鉄分がアルツハイマー病を引き起こす?

アルツハイマー病と鉄の関係

※ 免責事項を先にお読みください。

概要

はじめに

アルミニウムがアルツハイマー病を引き起こすかもしれないという仮説は有名だが、鉄分がアルツハイマー病を引き起こすかもしれないという仮説は、ほとんど知られていないように思う。

女性は特に「鉄は意識してたくさん摂らないといけないミネラル」ぐらいに思っている方も多いのではなかろうか。

鉄は必須ミネラルとして酸素の輸送や、細胞の増殖、細胞周期など深く代謝と関わっている。

鉄は神経細胞のミエリン鞘の合成にも必須の材料でもあるため、極端に不足すると脳の回復が難しくなってしまう。酸素を使った好気性回路が機能不全に陥り、酸化ストレスも生み出す。

鉄の適正量の難しさ

鉄は扱いの難しいミネラルであることには間違いない。もちろん一定量必要であることは確かなのだが、どれくらいが最適なのかとなると非常に判断が難しく、研究者の間でも議論が別れている。

多くてもダメ、少なくてもダメは当然としても、多少の欠乏にさえ、その人の生活環境、疾患などによってはメリットもある。

鉄分は人間、動物、植物だけではなく細菌にとっても重要かつ希少な資源であり、細菌の宿主であるわれわれも細菌たちに鉄分をとらせまいと、ありとあらゆるメカニズムを進化させてきた。

感染時には、体内温度を上げて活性酸素を増やし細菌を撃退しようとするだけではなく、白血球内因性媒介物質(LEM)を分泌し血中の鉄分を大幅に減らそうとする。

感染がおこると腸からの鉄分吸収量が減少することもわかっている。

インフルエンザと闘っている最中には、ハムや卵のような鉄分の多い食品は、ムカつきやすかったりもする。

実際にアフリカの多くの民族は体内の鉄を低い状態に保つことで、寄生虫や細菌感染から身を守っている。

ある研究者が、ソマリの遊牧民の鉄分レベルが低かったので、鉄分を与えたところ、8%だったアメーバ感染率が一ヶ月後には38%に上昇した事例がある。。

さらに、マサイ族へ鉄剤を与えた事例では、アメーバ感染率が10%から88%にまで上がってしまった!

その他にも、母乳に含まれているラクトフェリンには鉄キレート効果があるが、これも鉄を奪うことで細菌増殖を抑制し、免疫が未熟な新生児を守るためだと考えられている。

牛乳にはラクトフェリンが2%しか含まれていないため、牛乳で育てられた赤ちゃんは病気に感染しやすくなることが知られている。

鉄摂取の是非は、賛否両論が別れるゆえんでもある。

過剰な鉄は排出されない

鉄の補給や排出にも難しさがある。鉄は他の栄養素と異なり能動的な排出経路を持たずに、ずっと鉄を体内でリサイクル利用する。そのため、身体が、「鉄が多すぎる!」と思っても体外へは自動排出されない。(汗や皮膚代謝でほんのわずかには排出される)

鉄のバランスは小腸から鉄吸収をさせないようする方法と、血中に入ってしまった過剰な鉄はフェリチン/ヘモジデリンという格納庫に収める、といった消極的な方法でしか制御できない。

そのため、鉄過剰の問題は深刻となりやすく、血清鉄やフェリチン値が病院では標準範囲内であっても鉄過剰のリスクは存在する。

「鉄剤などの摂取はもっと慎重に行われるべき」という鉄代謝を専門に研究している学者の意見は多数あるのだが、このことを知らない医者も多い。

鉄は多くの疾患と潜在的に関わっている

鉄の過剰問題はアルツハイマー病などの神経変性疾患を抱えた人たちだけでなく、ガンリスクの増加、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、免疫機能の低下など、健康な若年者や高齢者であってもリスクとして関係してくる。

鉄の蓄積とアルツハイマー病を含む神経疾患の関係は、20年以上前から研究者によって関連が示唆され続けてきた。

しかし、これまで研究結果の不一致ということもあり、(鉄の過剰症患者がみな神経疾患を引き起こすわけではない)それほど強く取り上げられなかったのだが、MRI技術の高度化により(MRIで脳組織が過去に鉄障害を受けたかどうかを診断できるようになった)少なくとも脳の鉄沈着と神経変性疾患、通常の老化も含め強い相関関係があることがわかってきた。

アルツハイマー病は鉄過剰というより鉄不均衡

少なくとも、アルツハイマー病の場合、単純に鉄の過剰が原因となっているわけではなく、おそらくは脳の鉄ホメオスタシス作用を担う機構のいくつかが損傷している可能性がある。

そして、そのことにより脳の部位によって鉄蓄積と枯渇といった鉄の不均衡が生じていることが、アルツハイマー病と関係する鉄過剰症の問題の根幹だろうと推測されている。

対照群と比べたアルツハイマー病患者の脳鉄濃度の増加部位

そのことから考えていくと、鉄恒常性機能の修復または、鉄の恒常性調節を担う因子を補強していくようなシステミックな治療が、アルツハイマー病患者においては必要かもしれない。

しかし、現状の段階ではそこまでの治療研究は行われておらず、実際問題としては鉄をなるべく摂取しない、鉄キレート剤などを利用して、体内の血清鉄やフェリチン濃度を減少させていくことで、還元剤などで生体不安定鉄の総量を減らしていくなどといったことが治療方法として提案されているようだ。

(アルツハイマー病の創薬研究でも、鉄キレート剤を使った研究がなされている)

最後に

鉄代謝とアルツハイマー病をまとめるほどの力量はないので(汗)、いくつか、関連論文を紹介しながら、調べたことも含めメモ書きとして書いていきたい。

アルツハイマー病と鉄 生化学

難しくなってしまうが、鉄代謝や、鉄キレートの特性を理解しようと思うと、基本用語がわかってないとどうにもならない。

わかりやすさ優先で当記事に即してざっくりと書いているので、正確には他の専門サイトなどをあたってください。

鉄代謝 基本用語

二価鉄 危険な鉄

不安定で毒性が強い。

細胞膜の通過、細胞内での酸化、還元反応などの触媒で一時的に出現する。

そのため危険といっても、鉄代謝には必須

二価鉄と三価鉄は平衡状態にある。(三価鉄が増えると二価鉄も増える)

三価鉄 安定した鉄

生体内の鉄は、ほとんどが安定した三価鉄として存在している。

体内で移動する時には運び屋が必要。

トランスフェリンと強力に結合する。

ヘム鉄 肉の鉄

二価の鉄原子とポルフィリン

ヘムタンパクに囲われた鉄のためヘム鉄という。

赤肉、魚など含まれる、非ヘム鉄と比べ吸収力5倍、

非ヘム鉄 野菜の鉄

野菜に含まれる三価鉄、吸収には三価鉄から二価鉄へ還元する必要がある。ビタミンC、酢、胃液など。

トランスフェリン (Tf)鉄の運び屋

血中で3価の鉄と結合して輸送を担うタンパク質。いわゆる血清鉄はこのトランスフェリンと鉄の複合体をさす。脳への輸送も行う。

トランスフェリン受容体1(TfRA1) 鉄の受け取り

トランスフェリンを細胞内へ取り込む受容体

セルロプラスミン(Cp) 銅の運び屋 & 二価鉄を三価鉄に

肝臓で産生されるタンパク質で銅の運搬と代謝、鉄の代謝(二価鉄→三価)に関与している。血清銅はセルロプラスミンと結合している。

ヘファスチン(Hephaestin Hp)  セルロプラスミンの仲間

セルロプラスミン同様三価鉄に酸化させる。フェロポーチン1と協力して鉄排出を媒介する。

フェロオキシダーゼ 二価鉄 → 安定鉄に

二価の生体不安定鉄はフェロオキシダーゼによって酸化活性され、トランスフェリンに移行する。

GPI結合型セルロプラスミン(GPI-Cp)

GPIは細胞膜への結合に用いられる糖脂質、GPI結合型Cpがないとフェロオキシダーゼ活性が欠損する。

ヘプシジン  鉄の排出を抑制(細胞から)

IL-6によって肝臓で合成されるホルモン、マクロファージからの鉄排出を抑制、腸管からの鉄吸収を抑制、炎症 → IL-6 → ヘプシジン産生 → 赤血球減少 → 貧血

ヘプシジンの分泌が亢進すると、ヘプシジンがフェロポーチンを分解に導く。ヘプシジンは体内の鉄量を需要に応じて調整する因子であり、複数の要因によって増加する。(炎症、鉄濃度の飽和、造血、低酸素等)

ヘプシジンを阻害することで、細胞内の鉄排出を促すことができる。

フェロポーチン(Fp) 鉄の排出を促進(細胞から)

血管上皮に存在し、細胞外へ鉄を排出する役割をもつ。ヘプシジンはこのフェロポーチンにくっつくことで鉄の放出を抑制する。

鉄を細胞外へ輸送するためのタンパク質、APPはこのフェロポーチンを細胞表面上に固定するのに役立つ。βアミロイドペプチドが細胞表面上のAPPの量を減少させ、フェロポーチンの細胞表面上への固定能力も低下させる。→ 細胞内の鉄が上昇 → フリーラジカルにより細胞損傷が亢進(アルツハイマー病患者に見られるニューロン損傷)

ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1) 遊離ヘム除去係

ヘム分解の律速酵素、ヘムタンパクから遊離した遊離ヘムを除去することで酸化ストレスに対抗する。代謝産物も細胞保護的に機能する。

鉄トランスポーター1(DMT1) 二価鉄の受取屋

非ヘム鉄と、二価イオン(Zn、Mn、Cu、Co)を細胞内へ取り込むトランスポーター、腸管からの鉄吸収をコントロールする。脳にも発現していて、パーキンソン病の黒質鉄過剰とも関係している。

ヘムキャリアープロテイン(HCP-1) ヘム鉄の受取屋

ヘム鉄を上皮細胞内に取り入れるトランスポーター、葉酸の輸送体でもある!?

不安定鉄プール Liable Iron Pool(LIP)

細胞内で使われるフリーの二価鉄の分画

(DNA合成と修復、細胞周期、ミトコンドリア、ヘム合成、鉄貯蔵)

フェリチン(FPN) 鉄の貯蔵庫

トランスフェリンによって運ばれた鉄を細胞内に貯蔵する鉄の貯蔵庫。貯蔵庫に入れておくことで過剰鉄によって組織が障害されないようにする機能もある。

体に炎症があると細胞内のフェリチンは増加する。

ヘモジデリン hemosiderin フェリチンが重合(悪)

フェリチンや崩壊したヘモグロビンなどの混合物

IRP1、IRP2

フェリチンの発現調整を通して、鉄代謝をコントロールするRNA結合タンパク質

IRP2が中心的に働いている。

生体不安定鉄 (非トランスフェリン結合鉄 NTBI) 

主にトランスフェリンとの結合能を超えてしまい飽和したフリー鉄をさす。(本当に危険な鉄はオキソ架橋二核鉄(III)かもしれない。)

生体不安定鉄の生成と毒性の発現機構(pdf)

フリーラジカルが発生し、細胞小器官の機能障害、最終的には細胞傷害、DNA障害、臓器線維化、発癌などにいたる。

フェロトーシス 鉄による自殺

細胞内鉄がもたらす特定の細胞死、アポトーシス、オートファジーとは異なる細胞死経路。

※フェロトーシスを利用して癌細胞を殺す研究がある。

フェロトキシンは、エラスチン、スルファラジン、RSL3などの多様な小分子によって誘発され、トロロックス(水溶性のVEアナログ)やビタミンEなどの親油性抗酸化物質やデフェロキサミンなどの鉄キレート剤によって阻止することができる。

 

 

アルツハイマー病と鉄の関連

脳内の鉄は、健康な人であっても年齢とともに上昇する。(下記図参照)

鉄代謝の調節不全が、アルツハイマー病初期に起きているという証拠は積み重なってきている。

また鉄ホメオスタシスバランスの崩れと、アミロイド班形成はお互いに因果的な作用をもつ。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4672943/

脳内の鉄量と年齢の関係

アミロイド班の形成と鉄の取り込み図

三価鉄はアルツハイマー病初期の段階では、βアミロイドと相互作用し、モノマー、二量体、四量体形成の間で変動する。

鉄とアミロイドの相互作用が二価鉄を増加させ、ROSの発生につながる。

アミロイドプラークが成熟すると、脳機能に必要な三価鉄を枯渇させ、二価鉄を増殖させる働きをする。

脳の鉄濃度が、アルツハイマー病患者の疾患進行を予測する。

脊髄液中のフェリチン濃度がAPOE4遺伝子陽性の認知低下と強く関連している。すでに確立されているバイオマーカー、タウやアミロイドβよりもフェリチンとの関連がはるかに大きい。

www.medscape.com/viewarticle/874539

鉄とアルツハイマー病 動画

錆びてしまった脳の中を見てみる(英語)

鉄はアルツハイマー病に寄与するのか


ショッキングなことに65歳を超えた健常者の30%はアルツハイマー病ではなくとも、アルツハイマー病患者と同じレベル(PETスキャン)でアミロイドが蓄積している!

これはアミロイドが単独で認知機能の低下をもたらしているわけではないことを示唆する。


左から

アルツハイマー病の

・臨床診断は正常、病理も正常

・臨床診断はAD陽性、病理は正常

・臨床診断は正常、病理には問題あり

・臨床診断はAD陽性、病理にも問題がある人(組織に含む鉄の量が多い)


(赤色ライン)脳組織に鉄を多く含むアルツハイマー病患者の認知機能(Zスコア)低下は早い。

黄色ラインは中程度、青色ラインは少ない脳内鉄の保持者


 
脊髄液の鉄量が低いグループと高いグループでは、認知機能低下の速度がほぼ2倍異なる。
 
 

アルツハイマー病 鉄の神経化学、治療標的

onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jnc.13425/full

一般的な鉄の役割

酸素輸送、ミトコンドリア呼吸、細胞増殖ならびに分化、金属酵素の活性部位

神経系に関する鉄の役割

ミエリン合成に必須、神経伝達物質の合成および代謝

一般的な鉄過剰の問題

フェントン反応によるヒドロキシラジカルの生成

→ DNA損傷、タンパク質損傷、過酸化脂質、その他のROS生成

神経変性疾患における鉄ホメオスタシスの変化

正常な老化であっても、脳における進行性の鉄蓄積が生じる。

黒質、被殻、淡蒼球、尾状核、皮質などの脳領域内で鉄蓄積が顕著に見られる。

神経変性と鉄の強い相関が見られる脳部位

脳神経、淡蒼球、黒質、小脳

鉄の蓄積は、老人斑、神経原線維に限定されない。

老化とともに脳内の鉄が増加する。頭頂皮質、運動皮質、海馬

アルツハイマー病患者の末梢血単核細胞において、アコニターゼ1、セルロプラスミン、APPが減少し、細胞からの鉄排出が抑制されている。

酸化還元金属が存在しない状態では、アミロイドβの毒性はない。アミロイドβの凝集には金属が必要。

鉄はアミロイドβペプチドだけでなくタウにも結合し、リン酸化に影響を与える。

神経原線維変化のタウ蓄積は、細胞質基質のヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)増加と関連している。

HO-1は第一鉄(二価鉄化合物)の放出に寄与し、酸化ストレスにつながる可能性がある。

アルツハイマー病患者の全脳における鉄の単独増加が、必ずしも脳内の酸化ストレスの誘発するというわけではない。

むしろ鉄恒常性の不均衡が問題。

鉄過剰環境において、アミロイド班、神経原線維変化周辺に酸化ストレスおよび、細胞死をもたらし、他の脳領域は反対に鉄を奪われることによって、神経機能を損なう可能性がある。

高齢の健常者では、ニューロンの不安定鉄プール(LIP)の増加に応じて、鉄を取り込んだり、貯蔵、排出に関わる鉄応答タンパク質(IRP1、IRP2)が応答する。

アルツハイマー病患者では、タウの過剰リン酸化と、それによる神経原線維変化凝集が可溶性タウプールを減少させることによって、ニューロンの鉄排出能力が低下する。

GPI結合セルロプラスミンがないと、鉄の輸送に必要なフェロオキシダーゼ活性が欠損し、細胞膜のフェルロポルチンがすぐに分解されることで、細胞外への鉄排出が阻害され、細胞内に鉄が蓄積される。

また、局所的な鉄の蓄積によって鉄を奪うことにより、他の脳部位における鉄の枯渇をもたらすことも神経変性にむすびつく。

脳の鉄濃度は、翻訳レベルでAPP発現を調節するため、ニューロン中の鉄濃度の増加は、アミロイド形成プロセシングにより、潜在的にアミロイドβ産生を増加させる。

(鉄は、APPのαセレクターゼ切断に対して調節作用をもつ。)

重要なことは、恒常性としての鉄欠乏を引き起こすことなく、特定の脳領域から鉄を除去すること。

www.fbs-wp.leeds.ac.uk/blogs/dementia/resource-map/iron-regulation-in-alzheimers-disease/

鉄の過剰部位

アルツハイマー病患者は、被殻、脊柱視床、赤核、海馬および側頭皮質において鉄濃度が上昇している。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23942230


死後、アルツハイマー病患者は健常高齢者に比べ前頭皮質に鉄が多く蓄積

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26721301

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26881049

アルツハイマー病患者の病変部である海馬に大量の鉄が含まれている。


死後の脳への鉄の蓄積、前頭側頭葉変性症のみ有意に過剰蓄積

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24698410


アルツハイマー病患者の鉄過剰は、血中にある鉄輸送を担うトランスフェリンの機能不全が関与している可能性。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22635102


脳脊髄液中のフェリチン濃度とMCIからADへ移行は強く関連、認知能力とは逆相関

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25988319

アルツハイマー病患者の鉄・ミネラルバランス

AD患者の毛髪は対照群と比べ、有意にセレニウムと亜鉛が低く、銅とマンガンが高かった。鉄とマグネシウムの違いに有意差はなかった。MMSE、性差による違いも有意差はなかった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26738344


銅、鉄、およびセレンの濃度とアルツハイマー病との関係

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28500578


レビー小体型認知症、死後の脳組織には健常者より銅が少なく鉄が多かった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25024342


メタアナリシス AD患者の血清鉄は健常者よりも有意に低い。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24916541


アルツハイマー病患者の毛髪に含まれる微量元素

対照群と比べ亜鉛が有意に低く、マンガン、銅濃度が高かった。鉄とマグネシウムに有意差はなかった。

血清成分の銅、セレン、亜鉛、マグネシウム、マンガン、鉄濃度は認知機能や性別による差はなかった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26738344


アルツハイマー病患者と健常者の血清鉄、フェリチン濃度に有意差はない。

グレード2のアルツハイマー病患者の平均血清鉄濃度は有意に低い。

jpma.org.pk/full_article_text.php?article_id=4022

治療戦略

通常の鉄代謝障害を抱えている場合、(遺伝性鉄過剰、非遺伝性鉄過剰、遺伝性ヘモクロマトーシス等)それに沿った治療法を選択する必要がある。

アルツハイマー病においては、局所的な鉄の蓄積を除去して、再分布させることを主要目標とすべきかもしれない。

ヘプシジンの抑制がその役割を担うが、血清鉄濃度を下げることは強力にヘプシジンを抑制するため、結果、通常の鉄キレート治療が鉄の再分布を促し治療効果をもつことになる。

再分布の観点からは、鉄キレート期間と、鉄補充期間を定めて、キレーションサイクルを繰り返す必要があると思われる。

細胞内の鉄バランスを維持

恒常性のバランスは、輸送、摂取、貯蔵、利用、レドックスサイクリング、および輸出の6つの異なるプロセスによって調整されている。

細胞内の鉄バランスを変更する3つの方法

1 細胞内に入ってくる鉄の量を調整

・鉄キレート、血清鉄↓、フェリチン↓、ヘモジデリン↓、

・脳鉄はTfR1とDMT-1によって取り込まれる。

・鉄制限食、鉄の吸収阻害

2 細胞内に蓄えられている鉄の量を調整

・拮抗ミネラルの摂取

・可溶性タウタンパク質プールの回復

・NFTを減らす

3 細胞内の鉄を排出させるよう調整

・ヘプシジン↓、フェロポーチン↑

・GPI結合セルロプラスミン↑

その他 生体不安定鉄(NTBI)を減らす

三価鉄を減らす → 危険なフリーの二価鉄も減少 → もっと危険なオキソ架橋二核鉄(III)もおそらく減少

トランスフェリン↑

セルロプラスミン↑

フェロオキシダーゼ↑

ヘモジデリン↓

低酸素誘導因子の調整

HIF-1、NO、

※セレギリンはHIFおよび、HIF活性成分をアップレギュレートする。

ヘプシジンを標的とした疾患治療

アルツハイマー病患者ではヘプシジン濃度が、健常者より3倍高い。

ヘプシジン濃度と、アルツハイマー病患者の重症度は相関。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5362180/


アルツハイマー病患者の認知評価試験と臨床データ、神経画像との相関

血清Fe - CDRSOB r=0.387  p=0.009

血清Fe - CDR r=0.361 p=0.015

血清Fe - MMSE  r=-0.269 p=0.064

飽和率 - CDR r=0.355 p=0.019

飽和 - CDRSOB  r=0.319 p=0.042

ヘプシジン - CDRSOB r=0.329 p=0.03

ヘプシジン - MMSE r=-0.253 p=0.09

Aβ40-CDRSOB r=0.321 p=0.04

画像、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はad-8-2-215-g4.jpg

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4998755/

ヘプシジン-フェロポーチン軸の鉄ホメオスタシス調節を標的とした鉄関連疾患治療

ヘプシジン産生は、細胞からの鉄排出は抑制されるが、鉄吸収は促進されるため血中のヘム鉄は逆に増えて赤血球の鉄分過剰となる。

逆に、ヘプシジンを抑制すると細胞からの鉄排出は促進するが、鉄吸収は抑制されるため、血清鉄を測ると貧血となる。

わかりやすく書くとこんな感じ。

鉄過剰 → ヘプシジン産生↑ → 腸管からの鉄吸収↓、細胞内の鉄を貯蔵

鉄欠乏 → ヘプシジン産生↓ → 腸管からの鉄吸収↑、細胞内の鉄を排出

ヘプシジンは体内の鉄量によって強くコントロールされているが、ヘプシジンを意図的に抑制することで鉄の再分布を狙った治療戦略が可能になる。

ヘプシジン発現に関わる因子

・鉄濃度↑

・ホモシステイン↑

・低酸素症↑

・骨形成タンパク質シグナリング(特にBMP6)

・stat3シグナル伝達経路↑

・リポ多糖類(LPS)↑

・Stat3↑

・エストロゲン↓(ヘプシジンをダウンレギュレートする。)

・非アルコール性脂肪肝疾患(NASH)、慢性腎不全、骨髄芽球性貧血、貧血、↑

・HSP70↑(赤血球のアポトーシスを増強)

・炎症 IL-6、↑ → Stat3シグナル伝達 → ヘプシジン転写の亢進

・IL-22、(IL-6と同様)

・IL-1β → 肝細胞からのBMP2発現、アクチビンB増加

ヘプシジン拮抗薬(ヘプシジンを減少)

ビタミンD

フルスルチアミン(ビタミンB1誘導体)

・漢方 和名:鶏血藤 Caulis spatholobi (中国名 Jixueteng

Smad 1/5/8リン酸化の抑制を介しプシジン発現を阻害する。

17-エストラジオール

・トシリズマブ (IL-6Rモノクローナル抗体)

・NOX-H94(lexaptepid pegol)(抗ヘプシジン薬)

・Anticalin PRS-080(貧血治療薬)

・ヘパリン(強力)抗凝固薬

・増殖分化因子15(GDF15)(PPARα、γの下流)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4009444/

外因性の鉄キレート

献血

一番現実的で効果的、おまけに人の役にも立つ。侵襲性があるため体力的に健康で、食生活がきちんとできていること。

500ml献血で200~250mgの鉄分を除去できる。

健康な男性では50ng/mlの血清フェリチン濃度が減少

瀉血

ヘモクロマトーシス患者が貯蔵鉄を取り除くには一番簡単な方法。またアルツハイマー病患者においても、合理的で安価な治療方法となりうる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19195795

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2732125/

個人で行うには

伝統療法のひとつカッピングによる瀉血が、合法的?にできるが、施術一回で抜ける血は30cc程度、数十回は最低でも繰り返す必要がある。

激しい運動

スポーツ貧血

赤血球の材料となる鉄の必要量が増えることで相対的に鉄が減少、発汗に伴う鉄の消失、継続的に行う必要あり。

鉄キレート剤

クリオキノール(キノホルム)抗原虫薬

第二相臨床試験で、クリオキノールがアルツハイマー病型認知症の認知機能低下を抑制している。

medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/282267.html

デフェリプロン (DFP or L1)

三価鉄と親和性、BBBを通過、細胞膜透過性をもつ。脳の特定部位から遊離鉄の除去能力をもつ。副作用としては、亜鉛欠乏症、肝毒性、無果粒球症をもつ。

DFPとDFOと併用療法がいずれかの単独投与より効果的であり、QOLを維持するという研究報告がある。

デフェリプロンは脳内の鉄濃度に変化を及ぼさなかった。血清鉄とコレステロール濃度を低下させた。抗酸化剤との併用を推奨。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22406440

デフェラシロクス(DFX エクジェイド)

肝臓鉄は除去するが、脳鉄は直接的には除去しない。しかし蓄積した脳鉄を再分布する可能性がある。(アルツハイマー病の脳鉄不均衡に有効)

BBBは通過しない。細胞膜透過性をもつ。三価鉄と親和性が高い。細胞外で作用。

ラクトフェリンと結合させて細胞浸透させる創薬研究がある。

デフェロキサミン(DFO)

1961年に開発された古い薬。通常注射製剤、

BBBを通過しない。脳内へ作用させるために鼻腔投与されている。

PBT2

クリオキノール、PBT1の改良版

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24563468

EDTA

三価鉄と結合してキレート、iHerbで入手が可能。

鉄以外のミネラル(カルシウム、銅、鉄、銀、ジルコン、マグネシウム)もキレートされてしまう。特に銅、鉄、コバルトと強く結合。

細胞内には侵入できない。

ラサギリン

モノアミンB阻害剤(不可逆)パーキンソン病の治療薬として知られているが、鉄キレート作用もある。

その他、前頭皮質においてHIF-1α(低酸素誘導因子)をアップレギュレート、BDNF、VEGF増加、ペルオキシナイトライトよる細胞障害の防御、APP発現の調節など、多くの神経保護活性をもちあわせる。3型に有効かもしれない。

Feralex-G

細胞内の三価鉄とアルミニウムをキレートする。インビトロでROS誘発遺伝子発現を抑制する。神経変性疾患に有望とされている新しい合成キレーター

糖化反応阻害剤 各種
メトホルミン、アミノグアニジン、ベンフォチアミン、ピリドキサミン、αリポ酸、
 

キレート剤と相乗効果が考えられる抗酸化剤

・Nアセチルシステイン

・αリポ酸

・カフェ酸(コーヒー)

・COQ10

・ラサギリン

・ミノサイクリン

鉄キレート ハーブ

サルビアノール酸A

サルビアノール酸Aは、アミロイドβを著しく阻害、フィブリルを分解、金属イオンをキレート。アルツハイマー病の有望な治療薬

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23703159

イカリソウ?

イカリソウハーブmilkvetchルートとkudzuvine根から抽出した成分が過剰な鉄によって引き起こされる中枢神経機能障害の低下を軽減

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26109953

レスベラトロール(デフェリプロンとの併用)

デフェリプロン(鉄キレート)とレスベラトロールのハイブリッド効果

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28061347

ヒューペリジンA

ヒューペルジンAは過剰鉄による神経細胞の生存率低下を減少させた。不安定鉄プールアップレギュレーションと鉄過剰によって誘導される他の異常な鉄代謝変化を有意にブロックした。これらの効果はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の効果とは関連していない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27498774

ミルクシスル(まりあざみ)

シリマリンが鉄キレート剤であるデフェロキサミンとの併用で、鉄過剰の患者の鉄を減少させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23278124?dopt=Abstract


ミルクシスルに含まれるシリビンが、食事に含まれる鉄を吸収し、水やお茶よりも強くキレートする。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20628405

バイカリン(オウゴンエキス)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15733556

EGCG(緑茶)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17447435

クランベリー

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17992280

ケルセチン・バイカリンなどのフラボノイド

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16527270

ルチン(韃靼そば)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24486341

ゲニステイン(大豆イソフラボン)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17391639

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16915855

クルクミン(ターメリック)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18815282

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18324353

鉄吸収を抑制・阻害する食品・栄養素

栄養素・薬

・カルシウム

・ビタミンA

・制酸薬

食品

・大豆タンパク質

・牛乳、卵

・お茶、(タンニン、EGCG)

・野菜・果物 (ポリフェノール)

・マメ科植物、全粒粉、ナッツ(フィチン酸縁)

鉄を増加させる要因

鉄の多い食品

鉄を非常に多く含む食品

モツ、豚レバー、鶏レバー、卵黄、乾燥豆、ココア、サトウキビの糖蜜、パセリ、ひじき、アサリ、赤貝

野菜の鉄吸収率は1~10%

肉類の鉄吸収率は5~20%

鉄が中程度に多い食品

肉、魚、木の実、全粒粉の小麦粉、緑色野菜、

鉄の吸収を促進する栄養素

タンパク質、メチオニン+システイン、システイン、クエン酸、柑橘系ジュース

鉄を多く含むサプリメント

スピルリナ、クロレラ、モリンガ

ヘプシジン アゴニスト 

ヘプシジンが上昇すると、鉄吸収は抑えられるが鉄排出は抑制される。

ゲニステイン

コーヒー、そら豆、クズ、大豆などに含まれる

ヘプシジンが豊富な食品リスト

dietgrail.com/genistein/

イカリイン

肝臓のへプシジン濃度を上昇させる。

BMP6

主に鉄過剰 → BMP6発現 → ヘプシジン発現

その他

ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を増加させる。

・鉄と亜鉛を同時摂取すると、亜鉛の吸収が妨げられる。

・フェリチンはアルミニウムも結合できてしまう。そのため鉄が低値だとアルミニウムの吸収が増加する!

アルミニウムの吸収を妨げる今はやりのケイ素ウォーターが役に立つかもしれない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23103708

・重度の鉄欠乏性貧血は、甲状腺ホルモンの産生を損なう可能性がある。一般的に日本人はヨウ素欠乏はあまり見られないないが、普段、海藻類を食べない人は注意したほうがいいかもしれない。ヨウ素サプリメントによっても補充できる。

脳鉄 蓄積症の原因遺伝子

FA2H、C2orf37、C19orf12

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