クルクミン・ウコン・ターメリック
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記事目次
概要
クルクミンはターメリックの香辛料で、インド、アジア、中東でカレーなどのスパイシーな料理として使用されている。
特にインドの伝統医学アーユルヴェーダでは広く一般的に使用されている。
歴史的にはインドで2500年前にウコンが使われており、当初は染料として、後に食品素材として、そして皮膚や痛みなどの炎症を緩和する抗炎症剤として使われてきた。
インドでのアルツハイマー病発症率が低いことは知られており、70代のインド人のアルツハイマー病発症率はアメリカ人よりも4.4倍低い。
また、アジア人のカレー食事量と認知機能のレベルの関連を調査した研究では、カレーを時々または頻繁に食べていた人のMMSEスコアが、ほとんど食べない人と比べ有意に優れていた。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16870699
クルクミンの効果・効能
クルクミンの効果は非常に多彩。
クルクミンは認知機能への効果だけに限っても、多くの作用機序が推定されている。
抗炎症効果
クルクミンによるEgr-1 DNA結合活性の阻害により炎症を軽減する。
脳内のミクログリア活性化および星状膠細胞からのケモカインに応答して起こる単球の走化性はクルクミンによって減少されえる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15569263/
クルクミンはCOX-2、ホスホリパーゼ転写因子および酵素を阻害する
クルクミンへの曝露は炎症促進性サイトカインであるIL-1、IL-6およびTNF-αの産生を減少させる。標的細胞によって異なる可能性
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15944320/
抗酸化作用
アミロイドの発現に関与する転写因子であるAP-1の活性を阻害
クルクミンは、酸化ストレスを相殺することでラットの神経学的障害を改善し、脳梗塞容積を有意に減少させる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17955367/
クルクミンがリポ多糖類(LPS)、腫瘍壊死因子TNFーα、によって誘発される誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)の産生、およびNO(x)ニトライトによる大脳毛細血管内皮細胞の損傷を防止した。クルクミンは血液脳関門の損傷を予防することで脳虚血/再灌流誘発脳障害を改善する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17303117/
クルクミン、NSAID、イブプロフェンの比較 クルクミンは酸化的損傷および、膜蛋白シナプトフィジンの損失を抑制。(イブプロフェンには見られなかった)
イブプロフェンとクルクミンの両方が皮質層の小膠細胞症を減少させたが、クルクミンだけがアミロイドβの蓄積する近接領域の小膠細胞へのラベリングが増した。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11755008/
βアミロイドプラークを除去
低用量のクルクミンはADマウス脳のアミロイドβのプラーク蓄積を43%減少させた。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15590663/
クルクミンは親油性のため、血液脳関門を通過しプラークに結合する。
クルクミンはアミロイドβ40凝集抑制剤であり、アミロイドβポリマーを不安定化させる。
クルクミンはアミロイドβのオートファジー作用を増加させアルツハイマー病患者の脳から効果的に排出する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17652175/
マクロファージへの影響
クルクミンは、免疫系において重要な役割を果たすマクロファージを活性させることで、アミロイドβの排出を助ける。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16988474/
クルクミンはミクログリアに対して抗増殖作用をもつ。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15073579/
有害金属のキレート
クルクミンは多くの有害金属、有害化合物をキレートする作用がある。
銅、アルミニウム、ヒ素、水銀、セレン、フッ化物、鉄
ラットへクルクミンを注射することによって毒性金属をキレートし、鉛とカドミウム誘発性の脂質過酸化障害を保護する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14729307/
クルクミンは亜鉛とはほとんど結合を示さず、銅(Cu2+)鉄(Fe2+)と結合を示す。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15345806/
その他
クルクミンのGSK3-β阻害効果
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21352912
オメガ3脂肪酸、クルクミンによるタウ蛋白リン酸化の阻害(マウス)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19605645
コレステロールの低下
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12658281/
副作用
高用量の摂取で胃腸過敏、胸部の緊張、皮膚の発疹、皮膚の腫れが報告されている。
クルクミンの慢性的な使用は肝毒性を引き多こす可能性がある。そのため、肝臓疾患、大酒を飲む人、肝臓で代謝される医薬を服用する人には摂取に注意が必要。
胆道閉塞、胆石、閉塞性黄疸、急性胆道仙痛がある人にはすすめられない。
20~40mgのクルクミンサプリメントは、健康な人の胆嚢萎縮を増加させる報告がある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10102956/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12495265/
臨床研究
プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験 アルツハイマー病を含む認知機能の低下した50歳以上の中国人へ1~4gを投与。MMSEスコアはプラセボ群では認知低下を示したがクルクミン投与グループでは抑制的であった。
https://insights.ovid.com/pubmed?pmid=18204357
低用量クルクミン(80mg/日)を高齢者(40〜60歳)へ4週間投与。
プラセボ群において血漿トリグリセリド値の低下、唾液のアミラーゼレベル低下、唾液のラジカル消去能上昇、プラズマカタラーゼ活性の上昇、プラズマβアミロイドタンパク質濃度の低下、プラズマSICAMの低下、血漿ミエロペルオキシダーゼの増加、C反応性タンパク質レベルの増加、血漿中の一酸化窒素の増加、および血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ活性の低下が見られた。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23013352
プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験
90mgのセラクルクミンを1日2回、18ヶ月間認知症ではない成人被験者40名(51~84歳)(一部MCIを含む)へ投与、プラセボ群と比較して、視覚記憶、注意力を有意に改善。また投与群は扁桃体および辺縁系の一部である視床下部、脳領域におけるFDDNP結合を有意に低下させる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29246725
クルクミンの摂取

クルクミンの吸収率
クルクミンはそのままでは非常に生体へ吸収されにくい上、生物学的利用能が低い。
マウス、ラットの試験では摂取量の38~75%が糞便に排出される。
キレート加工のされていない吸収率の低いクルクミン投与の研究では、認知症患者の認知機能改善に効果を示さなかった。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18204357
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23107780
黒胡椒で吸収力アップ(ピペリン)
ピペリン20mgとの同時接種でクルクミンの体内吸収率が20倍高まる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9619120/
(黒こしょう一粒に1.83mgのピペリンが含まれる。)
ピペリン20mg = 同量摂取するには黒こしょう11粒分 ちょっと多いな… 黒こしょう数粒でもそれなりに吸収力は高まるようだ。
しかし、認知症、アルツハイマー治療として考えた場合、ピペリンよりも脂質キレートタイプのクルクミンがより脳に浸透し効果を発揮するものと思われる。
ピペリンがなぜ吸収力を高めるのか、その詳細なメカニズムはわかっていないが、脂質と結合して腸管吸収を高める作用によるものという研究発表がある。
ピペリン摂取によりブレインフォグ(脳のもやもや)を感じるといった体験報告もある。ピペリンが他の不要な毒素、アレルゲンなどを吸収しやすくしているのかもしれない。
ただし、あまり知られていないがクルクミンは腸管へ及ぼす健康効果も多く、吸収率が悪いからといってすべてが無意味となるわけではない。
・胆嚢を刺激して胆汁を放出
・胃酸分泌を阻害して、胃潰瘍を助ける。
・食事からの鉄吸収を妨げる。(ただし高濃度のクルクミンが必要)
特定の栄養素と同時に摂取することで、吸収を高めたり、効果を増強する。
サプリメント
相互作用
脂質化されたクルクミン製剤は、クルクミンとピペリンの組み合わよりも、血漿中のクルクミンレベルが11倍高かった。
ウコンを脂質に溶解させる伝統的な料理方法が吸収を改善する有効な方法。
http://jpet.aspetjournals.org/content/326/1/196.full
運動とフィッシュオイルの併用によってクルクミンの効果が増強されるという仮説
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22141190
・鉄と結合するため食事中の鉄吸収を防ぐ。(妨げる)
・ターメリックに含まれる4種のクルクミノイドは相乗作用を示す。
(カレーを食べても、クルクミンサプリメントは摂取したほうが良いかも)
クルクミンがDHAの合成を促進する。(脳のDHAが増加する。)(重要)
認知症患者はフィッシュオイルとクルクミンはセットで摂るべき。
サプリメント キレートタイプ
クルクミン ロングビーダ (認知症患者向き)
クルクミンをリン脂質でカプセル化したクルクミン製剤、生物学的利用を65倍高める。血液脳関門への通過を高める。脳への浸透性を考えるとおそらく認知症患者に一番おすすめのクルクミンサプリメント。
結果は掲載されていないが、軽度の認知症患者へのロングビーダクルクミン投与の臨床試験が行われている。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01811381?term=Frautschy&rank=1
セラクミン (最強&高価格)
日本のメーカーが開発したクルクミンキレート製剤、おそらく他のキレート剤を圧倒して生物学的利用がもっとも高い。フィトサムの4倍? 値段が非常に高いもののクルクミンの一般的な健康効果を得るには、最強のクルクミン製剤かもしれない。
ただし小規模のRCTでセラクルクミンが被験者の記憶力、注意力を有意に改善しているため、認知機能改善効果もある。
ナチュラルファクターズ クルクミンリッチ セラクミン 600mg 60錠
夕食後 一錠 または 朝晩一錠ずつ(脂質を含む食事と)
クルクミン メリーバ
クルクミン粒子をリン脂質と結合させたクルクミン製剤、ロングビーダと似ているが、カプセル化と粒子化の違いがあり、ロングビーダがより脳関門を通過する証拠がある。けして悪いクルクミン製剤ではないが、神経細胞の保護効果として考えた場合には、ロングビーダに軍配が上がる。
クルクミン BCM-95
インドの会社がライセンス販売をしているクルクミン製剤、ユニークなのは、全ての追加成分がターメリック由来であること。
おそらくもっとも広範囲の効果をもつクルクミン製剤。
ライフエクステンション バイオクルクミン 400mg 60カプセル
ピペリン入りクルクミン
特許が切れているので、キレートタイプのクルクミンとしては一番安い。
血中のクルクミン濃度を一瞬で上昇させるが、すぐに下降してしまうというデメリットもある。
ピペリンは体内への吸収は高めるが、脳への浸透性は望めない。
身体に関わる健康維持目的ならOKだけど、認知症治療としては微妙。
ピペリン入りクルクミン
キレートタイプとしてコストは安い