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オメガ3脂肪酸/EPA・DHA/フィッシュオイル
概要
以下のオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)には、抗炎症作用と神経保護機能があり、疫学的証拠は限られているものの、認知症の予防に役立つ可能性がある。
- α-リノレン酸(ALA)
- エイコサペンタエン酸(EPA)
- ドコサヘキサエン酸(DHA)
17の観察研究でオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)の認知症への有益性が報告されている。ただし3つの研究によって否定されている。
8つの介入研究ではオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)補給は認知症と有益な関連性が示されている。しかし、5件の研究では、それらの影響は無視できるレベルであることが報告されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5127208/
抗認知症作用
オメガ3多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、神経保護特性を示し、さまざまな神経変性疾患および神経障害の潜在的な治療法として研究されている。
最近の研究では、EPA(エイコサペンタエン酸)よりもDHA(ドコサヘキサエン酸)独自の効果の証拠が増えてきている。
オメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)は、神経栄養因子、神経保護因子、アミロイドβペプチドのクリアランスを増加させることにより抗炎症作用を発揮しアルツハイマー病を改善する可能性がある。
認知症患者の低いオメガ3脂肪酸
メタアナリシス 認知症患者では血中のEPA、DHAおよびオメガ3 PUFAが有意に減少するが、MCI(軽度認知障害)の患者ではEPAのみが有意に低下。
EPAがバイオマーカー、および加齢関連認知障害の実際の危険因子であることを指示する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22938939/
オメガ3脂肪酸 疾患への効果
- トリグリセリドを低下させる
- 抗うつ(医薬品なみの効果)
- 子どものADHDの軽減
- 高血圧の人の血圧低下
- HDL-Cを増加
- 抗炎症効果
- 全身エリテマトーデスの症状緩和
- ナチュラルキラー細胞の活性
- 紅斑の減少、日焼けのリスク低減
オメガ3系脂肪酸の神経保護メカニズム
食事摂取などを通して脂質膜に容易に取り込まれたオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)は、複数のメカニズムを介して細胞シグナル伝達を変更することにより神経保護作用を発揮する可能性がある。
1. アラキドン酸と代謝物の減少
オメガ3脂肪酸は、主にアラキドン酸(AA)を犠牲にして膜での濃縮が行われ、アラキドン酸由来の炎症性プロスタグランジンとロイコトリエンの産生が減少する。[R]
2.脂質ラフトの改変
オメガ3脂肪酸は高度に不飽和されており、これにより炎症誘発性シグナル伝達を調節する脂質ラフトの膜流動性を改変する。脂質ラフトは様々は疾患との関わりが指摘されており、アルツハイマー病ではアミロイドβタンパク質、プリオンタンパク質との関係が指摘されている。[R]
EPAはDHAより短く、不飽和度が低いため、脂質ラフトの摂動においてDHAほど効率的ではない可能性がある。[R][R]
脂質ラフト
3. 抗炎症作用をもつ代謝産物への変換
細胞膜に組み込まれると、オメガ3脂肪酸は転写因子、PPARγアゴニスト、Nrf2依存性抗酸化応答、サイトカインの阻害等広範囲の抗炎症作用を有する生物活性酸化誘導体へ変換される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12391014/
抗炎症性脂質メディエーター(SPM)の神経保護効果/Specialized pro-resolving lipid mediator
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4404917/
4. 微生物病原体への抗菌作用
EPA、DHAは内因性抗菌分子としてマラリア原虫種を殺し、ウイルス複製を阻害する効果を示すことが報告されている。
PUFAの抗菌メカニズム
- 細胞間コミュニケーションの破壊
- アデノシン三リン酸(ATP)産生の破壊
- 膜疎水性の変化
- FAI酵素は、脂肪酸合成を破壊し、阻害する。
- 膜極の増加を介して細胞漏出を引き起こす
- 電子輸送システムを破壊する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5964344/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6159659/
5. 血液脳関門の完全性(トランスサイトーシス媒介)
中枢神経内皮細胞のトランスサイトーシスを介した脂質輸送は、Mfsd2aによって自律的に調節されている。[R]
カベオラ経路(caveolae )
Mfsd2aは、DHAを脳に送達する脂質輸送体として同定されている。中枢神経系内皮細胞のBBB機能の重要な脂質組成調節因子であり、Mfsd2aの不在によるトランスサイトーシス・カベオラ小胞の存在が血液脳関門漏出の原因となる。[R]
脂質ラフトの構成物であるカベオラの形成はCav-1とコレステロールの両方に依存する。膜の流動性が高くなると膜の曲率が低くなりカベオラ形成には好ましくない環境となる。[R]
マウスへのオメガ3脂肪酸を豊富に含む食事の投与は、コレステロールとCav-1が同時に減少することが示されている。[R]
オメガ3系脂肪酸の代謝と合成
DHA補給によってのみ上昇する血清DHA
DHAの前駆体であるαリノレン酸の投与では、EPA・DHAの増加にほとんど影響を与えない。DHAの投与のみが血清DHAを有意に増加させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19269799/
脳内での低いPUFA合成と変換
脳内でのEPA、DPA、からのDHA合成は体内での合成と比べて低く、脳のDHAは食事または肝臓からの取り込みによって維持している。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16092947/
血清脂肪酸と異なる脳の脂肪酸組性
軽度の認知障害患者、アルツハイマー病患者の血清脂肪酸組性は、脳皮質の組性を反映しない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22466064/
オメガ3脂肪酸の認知機能保護効果
認知症と関連する機序・効能
- コルチゾールを低下
- 血管内皮機能を改善
- 抗血小板凝集
- TNF-αを低下
- vLDL-Cを低下
- 抗不安効果
- 脳血流を増加
- 脳への酸素供給が増加
- 認知機能低下率を抑制
- 記憶力の改善
- ホモシステインを低下
神経発達
DHAとEPAの異なる神経発達作用
DHAとEPAの両方が神経幹細胞の分化を同程度に高める。しかし、細胞周期の調節に関与する転写因子にもさまざまに影響を与え、EPAは神経分化を抑制し神経幹細胞の増殖を促進するHes1リプレッサー型転写因子レベルを大幅に増加させた。DHAレベルは大幅に減少した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23365582/
cAMPを介したニューロン分化
DHAエンドカンナビノイド様代謝産物であるN-ドコサヘキサノイルエタノールアミン《N-docosahexaenoylethanolamine(DHEA) シナプトアミド(synaptamide)としても知られている》は、プロテインキナーゼA(PKA)/ cAMP応答要素結合タンパク質の活性化によって神経幹細胞のニューロン分化を誘導する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20436487/
脳容積の増加
健康な人の食事によるn -3 PUFA摂取量の増加は、前帯状皮質(ACC)の灰白質量の増加と関連している。[R]
認知症ではない高齢者の空腹時血漿EPA + DHAレベルの高値は、脳容積の大きさとより良い実行機能に関連している。[R]
高齢者の赤血球DHAレベルの最低四分位は、総脳容積の低下と関連する。[R]
血清EPA / AA比
記憶障害のある高齢者の血清エイコサペンタン酸とアラキドン酸比率(血清EPA / AA比)は、脳白質領域の障害の重症度と負の相関を示す。[R]
EPA・DHAの摂取量
認知的に健康な高齢被験者(平均年齢:70歳; n = 252)の5年間の前向き研究
自己申告によるEPAおよびDHA摂取量の増加は全体的な灰白質量および5年後の認知能力の増加と正の関連があることがわかった。[R]
認知機能低下の抑制
レトロスペクティブ・コホート研究
認知的に健康な高齢者229人、認知障害397人、アルツハイマー病患者193人 6〜48ヶ月。
フィッシュオイルを服用した被験者では服用しない被験者と比較して、大脳皮質灰白質および海馬の萎縮の減少、心室肥大の減少、および認知機能低下の減少に関連していた。[R]
EPA
認知的に健康な高齢者(65歳以上、n = 281)の4年間の前向き研究では、DHAではなくベースラインの血漿EPAの値が高いほど、4年にわたる右海馬と扁桃体の灰白質萎縮が遅くなることがわかった。[R][R]
DHA
脳のオメガ3脂肪酸
DHAは膜リン脂質で、人の体全体に広く分布しており、特に脳や網膜などの神経組織に豊富に存在する。
脳皮質の灰白質脂肪酸の30~40%はDHAであり、脳と網膜膜に適したユニークな生物学的、生化学的特性を備えている。DHAはその脳に適した独自の能力をもつことからヒト科の脳の進化の主要な決定因子として示唆されている。[R]
アルツハイマー病
気分障害などのへの有益な効果はEPAを用いた臨床研究の報告が多く存在するが、アルツハイマー病などの神経変性疾患ではDHAに焦点が当てられている。
脳内のEPAレベルは通常DHAよりも250~300倍低い。この理由はわかっていない。DHAは脳内でもっとも重要な役割をもつオメガ3脂肪酸であり、研究ももっとも行われている。[R]
高いDHAレベルの抗認知症作用
DHAレベル上位4分の1のグループは、認知症発症リスクの有意な減少(47%)と関連している。[R]
低いDHAレベルと老化の加速
認知症ではない1575人の参加者のうち、脳の体積が著しく小さく、視覚記憶、実行機能、抽象的思考のテストでスコアが低い参加者では、EPAではなく赤血球DHAの低下のみが見つかった。
赤血球DHAレベルの低値の参加者は、少ない脳容積および認知障害リスクと関連する。[R]
作用機序
老齢ラットでのDHAの神経突起伸長
DHA・EPAの両方が健康なラット組織の神経突起伸長を増加させたが、老齢ラット由来の組織においてはDHAのみが神経突起の伸長を増加させた。[R]
ホスファチジルセリン合成
神経組織におけるホスファチジルセリンの蓄積と生合成は、膜DHAレベルに敏感に応答する。DHAの重要な役割はホスファチジルセリンの合成を調節することにある。[R][R]
ホメオビスカス補償
オメガ3およびオメガ6PUFAはお互いに独立しリサイクルされている。
この関係はおそらくΔ6デサチュラーゼの競合を通じて維持されている。[R]
オメガ-3 PUFAは、Δ6デサチュラーゼによるリノール酸の不飽和化を競合的に阻害する。
この相反関係は、「ホメオビスカス補償」(homeoviscous compensation)と呼ばれるプロセスによって、リン脂質膜の不飽和度をほぼ一定のレベルに維持する。
しかし膜の特性の変化などにより組織DHAレベルが低下すると空間記憶タスクのパフォーマンス低下、神経伝達機能の変化などにつながる。[R][R]
アミロイドβの除去・クリアランス
神経保護ペプチドsAPPα分泌
EPAとDHAは膜の流動性を増加させ、神経保護作用をもつsAPPα分泌の増加につながる。[R]
トランスサイレチン分泌
トランスサイレチン(TTR)は甲状腺ホルモンのサイロキシン(T4)やレチノール(ビタミンA)の輸送担体として働く他、アミロイドβに結合し脳アミロイドβを低下させる。
オメガ3系 PUFA治療は、アルツハイマー病患者の血漿トランスサイレチンの増加を介してアミロイドβクリアランスを高める可能性がある。[R]
DHAによるαシヌクレインの増加
DHA処理は、α-シヌクレイン凝集および細胞傷害性オリゴマー形成を潜在的に増加させる可能性がある[R]
インビボで、DHAの増加はαシヌクレインオリゴマー形成を誘導する。[R][R]
神経保護代謝物の前駆体
DHAは細胞膜での建築材料としての機能に加え、神経組織におけるドコサノイドや他の生物活性内因性誘導体の前駆体でもある。
抗炎症性脂質メディエーター(SPM)の神経保護効果/Specialized pro-resolving lipid mediator
神経血管ユニット/Neurovascular Unit(NVU)
血液脳関門は血管内皮細胞、血管周皮細胞、アストログリア細胞、神経細胞などによって構成される血管とそれを取り巻く構造によって形成されている。この全体の構造を神経血管ユニットと呼ぶ。
血液関門は血液成分であるイオン、栄養素、高分子、エネルギー代謝物を脳の微小管環境から分離して流入と流出を調節する。この血液関門は独立して機能するのではなく、神経血管ユニットというよりコンポーネントの組み合わせとして機能する。[R][R]
これまでの実験的証拠から、形態学的及び神経血管ユニットの機能的完全性が大きく高いDHAレベルに依存することが示唆されている。[R][R][R]
n-3 PUFAの改善・予防が期待できる認知症患者
軽度の記憶および/または認知障害
- 主観的記憶障害(SCI)
- 軽度認知障害(MCI)
- 非認知症性認知障害(CIND)
- アルツハイマー病初期
魚の摂取量が多い
魚を週に一回も食べない人に比べて、週一回未満で魚を食べる人の認知機能スコア低下率は10%低い。週二回かそれ以上食べる人の認知機能スコア低下率は13%低い。[R]
認知的に健康な高齢者の9年間の前向き研究(平均年齢:78歳; n= 260)
焼き魚または焼き魚の週ごとの消費量の増加は、9年後のより大きな海馬、前棘、後部帯状回、および眼窩前頭皮質灰白質量と関連していることがわかった。[R]
ビタミンDの影響
ただし、魚にはビタミンDが含まれており、ビタミンD欠乏症が認知症、アルツハイマー病リスクの増加と関連していることから、魚食の利点はビタミンDまたはその他の成分に由来する可能性がある。[R][R]
オメガ3脂肪酸を追加で2g以上摂取
無作為化二重盲検プラセボ対照試験 軽度のアルツハイマー病患者へ72週間のDHA(2 g / 日)投与。DHA補給は、血漿および脳脊髄液のDHAレベルを有意に増加させたが、プラセボと比較して総脳容積、海馬容積萎縮率、認知スケール、心室肥大への影響はなかった。[R]
健康な高齢者へのフィッシュオイル投与 1.5:1 EPA / DHA – 2,200 mg / 日
フィッシュオイルの摂取は、赤血球EPA、DHAレベルを有意に増加させ、左海馬、前部、上頭側、下側頭頂、後中心回、および右中側頭回の灰白質の減少を低下させた。
また、記憶機能ではなく実行機能のテストでのパフォーマンスの向上と関連していた。[R]
軽度認知障害患20人へのフィッシュオイル投与 EPA / DHA – 2,200 mg / 日)と有酸素運動、認知刺激の組み合わせ。 24週間の併用治療は認知能力を改善しなかったが、前頭葉、頭頂葉、帯状皮質の灰白質体積の減少を減衰させた。[R][R]
1日あたりのDHA摂取量が追加で900 mg以上
加齢性の認知低下を示す健康な高齢者へDHAを900mg/日投与 24週間後のエピソード記憶テストPALで有意に改善を示した。血漿DHAレベルは2倍になった。[R]
治療期間が6か月以上
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21929835
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5127208/
特にApoE4陰性
ApoE4アルツハイマー病での保護効果喪失
ApoE4多型保持者はEPAおよびDHAの補充に対する応答が低く、フィッシュオイルを摂取してもアルツハイマー病の保護効果を示さない。[R][R]
ApoE4陰性患者での効果
プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験 一日2gのDHAのみを18ヶ月間投与、
DHAの補充によるアルツハイマー病患者の認知機能低下率には影響を与えなかったが、ApoE4陰性の患者に限定するとADAS-Cogの変化率に影響を与えた。
非ApoE4での魚食の有益性
脂の豊富な魚を週二回以上食べた人の認知症リスクは、一ヶ月に一回未満しか魚を食べない人に比べて有意に低かった。この効果はApoE4対立遺伝子がない人にとってより強く現れた。[R]
ApoE4患者のSPM戦略
決定されているわけではないが、ApoE4陽性アルツハイマー病患者ではDHAの抗炎症性代謝産物(SPM)への変換酵素に遺伝的またはSPMの受容体障害があることにより認知機能への改善効果が示されていない可能性があることが研究者によって提案されている。[R]
ApoE4患者がDHA補給から利益を得るためには、オメガ3の代謝を活性化させるいくつかの組み合わせ戦略が有効である可能性がある。
抗炎症性脂質メディエーター(SPM)の神経保護効果/Specialized pro-resolving lipid mediator
レビー・パーキンソン病患者
DHA/レチノインX受容体
in vitro分析では、DHAは、レチノインX受容体(RXR)の内因性リガンドであり、RXRを介してα-シヌクレインのオリゴマー化が促進することが示唆されている。[R][R][R][R]
ジスキネジアの緩和
ランダム化比較試験 遅発性ジスキネジア発症の統合失調症患者への12週間のEPA2 g /日投与では一過性の効果が示された。[R]
性差
女性は男性と比べて血中のDPA・EPAレベルは低くDHAレベルは有意に高い。[R]
女性と比較して男性ではDHAとDPAの両方の血小板凝集効果が有意に低い。[R]
摂取方法・摂取量
摂取量
健康な人
最小用量は250mgのEPAと250mgのDHAを組み合わせたもの。
世界各地の健康協会によって定義されている健康な人の推奨摂取量は、EPAとDHAで500~750mg/日。これは一週間に2回オメガ3脂肪酸を含む一般的な食事を摂取することで達成できる。[R]
アメリカ心臓協会は毎日1gを推奨。
うつ病
うつ病性障害の患者に有効な摂取量は最低1g/日(DHAの比率がEPAに対して60%以上)[R]
認知症患者
内皮および血管機能に臨床的に有意のある効果をもたらすには、1.8g/日を超えるEPA用量が必要と考えられている。[R]
認知症患者では2g(DHA900mg以上)で学習機能と記憶機能の改善が示されている。[R]
高用量のオメガ3脂肪酸リスク
高用量のオメガ-3 PUFAは免疫系を弱め、病原体のクリアランスを変化させたり、腫瘍監視メカニズムを妨害したりするため、有害な結果につながる可能性がある。[R]
食事からのオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)摂取量が高い男性は、前立腺がんリスクの上昇と関連する。[R]
DHAの二相性効果。少量のオメガ3脂肪酸投与は、血小板脂質の過酸化が著しく減少し、抗酸化状態が増加した。一方で高濃度のDHAは、in vitro実験において、高いMDAおよび12- HETEレベルと、それに伴う血小板α-およびγ-トコフェロール含量の減少から明らかなように、著しい酸化ストレスを誘発した。
DHAはその濃度と異なるリン脂質の蓄積に応じて、細胞機能にさまざまな影響を与える可能性がある。
DHAの抗酸化作用はPEプラズマローゲンに組み込まれた場合にのみ保護効果を示す可能性がある。[R]
DHA/EPAの比率
オメガ3とオメガ6の比率
オメガ6とオメガ3の比率が重要なため、おそらくオメガ6脂肪酸の食事摂取量を減らすことで、オメガ3脂肪酸の摂取量も大幅に減らすことができる。
参考
DHA/EPA 1:2 炎症の緩和 ↓CRP、↓IL-1β、↓IL-6
DHA/EPA 1:1 脂肪酸酸化の改善 ↑AMPK、↑PPARα、↓ROS
DHA/EPA 2:1 神経栄養効果 ↓TNF-α、↑NGF、↓カスパーゼ3
オメガ6/オメガ3 4:1 脂質代謝障害の改善、肝臓の酸化的障害の改善[R][R]
容易に酸化するオメガ3脂肪酸
多価不飽和脂肪酸はその特性上酸化しやすく、特にオメガ3脂肪酸は光や空気などで酸化劣化しやすい。食物からのオメガ3供給源は、例えば他のビタミン・ミネラルなどの栄養素と比べても難しい。
酸化劣化フィッシュオイルに注意
カナダの小売店で販売されているフィッシュオイル49種類のブランドから171のサプリメントを評価したところ、半分の50%が酸化劣化の限界を超えており、39%が国際的な安全推奨TOTOX値を超えていた。
フィッシュオイルの酸化と速度は、脂肪酸組性、酸素及び光への曝露、温度、酸化防止剤の含有量、水分など多くの要因によって影響される。
これまでの臨床試験で使用されたオメガ3脂肪酸サプリメントが、酸化されたものが使用されていた可能性もある。[R]
食品からのオメガ3補給にも注意が必要
食事からの供給が一般的によく推奨されるのだが、それほど簡単ではない。
ボトル瓶などで売られている亜麻仁油などのオイルは開封後、空気に触れるため酸化する前の短期間での消費を必要とする。
基本的には青魚は良いオメガ3の供給源とみなして良いが、スーパーで長時間光りに当てられた海産物、高熱の酸化した油で揚げられた魚のフライ、いずれもオメガ3を減じさせる。大型魚では特に海洋汚染物の濃縮も無視できない。
市販の多くのクルミはローストによって脂質が酸化しており、生でない限り良いオメガ3の供給源とまでは言えない。
相乗効果をもつ成分
ウリジン
ドコサヘキサエン酸とウリジンの併用投与は、成体スナネズミの海馬樹状突起棘密度を増加させる。[R]
アスピリン
ASA-COX-2-DHA経路、求電子性オキソ誘導体(EFOX)によるNF-κB経路の調節、PPARγの活性。[R]
アスピリン81mgとEPA+DHA3.4gの摂取は、4時間以内に血小板機能への有益な効果が生じた。[R][R]
ルテイン
健康な高齢女性へのDHA(800 mg /日;)、ルテイン(12 mg /日)ンの併用投与。DHA、ルテイン、および併用治療群で言語の流暢性スコアが大幅に改善された(P <0.03)。
記憶スコアと学習率は、併用治療群で大幅に改善され(P <0.03)、より効率的な学習への傾向も示した(P = 0.07)。[R]
ルテイン・ゼアキサンチン
予備的研究 キサントフィルカロテノイドとオメガ-3脂肪酸の組み合わせが患者に提供された場合にのみアルツハイマー病患者の介護者は、記憶、視覚、気分における機能的利点を報告した[R]