グルテン・セリアック病・認知症 関連研究のまとめ

グルテン関連障害の症状・検査・診断・治療

免責事項をお読みください。

概要

グルテンとは

グルテンとは小麦に含まれるタンパク質の一種。

グルテンは何百もの複雑な混合物であり、主にグリアジンとグルテニンの混合で構成されている。

ライ麦のセカリン、大麦のホルデイン、オート麦のアヴェンジン、などもすべて総称としてグルテンと呼ばれる。

ライ小麦、麦芽、カムートにもグルテンは含まれ、セリアック病を引き起こし、免疫を刺激することができる成分として同定されている。

グルテンタンパク質はイオウの含有量によって異なるサブグループに分類され、さらにタンパク質の一次構造に従って、α、β、γ、ωグリアジンに分類される。

グルテンはパンなどの生地の状態や品質に不可欠な要素。

グルテンは熱に対して安定しており、結合剤、増量剤、テクスチャー、保湿、風味を改善するために加工食品の添加剤として一般的に用いられる。

そのためグルテンはパンだけではなく、加工肉、魚介の加工物、ベジタリアンの肉代用物、アイスクリーム、バター、調味料、マリネやドレッシングの増粘剤、乳化剤、ゲル化剤、投薬、お菓子に使用される充填剤およびコーティング剤、としても用いられることがある。

西洋食での平均的なグルテン摂取量は5~20g/日

グルテンの毒性成分

グリアジン

「gliadin」の画像検索結果

グリアジンは胃腸管でのタンパク質分解酵素による消化に対して強い耐性をもつ。

これはアミノ酸プロリン、グルタミンのペプチド配列がプロテアーゼによって切断できないためである。

プロリンが豊富な残基が、セリアック病の有害な免疫応答を媒介することができる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28244676

 
グルテンのオピオイド誘発作用(中毒作用)

グルテンはグルテンエキソルフィンとよばれるモルヒネ様物質に分解することがありオピオイド作用をもつことが実証されている。このオピオイド作用がグルテンタンパク質が消化管の内層や機能に与える有害作用を覆い隠す可能性がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26825414/

現代の小麦と古代の小麦は毒性が異なる

「kamut grain」の画像検索結果

古代の小麦カムート、ホラーサーン小麦の健康効果、低炎症性

ただしNCGSにとって有毒性をもつグリアジンは多く含む。

http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/09637486.2016.1247434

http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(05)01119-4/fulltext?referrer=https%3A%2F%2Fwww.ncbi.nlm.nih.gov%2F


ヒトツブコムギ などの古代の二倍体小麦種は現代の小麦と比べてセリアック病患者にとって毒性が低い。つまり品種改良された現代の小麦は少なくともセリアック病患者にとっては毒性が高い

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26016626/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27993525/

オートムギ(オーツ麦)は安全なのか?

「oat」の画像検索結果

多くのセリアック病患者ではオート麦摂取後のアベニンに特異性のあるT細胞反応の割合が低い。しかし一部のセリアック病患者では敏感な障害の反応を示す。

そのため、グルテンフリーにオート麦を加えるべきかどうかについては論争中となっている。


オート麦は、セリアック病患者が長期間消費しても安全

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28617328

疫学

NCGSの有病率は0.6~6%と10倍の差がある。一般集団におけるNCGS有病率の推定値は1%。これは症状のみに基づく高い推定値であると思われる。

有病率のバラ付きはバイオマーカーの欠如によるものと思われる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23155333/


日本人の非臨床集団でのセリアック病(CD)保有者は0.05%と少ない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28389733


セリアック病診断時の年齢が低いと、グルテンフリー食による腸粘膜の回復が容易、メタアナリシス

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29095937


非セリアック グルテン感受性患者は米国市民の6%。信頼の高い臨床検査は存在するが、信頼性のあるバイオマーカーはなく、NCGSの影響を有する個人を診断することは複雑である。

図1

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29142467


グルテン感受性の自己報告による有病率は13%(女性79%、平均年齢39.5歳)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24216570


1型糖尿病患者のセリアック病有病率は大幅に上昇している。1型糖尿病とセリアック病両方を有する患者の3分の2は、診断時セリアック病に対して無症状である。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27574884


セリアック病の合併症リスクは、60歳以上の患者では18~40歳の患者よりも18倍高い。無症候性患者の合併症リスクは事実上存在しない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29277481

グルテン関連障害の分類

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28244676


セリアック グルテン感受性(NCGS)と小麦感受性過敏性腸症候群(IBS)の重複領域
図1

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29160841

グルテン関連障害の発症要因・機序仮説

グルテンペプチドがゾヌリンを増加させ、腸と脳関門の透過性に関与する可能性。

https://academic.oup.com/schizophreniabulletin/article/39/4/867/1917452


グルテン感受性(NCGS)の発症原因はグルテンではなく、小麦に含まれるフルクタン。

低FODMAPs食(発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類およびポリオール)の有効性

NCGS患者へのグルテンフリーダイエットは、穀物繊維や全粒穀物の消費量を減らす可能性があるため、セリアック病ではない場合推奨されるべきではない。

http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(18)30025-8/fulltext?referrer=https%3A%2F%2Fwww.ncbi.nlm.nih.gov%2F

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29102613


フルクタンはフルクトースが重合した多糖類で、グリコシド結合を加水分解する酵素がないため、腸管に侵入し腸内細菌によって過剰発酵したり水を引き込んで鼓腸や下痢を起こす可能性がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3934501/


フルクタンを持続的な摂取は、腸内で炎症を起こす可能性がある。

フルクタンを分解する細菌の多くが、フルクタンを生産しもする。

そのため、フルクタンの閾値を超えた量の摂取がフルクタンのさらなる増殖を誘発し、毒性フルクタナーゼ産生細菌の応答により腸内の炎症を誘発する可能性がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3576823/

水溶性食物繊維として知られるイヌリンはフラクタンの一種。


腸内細菌によって腸管内で分解された短鎖炭水化物がアミロイドβ凝集物の形成を強力に阻害する。(in vitro)

http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/14737175.2018.1400909

NCGSは短鎖炭水化物の摂食が原因かもとされていたけど、短鎖炭水化物である高FODMAP食のほうがアルツハイマー病対策にはなる?


投薬はセリアック病を模倣することがある。

セリアック病を模倣する疾患に対しては多くの標的療法があり、患者に不必要なグルテンフリーダイエットを生涯要求するのではなく、正しい診断と治療を提供する必要がある。

セリアック病を模倣する疾患、投薬

・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)

・炎症性疾患(IBD)

・オルメサルタン

・イピリムマブ

・コラーゲンの沈着

・複合型免疫不全CVID

・小腸細菌の過剰増殖

・トロピカルスプルー(TS)

・自己免疫性腸疾患

・ホイップル病

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28817113

「nsaid」の画像検索結果


穀物不耐症はセリアック病に特異的に生じる特徴ではない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11063153


グルテンが神経伝達物質を撹乱している可能性。

グルタミン酸脱炭酸酵素(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)GADは、グルタミン酸をGABAに変換する。

GAD抗体はGAD酵素を減少させる。> GABA↓、グルタミン酸塩↑、概日リズムの崩れ

※ビタミンD(活性型)はGAD67を増加させる。

GADは視床下部の質室周囲核(PVN)にあり、低レベルのGADはCRHの増加によりうつ病と関連。

CRHプロモータ(CRE)がメチル化されないことがCRH増加のメカニズム

ADHD症状はセリアック病で過剰発現する。グルテンフリー食で74%が改善

批判

グルテン関連障害に関する疑念

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28462603


セリアック病(CD)、グルテン感受性(GS)、小麦アレルギー(WA)関連の115ウェブサイトのうち、3つのウェブサイトだけが欧州小児胃腸症学会、肝臓栄養学会(ESPGHAN)、世界消化器学会(WGO)のガイドラインと一致していた。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28927776


グルテンフリー食には高濃度の金属を含む魚や米などを多く摂取しており、グルテンフリーダイエット参加者の金属蓄積が増加する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28223206

認知症関連

セリアック病(CD)および非セリアック グルテン感受性(NCGS)は、神経学的合併症、運動失調および末梢神経障害だけでなく、認知障害へも関与する。

この認知障害への関与の期間そして予後は一定しておらず、一時的かつ可逆的な関与から、認知症の発症まで変化を示す。
グルテン関連病変が認知機能におよぼす有害な影響を説明するためのメカニズム

・栄養欠乏

・全身性炎症

・脳のセロトニンレベル低下によるサイトカインレベルの低下

アルツハイマー病、血管性認知症、前頭側頭型認知症などがセリアック病と関連して報告されている。

記憶障害、計算不能症、不注意、視空間的欠損および執行機能障害は、神経心理学的診断基準によって体系的に探求されなければならない。

認知障害に関する限り、セリアック病またはNCGSを有する患者への病理学的な放射線学的検査は存在しない。

効果は議論の余地があるものの、グルテンフリー食は潜在的な保護効果があるため、可能な限り早期に実行すること。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29247390


セリアック病におけるグルテン誘導認知障害

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgh.13706/abstract

セリアック病を有する患者の認知症リスクは高くないが、サブグループ分析では血管性認知症のリスクが高い可能性が示唆されている。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26444775


パイロット研究

セリアック病患者によって報告される軽度の形態の認知障害は、「ブレインフォグ(脳の霧)」と呼ばれている。

多くの患者ではグルテンフリーダイエットを実行すると、ブレインフォグが消失すると報告する。

60歳以上でセリアック病と診断された患者7人の患者のうち2人がアルツハイマー病に起因する認知低下を示したが、グルテンフリーダイエット開始後に改善を示した。

3人の患者ではグルテンフリーダイエット開始後、末梢神経障害が完全に解消した。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/apt.12809/full

認知障害の病理学

仮説1

セリアック病では微量栄養素の欠乏が起こるため、鉄、ビタミンD、葉酸などの栄養欠乏が認知障害と関連している。しかし、研究では鉄分濃度は関連していない。

仮説2

全身性炎症に関連するサイトカインレベルの上昇

仮説3

動物研究では食事中のグルテンが、脳のトリプトファン濃度を低下させる可能性があることが示されている。

グルテン摂取>トリプトファン濃度の低下>セロトニンレベルの低下>認知機能の低下

検査

認知機能検査 TRAILS A、ROCF、SCIT-RT H が非侵襲的かつ費用効果の高い腸の治療マーカーを提供する可能性を持っている。

※TRAILS AとSCIT-RT Hは処理速度に強く依存する。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/apt.12809/full

診断

セリアック病の診断

NCGS

非セリアック グルテン感受性

CD

セリアック病

IBS

過敏性腸症候群

WA

小麦アレルギー

胃腸症状 下痢 下痢 下痢 下痢
腹痛 腹痛 腹痛 腹痛
便秘 便秘 便秘 便秘
吐き気 吐き気 粘液排出 吐き気
嘔吐 嘔吐 消化不良 嘔吐
    早い満腹感  
胃腸以外の症状 頭痛 貧血 大うつ病 じんま疹
片頭痛 骨粗鬆症 不安 血管浮腫
ブレインフォグ 神経障害 身体表現性障害 喘息
疲労 思春期の遅れ 線維筋痛
湿疹のような発疹 疱疹状皮膚炎 顎下顎骨障害  
筋炎 ブレインフォグ 性交疼痛 湿疹
麻痺 リンパ腫    
心理的な変化      
症状発現の時期 数時間~数日 数時間~数ヶ月 グルテン摂取との関連性は不明確 数分~数時間
細胞の形態 小腸内皮リンパ球増加症 陰窩肥厚を伴う絨毛性萎縮 正常 正常
バイオマーカー IgG-AGA IL-17(A) TNF-α 小麦タンパク質に対するIgE抗体
ゾヌリン TCR-γδIEL IL-6
LBP IgA tTGA IL-8
sCD14 IgA EMA  
  CD3 + IELS  
  ゾヌリン  
免疫表現型

HLA-DQ2、DQ8遺伝子型

(50%の患者)

HLA-DQ2、DQ8遺伝子型

(80%の患者)

増加 TGFb突然変異は、アレルギー疾患のより高い割合と関連
IgGまたは共刺激分子CD80またはCD86を発現するB細胞
 b7 + HLADR +CD69 +を発現するT細胞
診断   血清学的検査、小腸生検 ROMEIIIの診断基準 皮膚プリックテスト
小麦タンパク質に対する血清IGE抗体
管理 グルテンフリーダイエット グルテンフリーダイエット 対症療法とストレッサーの除去 グルテンフリーダイエット
プロバイオティクス 急性症状では皮下エピネフリン
AN-PEP  

セリアック病とPTPN22塩基多型

セリアック病と関連する可能性のあるPTPN22変異体はrs1310182のみであった。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28481156


セリアック病を診断するための正確な検査方法

tTG IgA検査のおよびEmA IgA検査の感度にすぐれた特異性がある。

DGP IgAおよび免疫グロブリンG試験の感度は、tTG IgAの場合よりもわずかに低い。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26937544


グルテン関連障害による症状

・腹痛(68%)

・湿疹と発疹(40%)

・頭痛(35%)

・”脳の霧” ブレインフォグ(34%)

・疲労(33%)

・下痢(33%)

・うつ病(22%)

・貧血(20%)

・脚、腕または指のしびれ(20%)

・関節痛(11%)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29057833


グルテンフリーの食事療法で改善例

血清アルブミン低値、血清コレステロール低値、血清組織トランスグルタミナーゼ免疫グロブリンA(IgA)および内分泌抗体は陽性、HLAタイプはDQ2

食道胃十二指腸内視鏡検査(EGD)は、十二指腸の第2部分への球からモザイク模様の粘膜を示す。

組織病理学的所見は、セリアック病の改変MARSH分類のMARSHタイプ3cと一致。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29094324


治療

グルテンフリー

グルテンフリーの定義

定義へのコンセンサスが不足している。

ニュージーランドとオーストラリアでは、グルテンフリーの最も感度が高い試験方法によって検出されない値5ppmとされている。

米国FDAでは20ppmまでが検出可能なため、20ppmがグルテンフリーの定義となっている。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28244676

グルテンフリーダイエット

「gluten free diet」の画像検索結果

グルテンフリー食の厳格な実行は、セリアック病の治療のファーストチョイス。

グルテンフリー食はNCGSも改善するが、長期間のグルテンフリー食は栄養欠乏と関連するため経過観察と指導が必要

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29413009


グルテンフリー食は、セリアック病の子どもの閉塞性睡眠時無呼吸症候群を改善する可能性がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29415685


非セリアック小麦感受性(NCWS)患者は、グルテンフリーダイエットによって有意に症状が緩和されるが、数年経過しても腸または腸以外の症状を訴える。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29306516


セリアック病患者では、グルテンフリーダイエットの厳格な尊守が胃腸症状、腸管外症状の解消にむすびつく。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28514243

その他のグルテン毒性緩和策

小麦を発芽させることで、セリアック病に関連するグルテンペプチドを46%減少させることが可能。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29059515

「sprout wheat」の画像検索結果


グルテンが腸に影響をおよぼす前に、グルテン分解酵素(酵素アスペルギルス・ニガープロリルエンドプロテアーゼ(AN-PEP)/クロコウジカビ)を摂取して有害作用を無効化する治療戦略

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26040627/

醤油、味噌、甘酒(手作り)と一緒に食べると、グルテンを分解してくれるかも。

グルテン消化酵素サプリメント

Now Foods, グルテンダイジェスト、ベジタリアンカプセル60錠

ナウフーズ グルテンダイジェスト 60カプセル

※アスペルスニガー由来のグルコアミラーゼ消化酵素含有

 
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