エストラジオールとプロゲステロン(認知症・アルツハイマー病)

エストラジオール17βとプロゲステロン 

免責事項をお読みください。

エストラジオール17β(E2)

女性の卵巣で作られる女性ホルモンでエストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、エステロール(E4)とあるエストロゲンのうちのひとつ。

エストラジオールはエストロゲンの中でもっとも強い生理活性をもつ。

Estradiol.svg

リコード法

エストラジオールとプロゲステロンは脳の保護効果をもち、認知機能の改善に有益性がある。そして分子レベルでのバランスを保ち、アルツハイマー病をコントロールする。そのためエストロゲンは、アルツハイマー病の潜在的な治療方法となる可能性をもつ。

一方でエストロゲン投与(HRT)は、プロゲステロンのバランスを失うことで、子宮癌、乳癌の可能性を高める。そのため、もしホルモンレベルが低い場合は、認知機能の低下または低下リスクに関しての経験のある、こういったホルモン関連の専門家に意見を伺うことが望ましい。

3型のSCI、MCI、女性のアルツハイマー病患者にとっては特に重要。多くの3型の患者で認知機能の変化が、閉経期、または閉経周辺期に起こっている。

そのため3型の特徴が見られるのなら、バイオアイデンティカルHRTについて医師との相談が求められる。

リコード法目標値

50-250pg/ml

一般的な基準値

女性:閉経後10~40 pg/ml

男性:14~60 pg/ml

摂取量

標準 経口1mg 経皮0.05mg

低用量 経口0.5mg 経皮0.025mg

(0.06%のエストラジオール塗布剤で約0.41g = 0.025mg)

最も低い用量 経皮0.014mg(骨密度低下の緩和)

エストラジオールの投与は経皮、経膣で行われる。

経口だと肝臓にダメージを与える可能性がある。

認知機能、副作用をチェックすること。

研究

経口エストロゲンはT4が増加する可能性


無作為化二重盲検プラセボ対照試験 低用量エストラジオール(1mg、0.5mg/日)が、プラセボ郡と比べ女性アルツハイマー病患者の認知機能を改善。ApoE4対立遺伝子のない女性の認知機能および気分をより改善した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20094015


ApoE4対立遺伝子多型を有する患者では、男性よりも女性でアルツハイマー病発症リスクを高める。エストロゲンは、脳のアポリポタンパク質の発現に影響を与える。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9056393


エストラジオールはマウスのアミロイドβを減少させ、タウの過剰リン酸化を減少させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16365303/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16024764/


エストラジオールは、神経突起の成長およびシナプス形成を促進し、脳内の解糖代謝を増強する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1961846/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22395804/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18094246/


アルツハイマー病患者へのエストロゲン補充療法の効果 

プラセボ対照二重盲検比較試験 ホルモン療法を使用した女性グループは、プラセボグループと比べ有意に良好な認知機能のエンドポイントを達成した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8649552/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9191757/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8528351/


エストラジオールは健康な血管系内皮を保護するが、アテローム性動脈硬化病変の存在下では有害である。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11730394/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17438515/


エストロゲンによるアルツハイマー病発症リスク年齢の低下は、加齢による血管リスクの差から生じる可能性がある。

ホルモン療法は、アルツハイマー病の治療において実質的な役割を有していない。

約65歳後に始まるエストロゲン – プロゲストゲン療法はおそらく認知症リスクを増加させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3830600/


エストロゲン、エピソード記憶、アルツハイマー病

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3683552/


性ホルモンの枯渇はアルツハイマー病リスクの増加と関連する。

小規模の臨床研究では、エストロゲン補充療法によって女性アルツハイマー病患者の認知能力を改善することが示唆されている。(大規模臨床研究では否定されている)

ホルモン補充療法のアルツハイマー病発症リスク低減は治療期間と関連しており、期間が十分に長い場合(10年以上)29~44%リスクを減少させることができる。

 

「クリティカルウインドウ」仮説

健康なニューロンを有する患者ではエストロゲン投与の早期治療にポジティブな応答を見せるが、高齢となりニューロンに異常があるとエストロゲンはネガティブな応答となるという仮説

※ホルモン治療がアミロイドの蓄積を遅らせ認知症を防ぐ研究がある一方で、ホルモンによる早期治療が脳を縮小する相反する研究が存在する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3511049/


閉経後5年の間に17βエストラジオールを経皮で50μg/日投与されるべき。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3955045/


中年期の閉経後の短期間(2~3年)ホルモン投与が、10年後に認知障害リスクを64%減少させる可能性。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15668595/

経皮 vs 経口

経皮エストラジオールを投与した女性ではプラセボグループよりもアミロイド濃度が低かった。ただし、これはApoE4キャリアにおいてのみ統計的な有意差があった。

対照的にエストロゲンを経皮ではなく経口で摂取したグループでは、アミロイド負荷がコントロール群と同程度に高まった。

www.alzforum.org/news/research-news/estrogen-therapy-could-hold-back-alzheimers-shrink-brain

プロゲステロン(P4)

「progesterone」の画像検索結果

リコード法

プロゲステロンはリラックス効果がありプロゲステロンを失うと不安や睡眠障害、ブレインフォグ(脳のもや)と関連すると言われている。

プロゲステロンが低いと特に夜間に目が覚めやすい。(男性女性両方)

プロゲステロンはテストステロンの前駆体でもあるため、プロゲステロンの低値はテストステロンの低値とも関連している。

プロゲステロンのバランスを崩した状態でのエストラジオール投与は女性の子宮癌、乳癌のリスクを高めるため、そのエリアの認知機能の低下に対処できる専門家に相談することが望まれる。

プレマリンなどの合成黄体ホルモンよりも、自然に体内で生産されるバイオアイデンティカルホルモン(分子構造が同一)のほうがよいという考え方が増えてきている。

投与の是非、治療期間、プロゲステロンの目標数値、についても研究者の間で議論が分かれている。

エストラジオールとプロゲステロンの比率 10:100(プラス症状の改善)

リコード法 摂取量

プロゲステロン製剤は目標数値を目指して、100mgまたは200mgからスタート。

リコード法 目標数値

1~20ng/ml

ただし数値だけでなく投与後の症状を常に見張っておくこと。

躁うつや無感動の症状が見られた場合プロゲステロンが過剰であるために、プロゲステロンとエストラジオール比率が崩れている可能性がある。

研究

プロゲステロンは主に女性の卵巣、男性の精巣および副腎皮質によって合成されるステロイドホルモン。一般的には男性よりも女性のプロゲステロンレベルが高い。

プロゲステロン受容体は成長中の脳および成人脳に広く分布している。

プロゲステロン受容体のアイソフォームにはPR-AとPR-Bが存在し、PR-Bはエストロゲン受容体およびグルココルチコイド受容体によっても媒介され負の制御を発揮することが示されている。

この負の制御により、プロゲスチンがエストロゲン作用に部分的に拮抗する機序をもつ。(常に拮抗関係にあるわけではない。)

神経保護効果

プロゲステロンはPgrmc1膜関連受容体、ERK5を介してBDNFを放出する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17549730


プロゲステロンは、アルツハイマー病などの神経変性疾患による脳機能障害の特定の側面に対して保護効果を発揮することが報告されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17549730/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11997695/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12925744/


副腎からのプロゲステロン分泌はストレスによって増加する。

脳内のプロゲステロンは障害、けがに応答して増加する。

プロゲステロン受容体は神経保護とミエリンの修復作用に重要な役割を果たす。

プロゲステロンは神経保護とミエリンの再形成において治療上の標的となる可能性。

 
シグマ1受容体

プロゲステロンはシグマ1受容体の活性化を介して、神経保護効果をもつ可能性。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16945406/


シグマ1受容体の遺伝子多型はアルツハイマー病と相関を示す。

シャペロン機能、ミトコンドリアへのCa2+輸送の促進、ATP産生量の増加、

変異型はユビキチンプロテアソーム系の活性が低下することでTDP-43が細胞質に蓄積

脳梗塞の薬 エダラボン

seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890106/data/index.html


シグマ受容体アゴニスト アルツハイマー病 フェーズ2試験

www.sankeibiz.jp/business/news/170719/prl1707191822153-n1.htm

合成プロゲステロンは神経保護効果をもたない

プロゲステロンは神経保護作用を有するが、合成プロゲスチンであるメドロキシプロゲステロンアセテート(MPA)の脳への影響は異なり、神経保護作用がないことが明らかになっている。この差はBDNFの調節作用の違いに起因している可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3467329/

エストラジオールとプロゲステロン比率(E2:P4)

エストラジオールとプロゲステロンの目標比率

10:100 

P4はE2を抑制する

E2とP4は相互作用し、P4がE2の効果を弱める。

躁うつや無感動はプロゲステロン過剰を示唆しており、プロゲステロンとエストラジオール比率の適正化に注意が必要。


高齢の雌ラットにおいて、P4は、嗅内皮質におけるBDNF、NGFおよびNT3を含む神経栄養因子のE2媒介増加をブロックする。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3511049/#R177


E2またはP4単独でエストロゲン枯渇ラットの脳ミトコンドリア機能を促進することが判明したが、E2およびP4を同時投与するとミトコンドリア機能が低下した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18292191/


エストロゲン単独は高齢の閉経後女性の認知に影響を与えなかったが、エストロゲンとプロゲストゲンの組み合わせは認知機能を損なうことが観察された。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10847257/

E2とP4の組み合わせ効果

プロゲステロン単独、またはプロゲステロンとエストロゲンの組み合わせで投与した場合にのみ、マウスのタウ過剰リン酸化を有意に減少させた。

 http://www.jneurosci.org/content/27/48/13357


E2とP4の組み合わせは、いずれかのホルモン単独投与と比較して、海馬神経細胞のグルタミン酸毒性に対する神経保護を強化した。in vitro

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11751611/

E2+P4の投与レジメン

E2とP4との間の相互作用に影響を及ぼす1つの重要なパラメータは、ホルモンが連続的にまたは循環的に送達されるかどうか

E2 + P4のサイクル投与が、E2 + P4連続投与レジメンよりも大幅にコリン作動性機能を改善することを見出した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11113342/


エストロゲンのバランスに影響を与えるハーブ

過剰なエストロゲンが体内で常時循環していると肝臓の負荷が過剰になり、有害なエストロゲン代謝産物を濾過できなくなり、エストロゲンレベルが上昇する可能性がある。
そのため、エストロゲンレベルが過剰である場合、肝臓の解毒機能を高めることでホルモンバランスを適正化させることができる可能性がある。
ミルクシスル

doctormurray.com/the-positive-estrogenic-effects-of-milk-thistle-extract/

アーティチョーク

肝機能を高める胆汁産生を促進する。

たんぽぽの根と葉

たんぽぽ抽出物は、エストロゲン受容体(ERαおよびERβ)、プロゲステロン受容体(PR)、および卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)をアップレギュレートする。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17671731

アブラナ科の野菜

肝臓の第二相解毒活性化に関わるグルコシノラートを含む。

バイオアイデンティカルホルモン補充療法(BHRT)

標準的なの合成ホルモン剤に対する補充療法への安全性への懸念のために、更年期障害の治療としてバイオアイデンティカルホルモン補充療法のニーズが高まっている。

しかし、バイオアイデンティカルホルモン補充療法は、無作為化された大規模試験の欠如から、多くの医療従事者は処方することを嫌っている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24390902

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28339382


バイオアイデンティカルホルモン補充療法の歴史 批判的記事

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4400226/

乳がんリスク

エストロゲンとプロゲストゲンの併用療法を5年以上行うと、リスクが増加する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23672656/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22784968/


エストロゲンに加えていくつかのプロゲストゲンが乳癌のリスクを増加させたが、エストロゲン単独ではそうではなかった。

結腸直腸および子宮内膜がんに対する有益な効果および卵巣がんに対する有害な影響は生じたが、少数の女性にしか影響しなかった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20566620/


推奨治療期間は、エストロゲン療法とエストロゲン&プロゲストゲン併用療法で異なる。

エストロゲン&プロゲストゲン併用療法は乳がんおよび乳がん死亡率の増加リスクがあるため3~5年の治療期間に制限される。

エストロゲン補充療法では平均7年および4年の追跡調査により有益なプロファイルが観察される。

エストロゲン補充療法は女性の健康推進イニシアティブ(WHI)において、乳がんリスクを増加させなかったが、乳がんの病歴をもつ患者においては、一つのRCTで高い乳がん再発率の報告がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3443956/


10年間のエストロゲン単独補充療法は、1000人あたり5人の乳がん患者が増加、

エストロゲンおよびプロゲステロンの併用補充療法では1000人あたり19人の癌患者が増加。

用量によるリスクの差はほとんどなく、連続的な治療期間の長さがガン発症リスクへの大きな影響を与える。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12927427/


エストロゲンとプロゲスチン補充治療のリスクは、エストロゲン単独製剤よりも高く、閉経前後の時点でホルモン療法が開始された場合にはリスクが高かった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21278356/

乳がんリスク関連遺伝子 SNPs

乳癌発生率のピークは、BRCA1突然変異キャリアでは41-50歳の女性、BRCA2突然変異キャリアについては51-60 歳の女性に見られた。

乳がん発症の累積リスク推定値は、BRCA1キャリア72 %、BRCA2キャリア69%であった。

両方のBRCA遺伝子の突然変異に関して、卵巣癌のリスクは、女性の年齢が61〜70歳に達するまで、年齢の増加とともに増加した。

80歳までに卵巣がんを発症する累積リスク推定値は、BRCA1突然変異キャリアでは44 %、BRCA2突然変異キャリアでは17%。

乳癌既往歴をもつ女性の20年後の対側乳癌発症累積リスクは、BRCA1変異キャリアで40 %、BRCA2変異キャリアで26%であった。

www.cancer.gov/news-events/cancer-currents-blog/2017/brca-mutation-cancer-risk

BRCA1遺伝子 SNPs
BRCA2遺伝子 SNPs
ATM遺伝子 SNPs
CHEK2遺伝子 SNPs
TP53遺伝子 SNPs
対立遺伝子の該当数とリスクのオッズ比

0: 1.00 (by definition)
1: 1.46 (CI: 0.89 – 2.40)
2: 1.39 (CI: 0.86 – 2.25)
3: 1.75 (CI: 1.09 – 2.80)
4: 1.56 (CI: 0.95 – 2.55)
5: 1.31 (CI: 0.76 – 2.24)
6: 1.84 (CI: 1.04 – 3.26)
7: 2.10 (CI: 1.06 – 4.16)
8: 4.02 (CI: 1.56 – 10.38)
9 or more: 8.04 (CI: 1.89 – 34.26)

www.snpedia.com/index.php/Breast_cancer

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