのホームページ)
museslabs.com/(英語)
MENDプログラム概要(英語)
museslabs.com/wp-content/uploads/2016/03/MEND-Overview.pdf
PubMed
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4221920/ (英語)
MPI Cognition (ブレデセン博士のホームページ)
ホームページ記載の訳
MENDプログラムとは、アメリカカリフォルニア大学ロサンゼルス校のブレデセン博士により提唱された認知障害(MCI、初期型アルツハイマー病)の進行抑制、改善プログラムである。
(MEND = metabolic enhancement for neurodegeneration の略 )
FDAの承認された薬、サプリメント、ライフスタイルの変更、個人の遺伝子検査や医療検査に基づいたパーソナライズ治療、合併症、現在の投薬、病歴などを通して実行する治療法。
論文の要旨
・アルツハイマー病のメカニズムは複雑であり、単剤による治療では十分な治療効果が得られていない、という認識が増してきている。
・これまで多くのアルツハイマー治療薬が失敗した理由は、原因を一つに絞ってそれをターゲットにしようとしてきたせいではないか。
・ガンやエイズ、心疾患などは、薬を組み合わせることで、より効果的な方法が見つかっている。
・ここ数十年の研究で、アルツハイマー病も分子の相互作用が発病の原因と示唆されている。
・多くの臨床研究によって、標的はアミロイドβ、オリゴマー、タウ蛋白、炎症性メディエーター、アポリポタンパク質、脂質代謝因子、ホルモンメディエーター、栄養因子及びそれらの受容体、カルシウム調節経路、軸索原形質輸送、神経伝達物質とその受容体、プリオンタンパク質などがターゲットとして同定されている。
・上記のターゲットは、みな単一経路であると想定されていて、人の臨床試験で裏付けはとれてない。
・アルツハイマー病の発症は複数のターゲットが要因で起きているということがひとつの可能性として考えられる。たとえそれぞれのターゲットが直接アルツハイマー病とは関係なかったとしても、複数の経路から介入することで根本原因に働きかける可能性も考えられる。
インプレッション
いま正しいことも、数年後には間違っていることもある。逆にいま間違っていることも、数年後には正しいこともある。 ライト兄弟
患者の病状と改善度合い
まず目をひいたのは10人中9人という恐るべし改善率!
とはいえ事例調査なので対照群なし、プラセボなし、ランダム割付じゃない、追跡調査もなし
ようするに医学的裏付けが、まだとても弱い
アルツハイマー病に移行する前段階(MCI)の人たちの割合が大きいので、厳し目に読み解くと、この中で純粋にアルツハイマー病に進行してから回復、改善したと言えるのは、4名中3名といえるかもしれない。
しかし、ゆるく見れば、4名のうちの1名はアルツハイマー末期の患者であり、その方を除外していいとするとアルツハイマー病発症後の患者全員に、大きな改善を見せている。
アルツハイマー方認知症74歳の男性はMMSE23点→30点、62歳男性はMMSE22点→29点、本当なら事例報告だとしてもけっこうすごくない?
日本国内では知られていない不思議
しかし、やはりエビデンスの厳格性に欠けているせいか、海外のニュースであるせいか、あまり知られていないようだ。検索したところ日本語記事は5,6件しかヒットしない。
日本で事例的というと大げさだが、若年性アルツハイマー病で進行抑制できている例として青森の前田栄治さんが、以前テレビで放映されたりしていた。
前田さんの生活習慣にヒントがあるのではないかと、大学も関わっていたように思う。
それを考えると、このMENDプログラムも、もうちょっととりあげられてもいいんではないの、と思ったりする。
MENDプログラムのほうが、何をすればいいか自体ははっきりしているし。
まあ前田栄治さんの例も検索結果の雰囲気からいうと、あまり知られていない感じはするが、、
MENDプログラム実行後の患者さんの経過
個人的に目がいくのは55歳の女性の回復例。うちの母と発症年齢や初期の段階に多くの治療法を試みた点が似ている。
レポートを読む限りは、再び働くことができるレベルにまで回復しているようだ!
追跡調査されていないので、現在どうなっているのかわからないのが気になりはするが。
MENDプログラムの実行後どうなるのかについては気になるところだが、これは人によって個人差があるようだ。
いくつか記事や報告を読んだ印象では、介入が早ければMENDプログラムをやめた後でも、少なくとも5年は維持できているケースがある。
※MENDプログラム自体が新しいため、長期のデータがない。
MENDプログラムをやめてしまったために、数週間から数ヶ月して悪化していくケースもある。(介入が遅かったせいかもしれない)
しかし、MENDプログラムをやめて数ヶ月で進行が再び始まり、神経学的に進行が加速して落ち込むポイントをすぎたが、プログラムを再開したところ、数ヶ月後にまた元の状態に回復したらしい。
介入が早ければ(アルツハイマー初期の前後)完全な寛解状態が続き、介入がアルツハイマー病に初期から中期へと差し掛かる前後だとプログラム続けていくことで改善回復、中期に移行してしまうと改善はするけれども、完全な回復はむずかしいのかなという印象がある。
末期に入ってからでも一部の人では改善を見せるらしいが、末期の改善の難しさは、本人の遂行能力にあるようだ。
もちろん、認知症の型や発症年齢、遺伝子などによっても大きく変わってくるだろう。
母の改善策
現在、私の母はMENDプログラム25の治療方法と、同じ改善策を、8~9割実行している。
このプログラムの存在を知った時には、このプログラムの項目内容通りという意味でなら7~8割(検査による実地はしていない)それぞれの臨床的異常値の課題ごとにという意味では、それ以上こなしていたと言ってもいいと思う。
ただ、アルハカ母はおそらく他の方と同様、一般的な水準よりもやる気が高いとか、治療の有意義性を理解し真剣に取り組むとかまでしていたわけでもない。なので、運動はスタートするのが遅れていたし、食生活は今でも治療水準に達しているとは言い難いところもある。
とはいえ家族と本人が素直に聞いてくれたことが、助かった大きな要因でもある。
他でも書いたが、母がアルツハイマー病と診断されたのちに、エビデンスガイドラインを確認しながら個人で入手可能なサプリメントを中心に、治療を組み立てていた。
そのためか結果的にではあるが、まったく知らずにMENDプログラムと似たようなことを始めていた。
ただ当然のことながら、アルツハイマー病にタイプがあるなどと知っていたわけではないので、血清検査にもとづいて治療するというようなことをしていたわけではない。
※母がMENDプログラムをやってきた、といえるかどうはMENDプログラムの定義によってくるが、実行内容だけならほぼやってきたと言える。
そのため、検査項目や、臨床課題がどこにあるのかなど、ブレデセン博士の分析的な手法が大きく参考になったし、今もMENDプログラムを下敷きにして病気のことを調べたりしている。
もうひとつは自分が調べて実行してきた治療法や方向性が、自分一人の思い込みであさっての方向に向かってはいなかった、という確信を得るところも大きかったように思う。
反省すべき点は、すべてを同時に初めたわけではなく、病状の進行、悪化の兆しを見せては(では遅い!)調べて治療法を加えていったようなところもある。
そのあたりが病気の進行と回復の一進一退になってしまって、母が回復にまではいたっていないのではないかと思っている。まあその種のことを言い出せばきりがないのだが、、
少なくともこのプログラムの存在を病気と診断されたときに知ることができれば、(当時はまだプログラムがなかったので知りようがないのだが)母はおそらく完全に回復していただろうと思う。
唯一の認知症回復方法
そして、現在の母の進行抑制の状態を目の当たりにしている私としては、上記の事例報告が、医学的にまだ十分証明されていないとはいえ、
「認知証と診断された人が、(一時的な改善ではなく)永続的に回復または抑制できる可能性のある唯一の現実的な方法」だと強く信じている。
ここでいう現実的な方法とは、治療の承認を何年も待たなければならないとか、入手できないような新規開発の薬を使うとか、病院で特殊な検査や器具が必要とかいった、限られた条件でしかできない方法ではなく、合法的な範囲で一般人がめいっぱい努力すればすぐに実行が可能であるという意味。
そういった点でMENDプログラムはとてもユニークである。
現実的といえるかどうかは、その人のやる気と努力しだいのような面があるからだ。
現代医療の苦手なところをつくMENDプログラム
神経科学はファラデーの段階にある。マックスウエル、アインシュタインの時代ではない。ファラデーの段階ではあれこれやってみるやり方が戦略的に最善の方法ではないか。
「脳のなかの幽霊」ラマチャンドラン
しかし、翻ってこのMENDプログラムを眺めると、現代医療の弱点というか、標準医療が苦手としているところばかりで勝負しているといえるだろう。
(ニッチ戦略的な有効性が働いているともいえるだろう)
まず、36の要因と25の治療法という、単一ターゲット単一の薬で治療をはかろうする現代医療の局所的な考え方と真逆である。
またそれぞれの手法を個人に合わせてパーソナライズしなければならないというのも、現代医療の画一的治療とは相容れないだろう。
そして、患者が相当に主体的に治療に向き合わねばならない点も、従来の医者が主動して患者がそれについていくという傾向の主従関係を変えていかなければならない。
これは臨床試験するのも大変だと思う。
※現在200人規模で2年間の臨床試験がスタートしている。
仮に承認されたとして、この非常に手間のかかる逆張り的な治療法に医療機関や患者がどこまで現実的に実行できるのか興味深い。
引用先の論文を読むとわかるが、例えばエクササイズひとつとっても、(MENDプログラムではない)臨床研究で参加予定者の半分が不適格で除外されている。
参加後は1割強が脱落しているようだ。
プログラムを完遂できた人は誰一人いない
実際、上記症例で取り上げられた患者でも、すべてを完全に実行できた人は誰もいないようだ。しかし、症例では実行率は不完全であっても一定の改善を見せている。
ブレデセン博士も語っていることだが、25個のうち3つ4つやったぐらいでは改善までは結びつかないく効果はないだろうが、一定量の閾値を超えて実行すれば、25個すべてをこなさなくても、有意義な臨床効果にたっすることができる。
改善につながる閾値がどこにあるのか、どの程度実行すべきは、今の段階では簡易的に計測する方法がないため、できるだけ多くのプログラムを実行することでしか判断できない。
コンプライアンスの問題はあいさつでも触れたが、MENDプログラムが将来、日本で承認されたとしても、治療というものを医者任せ人まかせで考えてしまう人にとっては、一部の病院やお金持ちにしか実行できない、マイナーな手法になってしまう可能性もあるかもしれない。
※何かの本に、「うつ病患者に認知行動療法が効果的なケースがあることがわかっていても、病院側のリソースの問題や簡便さ(儲からないといった大人の事情もあるだろう)から、投与するだけですむ簡便な抗うつ剤がより多く使われるたりする」というのを読んだことがあって、MENDプログラムも、そんな感じになりはしないだろうかという危惧もある。
このMENDプログラムは単に承認される以上に、マニュアルや指導者の教育など、普及させていく側の仕組みづくりが核心的な鍵ととなってくるように思う。
私が言うまでもなく、ブレデセン博士はマニュアルやシステムを作り上げており、厳格な臨床試験を実行していくとともに、普及活動へと足を踏み出そうとしている。
病院は必要ない?
もうひとつ驚くべきことは、この25の治療法は、検査を除けば何か特殊な器具や処方の必要な医薬を使っているわけではなく、みなサプリだとか運動だとかストレスを減らすとか、個人が探索したり努力さえすれば、入手可能、実行可能なものばかりだ。
特許薬を使わないというところにも、このMENDプログラムの特異性がある。つまり製薬会社にお金が入らないということが、儲けるという社会の仕組みの中で、普及に足を引っ張るかもしれない。
しかし、別の見方をすれば、このプログラムは医療機関の承認は待たずとも今すぐ実行できるともいえる。
というかMENDプログラムの多くの要素が、むしろ、本来患者自ら、または家族の側で実行していく類のものではないだろうか。
※これは私が言っていることで、ブレデセン博士が言っていることではない。
全部まとめてやってしまう?
このMENDプログラムに厳密に従うならパーソナライズしていくための検査と診断などは、医療機関でしてほしいところだが、私が見た限りでは検査に合わせて厳格に調整しなければならないような治療項目は少ない。
また仮に検査項目を無視してプログラムに書かれてあることを全部を実行したとしても、特に何か重大な副作用などの問題が生じるような項目があるようにも思えなかった。
※ただし、3型の重金属と生物毒性、閉塞性無呼吸症候群には例外で、通常の方法とは異なる特異的なケアが必要。
今すぐ実行できる
この今すぐ自分で実行できるというのは非常に大事なことなのだ。
新聞やテレビに耳を傾けていると、アルツハイマー病が治る!とかいった希望をもたせるような報道をよく聞くが、そのことが何十回いや何百回繰り返されてきただろうか?
そして、万が一完治できるような薬ができたとしても、それが承認されるまでにはどんなんい早くても数年単位先の話しであるため、今若年性アルツハイマー患者だと診断された人たちには、希望をつなぐニュースにはまったくならない!
自分なりの考えを述べておくと、認知症に対してアリセプトよりもちょっとまし程度の薬であれば5年、10年ぐらい経てばでてくる可能性はあると思う。しかし完治に近いレベルの薬は、少なくともむこう10年は出てくることはないだろう。
たぶん、そう思っている医療研究者もそれなりにいると思っているけど、患者さんの希望を砕いてはいけないという心理が働いて、文字通り言葉だけの希望が世の中に蔓延してしまっているようにも見える。
自分の意見が間違っていることを切に願っている。
医療制度への疑念
少し話を広げると、このMENDプログラムが現代医療の仕組みや制度になじまないということに、何か今の医療制度の問題点が要約されているようにも感じる。
まだ、これを言うのが早計なのではあるが、もしこのMENDプログラムの事例の有効性が本物であれば、何十年と薬や治療法の開発にうん千億円とかけて、ぶっちゃけて言えば、既存の昔からある機能性食品や健康法を組み合わせただけの手法に劣るわけである。
とはいえ、誰が悪いんだ、みたいな観点で語るなら、医療制度だけがおかしいとも言えない。
アナログな治療法を、治療として採用することがない医療制度に問題があるとも言えるし、健康法などは個人で取り組めるのだから、それぞれを自分で取り組まない個人の考え方に問題があると考えることもできる。
また、そういう可能性について、もっときちんと伝えない社会全体に問題があるという考え方もできる。
こういう責任追及にそれほど生産性はないかもしれないが、個人的な感想としては、「まあ患者も医者に下駄を預けすぎだよなあ」という感覚はある。
感想のまとめ
・MENDプログラムは、単にアルツハイマーを治す治療法だけではなく、現代医療の手法に対して異議をとなえている側面がある。
・ただ、あまりそっちの方向を強調すると、目の前のアルツハイマー病患者を救うことがぼやけてしまう危険性もあるため、自分の場合そのあたりの主張は控えめにしているし、おそらくブレデセン博士も同じことを考えているような気がする。
・しかし、その手法はあくまで生化学的な分析的アプローチによる。東洋医学と西洋医学のハイブリッド型の統合医療と言えるかもしれない。
※従来の統合医療は東洋医学と西洋医学の単純な組み合わせであり、東洋医学に関して分析的な視点が必ずしも必要とされていたわけではない。
・正式なMENDプログラムの実行には、個人に合わせてパーソナライズする必要がある。
・アルハカの意見だが、検査項目に関しては、自分で検査機関に依頼して可能なものもあれば、そうでないものもあるが、いずれにしてもサプリメントが中心となっているため、独学でも、大きなリスクなく実行が可能であるという印象をもっている。
・MENDプログラムの本質的な理念は、何々のサプリを摂るかということではなく、(それも大事だけど)
複合的な分析 → パーソナライズされた治療法 → 複合的な治療
というコンセプトが基本にある。
そのためか、個々の改善策についてはまだまだ工夫の余地があるように見える。
そして実際にMENDプログラムも生命のように進化を続けている。